243 / 2,519
偽善者と終焉の島 前篇 六月目
偽善者と慣らし 前篇
しおりを挟む修練場
『……メルスン、大丈夫なの?』
「あ、あぁ。なんとか、な」
『……体が埋まってるじゃないか。そこから出れるかい? 引っ張ってあげようか?』
「大丈夫大丈夫。こうやって少し力を籠めれば……」
……チュドーーーン!!
『メルスーーン!』『メルスッ!』
やぁ、メルスです。
最近は反作用の力が強く働くようになったのかな? 少し力を入れただけで、修練場の端から端まで吹っ飛んじゃったよ。……え? どうしてそんなことになったかだって? それは少し時間を戻せば分かるよ。
ちょっと前
~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
「……と言う訳で二人には、俺が今のステータスに慣れる為の練習に付き合って貰う」
『良く分からないけど分かったよ。どうやって手伝えばいいの?』
俺は修練場に歩いている最中に呼び出した二人――ユラルとリアに説明をする。今回修練場に来たのは神眼を試すことともう一つ、俺の異常な程に補正が掛かったステータスをある程度制御する為でもあった。
その為、元々高めのステータスを持っていた二人に、全力使用時の制御を手伝って貰うことにした(通常時ならば、リーの(実力偽装)でなんとかできるが、本番で困るしな)。
「軽く模擬戦をしてくれれば良い。そうすれば、ある程度体が馴染んでくれるだろう」
『うん、理解した。なら早速始めよう』
ユラルの質問にそう答えると、リアもやることを理解してくれたみたいだ。二人は俺から少し離れた場所に移動して、それぞれの武器を取り出した……地面から。
二人の戦闘スタイルは似ている。地面から生やした植物が相手に攻撃している間に、自分が魔法を発動して遠距離攻撃。違う所といえば、どの植物を使うかだろう。ユラルは基本的に樹木を操り、リアは草花を操る……ここら辺でだいぶ変わるんだけどな。
さて、なら俺もそろそろ準備を始めるとするかな?
俺は先ほど創った武具庫の指輪から、ATKが0になる刀剣を取り出す……呪武具だな。代わりとして精神に直接ダメージを与えられる機能もあるが、今回は使わないぞ。
そして、今まで常時発動していた(実力偽装)を解除する。……特に変化はないな。
「それじゃあ行くぞー!」
そう言って、脚にほんの少しだけ力を籠めて地面を蹴る……だけだったのに――
……チュドーーン!!
「『『…………え?』』」
俺は物凄い勢いで彼女達や植物をすり抜けて、修練場の壁に突っ込んでいた。余りにも一瞬の出来事であった為、俺自身にも理解ができなかった。壁の結構深い所に突き刺さってしまったのか、中々抜け出せない。
……二人が俺を心配して、こっちに来ているのが、気配で分かる。
ペタペタ ペタペタ
『……メルスン、大丈夫なの?』
「あ、あぁ。なんとか、な」
ペタペタ スベスベ
ユラルが体に触りながらそう聞いてくる。……て、どこ触ってるのさっ!
『……体が埋まってるじゃないか。そこから出れるかい? 引っ張ってあげようか?』
「大丈夫大丈夫。こうやって少し力を籠めれば……」
しばらくしてから、リアにそう聞かれるが……これ以上いたら、俺の体が危うい。そう考えて、先程よりも弱めの力で壁から抜け出そうとした――
……チュドーーーン!!
『メルスーーン!』『メルスッ!』
やぁ、メルスです。
最近は反作用の力が強く働くようになったのかな? 少し力を入れただけで、修練場の端から端まで吹っ飛んじゃったよ。……え? どうしてそんなことになったかだって? それは少し時間を戻せば分かるよ。
~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
そう、こんな感じで話は元に戻るのだ。
力を弱めただけあって、今度は深く嵌っていなかった。このままでは練習もできないので、(実力偽装)を再び発動させて、脱出することになった。
……うーん、何とかならないのかな?
そんなことを考えていると、いつものアレが発動した。
~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
(適応)が発動されました
対処法をお選びください
・スキルによる弱体化
・肉体改変による適応
・新たなスキルの創造による適応
~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
……選択肢が出たのだが。特に2つ目、肉体改変って、改造じゃなくて改変!? 全くの別物になっちゃうの!? ……これだけは、絶対に駄目な選択肢として、残りは二つだな。スキルは……うん、またチート? が増えるだけだし、弱体化でお願いします!!
