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偽善者と終焉の島 前篇 六月目
偽善者と元英雄の選択 中篇
しおりを挟む夢現空間 闇の間
『ワタシハ、ヨッツメヲセンタクシマス』
どうやらヒーローさんは、俺なんかでは考えもつかない方法を思いついたらしい。
「ほう、面白いな。言ってみてくれ」
『エェ。キホンテキニハ、アナタノヒトツメノモノヲジクニシマス。デスガ、ワタシタチノコノカラダヲ、イチドジョウカシテホシイノデス』
「浄化って言ってもな~……俺は聖人じゃないから、少し荒っぽい方法しか取れないぞ」
昔なら【聖人】があったからチョチョイのチョイでできたが、今は眷属達の(聖氣)でしか浄化ができない……(神氣)を使うと体が発火して消滅するとか、血が沸騰して消滅するとか色々なパターンで死ぬ可能性があるとの報告がある(by眷属)。だから(神氣)は没なんだよな~。
さて、ヒーローさんの答えは――
『カマイマセン、モトヨリアキラメテイタモノデス、スコシデモソコニカノウセイガアルノナラ、ワタシハソコニカケマス』
わー、即答。いっそ清々しい程だよ。
「……ちなみにだが、どうしてそんな考えに至ったんだ? 体がそのままなら、ゾンビでも良くないか?」
『コノママダト、セイゼンニツカエタスキルガツカエナイモノデ。コマカイコトハ……セイコウシテカラデイイデスカ?』
「ん? まぁ、別に良いが……。とりあえず他のみんなも連れて、礼拝堂に移動するか」
『ハイ』
「("不可視の手")……どうした? 早くついて来い」
『……ア、ハイ』
俺達は宙に浮かんだ三人と共に、礼拝堂へと移動した。
~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
礼拝堂
裁判を行われた時にも一度訪れたのだが、あの時と変わらず神々しい場所である。ここに来たのは(聖氣)を使うのに一番最適な場所だと思ったからだ……神聖そうだろ?
「じゃあ、早速作業を行うから、意識を落とすぞ。目が覚めた時には浄化だけは成功させておくから、リハビリは自分でやってくれ」
『……ミンナヲ、タノミマス』
「あぁ、偽善者に任せとけ」
『ソレデマカセラレルヒトナンテ、アマリイマセンヨ』
ヒーローさんはそう言って笑っていた。俺はそんなヒーローさんに触れ、その能力を発動させる――
(――"奪魂掌")
それを発動させると、さっきまで動いていたヒーローさんの体から力が一瞬で抜け、バタッと地面に倒れ伏した。
俺はその作業を三回繰り返した。
そして手元には、八つの玉が残った。これは彼らの魂を物体化した物だ。
"奪魂掌"は、魂を抽出するスキルである。
今回の"奪魂掌"で取ったのは、彼らの魂が四つとネロが支配する為に使った四つの擬似魂魄だ。
それの説明はまた別の機会にしよう。
俺は八つの玉を安全な場所に移し、作業を行う(魂はさすがに空間に仕舞えない。仕舞う為のスキルも必要だな)。
「――それじゃあ、早速始めるとしますか」
俺は[スキル共有]から(聖氣)(霊化)(霊能)
(保存)を選んで共有し、並べておいた彼らの前に立つ。
「それじゃあ最初は――"霊化""霊能"」
すると、俺の体は半透明になり、意識した物体を透過するようになった。
そして、ヒーローさんの体の中に手を突っ込み、体の中を巡る様々な力の通り道を強化していく……いやさぁ、試してみたいことがあるんだよ。
例えば毛細血管、それを発達させると持久力が向上するというだろう?
ならば他の部分を強化しても、何かしらの変化があるのではないか? というのが、今回の行動に至った理由である。
……と言っても、(霊化)で直接触診して悪い所を見つけ、(霊能)を使ってそこを改善、強化しているだけだぞ。
(聖氣)ですら、耐えられない者にはキツイ苦痛が起こる。いくら元英雄達とはいえ、魔に堕ちた状態ではどうなるか分からない。
そこで、事前に体を強化しておいて、できるだけ耐えられるようにしているのだ。
「よし、ここまでで――(保存)だな」
グラから借りたスキル(保存)は、生物でもなんでも時間を止めて保存可能なスキルだ。
連続して作業を行っていると、MPやAPが切れるので、一人ずつ保存を駆使してやっていこうという考えでいるぞ。
さて、次はソードマスターさんだ。
全員の調整作業後
~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
ソードマスターさんは直ぐにできたが、残り二人は女性だったからな。より一層丁寧に行っていったぞ。
「さって、最後の作業だな」
俺は"天魔の創糸"を指に装備し、全員に繋げていく。ここからは一気にやっていこう。
「――聖氣注入っと」
すると、彼らの体の様子が変化する。
突然ビクッとなると、そのままガクガクと震え始めたのだ。
多分だが、(聖氣)への拒否反応なんだろうな。さっきも言ったが、例え昔は聖人みたいな人だったとしても、今は操られていたアンデッドだ。体の中には負の魔素――ミヌスとやらが、だいぶ溜まっていたのだろう。聖なる力を受けてこうなるのも仕方が無いのかも知れない。
だけど、俺にできることなんて……。
「――お前ら、自分の魂の強さを分かっているだろう! 耐えろ、自分の魂の器であり続けるんだ!!」
俺には、そんな励まししかできなかった。
言霊があると信じ、彼らの肉体が拒絶を耐えることを願うだけ……本当俺は無力だな。
そんな時間が一時間も続いた。
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