234 / 2,519
偽善者と終焉の島 前篇 六月目
偽善者と『永劫の眠り姫』 その07
しおりを挟むとりあえず、いつも通り鑑定を――
魔龍マレフィセント ???
??? ???
??? ???
――(神眼)を使っても、目の前の龍の鑑定は成功しなかった(この龍、黒い鱗に二本の角と黄緑色の翼に長い尻尾を持っているぞ。完全に鼠さん所の魔女ですよ)。
恐らく、俺よりも神格が上であると思われる運命神とやらが何かをやったのだろう。その影響で、神格が低い俺の権能スキルは失敗したと考えるのが一番妥当な考えであろう。
……凄く戦う気が失せているのだが、不敵な笑み(w)を決めて「――下がっていてくれ」なんて言った分の責任は取らなくてはいけないんだよな。
『どうしたんだい、王子様? そっちから来ないなら、わたしからやらせて貰うよ!』
色々と考えている間に、魔女の寛大な心による待ち時間が終わったらしい。魔女(以降は龍に変えよう)は大きく息を吸い込み、その溜めた空気を魔力と共に解き放った。
黄緑色の魔力は俺と、後ろに下がったリアへ包み込むように拡散していく。
……だけど、そんな簡単に行かせる訳にはいかないんだよな~。
(――"多重魔法障壁・改")
一人でも使えるように改良したファ○ンクス擬きを発動させて、吐き出された龍の息吹に対しても余裕を保ちながら防ぎきる……魔力効率と共に、防御力も上げた甲斐があったのか、自作ポーション1本分の発動で防ぎきれた(1本でMP約500回復の代物だ)。
とりあえず"掛けるポーション"を【怠惰】の手を使って摂取しながら、龍との会話を試みる。
「なぁ魔女さん、お前さんが死んだらリアの呪いはどうなるんだ?」
『もちろん消えるさ……私の掛けた分はね』
「……ハァ。つまり運命神様が掛けた呪縛はそのまま残るってことか。面倒だな」
『あぁ、その通りだよ。私を倒せたら、針の呪いは解けるんだ。それだけでもありがたいと思いな』
全くもってその通りである。だが、結局の所全部運命神が悪いという結論に至っている俺にとっては、ありがたくもなんともない話である。……というかここに来た時、運命神から聞いたと言っていたお前を逃す訳が無いだろう!
(――"異端種化・天魔:龍:鬼")
そう体に指令を出すと、体のあちこちに変化が起こり出した。額や口内、背中、腰のあたりから違和感を感じ、注入した因子の特徴が出現する。
――"異端種化"、それは一種の合成獣(キメラ)の誕生法である。
『王子様……とは、もう言えないような姿になったね。何なんだい? その能力は』
「元々王子を名乗った気も無いし、これの秘密を話す気は無い。俺はただ、お前を倒す為に少し本気を出しただけだ」
『ヒッヒッヒ、そりゃあ楽しみだねぇ。なら見せて貰うよ、あんたがどこまで踊ってくれるかを……って、何だいその武器は?』
「ただの水晶だよ、とびっきりタネや仕掛けがあるだけのな」
《メルス、その言い方は酷い》
「(ごめんごめん、今はとりあえず双剣になってくれ)」
《むぅ……分かった》
俺は水晶形態のギーを呼び出して、一対の剣に姿を変えて貰う(ギーは"翼"の持つ固有武技――"強制召喚"で来てくれたのだが……"眷属召喚"が使えないのにそれなら使えちゃうって、どういうことなんだろうか)。
それを見た龍は、ギョッと驚いたような目でこちらを見てきた。うん、爬虫類のような目だな。
『あんた……それ、神器じゃないかい!?』
「え? あぁ、そうだが。何か?」
『……気が変わった。本当だったら、あんたが苦しむ姿を王女に見せてやろうと思っていたけど、さっさと倒してその神器を戴くとするかね』
「(……ハハハ。ギー、あの魔女が何を言っているのか、俺には良く分からないんだが……ギーを、どうするって、言ってたんだ?)」
《――戴くだって》
…………(思考加速中)……プチッ
「……ふ、ふ、ふざけんじゃねぇぇぇ!!」
うちの娘を戴くだって? 何を言ってるんだあのクソ婆はぁ!!
そんな運命神の手下ポジションについてるような雑魚い輩に、ギーを渡す訳無いだろうが! ギーは……ギーはうちの家族じゃい!!
《メルス……照れちゃう》
「さっさと蹴りをつけたるわー!!」
『それはこっちのセリフだよ!』
かくして俺と龍による、ギーを賭けた熱き戦いは始まるのであった。
《初めて言えるこのセリフ――止めて、私の為に争わないで!!》
ギーがそんなことを言っていたかもしれないが、【憤怒】に燃える俺に知る術が無い。
SIDE リア
~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
何故だろうか。ぼくが忘れられているような気がするのは……。気の所為……だよね?
