上 下
272 / 2,519
偽善者と終焉の島 前篇 六月目

偽善者と読書

しおりを挟む


図書館


 朝飯を食べ終えた後、俺は図書館にやって来ていた。本当なら、自室で引き籠っていたかったのだが……眷属達全員に却下された為に、しかたなく別のことを行うことになる。
 誰も俺なんか見たくないんだし、引き籠らせてくれたって良いじゃないか。


 俺がここに来たのは、少し試してみたいことがあったからだ。
 前にも言ったが、図書館内には今までの鑑定・解析結果や戦闘経験、ありとあらゆる情報が本の形状で纏められている。


 例を挙げてみよう。
 図書館にはグーが解析した魔物のデータを纏めた本や、レンが行ったダンジョン機能の使用による世界への干渉を纏めた本、そしてフェニの死の体験そのものを纏めた本などがある。
 どれもこれも一般のプレイヤーが読んだら発狂しそうなことが書いてあるような本だ。特に最後の本なんて、凄い本だぞ。
 フェニの本――"万死一生"は、開いた者が彼女の死を追体験できるという機能がある。
 フェニがこちらに来たある日に頼んで創って貰ったのだが、禁書認定一直線だったな。
 俺はこれを、精神的苦痛(物理?)に対する耐性を付ける為に頼んだのだが……まさか百%の再現度で、しかも肉体的にも苦痛を伴う機能になるとは思ってもいなかった。
 お蔭で、初めて使った時に思いっきり叫んでしまったよ……フェニ、良くもまぁあれを快楽に変えてるよな。俺はドMにはなれないみたいだ。


閑話休題罰ゲームに最適


 そんな本のことは置いておくとして、俺の目的だったな……簡単に言うと、図書館にある本を全て制覇するって所か?
 【完全記憶】があるので覚えれば覚える程強くなれる。しかも【深強睡眠】や<澄心体認>も働くので、理解すれば理解する程俺は強くなれる。戦闘面で強くなれないなら、今度は知識面で強くなれば良い。そんな安直な考えでやってきた。
 まぁ、かなり本があるからな。把握しているだけでも、大体……1000冊ぐらいあるぞ。
 だけどだいじょーぶ。アレがあるからおーるおーけー。

(――"不可視の手")

 【怠惰】な俺の代わりに働いてくれる勤勉な手を召喚し、本を集めさせる。最近何故か大きくなった図書館の、俺でも手が届かないような場所にある本であろうと――どこまでも伸びる便利な手は取って来てくれる。
 そして、一気に集めさせた本を手に捲らせて、その本を元の場所に戻す。
 そんな作業を何度か続ければ何れ終わるだろう……さぁて、どれくらいで終わるかな?



読んだ本の一部を記載
~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~

・リーン国の全て 記載者:リョク
 今のリーン国に至るまであったできごとや問題やその解決法、国民の意見などを記載。基本的にリョクのメルスを称える言葉でいっぱいだった。

・学校教材 持ち主:フーラ・フーリ
 リーンに存在する学校で使われている勉強教材。地球における小学生レベルの知識は勿論のこと、ダンジョン学や魔物学、生産学を分かりやすく纏めてある。

・(AFO版)童話集 記載者:レン
 レンがDPで交換した集めた資料を元に、考察・推測した物を纏めた。クソ女神への対策も考えて頼んだ物だ。基本的には地球の物とあまり変わらない内容であったが、一部の名称が異なっていたり、魔法が出てきたりと変化もある。最もなのは、神が出てくるところだ……眠り姫もあった。

・魔術練習 基礎編 記載者:アン
 魔術士であるアンが自身の魔術を解析して理論を書いた物。魔法と違い、最初のプログラムは自身で行わなければいけない為、上級者向け……それなのに基礎って。

・スキル辞典 記載者:グー
 スキルの習得条件や発動する内容。複数使用による効率的な威力上昇方法などを纏めてある。他にも、スキルのレア度やスキルという概念そのものへの考察も記されている。

         ・
         ・
         ・

~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~


 ――だいぶ読んだ気がする。
 少し休憩しようと周りを見てみると、本が空を浮かび、様々な所を行ったり来たりしている光景が見受けられる。
 そんな幻想的な景色に、一人の少女が割り込んで入る。


