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偽善者と終焉の島 中篇 七月目

偽善者と滝壺

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「――ウォータースライダァアアア!!」


 ……結局、結界を破壊してしまった時点で気付けば良かったと思う。
 ド○ブラ粉でそのまま穴に落ちたのだが、壊れた結界から水が漏れ出てしまったのだ。

 毎度お世話になってる思考高速化を行い、対応がギリギリでできたので、なんとか水の影響を受けずに済んだ……が、水そのものをどうにかするはできなかったので、俺はこの言葉を叫ぶことになったのだ。


 流れ流れて、滝壺にダイブ!!
 ズドーンッ! とかいう音と共に、水の中に叩きつけられる。

 その衝撃は、全身に罅が入る程に凄まじいものであったのだが、それについては【物体再成】を発動させてすぐに元通りにした。

 問題は水の中に押し込まれたことである。
 全くスキルLvの上がっていなかった水中関連のスキル。
 果たして、色々と付与された水の中で機能してくれるのか――そこが分水嶺であった。


(……多分発動しているんだろうな。ステータスは……うん、特に状態異常が発生しているワケでも無いか。お、ちょっとLv上がってるじゃん! やっぱり浴室で素潜りじゃ駄目だったんだな)


 ドキッ! 眷属だらけの温水プール……主もいるよ♪ で色々と検証していたのだが、その時は水に関するスキルのLvが上がることは無かった。
 温水だったのが悪いのか、夢現空間だったのが悪いのかは分からないが……これでやっとレベリングができるよ。


閑話休題主が邪魔だな


 さて、そろそろ水から出るとしますか。
 その前に辺りを見回すと、ゴツゴツした岩が散乱していた。
 ……まぁ、洞窟ってのは大体こんな感じなのか?
 よくある水中洞窟に見えるよ。

 俺はここに来た時から発動させていたスキルを、水に上がってから全て解除する。

 すると、シュゴーッという音が洞窟内に鳴り響いていく。


(……しっかし、魔力消費が半端ないな~――真空層を体に纏うのも)


 水が体に付かないようにする為に俺が行ったのは、【理学魔法】と(時空魔法)による物質排除からなる真空空間の生成だ。
 俺自身、完全に理解しているワケでは無いのだが……昔、真空とはそういうものだと何かで知ることがあった。
 なので、時間を止めることで物質を機能させなくする(時空魔法)と、地球における理学の法則をこちらの世界で最優先の法則に作り変えることのできる【理学魔法】を発動させたのだ。

 ……<次元魔法>で思いっきり壁を創っても良かったのだが、この後の強者との対面を考えてそれは控えた……消費MPが今回使った策以上なんだもん!


「……って、また洞窟なんだな。いや、水中の方が洞窟だったんだからこっちも洞窟になるのか。そりゃそうか……目に見える範囲、壁しか存在していないんだけれども」


 俺の目の前に広がるのは、穴一つ無い頑丈そうな壁であった。
 ……って、これだと強者の場所をまた探さなきゃいけなくなるじゃないか。

 今回は魔法を使っても問題無いだろうし、直ぐに見つけ出せるかな?

 【光芒魔法】を発動させ、不可視の光線を洞窟中に飛ばす……グッ、普通のレーザー計測機と異なり、俺の場合はレーザーが当たった場所を直接読み取って頭の中でその膨大な情報を演算処理する。

 昔これを暇潰しに考え付いた時は、アンに怒られたもんだよ。

『良いですか? それは転生したスライムが固有のスキルを使って行う所業です。決して自称一般ピーポーが行うようなものではございません。……だ、駄目ですよ、そのような目をしても。<千思万考>のスペックをフルに使えばできないこともありませんが、私が使う分が(ウンヌンカンヌン)……』

 ――とかなんとか言っていたよ。
 最後ら辺は、正直覚えていないけど。
 【完全記憶】も、意識して発動させなきゃ使えない。
 じゃないと、どこかの禁書目録さんみたいになるしな。

 ……まぁ、最後ら辺もある程度の予想は付いている。
 多分だが、アンの活躍に関する何かが予め仕込まれているのだろう。

 ――<千思万考>とは、アンが俺の為に(適応)を発動させて創ったスキルらしいからな。


閑話休題


 う~ん……一応場所は分かった。
 滝壺の裏側という、いかにも王道の隠しスポットが存在しているみたいだ。

 だけど、その部屋の詳細は掴めなかった。
 滝の裏にある空間に入った途端、何かに遮られるようにレーザーが途切れているのだ。


「やっぱり……この展開は強者がレーザーに気付いたとかそういうパターンなのか? なら魔法以外の方法で……って、音も温度も滝で遮られてるしな~」


 結局のところ、俺は愚直に進むことしか考えられないのだ。
 どれだけ回りくどい戦略を練っても、圧倒的な暴力に太刀打ち出来ない時もがある。
 今回はきっと悩むな、進め! と教えてくれているのだろう。

 ……え、誰がかって?
 それは多分(ESP)辺りだろう。
 元々(直感)が進化したスキルだしな。
 きっと俺に正しい道を教えてくれる筈だ。

 地面を、水面を、空中を踏み、滝へと向かいながら俺は呟く。


「――ま、普段は眷属頼りで非常時が直感頼りってどうかとも思うけどな。運が無い俺がそれってのも少し不味い気もするが、このタイミングで戦略を練っても、結局あまり変わりは無いだろうしな~。やるだけやって、最後はいつもの『ごめんなさい』だな」


 心に刻まれたものも、直ぐには反映されることは無い。
 刻まれたとしても反映されるとは限らないのだ。

 つい先日。
 リーが語ったあの言葉は嬉しいが……やはり、自分でやろうと決めたからには、最後まで自分でやってみようかな?


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