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偽善者と終焉の島 前篇 六月目
偽善者と『不死魔王』 その01
しおりを挟む「グー、行っても良いよな?」
《あぁ、問題無いよ。今回はちゃんと僕がいるからね》
うん、グーからも正式に許可が出たし早速行くとしますか。一度地面に降りてから、結界内に侵入した。
~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
俺が足を踏み入れた先にあったのは、戦場跡地の様な風景だった。あらゆる種類の古びた武器が地面に散らばっていたり、魔法による影響なのかかなりの大きさで抉れているクレーターのような凹み等、そりゃーまぁ、中世の戦争に魔法が混ざったらこんな感じってのが目の前に広がっていた。
「だけど……あれは普通無いよな~」
《そうだね……だけどあれこそが、ファンタジーって感じだと思うよ》
「そうなんだけどな~」
俺の視界には、戦場跡地風の地形の他にもう一つ特徴的な物が見える――
「――完っ全に魔王城じゃないか!!」
《まぁ、マスターも天空の城を造ったから、同類なんだがね》
「あれはパクっただけだろ、しかもあれはそこの城みたいに邪悪そうなオーラは放って無いわッ!!」
ビシッと城を指してグーにそれを説明してみる。遠くからでも視える謎のオーラ、本物とはこういうことかと思えますよ。
《でも、城其の物の戦闘力は絶対にマスターの城の方が上だと思うけど》
「平和なあの世界じゃ使わないよ。あれを使う機会があったとしても、民達が自分達の力だけでどうにかできると俺は思いたい」
どの世界にも眷属達は行けるようになっている。民達は眷属と力を合わせて苦難困難に立ち向かえば、大抵のことはできると思う。
何せ……
《マスターを信仰しているからかい?》
「……まぁ、うん、それもあるな」
前に迷宮を散策した時に、戦闘中の民を見たことがあるだろう。あれを全国民ができると考えるとどうだろうか? 俺に祈りながら敵を殲滅していく姿が、目に浮かぶんだよ……それってもう狂信者じゃね?
「……よっしゃー! どんどん行こぉお!!」
《……適当だね》
そのままの気分に浸らせてくれよ。
そんな文句を考えながらも、再び(天駆)を使って城に向かっていく。
~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
《マスター、魔法の反応が》
「へ? マジかよ」
地面を見下ろしてみると、様々な色の光が俺に飛んで来ているのが見える。
……へっ、綺麗な花火だな。
「あ、でもこれなら試すのにちょうど良いかもな(――"抑力の霧")」
俺はMPを10000程注ぎ込んで、先程入手した魔法を発動させる。すると体から霧が発生していき、上空に広がって行く。
「チートやな~」
《そこまで焦る必要は無かったみたいだね》
魔法は霧を通過していくことは無く、こちら側には始めから何も来なかったかのような平穏だけが存在している。
「……いや、全然焦って無かっただろう。いつも通りだったぞ、さっきの報告」
《そうでも無いさ。僕だって内心では、ビックリしていたよ》
「全然変わって無かったんだが……まぁ、良いとするか」
元があの人だしな。そういった抑揚を抑えるのも簡単なのかな?
そんな疑問を抱きながらも、霧の先に見える魔法を撃ってきた者達を(遠視)を使い確認する。
そこには、体の肉が剥げた人や骨等の既に亡くなっていると思われる者達の姿が確認できた。
「グー、ここから解析できるか?」
《……難しいね。あれが自然発生型なのか人為型なのかも、ここからじゃ分からないよ。マスター、もう少し近付けるかい?》
アンデッドが発生する為には、大まかに言えば二パターンの方法が存在する。
一つ目は自然発生型、周囲の魔素を死体が吸い上げて魔物化する方法だ。
こちらの方法の場合、生まれた魔物に自我は殆ど無く、自分と同じ存在以外の者全てに襲い掛かるぞ。
二つ目は人為型、何者かのスキルによって魔物化されるパターンだ。例を挙げるなら、【死霊魔法】系だな。
死に関する魔素を死体に流し込んで、即席で魔物化させる。より新鮮な状態で魔物化させることで、生前の意識をある程度持った魔物になる。それはつまり、戦闘時に過去に覚えた技術を使えると言うことでもある。
……まぁ、スキルを使うとなるとそれはまた面倒な話になるから、今は置いておくとしよう。
グーにはせめて眼下に見えるアンデッドがどちらかを確認してほしかったのだが、高度が高過ぎてここからは無理だったようだ。
「了解……面倒だし、少し学べるところが無いか、確かめてみる……ドゥル、黒木刀を出してくれ」
《仰せのままに、我が王――転送します》
俺の右手に、かつてシャインと闘った時に使った黒木刀が出現する。俺はそれを握りしめながら、死体達が集まっている場所へ一気に移動する。
(――"転移眼")
視界が変わったその瞬間、俺は死体達に視線を向けながら、黒木刀に魔力を注ぎ武技を発動する。
(――"剣舞(ブレイドダンス)")
舞を踊るように剣を振り回していると、辺りの死体はそれに対応する暇も無く黒木刀に吹き飛ばされていく。俺はただ、頭の中でイメージしている音楽に合わせて適当に踊っているだけなのだが、(戦舞術)はあらゆる舞に補正が入る。
流している音楽も終局に入っていく。俺はだんだんとテンポアップしていく音楽に合わせて、一気に死体達に黒木刀を当て続けた。
「これで、フィニッシュだ!」
音楽が終わると周りには、地面に這い蹲る死体達しか存在しなくなった。
《マスター、どうやら人為型みたいだよ》
「……となると、下手人は絶対にあそこにいるよな」
《まぁ、あれだけ目立っているんだ。ほぼ其処にいるだろうね》
俺はグーの報告を聞くと、周りの死体達が起き上がって来る前に再び(天駆)を使い、空に駆け上がる(吹き飛ばしていただけで、潰してはいない。この後の展開によっては偽善者様が救済するかもしれなかったしな)。
「なら会ってみることにするか、ここの空間の強者さんに!」
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