『――見つけましたよメル様。態々気配を隠す程、わたし達に見つけられたくなかったのですか?』

「えぇ。アンだって、自分がショタ化しているのを、他の眷属達に見られたいと思う?」

『……確かに、それは嫌ですね』


 その姿をイメージしたのか、アンの顔に不快感を表す仕草が見受けられる……淡紅色に暗い輝きを放つレ○プ目のハイライトが、より暗くなることだぞ。


「……で、どうして探してたの? 時間はそれなりに作っていた筈だけれど」

『そんな時間加速系の魔法やスキルを、ふんだんに使えるのはメル様ぐらいですよ』

「いいえ、絶対にいると思うの。だって、そういうのが可能だったからこそ、神代魔法が昔、バンバン使われてたんだから」

『バンバンって、今日日聞きませんね』


 いや、結構使われてるからね。バンバンなシューティングとかいうゲームもあったみたいなんだし。


「はいはい、さっさと本題を言う。言わないなら……」

『分かってますよ。メル様、貴方には――』


 アンは一度溜めてから、こう言ってきた。


『――一緒に浴室に入って貰います』


しおりを挟む
感想 13

あなたにおすすめの小説

パーティ追放が進化の条件?! チートジョブ『道化師』からの成り上がり。

荒井竜馬
ファンタジー
『第16回ファンタジー小説大賞』奨励賞受賞作品 あらすじ  勢いが凄いと話題のS級パーティ『黒龍の牙』。そのパーティに所属していた『道化師見習い』のアイクは突然パーティを追放されてしまう。  しかし、『道化師見習い』の進化条件がパーティから独立をすることだったアイクは、『道化師見習い』から『道化師』に進化する。  道化師としてのジョブを手に入れたアイクは、高いステータスと新たなスキルも手に入れた。  そして、見習いから独立したアイクの元には助手という女の子が現れたり、使い魔と契約をしたりして多くのクエストをこなしていくことに。  追放されて良かった。思わずそう思ってしまうような世界がアイクを待っていた。  成り上がりとざまぁ、後は異世界で少しゆっくりと。そんなファンタジー小説。  ヒロインは6話から登場します。

World of Fantasia

神代 コウ
ファンタジー
ゲームでファンタジーをするのではなく、人がファンタジーできる世界、それがWorld of Fantasia(ワールド オブ ファンタジア)通称WoF。 世界のアクティブユーザー数が3000万人を超える人気VR MMO RPG。 圧倒的な自由度と多彩なクラス、そして成長し続けるNPC達のAI技術。 そこにはまるでファンタジーの世界で、新たな人生を送っているかのような感覚にすらなる魅力がある。 現実の世界で迷い・躓き・無駄な時間を過ごしてきた慎(しん)はゲーム中、あるバグに遭遇し気絶してしまう。彼はゲームの世界と現実の世界を行き来できるようになっていた。 2つの世界を行き来できる人物を狙う者。現実の世界に現れるゲームのモンスター。 世界的人気作WoFに起きている問題を探る、ユーザー達のファンタジア、ここに開演。

特殊部隊の俺が転生すると、目の前で絶世の美人母娘が犯されそうで助けたら、とんでもないヤンデレ貴族だった

なるとし
ファンタジー
 鷹取晴翔(たかとりはると)は陸上自衛隊のとある特殊部隊に所属している。だが、ある日、訓練の途中、不慮の事故に遭い、異世界に転生することとなる。  特殊部隊で使っていた武器や防具などを召喚できる特殊能力を謎の存在から授かり、目を開けたら、絶世の美女とも呼ばれる母娘が男たちによって犯されそうになっていた。  武装状態の鷹取晴翔は、持ち前の優秀な身体能力と武器を使い、その母娘と敷地にいる使用人たちを救う。  だけど、その母と娘二人は、    とおおおおんでもないヤンデレだった…… 第3回次世代ファンタジーカップに出すために一部を修正して投稿したものです。

虚弱生産士は今日も死ぬ ―遊戯の世界で満喫中―

山田 武
ファンタジー
今よりも科学が発達した世界、そんな世界にVRMMOが登場した。 Every Holiday Online 休みを謳歌できるこのゲームを、俺たち家族全員が始めることになった。 最初のチュートリアルの時、俺は一つの願いを言った――そしたらステータスは最弱、スキルの大半はエラー状態!? ゲーム開始地点は誰もいない無人の星、あるのは求めて手に入れた生産特化のスキル――:DIY:。 はたして、俺はこのゲームで大車輪ができるのか!? (大切) 1話約1000文字です 01章――バトル無し・下準備回 02章――冒険の始まり・死に続ける 03章――『超越者』・騎士の国へ 04章――森の守護獣・イベント参加 05章――ダンジョン・未知との遭遇 06章──仙人の街・帝国の進撃 07章──強さを求めて・錬金の王 08章──魔族の侵略・魔王との邂逅 09章──匠天の証明・眠る機械龍 10章──東の果てへ・物ノ怪の巫女 11章──アンヤク・封じられし人形 12章──獣人の都・蔓延る闘争 13章──当千の試練・機械仕掛けの不死者 14章──天の集い・北の果て 15章──刀の王様・眠れる妖精 16章──腕輪祭り・悪鬼騒動 17章──幽源の世界・侵略者の侵蝕 18章──タコヤキ作り・幽魔と霊王 19章──剋服の試練・ギルド問題 20章──五州騒動・迷宮イベント 21章──VS戦乙女・就職活動 22章──休日開放・家族冒険 23章──千■万■・■■の主(予定) タイトル通りになるのは二章以降となります、予めご了承を。

