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偽善者なしの迷宮創壊 六月目
偽善者なしのダンジョンイベント その08
しおりを挟むピンポンパンポーン
≪大変長らくお待たせしましたわ!
これより第二段階――踏破イベントを開催することを、ここに宣言いたしますわ!!≫
その声は、プレイヤー達にそう告げる。
≪貴方達のダンジョンの項目に、新たに踏破というボタンを追加いたしましたわ。
貴方達のダンジョンの難易度を振り分けさせていただきましたので、踏破のボタンを押しますと、一から十でダンジョンの難易度を選べるようになっていますわ。
貴方達の総合成績は、奪ったダンジョンコアの数とその難易度で判定しますので、あまり工夫のされていないダンジョンばかり踏破しても仕方ないですわよ。
早く始めろとの声も聞こえて来ますし……それでは、踏破イベント――開始ですわ!!≫
その声を聴き、プレイヤー達は動き出す。
~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
難易度十 偽・世界樹の迷宮
「何なんだよ……こりゃあ、一体」
男達は、自身見ている光景を疑った。
踏破のボタンで行けた、唯一の難易度十。
それを選んだ先にあったのは――
「――海……なのか?」
ザザーン、と心地良い音が耳に響く、視界全てに広がる大海であった。
「……確か、地形選択に海もあったよな?」
「あれは1m×1mに100DPも使うんだぞ! これだけの広さだったら……10万DPは軽く超えてるじゃねぇか!!」
「おいおい、そんなもんまで用意できる奴のダンジョンなんてどんだけなんだよ」
「難易度十……伊達じゃないな」
「逃げた方が良いんじゃねぇか?」
男の仲間達も、色々な意見を述べていく。
彼らは六人で行動をするパーティーだ。
実は撲滅イベント終了後、どこからか秘薬が大量に送られてくる――なんて経験もあるパーティーらしいのだが、今は関係無いことだろう。
「お、おい見てみろよ! あそこに橋があるぜ!」
ある男が指した先には、七色の橋が巨大なアーチを描いていた。
「まぁ、ここにいても仕方ないか。よし、一度橋の所まで行ってみるか!」
そして、男達は橋の端に向かった。
~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
難易度九 安全第一
「このダンジョン、罠ばっかりだね」
「……オブリ、せめてその罠に引っ掛かってから言いましょうね」
オブリとティンスの二人は、罠だらけなこのダンジョンを、足元も注意せずにひたすら進んでいた。
"安全第一"は名前とは裏腹に、安全な要素が全く無いレベルで罠が敷き詰められているダンジョンである……のだが。
「チートよね……このダンジョンアプリ」
「確か……ながらスマホ? それが問題なんだよね?」
「そっちも対策されてるじゃない」
ティンスは自身の"Wifone"をタップして、画面上にあった地図を立体化させる。
「――まさかの、3D機能付きじゃないの。しかも、対応する装備があれば頭にイメージが浮かべられるようになるって書いてあるみたいだし……」
「これでながらも解決だね」
「しかも、タップするだけで罠を開錠……って、完全に嫌がらせよね」
そう言いながらも、ティンスは罠マーカーが出現すると、開錠の意思を籠めながら指でそれをタップしていく。
すると彼女達がそこを通っても、罠が発動せずに沈黙を貫いた。
「おまけにダンジョンの詳細が丸判り……さすがはメルス様ですねっと」
「お兄ちゃんと一緒にいる為には、色々と頑張らないといけないね」
「……そうね」
二人はそうした会話を続けながら、着々とダンジョンを攻略していった。
~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
難易度九 災禍の奈落
「……フッ!」
『『『ギャアァァァァア!』』』
暗い地面の底でのプレイヤーとの戦闘を終えたユウは、"Xカリバー"を鞘に仕舞う。
"災禍の奈落"はPKギルド"殺る? 殺っちゃうの?"が作り上げたダンジョンだ。
階層は一層しかないのだが、入り口から底までがかなり深く、ユウ達の居る最深部には光が届いていない。
PKプレイヤー達は、闇に紛れて侵入者を狩る……筈だったのだが、自らが発光できるユウにその戦法は通用しなかった。
「喰らいなさい!」
『『『『ウギャアアァァァ!!』』』』
ユウが戦闘を終えた時、【思考詠唱】で大量の魔法を解き放ったアルカもまた、戦闘を終了した。
アルカも同様に、思考の一部を割いて光の生成や多重防壁の生成を行っている為、彼らの攻撃が通ることは無かった。
「お疲れさま、アルカ」
「ユウもでしょ?」
「ううん。彼らは凄い業値が高かったから、一回攻撃するだけで自滅していったよ。
アルカの方は、MPをかなり消費したんじゃないの?」
「私も違うわ。アイツの理不尽な[スキル共有]のお蔭様で、使った途端に直ぐ回復するわ……って、何よにやにやして」
「何でもないよ(ニマッ)」
「ユウ。今のアンタの顔は、ニコリって感じじゃなくて、ニマって感じだからね」
「酷ッ!!」
アルカが共有しているスキルに、(MP自然回復・極)や【自己再成】などがある。
MPとINTへの極振りによって固定砲台と呼ばれる程になったアルカに付与されたこれらスキルは、ただでさえ膨大な魔力量を更に高めるものとなった。
「アルカが楽しそうな顔をしていたから、少しからかっただけじゃん」
「え? 私、そんな顔してたの?」
「うんうん、僕も師匠のことを考えると少し楽しい気分に……って、何をしてるの?」
「チョットレンシュウヲネ」
「え、ちょ、ちょっと待って。今この場にPKプレイヤーはいないから!」
「ヘー、ソウナンダー」
「だからその大量の魔法を止めて!!」
この後、死に戻りしてきたPKプレイヤーに矛先を向けることで、ユウは何とか生き延びるのであった。
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メルス「海か~、あそこの設定は凝ったんだよな~」
レミル『そうなのですか?』
メルス「なんせ、スタート地点だからな。挑戦者が戦意なんて捨てて、リゾート気分を味わえるよう……誠心誠意創ったぞ。
あ、島から出れたら眷属で海巡りでもしてみるか。第一世界にも海はあるし、どっちの海が良いか訊いてみよう?」
レミル『……水着ですか?』
メルス「……あぁ、水着だ。ってなんで途中のセリフを読ませてくれなかったんだ?」
レミル『一部、彼女達のプライバシーに関わる箇所がありましたので』
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