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偽善者と終焉の島 中篇 七月目

偽善者と『最弱最強』 その09

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 ――そして、何やかんやの戦いの末、勝者立ち上がり叫ぶ。


「エイドリア~ン!」

『また、負けた……』


 第二回戦『スピード』対決――勝者俺。
 こんな感じでどうだ? それっぽくね?
 今回もまた、クーのアシストが無かったら負けてただろうな……アリィの残り手札も一枚しか残ってないし。

 一人でやるか二人でやるかが、勝敗を決したんだろうな。


「いや~、いい勝負だったな~。危うく負けるところだったよ」

『そのテンション、なんかやだね』

「え、今何か言ったのかなー? あと一勝で決着がついちゃう喜びで、全然聞こえなかったよー!」

『……聞く気が無いの間違いじゃないの? アリィには、そう言った風に聞こえたんだけどね……』


 おやおや、酷いことを言うお嬢さんだ。


「傷付くな~。ちゃんと聞く気はあるさ。聞けなかっただけでその仕打ちは、ちょっとどうかとも思うけど、今の俺は寛大だからな。アリィの発言も許してやろう。感謝するが良いぞ」

『あ、ありがt……って、アリィはなんにも悪いこと言ってないじゃん! その態度、誰が見たってメルスが悪いよ!』

「世の中にはな……必ず一人は信じてくれる奴ってのがいるもんだよ。俺はそれを信じているから、全員が俺が悪いという考えには、賛同できない!」

『納得してるじゃん!』


 ……そうだな、自分が悪いことに関しては肯定しようか。
 こんなあと一回負けたら敗北という条件下でも、しっかりとツッコミをしてくれているアリィの誘惑に負けたんだ。

 ――大人しく判決を待つとしよう。


《みんなに伝えればいいの?》

「(やっぱ勘弁してください。また裁判されるのは嫌なんです(ガクブル))」


 おれ、さいばん、まじこわい。
 このままクーに連絡されたら、適当な罪をでっち上げられてしまう。

 ……いやはや、防げて良かったよ。


「さぁアリィさん。次のゲームをもう始めますか? それとも、少し休憩にしますか? まぁ俺からすれば~、どっちでも良いんですけど~。ど~せ勝てますし~、敗北は無いんだし~、完全勝利も夢じゃないし~、アリィさんがいくら時間稼ぎをしても~、最後に勝つのは俺だシヴェラ!!」


 別に、『シヴェラ』に特有の意味がある訳では無い。
 ただ俺の顔面に、カードが飛んできた衝撃でそう言ってしまっただけだ。

 威力自体は眷属達の過保護によって無かったが、高速で飛んできたカードの運動エネルギーは消滅できなかったようだ。


「な、何すんだヨトゥン!」

『ウザい! ウザ過ぎる!! どんだけ余裕をかましてセリフを伸ばしてるのさ! 一々やらなくても、一回で腹が立ったよ! 大体、まだ終わってないじゃん! まだ逆転する可能性だってあるのに、なんでメルスはアリィとの決着がついたみたいにずっと言ってるのさ!』

「わ、わブかっトゥア、たっテェイ。ちゃんトォ、やるかラァ」

『……分かればいいんだよ』


 アリィめ~、俺からその言葉を引き出すまでずっとカードを投げて来やがった。
 痛くなくても、響くものは響くんだぞ!


「……で、時間の方は?」

『う~ん、もうちょっと頂戴。何か良いアイデアが浮かびそうなんだよねー』


 つまり、俺のチートを封殺する為のゲームができるってことか。
 それなら、あんまり時間稼ぎはさせたくないんだが……。


《メルス、クー対策を用意してるんだね! いやー、楽しみだねー♪》


 当の本人チートがこの有り様だし、俺がどうこうできる問題じゃないな。

 ……仕方ない、色々やって待つか。


◆   □   ◆   □   ◆


「(そういえば、リーは起きたのか?)」

《相当酷いショックを受けたみたいだし……まだまだ起きれなそうだよ》

「(マジか。ちょっと本格的なアクションをしただけだったんだが……それならドゥルの受肉状況は分かるか?)」

《アッチもアッチでまだまだ掛かるよ。色々と企んでるみたいだから……》

「(……具体的には?)」

《他のみんなに、スキルや種族に関して相談してるみたい。ドゥルはメルスが船のAIに焦がれた部分から生まれた擬似人格だから、特に決まった種族は無いし、自分である程度種族を選ぶことができるみたい。だからみんなと相談して、今メルスに足りない力を補える種族を探してるってところかな?》

「(俺に足りない力……皆目見当がつかないんだが……)」

《メルス自身に足りないものは幾つかあるんだけど、眷属全員でそこはできるだけカバーしてるしね。弱点といえるようなものじゃないから大丈夫だよ》

「(……アッチ関係じゃないよな?)」

《…………》

「(お願い、せめて返事をして!)」


◆   □   ◆   □   ◆


 結局クーが、俺の質問に答えてくれることはなかった。

 俺って、人望無いのか?
 いやいや、それなら俺は既にボッチの筈だし……ドッキリか。

 未だにアリィがウンウンと唸っているからゲームは始まらないし、クーは弱点について教えてくれないから虚しいし……ハァ。

 眷属達はドゥルの相談に乗ってるみたいだし、そのタイミングで暇潰しという理由だけで呼び出すのは心苦しい。

 ――ま、そんな悩みはすぐに解決したんだけどな。


『……ッ! これだ、これならメルスがどんな手を使っていても勝てる!!』


 ……突然アリィがそう叫んだからな。
 というワケで、第三回戦が始まります。


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