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偽善者と終焉の島 中篇 七月目
偽善者と特殊フィールド 後篇
しおりを挟む夢現空間 図書室
それからというもの、特殊フィールドをあの手この手で調査中なのだが、一向に見つかる気配はない。
俺自身が一度も調査に向かっていないことも理由の一つに入っているのだが、眷属達との時間を大切にしていのだからしょうがないだろう。
「――と、いうワケでリュシル、何か心当たりはあるか?」
『特殊フィールド自体は、元々存在していました。過去の文献にも、一部の者しか入ることのできなかった場所があったそうです』
「へぇ~。例えばどんな所だ?」
図書室で向かい合わせに座りながら、俺とリュシルは話し合いをしている。
彼女は夢現空間に来て以来、かなりの頻度で図書室へ来ている。
理由は勿論、様々な情報がここに存在しているからであり、彼女は時にそんな情報を読み漁って時に本として自身の情報を記載したりしているのだ。
『そうですね……。例えば隠れ里ですか? その種族の者しか入ることのできない場所です……メルスさんは別だと思いますが』
まぁ、隠れ里のシステムも、因子を使って肉体を改変させるところまでは予測できないだろうしな。
「魔族にも隠れ里はあったのか?」
『あったにはあったらしいのですが……。私には行く機会も条件を達成する機会もありませんでしたので……』
インドア少女(?)が、態々外に行く必要も無いか。
Lvアップもゴーレム使役で簡単にできるとのことなので、自宅警備員も真っ青な程に引き籠れたのだろう。
「ま、俺も行ったことは無いし……リュシルの言う隠れ里は、別の時に捜してみようぜ」
『は、はい!!』
そんな約束を交わしていると――
『――創造者、私も同行してもよろしいですよね?』
『勿論、一緒に行きましょうね!』
『開発者、普通女性がデートを邪魔されて喜ぶものですか……』
『子供と一緒にいることを否定するのは、親としてどうかと思うのですよ』
『このままでは、一生先に進めないと思いますよ、開発者』
――俺とリュシルの会話に、一人の少女が介入してきた。
青い髪にガラス玉みたいな黒い瞳を持つ、リッカがかつて用意したメイド服を着た――人形のような少女が。
「マシュー、眷属達の前には壁があるんだから、どうせ前には進めんよ」
『越えられない壁はありませんよ、創造主。貴方がその気になるだけで、その壁は一瞬で無くなるのですから』
そう、メイドの正体は人形への受肉が完了したマシューである。
レンやアン達と同様、生気の無い眼でこちらを見ながらそんなことを言ってくるが、無理なものは無理なのだ。
「越えてないよな、壁。少なくとも真実を知るまでは、俺は手を出さないと決めているから無駄だぞ」
『……これ以上の説得は無理そうですね。すぐに手を出すような方なら、他の方々があの手この手を使って努力する必要もありませんか。あの方達、一人一人が超が付くほどの美女や美少女ですしね』
「こっちではそれが普通だろ? 俺の世界なら美女だろうと何だろうと顔でアウトだ」
『……難儀なものですね。開発者、いっそのこともう襲った方が早いのでは?』
『マ、マシュー。そ、それはまだ早いというかなんというかですね……』
『おや? まだ……ですか』
『////////////////』
聞こえないぞ……俺には何も聞こえないからな。
『うぅ、酷いですよマシュー』
『私みたいなゴーレムも誘うような人を、好きになったのが悪いのですよ』
『だから、言わないでくださいよ!』
「……そろそろ良いかな?」
『はい、開発者は本当に初心ですから、これぐらい発破を掛けておかないといけないんですよ』
『わ、私だって、好きでこんな風になった訳じゃ……』
本当に話が進まないな……。
ギーがリーをからかうように、マシューもまたリュシルをからかうのが好きなのだ。
同性愛も、俺は別に否定はしないから別に良いんだが、今の所はただからかうのが楽しいって感じだな。
閑話休題
やっと二人の話し合いが終わったので、俺は話を続ける。
「……コホンッ、特殊フィールドについてはまた別で調査をするから良いとして、他にも訊きたいことがあったんだ」
『訊きたいこと……ですか?』
「あぁ、リュシルがどうやって[神代魔法]を習得したか……それが訊きたくてな」
俺の場合は経験とスキルから再現したのだが、リュシルの場合はどうなのだろうか(彼女の持っていた魔法は、[神代魔法]に同期済みだぞ)。
『私の場合は、ゴーレム達に探索に行かせたダンジョンの中にあった古文書を見て習得しました。難解な物でしたが、最終的には記載されていた魔法は、全て習得しました』
「さっすが学者さんだよ。その古文書はどうなったんだ?」
『私の方の図書館にあると思いますよ。その内その本も含めた全部の本を、こちらに移しておきましょう』
「おぉ、そりゃあありがたい」
神代魔法が書かれた古文書……それがあれば神代と呼ばれた時代の何かが分かるかもしれない。
特に創世記――そこさえ分かれば。
この後は、雑談などをしていた(話は全然進まなかったけどな)。
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