~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
スキルによる弱体化が選択されました
……成功しました
<他力本願>を発動し、(実力偽装)を[不明]を制御下に置きます
以降、制御できる限界値での(実力偽装)を常時発動します
~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
少しビビりながらも、力を籠めて壁を抜け出す。……今度はギャグマンガみたいにならなかったな。
だけど、今のステータスは一体幾つなんだろう……って〔881〕? ヤバいのはこっちなんだよ!? 数値さんが一々教えてくれなくても分かることなんだからな!
「……ま、今後の課題は、扱える限界値を上げて行くことかな?」
881を斎藤さんにしたいかな? そんな事を考えながら、俺は未だに壁の所で思考停止中の二人の元に歩いて行くのであった。
……あ、神眼使って無いじゃん。
0
お気に入りに追加
516
あなたにおすすめの小説
パーティ追放が進化の条件?! チートジョブ『道化師』からの成り上がり。
荒井竜馬
ファンタジー
『第16回ファンタジー小説大賞』奨励賞受賞作品
あらすじ
勢いが凄いと話題のS級パーティ『黒龍の牙』。そのパーティに所属していた『道化師見習い』のアイクは突然パーティを追放されてしまう。
しかし、『道化師見習い』の進化条件がパーティから独立をすることだったアイクは、『道化師見習い』から『道化師』に進化する。
道化師としてのジョブを手に入れたアイクは、高いステータスと新たなスキルも手に入れた。
そして、見習いから独立したアイクの元には助手という女の子が現れたり、使い魔と契約をしたりして多くのクエストをこなしていくことに。
追放されて良かった。思わずそう思ってしまうような世界がアイクを待っていた。
成り上がりとざまぁ、後は異世界で少しゆっくりと。そんなファンタジー小説。
ヒロインは6話から登場します。
World of Fantasia
神代 コウ
ファンタジー
ゲームでファンタジーをするのではなく、人がファンタジーできる世界、それがWorld of Fantasia(ワールド オブ ファンタジア)通称WoF。
世界のアクティブユーザー数が3000万人を超える人気VR MMO RPG。
圧倒的な自由度と多彩なクラス、そして成長し続けるNPC達のAI技術。
そこにはまるでファンタジーの世界で、新たな人生を送っているかのような感覚にすらなる魅力がある。
現実の世界で迷い・躓き・無駄な時間を過ごしてきた慎(しん)はゲーム中、あるバグに遭遇し気絶してしまう。彼はゲームの世界と現実の世界を行き来できるようになっていた。
2つの世界を行き来できる人物を狙う者。現実の世界に現れるゲームのモンスター。
世界的人気作WoFに起きている問題を探る、ユーザー達のファンタジア、ここに開演。
特殊部隊の俺が転生すると、目の前で絶世の美人母娘が犯されそうで助けたら、とんでもないヤンデレ貴族だった
なるとし
ファンタジー
鷹取晴翔(たかとりはると)は陸上自衛隊のとある特殊部隊に所属している。だが、ある日、訓練の途中、不慮の事故に遭い、異世界に転生することとなる。
特殊部隊で使っていた武器や防具などを召喚できる特殊能力を謎の存在から授かり、目を開けたら、絶世の美女とも呼ばれる母娘が男たちによって犯されそうになっていた。
武装状態の鷹取晴翔は、持ち前の優秀な身体能力と武器を使い、その母娘と敷地にいる使用人たちを救う。
だけど、その母と娘二人は、
とおおおおんでもないヤンデレだった……
第3回次世代ファンタジーカップに出すために一部を修正して投稿したものです。
虚弱生産士は今日も死ぬ ―遊戯の世界で満喫中―
山田 武
ファンタジー
今よりも科学が発達した世界、そんな世界にVRMMOが登場した。
Every Holiday Online 休みを謳歌できるこのゲームを、俺たち家族全員が始めることになった。
最初のチュートリアルの時、俺は一つの願いを言った――そしたらステータスは最弱、スキルの大半はエラー状態!?
