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偽善者と終焉の島 中篇 七月目

偽善者と『最弱最強』 その05

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「おーい、完成したのかー?」

『メルス、ちゃんと見てなかったの? 折角アリィがメルスを恐怖のどん底に落とす、最恐最悪のゲームを作ったっていうのに……』

「さ、最恐最悪……」


 何その響き!? 絶対面倒そうな内容だろ。


《クーは楽しみだな~。そっちの方がスリル満天、ドキドキワクワクな内容みたいだし》

「(そういえば、もうクーは確認できるんだっけか)」

《うん、無理ゲーじゃ無いことは確認済みだから安心して良いよ。メルスはアリィとの勝負に勝つだけだね♪》


 クーは楽しそうに……そう言った。


『……コホンッ。それじゃあ発表するよ――これが、アリィの考えたゲームだ!!』


 アリィがそう言うと、更新されたルール用のホログラムが再度表示される。


......................................................................................

ゲーム:加留多5番勝負

制限時間: 参加人数:2人

内容:アリィの指定したゲームを3つ、メルスの指定したゲームを2つ、それぞれ加留多を用いたものより指定する
 最終的に勝利数の多い方の勝ちとなる(同率となった場合、もう一ゲームメルスが指定したものを行う。それで勝敗を決める)

ルール:各ゲームごとに自分達で確認し合う

終了条件:どちらかが3勝・降伏・盟約違反の内、どれかを満たす

盟約01:互いに対等と判断したものを賭けなければならない
  02:殺害を禁じる
  03:盟約に誓った賭けは、絶対遵守となる

勝利報酬|(アリィ):お菓子の奉納・干渉禁止

勝利報酬|(メルス):アリィの眷属化

......................................................................................


 傍から見ると普通に見えるが……


「お菓子の奉納ってなんだ? 干渉は不可能にされるのにお菓子だけ見繕うのか?」

『もちろん。アリィはあのお菓子が大好きになったんだよ! 外はさっくりで中はしっとり、固過ぎず柔らか過ぎないあの食感……あれはきっと、アリィを堕落させる兵器だよ』

「兵器なら食べなければいいじゃないか」

『そうはいかないんだよ! 一度食べたら止まらない、それを食べたらどうなるか……メルスが一番分かっているでしょ!!』


 まぁ、だからこそ大量生産していたんだしな……。
 期間限定や地域限定の味もいっぱい出てたし、思い出しながら作るのに苦労したよ~。


「ルールを各ゲームごとに確認するって書いてあるけど、アリィはどんなゲームをやる予定なんだ?」

『それは、メルスがこれを受けると言ったら教えてあげる』

「……まぁ、カルタを使うってことは、かるたかトランプになるんだろうし、ある程度分かるがな」


 昔からコミュ障を拗らせていた俺は、一人でできる暇潰しを探していたことがある。
 その時にトランプやカルタを使うゲームは一通りやってみたぞ(多人数のゲームは内容だけ見ていた……やる相手いないしな)。


「よし、それじゃあ受けて立つ! さっさと始めるから、ルール決めようぜ」

『え? あ、うん』

「どうした? そんな、変な自分みたいなものを見たような顔をして……」

『……ってどうしてアリィが変にならなきゃいけないのよ!! ただ、メルスがどうしてすぐに勝負を受けてくれたのか、気になって』


 え、そんなことだったの?


「そりゃあアレだ。アリィが自分自身に絶対的な自信を持っているからだ。
 そういう奴は、不正なんかしないで真正面から相手を倒す。小細工なんかしないでも、勝てるだけの力があるんだからな。
 だから俺はそこに関してはアリィを疑わない。俺もアリィの自信を信じてるいるから」


 今までの言動からそう思う。
 アリィは確かに横暴で思考が年相応しか無いと思うが……それでも、アリィ自身に実力がある。

 だからこそ、アリィはここにいるんだろうし、そこまで傲れたのだろう。


『ッ! ――――!?』


 さすがに怒っているなー。声にならない何かを発してるよ……エクトプラズマか?
 それにしても、俺のこの考え方に気付いただろう。
 顔を真っ赤にしてやっぱり変な顔だ。

 ま、可愛いのに変わりは無いがな。


『ほ、本当にそう思ってるの?!』

「とりあえず最初のゲームを決めてくれよ。ルールを決めないと始められるものも始められないしな」

『そ、それもそうよね。さ、さぁメルス、篤と聴きなさい! 最初のゲームは――神経衰弱よ!!』


 神経衰弱――説明する必要も無いぐらい、シンプルなゲームだ。


『互いに2枚の札を捲って、同じ数字が書かれている札を捲ったらそれを取れる。違っていたらそれは元に戻す』

「最終的に取った枚数が多い方が勝ちか?」

『そっ。だけど、一つだけ大切なルールがあるの――』


 ふっふっふ、【瞬間記憶】と【完全記憶】があるこの俺に、記憶勝負を挑むなど笑止千万だ。
 この勝負、俺が貰っt『スキルの使用は禁止するわ』……はへ?


『勝負に使わなきゃいけないヤツ――アリィの【加留多】とメルスのそこの魔道具のスキルは例外として許可するけど……他のスキルは今回のゲームでは使用不可にしましょ』

「……あ、ほぇ?」


 そんなこんなで第一回戦――『神経衰弱』が始まります。


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