彼はぼくに約束してくれた、希望になってくれると。
実際今も、彼はその姿を歪な者へと変えてまで、あの魔女と闘っているs……
『うちの娘は渡さねぇ!』
『さっさと寄越しなっ!』
メルス、君は一体何の為に戦っているんだい? 娘って、絶対ぼく関係無いよね?!
そんなぼくが話の中から外されている闘いは、だんだんと激しい物へと変わっていく。
彼は魔女が息吹を吐くと剣を扇へと変え、強烈な風を起こして吹き飛ばす。
扇を弓に変えて眼球を射抜こうとすると、鷹や蝙蝠が魔女の周りに黒い靄を形成するように現れて、それを防いでいく。
そんな相手の技を読み合って潰していくという繰り返しを何度も何度も行っていた。
だけど、メルスは本当に何者なんだろうか?
突然ぼくの世界に侵入して来たと思うと、ぼくに自分の故郷を見せてくれた。
彼がにほんと言っていた国は、魔力を使わないのに動く魔道具がいっぱいだった。おまけに、あの国の住民は魔力を日常的に使えないらしい。魔素が極端に薄い環境だから、そういった魔道具――機械ができたと言っていた。
……だけど本当に悔しかったな、あのぞんびげーむ。ぼくのスキルを使えば単独クリアだって出来たのに……まぁ、お蔭で彼との協力プレイもできたんだけどね。
ドシンッ
おっと、機械の話はここまでにして、今は戦いに集中しないと。いつの間にか彼は、魔女の角の片方を切る事に成功していたみたいで、さっきの音はその角が落ちた音だったみたいだ。
両者の魔力がグングンと上昇している……どうやら次で決着をつけるみたい。彼はデカい大剣、魔女を腹。そこに魔力を練り込んで攻撃をすると考えられる(魔力以外の物も練り込まれている気がするけど、ぼくには分からない。後で彼に聞いてみよう)。
頑張ってね、メルス。君はぼくの……希望なんだから……って君、少しカッコ良くなってないかい?
SIDE OUT
0
お気に入りに追加
516
あなたにおすすめの小説
パーティ追放が進化の条件?! チートジョブ『道化師』からの成り上がり。
荒井竜馬
ファンタジー
『第16回ファンタジー小説大賞』奨励賞受賞作品
あらすじ
勢いが凄いと話題のS級パーティ『黒龍の牙』。そのパーティに所属していた『道化師見習い』のアイクは突然パーティを追放されてしまう。
しかし、『道化師見習い』の進化条件がパーティから独立をすることだったアイクは、『道化師見習い』から『道化師』に進化する。
道化師としてのジョブを手に入れたアイクは、高いステータスと新たなスキルも手に入れた。
そして、見習いから独立したアイクの元には助手という女の子が現れたり、使い魔と契約をしたりして多くのクエストをこなしていくことに。
追放されて良かった。思わずそう思ってしまうような世界がアイクを待っていた。
成り上がりとざまぁ、後は異世界で少しゆっくりと。そんなファンタジー小説。
ヒロインは6話から登場します。
World of Fantasia
神代 コウ
ファンタジー
ゲームでファンタジーをするのではなく、人がファンタジーできる世界、それがWorld of Fantasia(ワールド オブ ファンタジア)通称WoF。
世界のアクティブユーザー数が3000万人を超える人気VR MMO RPG。
圧倒的な自由度と多彩なクラス、そして成長し続けるNPC達のAI技術。
そこにはまるでファンタジーの世界で、新たな人生を送っているかのような感覚にすらなる魅力がある。
現実の世界で迷い・躓き・無駄な時間を過ごしてきた慎(しん)はゲーム中、あるバグに遭遇し気絶してしまう。彼はゲームの世界と現実の世界を行き来できるようになっていた。
2つの世界を行き来できる人物を狙う者。現実の世界に現れるゲームのモンスター。
世界的人気作WoFに起きている問題を探る、ユーザー達のファンタジア、ここに開演。
特殊部隊の俺が転生すると、目の前で絶世の美人母娘が犯されそうで助けたら、とんでもないヤンデレ貴族だった
なるとし
ファンタジー
鷹取晴翔(たかとりはると)は陸上自衛隊のとある特殊部隊に所属している。だが、ある日、訓練の途中、不慮の事故に遭い、異世界に転生することとなる。
特殊部隊で使っていた武器や防具などを召喚できる特殊能力を謎の存在から授かり、目を開けたら、絶世の美女とも呼ばれる母娘が男たちによって犯されそうになっていた。
武装状態の鷹取晴翔は、持ち前の優秀な身体能力と武器を使い、その母娘と敷地にいる使用人たちを救う。
だけど、その母と娘二人は、
とおおおおんでもないヤンデレだった……
第3回次世代ファンタジーカップに出すために一部を修正して投稿したものです。
虚弱生産士は今日も死ぬ ―遊戯の世界で満喫中―
山田 武
ファンタジー
今よりも科学が発達した世界、そんな世界にVRMMOが登場した。
Every Holiday Online 休みを謳歌できるこのゲームを、俺たち家族全員が始めることになった。
最初のチュートリアルの時、俺は一つの願いを言った――そしたらステータスは最弱、スキルの大半はエラー状態!?