ゲーム開始地点は誰もいない無人の星、あるのは求めて手に入れた生産特化のスキル――:DIY:。
はたして、俺はこのゲームで大車輪ができるのか!? (大切)
1話約1000文字です
01章――バトル無し・下準備回
02章――冒険の始まり・死に続ける
03章――『超越者』・騎士の国へ
04章――森の守護獣・イベント参加
05章――ダンジョン・未知との遭遇
06章──仙人の街・帝国の進撃
07章──強さを求めて・錬金の王
08章──魔族の侵略・魔王との邂逅
09章──匠天の証明・眠る機械龍
10章──東の果てへ・物ノ怪の巫女
11章──アンヤク・封じられし人形
12章──獣人の都・蔓延る闘争
13章──当千の試練・機械仕掛けの不死者
14章──天の集い・北の果て
15章──刀の王様・眠れる妖精
16章──腕輪祭り・悪鬼騒動
17章──幽源の世界・侵略者の侵蝕
18章──タコヤキ作り・幽魔と霊王
19章──剋服の試練・ギルド問題
20章──五州騒動・迷宮イベント
21章──VS戦乙女・就職活動
22章──休日開放・家族冒険
23章──千■万■・■■の主(予定)
タイトル通りになるのは二章以降となります、予めご了承を。
悪役貴族の四男に転生した俺は、怠惰で自由な生活がしたいので、自由気ままな冒険者生活(スローライフ)を始めたかった。
SOU 5月17日10作同時連載開始❗❗
ファンタジー
俺は何もしてないのに兄達のせいで悪役貴族扱いされているんだが……
アーノルドは名門貴族クローリー家の四男に転生した。家の掲げる独立独行の家訓のため、剣技に魔術果ては鍛冶師の技術を身に着けた。
そして15歳となった現在。アーノルドは、魔剣士を育成する教育機関に入学するのだが、親戚や上の兄達のせいで悪役扱いをされ、付いた渾名は【悪役公子】。
実家ではやりたくもない【付与魔術】をやらされ、学園に通っていても心の無い言葉を投げかけられる日々に嫌気がさした俺は、自由を求めて冒険者になる事にした。
剣術ではなく刀を打ち刀を使う彼は、憧れの自由と、美味いメシとスローライフを求めて、時に戦い。時にメシを食らい、時に剣を打つ。
アーノルドの第二の人生が幕を開ける。しかし、同級生で仲の悪いメイザース家の娘ミナに学園での態度が演技だと知られてしまい。アーノルドの理想の生活は、ハチャメチャなものになって行く。
食うために軍人になりました。
KBT
ファンタジー
ヴァランタイン帝国の片田舎ダウスター領に最下階位の平民の次男として生まれたリクト。
しかし、両親は悩んだ。次男であるリクトには成人しても継ぐ土地がない。
このままではこの子の未来は暗いものになってしまうだろう。
そう思った両親は幼少の頃よりリクトにを鍛え上げる事にした。
父は家の蔵にあったボロボロの指南書を元に剣術を、母は露店に売っていた怪しげな魔導書を元に魔法を教えた。
それから10年の時が経ち、リクトは成人となる15歳を迎えた。
両親の危惧した通り、継ぐ土地のないリクトは食い扶持を稼ぐために、地元の領軍に入隊試験を受けると、両親譲りの剣術と魔法のおかげで最下階級の二等兵として無事に入隊する事ができた。
軍と言っても、のどかな田舎の軍。
リクトは退役するまで地元でのんびり過ごそうと考えていたが、入隊2日目の朝に隣領との戦争が勃発してしまう。
おまけに上官から剣の腕を妬まれて、単独任務を任されてしまった。
その任務の最中、リクトは平民に対する貴族の専横を目の当たりにする。
生まれながらの体制に甘える貴族社会に嫌気が差したリクトは軍人として出世して貴族の専横に対抗する力を得ようと立身出世の道を歩むのだった。
剣と魔法のファンタジー世界で軍人という異色作品をお楽しみください。
VRMMO~鍛治師で最強になってみた!?
ナイム
ファンタジー
ある日、友人から進められ最新フルダイブゲーム『アンリミテッド・ワールド』を始めた進藤 渚
そんな彼が友人たちや、ゲーム内で知り合った人たちと協力しながら自由気ままに過ごしていると…気がつくと最強と呼ばれるうちの一人になっていた!?
王宮で汚職を告発したら逆に指名手配されて殺されかけたけど、たまたま出会ったメイドロボに転生者の技術力を借りて反撃します
有賀冬馬
ファンタジー
王国貴族ヘンリー・レンは大臣と宰相の汚職を告発したが、逆に濡れ衣を着せられてしまい、追われる身になってしまう。
妻は宰相側に寝返り、ヘンリーは女性不信になってしまう。
さらに差し向けられた追手によって左腕切断、毒、呪い状態という満身創痍で、命からがら雪山に逃げ込む。
そこで力尽き、倒れたヘンリーを助けたのは、奇妙なメイド型アンドロイドだった。
そのアンドロイドは、かつて大賢者と呼ばれた転生者の技術で作られたメイドロボだったのだ。
現代知識チートと魔法の融合技術で作られた義手を与えられたヘンリーが、独立勢力となって王国の悪を蹴散らしていく!
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる