276 / 2,518
偽善者と終焉の島 前篇 六月目
偽善者と『不死魔王』 その01
しおりを挟む「グー、行っても良いよな?」
《あぁ、問題無いよ。今回はちゃんと僕がいるからね》
うん、グーからも正式に許可が出たし早速行くとしますか。一度地面に降りてから、結界内に侵入した。
~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
俺が足を踏み入れた先にあったのは、戦場跡地の様な風景だった。あらゆる種類の古びた武器が地面に散らばっていたり、魔法による影響なのかかなりの大きさで抉れているクレーターのような凹み等、そりゃーまぁ、中世の戦争に魔法が混ざったらこんな感じってのが目の前に広がっていた。
「だけど……あれは普通無いよな~」
《そうだね……だけどあれこそが、ファンタジーって感じだと思うよ》
「そうなんだけどな~」
俺の視界には、戦場跡地風の地形の他にもう一つ特徴的な物が見える――
「――完っ全に魔王城じゃないか!!」
《まぁ、マスターも天空の城を造ったから、同類なんだがね》
「あれはパクっただけだろ、しかもあれはそこの城みたいに邪悪そうなオーラは放って無いわッ!!」
ビシッと城を指してグーにそれを説明してみる。遠くからでも視える謎のオーラ、本物とはこういうことかと思えますよ。
《でも、城其の物の戦闘力は絶対にマスターの城の方が上だと思うけど》
「平和なあの世界じゃ使わないよ。あれを使う機会があったとしても、民達が自分達の力だけでどうにかできると俺は思いたい」
どの世界にも眷属達は行けるようになっている。民達は眷属と力を合わせて苦難困難に立ち向かえば、大抵のことはできると思う。
何せ……
《マスターを信仰しているからかい?》
「……まぁ、うん、それもあるな」
前に迷宮を散策した時に、戦闘中の民を見たことがあるだろう。あれを全国民ができると考えるとどうだろうか? 俺に祈りながら敵を殲滅していく姿が、目に浮かぶんだよ……それってもう狂信者じゃね?
「……よっしゃー! どんどん行こぉお!!」
《……適当だね》
そのままの気分に浸らせてくれよ。
そんな文句を考えながらも、再び(天駆)を使って城に向かっていく。
~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
《マスター、魔法の反応が》
「へ? マジかよ」
地面を見下ろしてみると、様々な色の光が俺に飛んで来ているのが見える。
……へっ、綺麗な花火だな。
「あ、でもこれなら試すのにちょうど良いかもな(――"抑力の霧")」
俺はMPを10000程注ぎ込んで、先程入手した魔法を発動させる。すると体から霧が発生していき、上空に広がって行く。
「チートやな~」
《そこまで焦る必要は無かったみたいだね》
魔法は霧を通過していくことは無く、こちら側には始めから何も来なかったかのような平穏だけが存在している。
「……いや、全然焦って無かっただろう。いつも通りだったぞ、さっきの報告」
《そうでも無いさ。僕だって内心では、ビックリしていたよ》
「全然変わって無かったんだが……まぁ、良いとするか」
元があの人だしな。そういった抑揚を抑えるのも簡単なのかな?