ゲーム開始地点は誰もいない無人の星、あるのは求めて手に入れた生産特化のスキル――:DIY:。
はたして、俺はこのゲームで大車輪ができるのか!? (大切)
1話約1000文字です
01章――バトル無し・下準備回
02章――冒険の始まり・死に続ける
03章――『超越者』・騎士の国へ
04章――森の守護獣・イベント参加
05章――ダンジョン・未知との遭遇
06章──仙人の街・帝国の進撃
07章──強さを求めて・錬金の王
08章──魔族の侵略・魔王との邂逅
09章──匠天の証明・眠る機械龍
10章──東の果てへ・物ノ怪の巫女
11章──アンヤク・封じられし人形
12章──獣人の都・蔓延る闘争
13章──当千の試練・機械仕掛けの不死者
14章──天の集い・北の果て
15章──刀の王様・眠れる妖精
16章──腕輪祭り・悪鬼騒動
17章──幽源の世界・侵略者の侵蝕
18章──タコヤキ作り・幽魔と霊王
19章──剋服の試練・ギルド問題
20章──五州騒動・迷宮イベント
21章──VS戦乙女・就職活動
22章──休日開放・家族冒険
23章──千■万■・■■の主(予定)
タイトル通りになるのは二章以降となります、予めご了承を。
VRMMO~鍛治師で最強になってみた!?
ナイム
ファンタジー
ある日、友人から進められ最新フルダイブゲーム『アンリミテッド・ワールド』を始めた進藤 渚
そんな彼が友人たちや、ゲーム内で知り合った人たちと協力しながら自由気ままに過ごしていると…気がつくと最強と呼ばれるうちの一人になっていた!?
王宮で汚職を告発したら逆に指名手配されて殺されかけたけど、たまたま出会ったメイドロボに転生者の技術力を借りて反撃します
有賀冬馬
ファンタジー
王国貴族ヘンリー・レンは大臣と宰相の汚職を告発したが、逆に濡れ衣を着せられてしまい、追われる身になってしまう。
妻は宰相側に寝返り、ヘンリーは女性不信になってしまう。
さらに差し向けられた追手によって左腕切断、毒、呪い状態という満身創痍で、命からがら雪山に逃げ込む。
そこで力尽き、倒れたヘンリーを助けたのは、奇妙なメイド型アンドロイドだった。
そのアンドロイドは、かつて大賢者と呼ばれた転生者の技術で作られたメイドロボだったのだ。
現代知識チートと魔法の融合技術で作られた義手を与えられたヘンリーが、独立勢力となって王国の悪を蹴散らしていく!
アイテムボックス無双 ~何でも収納! 奥義・首狩りアイテムボックス!~
明治サブ🍆スニーカー大賞【金賞】受賞作家
ファンタジー
※大・大・大どんでん返し回まで投稿済です!!
『第1回 次世代ファンタジーカップ ~最強「進化系ざまぁ」決定戦!』投稿作品。
無限収納機能を持つ『マジックバッグ』が巷にあふれる街で、収納魔法【アイテムボックス】しか使えない主人公・クリスは冒険者たちから無能扱いされ続け、ついに100パーティー目から追放されてしまう。
破れかぶれになって単騎で魔物討伐に向かい、あわや死にかけたところに謎の美しき旅の魔女が現れ、クリスに告げる。
「【アイテムボックス】は最強の魔法なんだよ。儂が使い方を教えてやろう」
【アイテムボックス】で魔物の首を、家屋を、オークの集落を丸ごと収納!? 【アイテムボックス】で道を作り、川を作り、街を作る!? ただの収納魔法と侮るなかれ。知覚できるものなら疫病だろうが敵の軍勢だろうが何だって除去する超能力! 主人公・クリスの成り上がりと「進化系ざまぁ」展開、そして最後に待ち受ける極上のどんでん返しを、とくとご覧あれ! 随所に散りばめられた大小さまざまな伏線を、あなたは見抜けるか!?
元おっさんの俺、公爵家嫡男に転生~普通にしてるだけなのに、次々と問題が降りかかってくる~
おとら@ 書籍発売中
ファンタジー
アルカディア王国の公爵家嫡男であるアレク(十六歳)はある日突然、前触れもなく前世の記憶を蘇らせる。
どうやら、それまでの自分はグータラ生活を送っていて、ろくでもない評判のようだ。
そんな中、アラフォー社畜だった前世の記憶が蘇り混乱しつつも、今の生活に慣れようとするが……。
その行動は以前とは違く見え、色々と勘違いをされる羽目に。
その結果、様々な女性に迫られることになる。
元婚約者にしてツンデレ王女、専属メイドのお調子者エルフ、決闘を仕掛けてくるクーデレ竜人姫、世話をすることなったドジっ子犬耳娘など……。
「ハーレムは嫌だァァァァ! どうしてこうなった!?」
今日も、そんな彼の悲鳴が響き渡る。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる