333 / 2,519
偽善者と終焉の島 中篇 七月目
偽善者と特殊フィールド 前篇
しおりを挟む夢現空間 居間
「――今更だが、他の強者ってのは何処にいるんだ?」
そういえば全く知らなかったので、丁度その場にいたグーに尋ねてみる。
『結論だけ言うと、四人は、マスターが行ったフィールドとフィールドの間にできている結界の中にいるよ』
チャイティーを優雅に啜りながら、グーはそう答えてくれた。
「フィールドの間? →↓とか、斜めに歩けば行ける……ってワケじゃ無いよな?」
『勿論だよ。特殊フィールドに指定されるからね。行くにはそれなりの準備ってものが必要なのさ』
「準備?」
"収納空間"から茶請けの菓子と『おぉい玉露』を取り出し、卓袱台の上へと並べる。
『なんらかの条件を満たすことで特殊フィールドに入れるようになるんだけど、終焉の島の場合はその条件とプラスして、それぞれのフィールドの外側に位置する結界の解除にしてあるんだ。本来なら強者達を解放するのは無理だから行けない筈なんだけど……』
「……行けるな」
終焉の島に来てからの俺の所業を振り返ってみると……うん、思い当たることが沢山あるよな。
眠り姫を叩き起こして、魔獣を洗脳と鎖から解放し、アンデッドを操る魔王に感情を押し付けたり、学者のゴーレムに殴られたりと盛り沢山である。
「……そういえば、四人はって言ったよな。残りの四人はどうなんだ?」
『大まかな場所は分かっているけど、そこへの行き方がまだ分かっていないよ。マスターには、先にフィールドの間で封印されている強者達に会うことをお薦めするよ』
「そっか、ありがとな」
『だ・け・ど、ちゃんと僕達を呼ぶんだよ。武具から呼び出せるんだから』
目の前にいるグーなど――俺の眷属の大半は、"機巧乙女"という仮初の肉体を使い、俺と行動を共にしている自我を持つ武具だ。
その特殊な存在だからだろうか。
意識を武具と人形の間で自由に切り替えられたり、武具のある場所に、人形を転送したりすることが可能らしい(ただし転送には俺の意思が必要らしく、俺が気絶していると思ったリュシルの時には、代わりとなる転移アプリを使おうとしたって訳だ)。
グーは耳はピンッと立てながら、俺にそう言ってくる。
……ケモ耳の素晴らしさ、いつ見ても何度でも見ても分かります。
閑話休題
バリボリ カリカリ
ポテチや幼星を食べながら、会話を続けていく。
「……グーさん、結局その特殊フィールドに入るには、一体どうすれば良いんだ? 入る条件が分かっても、入る場所が分からなければ意味が無いと悟ったんだが……」
もし、そのまま"最果ての草原"に向かって行ったとしても、結局のところは何もしないで戻って来てしまう。
だって、どうやれば入るのかが分からないからだ。
探せば出てきそうだが、この島のフィールドは広い。
闇雲に探すよりは、訊いた方が早いだろう……と思ったのだが――
『さっきも言ったけど、フィールドの間と間ということしか分かっていないんだ。だからこそ、色々な準備が必要だと言ったんだよ』
「……そうか」
グーも分からないらしい。
特殊フィールドは、隔離された空間のように他との繋がりが断たれている為か索敵系のスキルやマップも通じないらしく、ここ以外のフィールド(つまり、昔居た場所)でも、特殊フィールドを見つけるのは困難だそうだ。
俺は茶請けが無くなったので、新たにチョコのボールを出して、それを食べていく。
「次の強者、四人の中で一番反応が弱いのは南西だよな?」
『うん、その通りだよ』
「ま、四天王の中で最弱的なことは起こらないし、起こったとしても普通の人々が勝てなかったからこそ四天王をやってた……的な感じで、俺では歯が立たないと思うしな」
『まぁまぁ、マスターが裏でこっそりと連れて来た強者達に指輪やら愛やらをプレゼントしていたのは周知のことだし、僕達のサポートもあるから大丈夫だと思うよ』
「……最初を言う必要あったのか?」
『全然。全くこれっぽちも無かったよ』
……というか、やっぱり盗聴なのか。
【神出鬼没】で隠れて行ったんだが、やっぱりバレていたか。
神魔とかと契約してたあのハーレム学園物の好感度を見る指輪があったならば……全員の魔法が使える状態にまで、俺のハーレムは育っている(イアにあげたのは、それを再現した物だぞ)。
……にしても、全員が全員便利なスキルを共有できるし、俺のアプリのハッキングも完了しているし……盗聴方法が多すぎるな。
『マスターの奉仕のお蔭で、僕達も喜ぶ、マスターは女の子達からステータスの強化をして貰って喜ぶ……WinWinじゃないか』
「ま、能力値の補正はセイとリア、フェニとガーの分しかないけどな。後、分かってるんだから、まるでステータスの強化だけが目的みたいに言わないでくれよ」
『ゴメンゴメン、それを盗聴していた僕達がどんな気持ちになっていたか、考えて欲しいと思っただけだよ』
「盗聴された側に求めることか? 俺……というか青少年ができる限界までは、やっていると思うんだが……」
……桜桃にはマジでキツイです。
やることはやるけど、ヤるのはまだ早いと思います。
『もっと先へ、加速したくはないかい? マスター』
「俺は銀の烏君じゃ無いから、今のままで充分です」
それからも、二人で会話を続けていた。
0
お気に入りに追加
516
あなたにおすすめの小説
虚弱生産士は今日も死ぬ ―遊戯の世界で満喫中―
山田 武
ファンタジー
今よりも科学が発達した世界、そんな世界にVRMMOが登場した。
Every Holiday Online 休みを謳歌できるこのゲームを、俺たち家族全員が始めることになった。
最初のチュートリアルの時、俺は一つの願いを言った――そしたらステータスは最弱、スキルの大半はエラー状態!?
ゲーム開始地点は誰もいない無人の星、あるのは求めて手に入れた生産特化のスキル――:DIY:。
はたして、俺はこのゲームで大車輪ができるのか!? (大切)
1話約1000文字です
01章――バトル無し・下準備回
02章――冒険の始まり・死に続ける
03章――『超越者』・騎士の国へ
04章――森の守護獣・イベント参加
05章――ダンジョン・未知との遭遇
06章──仙人の街・帝国の進撃
07章──強さを求めて・錬金の王
08章──魔族の侵略・魔王との邂逅
09章──匠天の証明・眠る機械龍
10章──東の果てへ・物ノ怪の巫女
11章──アンヤク・封じられし人形
12章──獣人の都・蔓延る闘争
13章──当千の試練・機械仕掛けの不死者
14章──天の集い・北の果て
15章──刀の王様・眠れる妖精
16章──腕輪祭り・悪鬼騒動
17章──幽源の世界・侵略者の侵蝕
18章──タコヤキ作り・幽魔と霊王
19章──剋服の試練・ギルド問題
20章──五州騒動・迷宮イベント
21章──VS戦乙女・就職活動
22章──休日開放・家族冒険
23章──千■万■・■■の主(予定)
タイトル通りになるのは二章以降となります、予めご了承を。
おっさんの神器はハズレではない
兎屋亀吉
ファンタジー
今日も元気に満員電車で通勤途中のおっさんは、突然異世界から召喚されてしまう。一緒に召喚された大勢の人々と共に、女神様から一人3つの神器をいただけることになったおっさん。はたしておっさんは何を選ぶのか。おっさんの選んだ神器の能力とは。
異世界召喚でクラスの勇者達よりも強い俺は無能として追放処刑されたので自由に旅をします
Dakurai
ファンタジー
クラスで授業していた不動無限は突如と教室が光に包み込まれ気がつくと異世界に召喚されてしまった。神による儀式でとある神によってのスキルを得たがスキルが強すぎてスキル無しと勘違いされ更にはクラスメイトと王女による思惑で追放処刑に会ってしまうしかし最強スキルと聖獣のカワウソによって難を逃れと思ったらクラスの女子中野蒼花がついてきた。
相棒のカワウソとクラスの中野蒼花そして異世界の仲間と共にこの世界を自由に旅をします。
現在、第三章フェレスト王国エルフ編
World of Fantasia
神代 コウ
ファンタジー
ゲームでファンタジーをするのではなく、人がファンタジーできる世界、それがWorld of Fantasia(ワールド オブ ファンタジア)通称WoF。
世界のアクティブユーザー数が3000万人を超える人気VR MMO RPG。
圧倒的な自由度と多彩なクラス、そして成長し続けるNPC達のAI技術。
そこにはまるでファンタジーの世界で、新たな人生を送っているかのような感覚にすらなる魅力がある。
現実の世界で迷い・躓き・無駄な時間を過ごしてきた慎(しん)はゲーム中、あるバグに遭遇し気絶してしまう。彼はゲームの世界と現実の世界を行き来できるようになっていた。
2つの世界を行き来できる人物を狙う者。現実の世界に現れるゲームのモンスター。
世界的人気作WoFに起きている問題を探る、ユーザー達のファンタジア、ここに開演。
パーティ追放が進化の条件?! チートジョブ『道化師』からの成り上がり。
荒井竜馬
ファンタジー
『第16回ファンタジー小説大賞』奨励賞受賞作品
あらすじ
勢いが凄いと話題のS級パーティ『黒龍の牙』。そのパーティに所属していた『道化師見習い』のアイクは突然パーティを追放されてしまう。
しかし、『道化師見習い』の進化条件がパーティから独立をすることだったアイクは、『道化師見習い』から『道化師』に進化する。
道化師としてのジョブを手に入れたアイクは、高いステータスと新たなスキルも手に入れた。
そして、見習いから独立したアイクの元には助手という女の子が現れたり、使い魔と契約をしたりして多くのクエストをこなしていくことに。
追放されて良かった。思わずそう思ってしまうような世界がアイクを待っていた。
成り上がりとざまぁ、後は異世界で少しゆっくりと。そんなファンタジー小説。
ヒロインは6話から登場します。
特殊部隊の俺が転生すると、目の前で絶世の美人母娘が犯されそうで助けたら、とんでもないヤンデレ貴族だった
なるとし
ファンタジー
鷹取晴翔(たかとりはると)は陸上自衛隊のとある特殊部隊に所属している。だが、ある日、訓練の途中、不慮の事故に遭い、異世界に転生することとなる。
特殊部隊で使っていた武器や防具などを召喚できる特殊能力を謎の存在から授かり、目を開けたら、絶世の美女とも呼ばれる母娘が男たちによって犯されそうになっていた。
武装状態の鷹取晴翔は、持ち前の優秀な身体能力と武器を使い、その母娘と敷地にいる使用人たちを救う。
だけど、その母と娘二人は、
とおおおおんでもないヤンデレだった……
第3回次世代ファンタジーカップに出すために一部を修正して投稿したものです。
家族に辺境追放された貴族少年、実は天職が《チート魔道具師》で内政無双をしていたら、有能な家臣領民が続々と移住してきて本家を超える国力に急成長
ハーーナ殿下
ファンタジー
貴族五男ライルは魔道具作りが好きな少年だったが、無理解な義理の家族に「攻撃魔法もろくに使えない無能者め!」と辺境に追放されてしまう。ライルは自分の力不足を嘆きつつ、魔物だらけの辺境の開拓に一人で着手する。
しかし家族の誰も知らなかった。実はライルが世界で一人だけの《チート魔道具師》の才能を持ち、規格外な魔道具で今まで領地を密かに繁栄させていたことを。彼の有能さを知る家臣領民は、ライルの領地に移住開始。人の良いライルは「やれやれ、仕方がないですね」と言いながらも内政無双で受け入れ、口コミで領民はどんどん増えて栄えていく。
これは魔道具作りが好きな少年が、亡国の王女やエルフ族長の娘、親を失った子どもたち、多くの困っている人を受け入れ助け、規格外の魔道具で大活躍。一方で追放した無能な本家は衰退していく物語である。
悪役貴族の四男に転生した俺は、怠惰で自由な生活がしたいので、自由気ままな冒険者生活(スローライフ)を始めたかった。
SOU 5月17日10作同時連載開始❗❗
ファンタジー
俺は何もしてないのに兄達のせいで悪役貴族扱いされているんだが……
アーノルドは名門貴族クローリー家の四男に転生した。家の掲げる独立独行の家訓のため、剣技に魔術果ては鍛冶師の技術を身に着けた。
そして15歳となった現在。アーノルドは、魔剣士を育成する教育機関に入学するのだが、親戚や上の兄達のせいで悪役扱いをされ、付いた渾名は【悪役公子】。
実家ではやりたくもない【付与魔術】をやらされ、学園に通っていても心の無い言葉を投げかけられる日々に嫌気がさした俺は、自由を求めて冒険者になる事にした。
剣術ではなく刀を打ち刀を使う彼は、憧れの自由と、美味いメシとスローライフを求めて、時に戦い。時にメシを食らい、時に剣を打つ。
アーノルドの第二の人生が幕を開ける。しかし、同級生で仲の悪いメイザース家の娘ミナに学園での態度が演技だと知られてしまい。アーノルドの理想の生活は、ハチャメチャなものになって行く。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる