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偽善者と終焉の島 中篇 七月目
偽善者と『最弱最強』 その11
しおりを挟む『先に5回当てた方が勝ちだからね?』
「あいよ、分かってらぁ」
俺が了承したのを確認すると、アリィが何かの能力(まぁ、【加留多】系のヤツか)を発動させる。
すると、カードが勝手に動き出し、バカラが始まる。
◆ □ ◆ □ ◆
「(これって、クーにでも出来るのか?)」
《うん、できるよ。チェスでもストラテジーゲームでも双六でも可能だよ》
「(……どうしてそれらを例に挙げたかはともかく、それなら眷属達ともできるな)」
《みんなでやるのも楽しそうだね》
「(……アイツら、妙にポーカーフェイスが得意な奴ばっかりだからな)」
《日頃から取り繕ってるからじゃない?》
[(そういうものか?)」
《誰の為にやってると思ってるのさー》
「(……悪いな)」
《そのうち、『ラノベ主人公!』とか言われるかもしれないよ》
「(おいおい、いつも言ってるだろう。俺は主人公じゃ無くて、ただのモブだって。主人公ならアリィと勝負しなくても、なんやかんやでどんどんここから連れ出してるし、俺みたいに苦労しなくても、強者達を真の意味で救い出すことができただろうさ)」
《でもメルスだって、今までやれてきたんでしょ? これまでにやってきたことは全部把握したけど……みんな救ってきたでしょ?》
「(みんな……かー。クソ女神の使いだった魔龍や、帝国の洗脳体……救えなかった者も多いんだぞ。全員がハッピーエンドな物語も世の中にはあるけど……俺には無理だったな)」
《あの魔女は置いておくとしても、少なくともクエラムのマッチポンプは倒して正解だったと思うよ》
「(それでもな……偽善者なら、そんな救われない奴でも、救えたんだと思うんだ。本当の善人でも無い、無関心を貫く他人でも無い、自分本位で誰かに干渉しようとする偽善者だからできること……それを探しても結局見つからなかった。
それに、よく主人公達が言うじゃないか。 『救われない奴なんていない』って。あれには敵や復讐対象も含まれるんだよな? 自分にとってのヒロインだけを救うなんて……そんな意見はちと【傲慢】と【強欲】が過ぎるしな。まぁ、人は考えを捻じ曲げる生き物だから別に良いんだけどさ)」
《全てを救うことなんて、魔神にしかできないんじゃないの? メルスがこっちに来る前から、全ての因果は絡み合っている。それを知らない人にそれをどうこうさせようって方が間違っているよ》
「(そんなもんかね?)」
《メルスは難しく考え過ぎ。もっと柔軟な発想を大切にしないと。……ゲーム終了。メルスもそろそろ意識を切り替えた方が良いよ》
「(……本当だな。クー、今回もだがありがとうな)」
《お安い御用だよ》
◆ □ ◆ □ ◆
目の前でアリィは、『orz』+床を叩くという、悔しいですアピールを行っていた。
「な、なぁ。いつまでもそうやってしょげるなよ。ホラ、俺の大好きなプリン味をあげるからさ」
『そうやってアリィを餌付けして……一体どうする気なの?』
「ふ~ん、いらないみたいだ『いる!』……数が少ないからゆっくり食えよ」
あぁ、俺のお気に入りの味が!
ゆっくり、と言った筈なのに、アリィは一口プリン味のカントリーを入れた途端、一気に渡した分を食べやがった。
……クソ、美味しそうに食べるから反論ができない。
――斯くなる上は。
『……ふぅ~、美味しかった』
「そうか。ならその対価、ちゃ~んと分かってるんだろうな?」
『対価……ハッ! ま、まさか! アリィの体を!?』
「…………。ふっふっふ、よくぞみやぶったなー。おまえのからだで、しっかりしはらってもらうからなー(棒読み)」
『な、なんだってー(棒読み)!?』
「と、いうワケだ。俺が3勝した結果、俺の勝利条件が満たされた。アリィには俺の眷属として、こき使われる義務が働くようになったな」
『ひ、酷い! こんな幼気なアリィをコキ使うだなんて……メルスが許しても、アリィが許さないんだからね!』
「知ったことか。『神殺し』にそんな道理を説くんじゃない。アリィは負けたんだ……大人しく諦めるんだな」
クーを介して行った博儀は、絶対遵守のものとなる。
アリィはそこに自身の眷属化を提示された時点で、実質負けていたんだ。
――クーとの勝負に、勝てる筈が無いのだから。
『…………ふっふっふ。もう勝った気でいるの? メルスは。まだアリィの手の上で踊っているとも知らないで』
「な、なんだと?」
さっきの意趣返しか、俺のように言い返すアリィ。
『アリィが決めたルールには、確かこう書いてあるんだよ……『最終的に勝利数の多い方の勝ち』ってね。つまり、勝負は全部が終わるまで続くんだよ』
「ふ~ん……つまり時間稼ぎか……。一回も勝ててないのに、どうやって勝つんだ?」
『そ、それは……その、メルスが反則をしたり、降伏したり……とか?』
「……すると思うか?」
『デスヨネ~orz』
カントリーの力で折角立ち上がっていたのに、また地を這うポーズに戻ってしまった。
どこまで頭、お花畑なんだよ。
「(おい、クー言えたぞ。兄のセリフ!)」
《はいはい、良かったね良かったね》
「(冷たいなー。もうちょっと楽しそうにしてくれても良いじゃん)」
《なら、次のゲームを■■にしてよ。それなら楽しめるかも》
「(■■……で良いのか? 分かった)」
……と、言うワケで。
第四回戦も、ちゃっちゃと終わらせます。
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