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偽善者と終焉の島 中篇 七月目
偽善者と報酬カタログ その03
しおりを挟む(――"因子注入・神性機人""解析特化")
最も解析に優れた種族へと姿を変え、作業の効率化を図る。
(転送場所は……これは確か別の世界のコードだったっけ。いや、それならもっと簡単な筈だし……あ、次元が違うのか)
頭の中で解析した結果を纏めながら、MPが尽きる限界まで魔法陣を調べていく。
(発動者は……駄目だ、分からない。使用されているのは神氣みたいだが、リソース? 星脈? とやらを変換して使っているみたいだし……結構ビックネームだな、星脈って。なら使用されている魔法は? ……やっぱり<次元魔法>が使われているのか。[神代魔法]は運営側も持っているみたいだな。……一体幾つあるんだよ)
詳細な解析をやっている時間は無い。
ならば外側全てをフルコピーして、後で眷属達に任せておけばいい……レッツ、{他力本願}だ!
「ネロ、俺の写した魔方陣で解析はできると思うか?」
『陣のイメージだけでは、どうやって力が流れるかが分からない。そこら辺を分かるようにした方が良いと思うぞ』
「なら……こんな感じか?」
『……あぁ、それで多分大丈夫だと思うぞ』
(残りMPが1割を切ったか……そろそろ切り上げ時だな)
「ネロ、探知用の死霊だけ俺に付けてくれ。プレイヤー以外が存在すると、陣外へ強制的に弾き飛ばす仕組みがあった。これ以上は危険だから監視は中止だ。呼んだ相手がシーバラスとやらだった時の為に、逆探知の準備だけ頼む」
『……帰って来れるのか?』
「ま、大丈夫だろ。本当に困ったら、お前達の保護機能が全部発動するだろうし」
『それはそうなのだがな』
「気にすることは何もない。だって、【一蓮托生】な関係だしな」
『……理由になっていないぞ』
ハハッ、確かにそうだな。
……おっと、もう限界か。
(因子注入)は解除して~っと。
「――それじゃ、ちょっくら逝ってくる!」
(時空魔法)で魔法陣ごと最初に飛ばされた石碑がある場所に移動して、自身のMPが尽きる寸前、<干渉魔法>を解除する。
……その瞬間、再び白い光が眩く照り、俺の視界を包んでいった。
~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
???
かつて何度も来た空間――全てが白色に包まれた世界に、俺は再び舞い戻って来た。
初めてAFOは始めた時、二度目は撲滅イベントで手に入れたカタログを選んだ結果……どちらも強制的だったな~。
だけど、今回は少し違う。
カタログで強制転送されることは分かっていたし、魔法陣を砕こうと思えば砕くこともできた。
……そう、自分の意志だったんだよな。
鬼がでるか蛇がでるか、何がでるかは分からないが……それでも何かが起きるかもしれないと思い、ここへ来た。
――あの二人にも、会いたかったしな。
ピカーン
前回同様に、何かが現れる音と共に光がどこからか発生する。
そして、そこには――。
「……誰?」
そこには、紺碧色の髪と眼を持ち、同色の服を身に纏った、美しい女性が立っていた。
『申し遅れましたね。ワタクシはGM03と申すものですわ』
――で、ですわキャラだ。
確かに、顔が令嬢っぽい(?)顔をしているみたいだし。
「確か……前のイベントの司会担当だった奴だよな? 声が同じだと記憶している」
『……やはり参加していただけたのですね。貴方様には、上からの命令で手出しが不可能となっていましたので、こういった方法でしか会うことができませんでした』
「ん? ってことは、シーバラスは今回は関係無いんだよな?」
『まぁ! もうそこまで御知りなのですか。
……えぇ、貴方様を呼び出したのはワタシと彼女達の意志によるもの。運営神の方々の意志は介入していませんわ』
「彼女達?」
その言葉に疑念を抱くと……。
ピカーン
『『メルス(さん)!』』
再び光が現れ、そこから懐かしい方々が飛び出してきた。
片方は金髪の女性、もう片方は紅色の髪を持つ少女……そう彼女達は――。
「――レイ、シンク……」
かつて出会った二人のGM。
俺の無茶な要望に応え、俺に守護を授けてくれた――ハーレム候補である。
『本当に久しぶりですね、メルスさん。メルスさんのご活躍、GM全員で見させて貰っていましたよ』
「え? なんで、どうやって?」
『守護よ守護。GMには、何かを授けた者の行動を覗くことができる権能があるのよ』
……あぁ、(神々の注目)もあるしな。
GMが似たことができても、不思議じゃないか。
「何はともあれ、会えて良かったぞ」
『それはこっちのセリフですよ』
『ギリギリの勝負ばっかりやってないで、眷属に頼りなさいよ!』
「観てるなら分かるだろ。強者達には俺自身で対話をしたい。昔やってた貴族の探偵じゃないんだから、全てを任せるのはどうかと思うんだ」
ま、眷属は使用人じゃないんだから、関係無いけどな。
……にしても、心配してくれていたのか。
やっぱり、ありがたいもんだな。
『……あの、お姉様もシンクも、そろそろ良いですか?』
「『『あっ』』」
レイとシンクに意識を向け過ぎていて、03さんのことをすっかり忘れていたよ。
「……すまんな。それで貴女は俺に会って、一体何をしようとしたのでしょうか?」
それを訊くと、彼女はあっさりとそれを教えてくれた。
『簡単な話ですよ――ワタクシに、名前を付けてください』
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