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偽善者と終焉の島 中篇 七月目
偽善者と『最弱最強』 その08
しおりを挟むアリィは熟考の末、俺が(遊戯世界)以外のスキルを使用していたことに気付いた。
気付いたのだが、何を使ったかまでは皆目見当が付かないそうだ……惜しい。
そこまで気付いていたら、俺も用意していたクラッカーを鳴らしながらクラッカーを爆発させて、クラッカーをプレゼントしようとしていたのだが。
「(――あ、ちなみに最初がパーティー用で、二つ目が癇癪玉、三つめが食べ物だからな)」
《クラッカーにこだわる必要あったの?》
「(……うん、特に無いな)」
さぁ、二回戦目に行こうか。
~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
『さっきはアリィが決めたから、今度はメルスが決めてよね。も・ち・ろ・ん! 不正なんて無い、ちゃんとしたやつをね!』
「おいおい、俺はただ、ルールに従っていただけだろう? それに気付かなかったのはアリィで、そこについて指摘しなかったのもアリィだ。不正なんて起きてないし、ゲームはアリィが決めていたものだ。初めてゲームを指定する俺にちゃんとしたヤツかどうかなんて……分かると思うか?」
『そ、それは……その』
「大体、万人が対等だと思うものなんて、世の中に存在すると思っているのか? 対等の考え方は人それぞれだし、そもそも対等について考えない奴だっている。もし、ちゃんとしたゲームっていうのが対等を意味しているのなら、俺にそれをやる自信は無いぞ……俺がさっきみたいな無双プレイをしたら、絶対同じように疑うだろうし」
『……? ねぇ』
「人にはそれぞれ得意不得意がある。トランプゲームの中でも、ページワンが得意な奴やオンリーワンが得意な奴、芋掘りが得意な奴が存在する」
『……それ、殆ど同じじゃん』
「細かいことは気にするな。俺が言いたいのは、ちゃんとしたゲームを用意するのは無理だってことだ」
『ねぇ、メルス』
「なんだいアリィさんや」
『……さすがにアリィでも分かるよ。メルスは話を逸らしてるよね?』
「…………二回戦目はスピードだ」
『スピードって、あのどんどん並べていくヤツ?』
「そうだぞ。一応差異が無いか擦り合わせはするけど……多分大体同じだろうな」
◆ □ ◆ □ ◆
「(……やっぱり、アリィの知ってるスピードも、似たようなルールだったな)」
《……ってなると、やっぱり?》
「(ネロの記憶を視て、色々と考えたんだ。今浮かんでいる予想は、その中の一つにだいぶ近い)」
《……そこに関する記憶が無いんだけど》
「(まぁ、そこら辺は気にするな。とにかく今は、スピードをやるのに力を貸してくれ)」
《は~い》
◆ □ ◆ □ ◆
そしてこれが、アリィと決めたルールと進め方だ――
・台札――中央に置かれた2枚のカード――に隣合った数字のカードを上に乗せる(AとKは隣り合うものとする)
・プレイヤーのカードは、赤か黒のカード全てを使用する(今回は俺が黒、アリィが赤)
・山札から4枚ドローして手札にする。これはカードが尽きるまでは、山札からカードをドローして維持する
・ゲーム開始&再開時は掛け声と共に、お互いの山札にあるカードの上から1枚ドローして、台札として置く(山札が尽きた場合は手札から一枚選んで台札にする)
――特に弄る必要も無いので、相互が理解していたルールをそのまま使用した。
……変えたのは掛け声ぐらいかな?
俺が『いっせーのーせ』で、アリィが『スピード』だったからな。
「……で、他に何かあるか? 俺的にはさっさと始めたいんだが」
『メルスさー、結局アリィに神経衰弱で何をしたか教えてくれなかったじゃん』
「……アリィは、俺がお前のステータスを見せろと言ったら見せてくれるのか?」
『……やっぱり無理か。相手が不正をやってるのに言えないっていうのも……ちょっとムカつくかな?』
教えたらバレるのだから、教えられる筈が無い。
自頭の良い奴は、一を知り十を学ぶ。
つまりは俺の些細な一言で、クーが攻略されてしまうということだ。
……全スキルが解放されていたら、そんな心配をする必要も無いのだろうけど……。
今はまだ一部しか解放されていないしな。
「ムカつく暇があるなら、タネでも探してみるんだな。……まぁ、そもそも無い物を見つけるなんて、無理に等しいけどな!」
『や、やっぱりムカつく』
「ムカつかれて結構ですよ~。最後に勝つ奴がこの場では正義だ。弱者の言葉に価値なんて無い! ……そんなこと考えたこと無いけど。清濁呑み込めとまでは言わないが、自分の考えていることを剥き出しのままじゃあ、隙ができるぞ。そんなんだから、どこかの偽善好きにゲームで負けるんだよ」
どこかで聞いたことがある。
最後に勝つのは、最後まで冷静でいられた者だと。
ステイクールと黒の剣士の作品でも言ってたし、{感情}の力は不要なのかな? 俺はそう思わないけど。
古来より、{感情}によって運命は大きく揺れ動いてきた。
それは、どの世界であろうと共通の事柄であろう。
正か負か、その差はあるだろうが……人が大胆な行動をする時は大抵が{感情}に突き動かされた時だ。
……実際俺も、【色欲】に呑まれてフェニに猛アタックをしたみたいだしな。
閑話休題
なんで{感情}の話をしてたんだっけ?
……そうだ、考えていることを剥き出し、から派生して考えてたんだ。
「――アリィも客観的に状況を見てみろよ。多分だけど、変わるものがあるぞ」
『ふーん』
どうでも良さそうに取り繕っているが、恐らく分かってくれてはいるだろう。
……そうでもなきゃ、人の目を見てそのセリフを言うことは無いだろうしな。
「よっし、第二回戦『スピード』開始だ!」
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