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偽善者と終焉の島 前篇 六月目

偽善者と『永劫の眠り姫』 その02

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 状況を確認してみよう。
 目の前には茨だらけの城が聳えており、俺はそれを遠目で眺めている。茨はとてもデカく、ぶつかったらただでは済まなさそうだ。
 ……どうやら茨は魔物扱いらしく、鑑定ができたぞ――


睡呪の茨 ???
??? ???
??? ???


 ――でも、殆ど鑑定できてない。
 そこで(神氣)を使うことで、一応はできたのだが……なんかこう、やる気が削がれるんだよな~。


睡呪の茨 Lv250
呪物 パッシブ
全対応 格上
〔属性 樹 耐性 全属性
 捕足 無限再生 防御無視 無限繁殖〕


 Lv250ってどんだけ強いんだよ。
 呪物とは呪いでできた魔物の総称らしく、掛けられた呪いの強さでLvが決まるらしい。
 耐性は全耐性で無限に再生する。更にこちらの防御は無効されて無限に増えるらしい。
 この世界の茨はどれだけ強いんだよ、全くもう……。
 相手が一応|専守(パッシブ)だから良かったが、もし能動(アクティブ)だったら、逃げるしか無かったな。……今のままじゃ。


「……近くまで行ってみるか」


 そう口にして意思を固めてから、早速俺は移動を開始した。……なんでもさ、やりようはあるよな。


Sideエナ
~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~


 メルス様から指示を貰った私達は、お城の中を調査することになりました。お城の中は壁や床が茨だらけで、足や手の置場が無い程です。少しでも触れたら危険だとメルス様からも厳命されていますし、気を付けなければいけません。

 私達アバターは、メルス様の記憶を元に創り上げられた分身です。基本的にアニメキャラを元に形成されているこの体は、メルス様のAP、魔力と氣力を合成したエネルギーで維持されている……月並みなことを言うと、この体はメルス様の物ということです。そんな私達ですが、メルス様に言いたいこともあります。

 メルス様は私達に必要以上に何かを求めることがありません。今回のように、調査や戦闘といった事柄を頼むことはあるのですが、その……そういった事柄を頼むことが全くと言って良い程にありません。最も深くいったこともキスですし、そのキスも深い方ではない上に、|鳥(バード)でした。
 かと言って、メルス様が男に気があるという訳では無いことは、ハーレムを作っている時点で分かることです……【色欲】を持っている人が、どうしてそこまで抑えられるのでしょうか。

 メルス様の記憶を探ってみたのですが、原因はまったく分かりません。分かったのは、メルス様のストライクゾーンが広いということと(半)処女厨ということくらいでした。
 メルス様はまだ知りませんが、そういったことに関する情報も眷属同士である程度共有されてます。メルス様の周りの女性は、誰もかれもが傾国と呼ばれる様な美貌の持ち主ばかりです……が、誰にも手を出しません。
 本当にどうしてなんでしょうか。呪いでも掛かってるのでしょうか(実際、1つ掛かっていますしね)。


閑話休題


 そんな唐変木なメルス様に指示され、この城を散策している私達ですが――ディオから連絡が来ました。


《エナ~、お姫様を見つけたよ~》

(「分かったわ。直ぐに行くからメルス様にも連絡をしておいて」)

《りょうか~い》


 私はディオの現在位置を確認して、その場所に向かうことになりました。……ディオのテンションが高いのも分かります。創造主であるメルス様に念話をしてその声を聴くと、体の中が熱く感じられるのです。この体はメルス様の全てを受け止められる為の肉体だからでしょうか、その感覚だけで天にも昇るような気分になれます。
 ディオもその感覚を気持ち良い物として感じているらしく、その感覚を求め、早く見つけた方がメルス様との連絡ができるという賭けをしていたのですが……先に西側を散策すれば私が見つけられたのに。


『エナ~。連絡したら、すぐ来るって~。いや~、やっぱりメルス様の声は凄いよ~』

「ディオ。それ以上自慢したら、ただじゃ済まないと思いなさい」

『ご、ごめんね~』


 とりあえず、言葉だけでも反省させたことですし、良しとしますか。ディオはメルス様と話す時だけ、口調を変えています(理由を一度訊いてみたら『なんでか分からないけど、使命感からかな~?』と言っていました)。

 ディオの元へと辿り着いた私の元に居たのは、支柱に茨が巻き付いた金銀の縫い取りのあるベットで寝ている眠り姫でした。鼠の国では金髪でしたが、この世界の眠り姫は青銀色の髪でした。
 身動き一つもせずに寝ているその姿は、生きているのを疑ってしまう程ですが……息はしているらしく、呼吸音はしっかりと聞こえてきます。
 手を胸の辺りで重ねているのですが、重ねた手が山に埋まっているのを見ると……何故でしょうか無性に腹が立ちます。
 ……効くといわれている体操をして、今度成長を促してみましょう。


閑話休題無い訳じゃないですよ


 それにしても、本当に専守なんですね――ここの茨は。ま、メルス様が彼女をどうにかしようとしたら、必ず動くと思いますがね。彼女を守る為に。

 はてさて、メルス様はどのようにして、この寝坊さんを起こすのでしょうかね。


 そんなことを、私は段々と大きくなっていく足音を聴きながら考えました。


SIDE OUT
~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~


「二人共、ありがとうな。お蔭ですぐに見つけられた」

『いえ、私達にはそれくらいのことしかできませんので』

『では、後はメルス様にお任せして私達はこれで失礼します』

「おう、お疲れ様」


 二人は俺に一度礼をしてから、その場から消えた。そして、この場には俺と眠り姫しかいなくなった。
 うん、とりあえず二人に調査を頼んでみたのだが……やっぱり、俺独りでやるよりも良かったな。そもそも男が姫の居る城を漁るというのもなんだかと思っていたので頼んだのだが……うん、最終的にはこういう状況になるんだったな。


 さて、彼女は一体どんな状態なんだ?
 とりあえずそれを知る為、俺は(鑑定眼)を使って彼女を調べることにする。


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