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偽善者と終焉の島 前篇 六月目

偽善者と慣らし 後篇

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その他:<他力本願>

説明:自分の力では無く、他人の力によって望みを叶えられるスキル
許諾した対象に代理で行動を行わせる
Lvが上昇することで、任せられる行動が増加

〔自身が信頼するものにしか頼れない〕

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 先程使った<他力本願>はこんなスキルだ。
 相手がそれを受け入れてくれた場合、自身が行う行動を任せられる……そんなスキル。
 前回の場合、(適応)は(実力偽装)による能力値の制御を[不明]――アンに任せた。
 正直、アン……というか眷属達に頼りすぎている気もするが、アンに言われた事が頭の中に残っていてな。とりあえず期待に応えるということから始めることにした……というか、俺も好意を向けられること自体は嬉しいことなんだが、反応がし辛いんだ。

 当初の俺はm自分が身を捧げ尽くすことでハーレムを作ろうとしていた。
 だが眷属達は、俺が身を捧げる前から既に俺への好意を持っていた。

 ――どうにもこれが俺の中で違和感になっているみたいだ。

 例えるとそうだな……、ギャルゲーを始めたら、初めからヒロインの好感度がMAXだった時のような気分だ(そんなことになったことは当然無いけど)。

 とにかく、周りに何度言われても自分の価値が信じられない……そんな感じなのかな? 武具っ娘達はそもそも、家族にすることを前提に創られた者であるし、他の娘達も色々と理屈として主張できる理由がある。だからこそ、俺は少し距離を取って彼女達に身を捧げ尽くそうと思う。
 彼女達が応えてくれた分の信頼に身を捧げることで、その感情を超えることができるまで……。


閑話休題それまでは耐え抜くぞ


「――そして今、俺は模擬戦を再開するのであった(ボソリ)」

『準備は良いーー?!』

「あぁ、良いぞーー!!」


 先程の場所まで戻った俺は、<他力本願>でステータスを制御したことを説明し、限界値上昇を手伝って貰うことにした。

 ビュンッ ドガンッ ブオンッ ドドーン

 それを快諾してくれた二人は、再び植物を地面から生やし、俺に攻撃をしている。

 リアが操る茨の鞭は、空気を切り裂く音を発生させて地面を抉り取っていき――
 ユラルが操る大木は、空気を大きく押し広げて地面に巨大な穴を開けている。

 全力でこれを避けていく毎に、その全力の幅が上がっている気がする……避けるのはかなり精一杯だがな。(複眼)の効果で同時に神眼を発動させ、動体視力を上げる神眼や計算された未来を見る神眼を併用する。

 避けて避けて避けて避けて避けてよけてよけてよけてよけてよけてヨケテヨケテヨケテヨケテヨケテ……。


しばらくして
~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~


 一体どれだけの時間が過ぎたのだろうか。
 半自動化した行動が取れるようになった俺は、振り下ろされる茨や樹木に思考の一部を割き、全く別のこと――アニメーションの視聴をしていた。
 記憶に残る名作を思い出して、イメージする――【完全記憶】を手に入れる前の記憶はしっかりと残っていないので、断片を繋ぎ合わせて、映像として再生できるまで思い出していくのだ(一度思い出せば、完全に記憶できるからな)。


『……全然当たらないんだけど』

『よし、挟み撃ちをしよう』


 ――おっと、何やら不吉なことを言っているな。そんな彼女達の発言をしっかり聞き取り、意識を完全に戻す。
 ……お、ステータスがだいぶ体に馴染んでいるな。大体20000ぐらいといったところか? 
 本当にどれくらい避けていたんだろう。
 (自動回避)と(一途な思い)を発動させて避け続けていたが、途中から機械的に避け続けていたよ……正直、どうやって避けたかを全く覚えていない。
 今俺が覚えているのは、死に戻り続けた彼の1~3章の映像ぐらいだな。フェニと違って死んでも強くなれない彼が、足掻いていく姿は壮絶な物だったな。早く続きが見たくて、何倍にも加速しながら見ちゃったよ。


閑話休題Let's死に戻り


 彼女達が連携攻撃を始めてきた。
 さっきまで見ていた映像の影響なのか、俺は"不可視の手"での対処を選んだ。
 幾つもの手が植物の動きを妨げ、存在を消し潰していく。


『嘘、どうやって倒したの!?』

『見た感じは、何も無いように見えるけど……何かあるね』


 だけど、彼女達もただやられている訳では無い。わざと木の粉屑が飛ぶように調整をすると、見えない筈の手を見えるようにしてきた(剣の鬼みたいなことをするな)。


『あ、見えた! ……でもデッカイね~』

『これが、メルスの能力か……。記憶は貰っていたけど、実物はもっとデカいね』


 どうやら記憶を調査済みだったみたいだ。
 ……これはかなりヤバいかもな。
 二人は記憶を見ているから、俺のスキルを知っているだろう(そもそも最近のスキルは、眷属達で創っている物だしな)。
 別に、これは模擬戦であって本番ではないから本気で戦う必要は無いのだが、負けたくはないんだよ。何か良い方法は無いかな~。


 結論から言うと、龍爪と魔爪を合成して切り裂いていった。
 その名も――"不可視の龍魔爪"……安直すぎたかな?
 まぁ、そんな爪で遮る物を切り裂き続け、最終的に(実力偽装)を完璧にものにできたのは、夕食の時間になるちょっと前だった。


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