そんな疑問を抱きながらも、霧の先に見える魔法を撃ってきた者達を(遠視)を使い確認する。
そこには、体の肉が剥げた人や骨等の既に亡くなっていると思われる者達の姿が確認できた。
「グー、ここから解析できるか?」
《……難しいね。あれが自然発生型なのか人為型なのかも、ここからじゃ分からないよ。マスター、もう少し近付けるかい?》
アンデッドが発生する為には、大まかに言えば二パターンの方法が存在する。
一つ目は自然発生型、周囲の魔素を死体が吸い上げて魔物化する方法だ。
こちらの方法の場合、生まれた魔物に自我は殆ど無く、自分と同じ存在以外の者全てに襲い掛かるぞ。
二つ目は人為型、何者かのスキルによって魔物化されるパターンだ。例を挙げるなら、【死霊魔法】系だな。
死に関する魔素を死体に流し込んで、即席で魔物化させる。より新鮮な状態で魔物化させることで、生前の意識をある程度持った魔物になる。それはつまり、戦闘時に過去に覚えた技術を使えると言うことでもある。
……まぁ、スキルを使うとなるとそれはまた面倒な話になるから、今は置いておくとしよう。
グーにはせめて眼下に見えるアンデッドがどちらかを確認してほしかったのだが、高度が高過ぎてここからは無理だったようだ。
「了解……面倒だし、少し学べるところが無いか、確かめてみる……ドゥル、黒木刀を出してくれ」
《仰せのままに、我が王――転送します》
俺の右手に、かつてシャインと闘った時に使った黒木刀が出現する。俺はそれを握りしめながら、死体達が集まっている場所へ一気に移動する。
(――"転移眼")
視界が変わったその瞬間、俺は死体達に視線を向けながら、黒木刀に魔力を注ぎ武技を発動する。
(――"剣舞(ブレイドダンス)")
舞を踊るように剣を振り回していると、辺りの死体はそれに対応する暇も無く黒木刀に吹き飛ばされていく。俺はただ、頭の中でイメージしている音楽に合わせて適当に踊っているだけなのだが、(戦舞術)はあらゆる舞に補正が入る。
流している音楽も終局に入っていく。俺はだんだんとテンポアップしていく音楽に合わせて、一気に死体達に黒木刀を当て続けた。
「これで、フィニッシュだ!」
音楽が終わると周りには、地面に這い蹲る死体達しか存在しなくなった。
《マスター、どうやら人為型みたいだよ》
「……となると、下手人は絶対にあそこにいるよな」
《まぁ、あれだけ目立っているんだ。ほぼ其処にいるだろうね》
俺はグーの報告を聞くと、周りの死体達が起き上がって来る前に再び(天駆)を使い、空に駆け上がる(吹き飛ばしていただけで、潰してはいない。この後の展開によっては偽善者様が救済するかもしれなかったしな)。
「なら会ってみることにするか、ここの空間の強者さんに!」
0
お気に入りに追加
510
あなたにおすすめの小説
幼なじみ三人が勇者に魅了されちゃって寝盗られるんだけど数年後勇者が死んで正気に戻った幼なじみ達がめちゃくちゃ後悔する話
妄想屋さん
ファンタジー
『元彼?冗談でしょ?僕はもうあんなのもうどうでもいいよ!』
『ええ、アタシはあなたに愛して欲しい。あんなゴミもう知らないわ!』
『ええ!そうですとも!だから早く私にも――』
大切な三人の仲間を勇者に〈魅了〉で奪い取られて絶望した主人公と、〈魅了〉から解放されて今までの自分たちの行いに絶望するヒロイン達の話。
DPO~拳士は不遇職だけど武術の心得があれば問題ないよね?
破滅
ファンタジー
2180年1月14日DPOドリームポッシビリティーオンラインという完全没入型VRMMORPGが発売された。
そのゲームは五感を完全に再現し広大なフィールドと高度なグラフィック現実としか思えないほどリアルを追求したゲームであった。
無限に存在する職業やスキルそれはキャラクター1人1人が自分に合ったものを選んで始めることができる
そんな中、神崎翔は不遇職と言われる拳士を選んでDPOを始めた…
表紙のイラストを書いてくれたそらはさんと
イラストのurlになります
作品へのリンク(https://www.pixiv.net/member_illust.php?mode=medium&illust_id=43088028)
虚弱生産士は今日も死ぬ ―小さな望みは世界を救いました―
山田 武
ファンタジー
今よりも科学が発達した世界、そんな世界にVRMMOが登場した。
Every Holiday Online 休みを謳歌できるこのゲームを、俺たち家族全員が始めることになった。
最初のチュートリアルの時、俺は一つの願いを言った――そしたらステータスは最弱、スキルの大半はエラー状態!?
