227 / 2,518
偽善者と終焉の島 前篇 六月目
偽善者と夢現空間 後篇
しおりを挟む夢現空間 入口
目の前にはいくつもの扉が存在していた。
色取り取りな色の扉には別々の紋章のような物が刻まれており、同じ物は見た感じ一つも無い。
《――様。メルス様、聞こえていますでしょうか?》
「(おう、聞こえてるけど……ここは一体どういう所なんだ?)」
アンに言われて入ってみたは良いが、ここがどんな所なのか全く聞かされていない。俺が最初に入って来た扉はそのままなので、帰ることは可能なのだろうが……しっかりとここの詳細は聞いておかないとな。
《そちらの夢現空間は、眷属達がメルス様に呼ばれていない時に待機する為の空間として作成しました。メルス様の目の前にある部屋の一つ一つ、あれが眷属の部屋です。
これがあれば、メルス様が実は気にしていらっしゃる監視も、メルス様が気にすることなくすることができます。何かあれば念話すれば良いだけですしね》
……ん? 要は眷属の部屋で、警備室ってことなのか? 俺のスキルなのに、あんまり俺に良いことが無い気がするが……。
《そう言われると思い、しっかりと用意してあります。
この空間の時間の流れは(時空魔法)により極限まで停滞していますので、メルス様も邪魔されることなく様々なことができますよ。
また、眷属用の部屋の他にも色々な施設が導入される予定ですので、お楽しみいただけると思います》
「(様々な施設って……。一体どうやったら、そんなものが増えるんだよ?)」
《単純にLvを上げれば増えるものや、ある条件を達成したら増えたりします。条件は現在把握している限りでは、加護などが当て嵌まりますね》
「(……ってことは、既に条件を満たして解放された部屋も――)」
《いえ、Lvが足りませんので解放はされていませんでした》
「(やっぱりLv1じゃ駄目か。ならどうやったらLvは上がるんだ?)」
《ここに誰かが居るだけでLvは上がりますよ……既にLvは2になっていますし》
うんうん、さすが経験チート。これなら全部屋解放も夢じゃないな。
「(……で、アンはこの空間の説明がしたかったのか? それだけだったらなら、そのままでも――)」
《いえ、問題は別にあります。ここにある扉は眷属全てに対応しています。となれば、つまり……》
「(……残して来た眷属達も来れると。そういうことなのか?)」
《恐らくはそうなるかと。ですが、向こう側がこちらに来れたとしても、わたし達から行くことはできません。あくまで彼女達が来れるだけです。現在は、メルス様が最初にこの空間を創った時に現れた扉だけがこの空間の出口なのですから》
「(う~ん……出口の追加は可能なのか?)」
《Lvが上昇すれば10毎に1つ可能になります。
ただし、出口として登録したい場所で再び"夢現空間"を発動しなければなりません》
出口を増やせるなら、戦闘にも使えそうだな。中に攻撃が来ないなら、こっちから一方的に攻撃できるし、そうでなくとも似たようなことを……ってあれ?
「(今更なんだがアン、お前らはどうやってこの空間に入るんだ? 俺の創った所から入るって条件じゃ、あいつらは入れないだろう)」
《メルス様、先程から出口と言ってるではないですか……入り口は別です。
眷属スキルに新しく、[夢現の間]というスキルが追加されます。そのスキルを使えば眷属は自分の部屋の中に移動されます。また、自分の部屋で再び[夢現の間]を発動することによって、元いた場所に戻ることが可能なのです》
アンがやれやれといったような感じでそう告げてくる。……いや、聞いて無いからね、その[夢現の間]!
