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偽善者と終焉の島 前篇 六月目

偽善者と『不死魔王』 その04

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『ハッハッハ! どうしたのだ、お前のその魂の輝きを見せてくれるのではないのか!!』

「……まぁ、確かにそれっぽいことを言った気はするが……」

『ならば、さっさと吾に見せてみろ。その為の相手は用意しているのだ!』


 あ、どうも、メルスです。
 終焉の島ここの住人って何かを証明する時、戦闘でしかそれを証明できないのでしょうか。それをなんとかする為に【拈華微笑】を入手した筈なのに……あんまり意味なかったみたい。
 この島の住人が全員ティルみたいに心が読めるヤツだったら、すぐに分かって貰えたんでしょうか?

 俺は現在、ネロマンテの操る死者達と戦闘している。前に倒した(ネロマンテ曰く)凡庸と違い、(ネロマンテ曰く)過去の英傑達という強者だ。実際、剣で舞っているだけでは勝てず、少々時間が掛かっているぞ。

 ……さて、どうしてこうなったか。時間を遡って思い出してみよう。


~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~


 俺を見ていたそいつは、黒いローブをスッポリ被った、いかにも怪しい奴だった。
 俺はそいつがいる城の元庭(燃えました)に足を踏み入れる。


『お前か、吾の城に火を放ったのは』

「あぁそうだ。お前が死者を操って、魔法を撃ってきたからな。冒涜された死者の分も、俺がお前に攻撃したって訳だ」

『……あぁ、あの凡庸共か。あまりに輝きが弱いから、探索用にしておったのだが……どうやら正解だったようだな』

「……どういうことだ」


 こいつは、人の命を何だと思っているのだろうか。輝きが弱い? それが何を示していることだかは知らないが、人の価値ってのはそんな輝き云々で決まる物じゃないだろう。


『おっと、申し遅れた。吾の名前はネロマンテ・ガイスト。ネクロマンサーにして魂魄の研究家――【不死魔王】だ』

「……魔王」


 魔王って言うとあれか、転職リストに載ってた【~の魔王】とか、二つ名に記載されてる"試練の魔王"とかのあの魔王か……最近神に色々された所為で、あんまりインパクトが足りないな~。
 俺がそんなことを考えてるとは知らないネロマンテは、感心したように頷いている。


『……おっと。お前が誰だかは知らないが、やはり魔王という言葉は、今でも通じるようだな。吾もこう見えて色々とやっていてな、吾を退治しに来た勇者達を追い返したことも会ったぞ……あの勇者の輝きは、凡庸とは格別だった』


 そうして、再びうんうんと頷いている。
 本当に何なのだろうか、輝きとは。
 それにしても勇者か~。変態勇者シャインしか身近にいないから、そこまで凄く感じないのは何故だろうか。


「なぁ、輝きって何なんだ?」

『ほぅ。それに気づくとは中々やるな……お前、名前は』

「……メルスだ」

『ならばメルスよく聞け。吾が言う輝き、それ即ち魂魄のことである』

「魂魄……星辰アストラル体のことか」


 そういえば、自己紹介の時に言っていた気がするな。図書館で本を漁っていた時に見たので覚えているぞ。
 星辰体とは、物質体や精神体でも無い第三の体……特殊なスキルでしか干渉する事の出来ない次元に存在するものだ。スキルを溜めこむ器とも、意識を司る部分とも言われているが、最も考えられているのは、ネロマンテの言っている魂魄という考えだろう(なら、最初から魂魄の説明をしろとか言うなよ)。
 魂魄は人間の霊魂を意味する言葉だが、この世界においては、生き物のスキルを刻んである部分という意味らしい。骨だけのスケルトンや体の無いゴーストがスキルを使えるのは、魂がスキルを記録しているからという理由だ。
 こちらの世界では、覚えられるスキルに限界があるという考えがある。それはその者が持つ魂魄に、それ以上のスキルを刻むことができなくなった……と考えられたらしいぞ。


 おっと話が逸れたな。
 つまり魂魄とは、その者が持つスキルを覚える為の器だな。器が大きければ大きい程、強力なスキルを覚えられる。そんな器を持つ者は、魂魄の輝きが凄いと考えているのだろうな。


『おぉっ! 分かるのか! 中々理解してくれる者が少ない研究でな、吾が魂魄と問うても首を傾げる者ばかりで吾も少し寂しかったのだ』

「まぁ、俺も(魂魄強化)が無ければ良く分からなかったしn『メルス! お前今、何と言った!!』……こ、(魂魄強化)だが」

『おぉ! そんなスキルがあったのか! (魂魄強化)とな……なんと素晴らしい響きだ!』


 ネロマンテはそう言って、大声を上げている。顔は見えないが、とても喜んでいるみたいだな……よく視ると、ネロマンテの黒ロープの奥から二つの緑炎が薄らと見える。


『……確かにお前の輝きは、勇者と同じくらい……いや、それ以上の物だな』

「そ、そうなのか」


 まぁ、魂の質が向上したと称号でも書かれてたしな。
 異界の魂の質が高いからこそ、このAFOはプレイヤーを招いたのかもな。スキルを大量に持てるプレイヤーが来れば、それこそ全てが可能になるんだしな。


『ち、ちなみにだが、その(魂魄強化)の効果は何なのだ?』


 とりあえず、前に覚えた(魂魄強化)の説明文をそのまま伝える。


『な、なんと! 格を強化する!? そ、それは凄い。メルス、もし良かったらその輝きをじっくりと見せて貰っても良いか?』


 さっきの目で視るということか? ……別に実害も無いみたいだし、まぁ良いか。


「構わないぞ。俺もどれくらいの物なのか、少し気になっていたしな」

『そうか、では早速準備するから少々待っていろ』


 ――それからどうなったかは、もう予想が付いているだろう。


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