ゲーム開始地点は誰もいない無人の星、あるのは求めて手に入れた生産特化のスキル――:DIY:。
はたして、俺はこのゲームで大車輪ができるのか!? (大切)
1話約1000文字です
01章――バトル無し・下準備回
02章――冒険の始まり・死に続ける
03章――『超越者』・騎士の国へ
04章――森の守護獣・イベント参加
05章――ダンジョン・未知との遭遇
06章──仙人の街・帝国の進撃
07章──強さを求めて・錬金の王
08章──魔族の侵略・魔王との邂逅
09章──匠天の証明・眠る機械龍
10章──東の果てへ・物ノ怪の巫女
11章──アンヤク・封じられし人形
12章──獣人の都・蔓延る闘争
13章──当千の試練・機械仕掛けの不死者
14章──天の集い・北の果て
15章──刀の王様・眠れる妖精
16章──腕輪祭り・悪鬼騒動
17章──幽源の世界・侵略者の侵蝕
18章──タコヤキ作り・幽魔と霊王
19章──剋服の試練・ギルド問題
20章──五州騒動・迷宮イベント
21章──VS戦乙女・就職活動
22章──休日開放・家族冒険
23章──千■万■・■■の主(予定)
タイトル通りになるのは二章以降となります、予めご了承を。
モノ作りに没頭していたら、いつの間にかトッププレイヤーになっていた件
こばやん2号
ファンタジー
高校一年生の夏休み、既に宿題を終えた山田彰(やまだあきら)は、美人で巨乳な幼馴染の森杉保奈美(もりすぎほなみ)にとあるゲームを一緒にやらないかと誘われる。
だが、あるトラウマから彼女と一緒にゲームをすることを断った彰だったが、そのゲームが自分の好きなクラフト系のゲームであることに気付いた。
好きなジャンルのゲームという誘惑に勝てず、保奈美には内緒でゲームを始めてみると、あれよあれよという間にトッププレイヤーとして認知されてしまっていた。
これは、ずっと一人でプレイしてきたクラフト系ゲーマーが、多人数参加型のオンラインゲームに参加した結果どうなるのかと描いた無自覚系やらかしVRMMO物語である。
※更新頻度は不定期ですが、よければどうぞ
VRMMO~鍛治師で最強になってみた!?
ナイム
ファンタジー
ある日、友人から進められ最新フルダイブゲーム『アンリミテッド・ワールド』を始めた進藤 渚
そんな彼が友人たちや、ゲーム内で知り合った人たちと協力しながら自由気ままに過ごしていると…気がつくと最強と呼ばれるうちの一人になっていた!?
分析スキルで美少女たちの恥ずかしい秘密が見えちゃう異世界生活
SenY
ファンタジー
"分析"スキルを持って異世界に転生した主人公は、相手の力量を正確に見極めて勝てる相手にだけ確実に勝つスタイルで短期間に一財を為すことに成功する。
クエスト報酬で豪邸を手に入れたはいいものの一人で暮らすには広すぎると悩んでいた主人公。そんな彼が友人の勧めで奴隷市場を訪れ、記憶喪失の美少女奴隷ルナを購入したことから、物語は動き始める。
これまで危ない敵から逃げたり弱そうな敵をボコるのにばかり"分析"を活用していた主人公が、そのスキルを美少女の恥ずかしい秘密を覗くことにも使い始めるちょっとエッチなハーレム系ラブコメ。
女神様から同情された結果こうなった
回復師
ファンタジー
どうやら女神の大ミスで学園ごと異世界に召喚されたらしい。本来は勇者になる人物を一人召喚するはずだったのを女神がミスったのだ。しかも召喚した場所がオークの巣の近く、年頃の少女が目の前にいきなり大量に現れ色めき立つオーク達。俺は妹を守る為に、女神様から貰ったスキルで生き残るべく思考した。
ヒューマンテイム ~人間を奴隷化するスキルを使って、俺は王妃の体を手に入れる~
三浦裕
ファンタジー
【ヒューマンテイム】
人間を洗脳し、意のままに操るスキル。
非常に希少なスキルで、使い手は史上3人程度しか存在しない。
「ヒューマンテイムの力を使えば、俺はどんな人間だって意のままに操れる。あの美しい王妃に、ベッドで腰を振らせる事だって」
禁断のスキル【ヒューマンテイム】の力に目覚めた少年リュートは、その力を立身出世のために悪用する。
商人を操って富を得たり、
領主を操って権力を手にしたり、
貴族の女を操って、次々子を産ませたり。
リュートの最終目標は『王妃の胎に子種を仕込み、自らの子孫を王にする事』
王家に近づくためには、出世を重ねて国の英雄にまで上り詰める必要がある。
邪悪なスキルで王家乗っ取りを目指すリュートの、ダーク成り上がり譚!
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる