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偽善者と終焉の島 前篇 六月目
偽善者と夢現空間 後篇
しおりを挟む夢現空間 入口
目の前にはいくつもの扉が存在していた。
色取り取りな色の扉には別々の紋章のような物が刻まれており、同じ物は見た感じ一つも無い。
《――様。メルス様、聞こえていますでしょうか?》
「(おう、聞こえてるけど……ここは一体どういう所なんだ?)」
アンに言われて入ってみたは良いが、ここがどんな所なのか全く聞かされていない。俺が最初に入って来た扉はそのままなので、帰ることは可能なのだろうが……しっかりとここの詳細は聞いておかないとな。
《そちらの夢現空間は、眷属達がメルス様に呼ばれていない時に待機する為の空間として作成しました。メルス様の目の前にある部屋の一つ一つ、あれが眷属の部屋です。
これがあれば、メルス様が実は気にしていらっしゃる監視も、メルス様が気にすることなくすることができます。何かあれば念話すれば良いだけですしね》
……ん? 要は眷属の部屋で、警備室ってことなのか? 俺のスキルなのに、あんまり俺に良いことが無い気がするが……。
《そう言われると思い、しっかりと用意してあります。
この空間の時間の流れは(時空魔法)により極限まで停滞していますので、メルス様も邪魔されることなく様々なことができますよ。
また、眷属用の部屋の他にも色々な施設が導入される予定ですので、お楽しみいただけると思います》
「(様々な施設って……。一体どうやったら、そんなものが増えるんだよ?)」
《単純にLvを上げれば増えるものや、ある条件を達成したら増えたりします。条件は現在把握している限りでは、加護などが当て嵌まりますね》
「(……ってことは、既に条件を満たして解放された部屋も――)」
《いえ、Lvが足りませんので解放はされていませんでした》
「(やっぱりLv1じゃ駄目か。ならどうやったらLvは上がるんだ?)」
《ここに誰かが居るだけでLvは上がりますよ……既にLvは2になっていますし》
うんうん、さすが経験チート。これなら全部屋解放も夢じゃないな。
「(……で、アンはこの空間の説明がしたかったのか? それだけだったらなら、そのままでも――)」
《いえ、問題は別にあります。ここにある扉は眷属全てに対応しています。となれば、つまり……》
「(……残して来た眷属達も来れると。そういうことなのか?)」
《恐らくはそうなるかと。ですが、向こう側がこちらに来れたとしても、わたし達から行くことはできません。あくまで彼女達が来れるだけです。現在は、メルス様が最初にこの空間を創った時に現れた扉だけがこの空間の出口なのですから》
「(う~ん……出口の追加は可能なのか?)」
《Lvが上昇すれば10毎に1つ可能になります。
ただし、出口として登録したい場所で再び"夢現空間"を発動しなければなりません》
出口を増やせるなら、戦闘にも使えそうだな。中に攻撃が来ないなら、こっちから一方的に攻撃できるし、そうでなくとも似たようなことを……ってあれ?
「(今更なんだがアン、お前らはどうやってこの空間に入るんだ? 俺の創った所から入るって条件じゃ、あいつらは入れないだろう)」
《メルス様、先程から出口と言ってるではないですか……入り口は別です。
眷属スキルに新しく、[夢現の間]というスキルが追加されます。そのスキルを使えば眷属は自分の部屋の中に移動されます。また、自分の部屋で再び[夢現の間]を発動することによって、元いた場所に戻ることが可能なのです》
アンがやれやれといったような感じでそう告げてくる。……いや、聞いて無いからね、その[夢現の間]!
《……では、そろそろわたしも引っ越しの準備を始めなければいけませんので、これで失礼させて頂きます》
「(……お、おう、気を付けろよ)」
《はい、了解しました》
この場所のどこに気を付ければ良いのか。 今更そんなことを考えても遅いのかもしれないが、ふと思う。
そういえば、俺の部屋もあるのだろうか。 そう考えて周りをグルグル歩いて探してみると、どこかで見たことある扉を見つけた。
「……あ、これ俺の部屋の扉じゃん」
ドアを開けてみると、そこは本当に俺が創りだした部屋が広がっていた。
1LDKのどこにでもありそうな部屋でありながら、実際に使われている家具は全て最高級品。無駄という無駄が詰め込まれた男の城。
――それがこの部屋、天魔の間なのだ。
ま、それを再現した部屋なんだろうな。家具が少しだけ異なっているし、何より俺が隠しておいた色々なアイテムが置かれていないし……バレてないならセーフだ。
若干、置いてあった布団にしわが寄っているのだが、きっと俺が寝た時の跡がそのままだったのだろう。寝た後はしっかり治している筈だが、きっとそうなのだろう。
閑話休題(オレハナニモシラナイ)
色々と謎を解き明かそうと考えている内にみんなの引っ越しは完了していた。……ちなみにだが、みんなの扉はこんな感じだ――
名前 色 紋章(デフォルメ済み)
・スー:白 熊
・グー:金 狐
・アン:純白 人形
・グラ:蒼海 犬×3
・セイ:銀朱 孔雀
・リー:白金 テレビ(きっと来る?)
・ギー:紫水晶 クロスした剣と杖
・ヤン:深緑 蛇
・シー:淡紫 山羊(絵の下に美女が見えた……張り替えた?)
・ユラル:若葉 木の芽
大体皆のイメージに合った部屋だった。他にもナイフとフォークのマークが付いた食事部屋や、シェフの帽子マークの厨房などの部屋もあったが、説明はまた別の機会にするとしよう。そんな厨房には色々な料理器具が置かれてい……無かったので、自前の調理器具と魔力で創った食材を使い魔力飯を作成し、それをみんなに食べさせた(体に良いんだよ。グーによって安全は確認済み。寧ろ体の中に完全吸収されるので、排泄物として出なくて良いらしい)。
みんなが満足したのを確認してから、俺は自室に戻って睡眠した(何故か、少し良い匂いがしたのは気の所為だろうか)。
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