《……では、そろそろわたしも引っ越しの準備を始めなければいけませんので、これで失礼させて頂きます》
「(……お、おう、気を付けろよ)」
《はい、了解しました》
この場所のどこに気を付ければ良いのか。 今更そんなことを考えても遅いのかもしれないが、ふと思う。
そういえば、俺の部屋もあるのだろうか。 そう考えて周りをグルグル歩いて探してみると、どこかで見たことある扉を見つけた。
「……あ、これ俺の部屋の扉じゃん」
ドアを開けてみると、そこは本当に俺が創りだした部屋が広がっていた。
1LDKのどこにでもありそうな部屋でありながら、実際に使われている家具は全て最高級品。無駄という無駄が詰め込まれた男の城。
――それがこの部屋、天魔の間なのだ。
ま、それを再現した部屋なんだろうな。家具が少しだけ異なっているし、何より俺が隠しておいた色々なアイテムが置かれていないし……バレてないならセーフだ。
若干、置いてあった布団にしわが寄っているのだが、きっと俺が寝た時の跡がそのままだったのだろう。寝た後はしっかり治している筈だが、きっとそうなのだろう。
閑話休題(オレハナニモシラナイ)
色々と謎を解き明かそうと考えている内にみんなの引っ越しは完了していた。……ちなみにだが、みんなの扉はこんな感じだ――
名前 色 紋章(デフォルメ済み)
・スー:白 熊
・グー:金 狐
・アン:純白 人形
・グラ:蒼海 犬×3
・セイ:銀朱 孔雀
・リー:白金 テレビ(きっと来る?)
・ギー:紫水晶 クロスした剣と杖
・ヤン:深緑 蛇
・シー:淡紫 山羊(絵の下に美女が見えた……張り替えた?)
・ユラル:若葉 木の芽
大体皆のイメージに合った部屋だった。他にもナイフとフォークのマークが付いた食事部屋や、シェフの帽子マークの厨房などの部屋もあったが、説明はまた別の機会にするとしよう。そんな厨房には色々な料理器具が置かれてい……無かったので、自前の調理器具と魔力で創った食材を使い魔力飯を作成し、それをみんなに食べさせた(体に良いんだよ。グーによって安全は確認済み。寧ろ体の中に完全吸収されるので、排泄物として出なくて良いらしい)。
みんなが満足したのを確認してから、俺は自室に戻って睡眠した(何故か、少し良い匂いがしたのは気の所為だろうか)。
0
お気に入りに追加
510
あなたにおすすめの小説
幼なじみ三人が勇者に魅了されちゃって寝盗られるんだけど数年後勇者が死んで正気に戻った幼なじみ達がめちゃくちゃ後悔する話
妄想屋さん
ファンタジー
『元彼?冗談でしょ?僕はもうあんなのもうどうでもいいよ!』
『ええ、アタシはあなたに愛して欲しい。あんなゴミもう知らないわ!』
『ええ!そうですとも!だから早く私にも――』
大切な三人の仲間を勇者に〈魅了〉で奪い取られて絶望した主人公と、〈魅了〉から解放されて今までの自分たちの行いに絶望するヒロイン達の話。
DPO~拳士は不遇職だけど武術の心得があれば問題ないよね?
破滅
ファンタジー
2180年1月14日DPOドリームポッシビリティーオンラインという完全没入型VRMMORPGが発売された。
そのゲームは五感を完全に再現し広大なフィールドと高度なグラフィック現実としか思えないほどリアルを追求したゲームであった。
無限に存在する職業やスキルそれはキャラクター1人1人が自分に合ったものを選んで始めることができる
そんな中、神崎翔は不遇職と言われる拳士を選んでDPOを始めた…
表紙のイラストを書いてくれたそらはさんと
イラストのurlになります
作品へのリンク(https://www.pixiv.net/member_illust.php?mode=medium&illust_id=43088028)
虚弱生産士は今日も死ぬ ―小さな望みは世界を救いました―
山田 武
ファンタジー
今よりも科学が発達した世界、そんな世界にVRMMOが登場した。
Every Holiday Online 休みを謳歌できるこのゲームを、俺たち家族全員が始めることになった。
最初のチュートリアルの時、俺は一つの願いを言った――そしたらステータスは最弱、スキルの大半はエラー状態!?
