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偽善者と終焉の島 前篇 六月目
偽善者と読書
しおりを挟む図書館
朝飯を食べ終えた後、俺は図書館にやって来ていた。本当なら、自室で引き籠っていたかったのだが……眷属達全員に却下された為に、しかたなく別のことを行うことになる。
誰も俺なんか見たくないんだし、引き籠らせてくれたって良いじゃないか。
俺がここに来たのは、少し試してみたいことがあったからだ。
前にも言ったが、図書館内には今までの鑑定・解析結果や戦闘経験、ありとあらゆる情報が本の形状で纏められている。
例を挙げてみよう。
図書館にはグーが解析した魔物のデータを纏めた本や、レンが行ったダンジョン機能の使用による世界への干渉を纏めた本、そしてフェニの死の体験そのものを纏めた本などがある。
どれもこれも一般のプレイヤーが読んだら発狂しそうなことが書いてあるような本だ。特に最後の本なんて、凄い本だぞ。
フェニの本――"万死一生"は、開いた者が彼女の死を追体験できるという機能がある。
フェニがこちらに来たある日に頼んで創って貰ったのだが、禁書認定一直線だったな。
俺はこれを、精神的苦痛(物理?)に対する耐性を付ける為に頼んだのだが……まさか百%の再現度で、しかも肉体的にも苦痛を伴う機能になるとは思ってもいなかった。
お蔭で、初めて使った時に思いっきり叫んでしまったよ……フェニ、良くもまぁあれを快楽に変えてるよな。俺はドMにはなれないみたいだ。
閑話休題
そんな本のことは置いておくとして、俺の目的だったな……簡単に言うと、図書館にある本を全て制覇するって所か?
【完全記憶】があるので覚えれば覚える程強くなれる。しかも【深強睡眠】や<澄心体認>も働くので、理解すれば理解する程俺は強くなれる。戦闘面で強くなれないなら、今度は知識面で強くなれば良い。そんな安直な考えでやってきた。
まぁ、かなり本があるからな。把握しているだけでも、大体……1000冊ぐらいあるぞ。
だけどだいじょーぶ。アレがあるからおーるおーけー。
(――"不可視の手")
【怠惰】な俺の代わりに働いてくれる勤勉な手を召喚し、本を集めさせる。最近何故か大きくなった図書館の、俺でも手が届かないような場所にある本であろうと――どこまでも伸びる便利な手は取って来てくれる。
そして、一気に集めさせた本を手に捲らせて、その本を元の場所に戻す。
そんな作業を何度か続ければ何れ終わるだろう……さぁて、どれくらいで終わるかな?
読んだ本の一部を記載
~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
・リーン国の全て 記載者:リョク
今のリーン国に至るまであったできごとや問題やその解決法、国民の意見などを記載。基本的にリョクのメルスを称える言葉でいっぱいだった。
・学校教材 持ち主:フーラ・フーリ
リーンに存在する学校で使われている勉強教材。地球における小学生レベルの知識は勿論のこと、ダンジョン学や魔物学、生産学を分かりやすく纏めてある。
・(AFO版)童話集 記載者:レン
レンがDPで交換した集めた資料を元に、考察・推測した物を纏めた。クソ女神への対策も考えて頼んだ物だ。基本的には地球の物とあまり変わらない内容であったが、一部の名称が異なっていたり、魔法が出てきたりと変化もある。最もなのは、神が出てくるところだ……眠り姫もあった。
・魔術練習 基礎編 記載者:アン
魔術士であるアンが自身の魔術を解析して理論を書いた物。魔法と違い、最初のプログラムは自身で行わなければいけない為、上級者向け……それなのに基礎って。
・スキル辞典 記載者:グー
スキルの習得条件や発動する内容。複数使用による効率的な威力上昇方法などを纏めてある。他にも、スキルのレア度やスキルという概念そのものへの考察も記されている。
・
・
・
~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
――だいぶ読んだ気がする。
少し休憩しようと周りを見てみると、本が空を浮かび、様々な所を行ったり来たりしている光景が見受けられる。
そんな幻想的な景色に、一人の少女が割り込んで入る。
『――見つけましたよメル様。態々気配を隠す程、わたし達に見つけられたくなかったのですか?』
「えぇ。アンだって、自分がショタ化しているのを、他の眷属達に見られたいと思う?」
『……確かに、それは嫌ですね』
その姿をイメージしたのか、アンの顔に不快感を表す仕草が見受けられる……淡紅色に暗い輝きを放つレ○プ目のハイライトが、より暗くなることだぞ。
「……で、どうして探してたの? 時間はそれなりに作っていた筈だけれど」
『そんな時間加速系の魔法やスキルを、ふんだんに使えるのはメル様ぐらいですよ』
「いいえ、絶対にいると思うの。だって、そういうのが可能だったからこそ、神代魔法が昔、バンバン使われてたんだから」
『バンバンって、今日日聞きませんね』
いや、結構使われてるからね。バンバンなシューティングとかいうゲームもあったみたいなんだし。
「はいはい、さっさと本題を言う。言わないなら……」
『分かってますよ。メル様、貴方には――』
アンは一度溜めてから、こう言ってきた。
『――一緒に浴室に入って貰います』
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