悪役貴族の四男に転生した俺は、怠惰で自由な生活がしたいので、自由気ままな冒険者生活(スローライフ)を始めたかった。

SOU 5月17日10作同時連載開始❗❗
ファンタジー
俺は何もしてないのに兄達のせいで悪役貴族扱いされているんだが…… アーノルドは名門貴族クローリー家の四男に転生した。家の掲げる独立独行の家訓のため、剣技に魔術果ては鍛冶師の技術を身に着けた。 そして15歳となった現在。アーノルドは、魔剣士を育成する教育機関に入学するのだが、親戚や上の兄達のせいで悪役扱いをされ、付いた渾名は【悪役公子】。  実家ではやりたくもない【付与魔術】をやらされ、学園に通っていても心の無い言葉を投げかけられる日々に嫌気がさした俺は、自由を求めて冒険者になる事にした。  剣術ではなく刀を打ち刀を使う彼は、憧れの自由と、美味いメシとスローライフを求めて、時に戦い。時にメシを食らい、時に剣を打つ。  アーノルドの第二の人生が幕を開ける。しかし、同級生で仲の悪いメイザース家の娘ミナに学園での態度が演技だと知られてしまい。アーノルドの理想の生活は、ハチャメチャなものになって行く。

食うために軍人になりました。

KBT
ファンタジー
 ヴァランタイン帝国の片田舎ダウスター領に最下階位の平民の次男として生まれたリクト。  しかし、両親は悩んだ。次男であるリクトには成人しても継ぐ土地がない。  このままではこの子の未来は暗いものになってしまうだろう。  そう思った両親は幼少の頃よりリクトにを鍛え上げる事にした。  父は家の蔵にあったボロボロの指南書を元に剣術を、母は露店に売っていた怪しげな魔導書を元に魔法を教えた。    それから10年の時が経ち、リクトは成人となる15歳を迎えた。  両親の危惧した通り、継ぐ土地のないリクトは食い扶持を稼ぐために、地元の領軍に入隊試験を受けると、両親譲りの剣術と魔法のおかげで最下階級の二等兵として無事に入隊する事ができた。  軍と言っても、のどかな田舎の軍。  リクトは退役するまで地元でのんびり過ごそうと考えていたが、入隊2日目の朝に隣領との戦争が勃発してしまう。  おまけに上官から剣の腕を妬まれて、単独任務を任されてしまった。  その任務の最中、リクトは平民に対する貴族の専横を目の当たりにする。  生まれながらの体制に甘える貴族社会に嫌気が差したリクトは軍人として出世して貴族の専横に対抗する力を得ようと立身出世の道を歩むのだった。    剣と魔法のファンタジー世界で軍人という異色作品をお楽しみください。

VRMMO~鍛治師で最強になってみた!?

ナイム
ファンタジー
ある日、友人から進められ最新フルダイブゲーム『アンリミテッド・ワールド』を始めた進藤 渚 そんな彼が友人たちや、ゲーム内で知り合った人たちと協力しながら自由気ままに過ごしていると…気がつくと最強と呼ばれるうちの一人になっていた!?

王宮で汚職を告発したら逆に指名手配されて殺されかけたけど、たまたま出会ったメイドロボに転生者の技術力を借りて反撃します

有賀冬馬
ファンタジー
王国貴族ヘンリー・レンは大臣と宰相の汚職を告発したが、逆に濡れ衣を着せられてしまい、追われる身になってしまう。 妻は宰相側に寝返り、ヘンリーは女性不信になってしまう。 さらに差し向けられた追手によって左腕切断、毒、呪い状態という満身創痍で、命からがら雪山に逃げ込む。 そこで力尽き、倒れたヘンリーを助けたのは、奇妙なメイド型アンドロイドだった。 そのアンドロイドは、かつて大賢者と呼ばれた転生者の技術で作られたメイドロボだったのだ。 現代知識チートと魔法の融合技術で作られた義手を与えられたヘンリーが、独立勢力となって王国の悪を蹴散らしていく!

処理中です...