ゲーム開始地点は誰もいない無人の星、あるのは求めて手に入れた生産特化のスキル――:DIY:。
はたして、俺はこのゲームで大車輪ができるのか!? (大切)
1話約1000文字です
01章――バトル無し・下準備回
02章――冒険の始まり・死に続ける
03章――『超越者』・騎士の国へ
04章――森の守護獣・イベント参加
05章――ダンジョン・未知との遭遇
06章──仙人の街・帝国の進撃
07章──強さを求めて・錬金の王
08章──魔族の侵略・魔王との邂逅
09章──匠天の証明・眠る機械龍
10章──東の果てへ・物ノ怪の巫女
11章──アンヤク・封じられし人形
12章──獣人の都・蔓延る闘争
13章──当千の試練・機械仕掛けの不死者
14章──天の集い・北の果て
15章──刀の王様・眠れる妖精
16章──腕輪祭り・悪鬼騒動
17章──幽源の世界・侵略者の侵蝕
18章──タコヤキ作り・幽魔と霊王
19章──剋服の試練・ギルド問題
20章──五州騒動・迷宮イベント
21章──VS戦乙女・就職活動
22章──休日開放・家族冒険
23章──千■万■・■■の主(予定)
タイトル通りになるのは二章以降となります、予めご了承を。
俺と異世界とチャットアプリ
山田 武
ファンタジー
異世界召喚された主人公──朝政は与えられるチートとして異世界でのチャットアプリの使用許可を得た。
右も左も分からない異世界を、友人たち(異世界経験者)の助言を元に乗り越えていく。
頼れるモノはチートなスマホ(チャットアプリ限定)、そして友人から習った技術や知恵のみ。
レベルアップ不可、通常方法でのスキル習得・成長不可、異世界語翻訳スキル剥奪などなど……襲い掛かるはデメリットの数々(ほとんど無自覚)。
絶対不変な業を背負う少年が送る、それ故に異常な異世界ライフの始まりです。
モノ作りに没頭していたら、いつの間にかトッププレイヤーになっていた件
こばやん2号
ファンタジー
高校一年生の夏休み、既に宿題を終えた山田彰(やまだあきら)は、美人で巨乳な幼馴染の森杉保奈美(もりすぎほなみ)にとあるゲームを一緒にやらないかと誘われる。
だが、あるトラウマから彼女と一緒にゲームをすることを断った彰だったが、そのゲームが自分の好きなクラフト系のゲームであることに気付いた。
好きなジャンルのゲームという誘惑に勝てず、保奈美には内緒でゲームを始めてみると、あれよあれよという間にトッププレイヤーとして認知されてしまっていた。
これは、ずっと一人でプレイしてきたクラフト系ゲーマーが、多人数参加型のオンラインゲームに参加した結果どうなるのかと描いた無自覚系やらかしVRMMO物語である。
※更新頻度は不定期ですが、よければどうぞ
VRMMO~鍛治師で最強になってみた!?
ナイム
ファンタジー
ある日、友人から進められ最新フルダイブゲーム『アンリミテッド・ワールド』を始めた進藤 渚
そんな彼が友人たちや、ゲーム内で知り合った人たちと協力しながら自由気ままに過ごしていると…気がつくと最強と呼ばれるうちの一人になっていた!?
分析スキルで美少女たちの恥ずかしい秘密が見えちゃう異世界生活
SenY
ファンタジー
"分析"スキルを持って異世界に転生した主人公は、相手の力量を正確に見極めて勝てる相手にだけ確実に勝つスタイルで短期間に一財を為すことに成功する。
クエスト報酬で豪邸を手に入れたはいいものの一人で暮らすには広すぎると悩んでいた主人公。そんな彼が友人の勧めで奴隷市場を訪れ、記憶喪失の美少女奴隷ルナを購入したことから、物語は動き始める。
これまで危ない敵から逃げたり弱そうな敵をボコるのにばかり"分析"を活用していた主人公が、そのスキルを美少女の恥ずかしい秘密を覗くことにも使い始めるちょっとエッチなハーレム系ラブコメ。
女神様から同情された結果こうなった
回復師
ファンタジー
どうやら女神の大ミスで学園ごと異世界に召喚されたらしい。本来は勇者になる人物を一人召喚するはずだったのを女神がミスったのだ。しかも召喚した場所がオークの巣の近く、年頃の少女が目の前にいきなり大量に現れ色めき立つオーク達。俺は妹を守る為に、女神様から貰ったスキルで生き残るべく思考した。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる