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偽善者と終焉の島 前篇 六月目
偽善者と朝帰り
しおりを挟むAM6:00
「あ、あの……もう止めて良いですかね? もう、足が限界なんだが」
『駄目!!』
「あ、はい」
突然であるが、現在俺は正座中だ。どこかの魔法科高校では、正座の最中は軽量化の魔法を使って足の痺れを発生させ辛くしているらしいが、スーの使った"封魔結界"のお蔭(皮肉)で魔法を使えない。
……さて、どうして俺はこうなったのだろうか。時間を遡って思い出してみよう。
1時間前
~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
AM5:00
「ただいま~ってあれ、どうしたんだ? みんな揃って出迎えなんて……てかアン、もう受肉したのか、過去最速じゃないか」
狩りを終えて帰って来た俺を待っていたのは、受肉を終えたアンと武器っ娘達だった。
受肉したアンの姿は、一言で纏めると、幸薄のアルビノ少女って感じだ。……まぁ、今は説明をしている場合じゃないな。だって、みんなの目がジト目になってるし。
『メルス……メッ!』
『マスター、朝帰りとは良いご身分だね』
「……まぁ、実際王だしな……って、みんな起きるの早いんだなー」
俺が昨日起きた時、時刻は7時を示していたので、てっきりみんなも同じくらいに起きるかなーって思ったのだが……。
『メルス、リーは受肉してからメルスの寝顔の確認をする為に早起きしている』
『ちょっとギー、なんでワタシだけが早起きしているみたいに伝えているの?! ギーだって一緒に見てるじゃない!』
『……何のことだか』
二人がいつものように盛り上がっているのだが、内容は聞こえてこない。……(難聴)スキルを習得していたっけ?
『ご主人様、心配したんですよ。現在のご主人様では最盛期の頃と違って、無双はできませんので』
『ごしゅじんさまはあんまり強く無いんだから、無理しちゃ駄目だよ』
「……カハッ」
フェニにももう勝てないし、俺も存在的にただのスキル引き出し口ぐらいの扱いになったのかな~。ははは、俺もう疲れたよ。OTZのポーズで俺の心の気持ちを表すことにした。
……そんなポーズをしていても、結局誰もツッコんでくれなかったので、すぐに元の立ち姿に戻したんだけどな。
「そういえばアン、受肉早すぎないか?」
『……中々本題に行きませんね。これは、グー様が"機巧乙女"の解析に成功して、受肉速度を速めることに成功したからです』
「本当に凄いな、グーって。本当に、何でも知れそうだな」
『ふふ、ありがとう。……さて、現実逃避もそろそろ終わりにして、現実と向き合おうかマスター』
「はは、そうだ……な」
『とりあえず……正座』
「……はい」
と、いう訳で俺は正座することになった。
さぁ、元の時間軸に戻ろう
~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
突然だが、魔法についての説明だ。
魔法は世界に広がる魔素を体内に取り入れてそれを魔力に変換、詠唱をすることで変換された魔力を世界が何らかの形で強制的に動かして魔法として発露させる……これが基本である。
基本・中級・上級と位が上がる毎に消費する魔力・魔素は増えるのだが、MPが少ない者は魔素を体内に溜め込むことができない為、変換に失敗し魔法が発動しない場合がある。
ちなみに属性適性は取り入れられる魔素の属性を表しており、適性の無い魔素を必要とする魔法を魔素を取り込めない場合、当然発動ができない。
また魔法適性は、魔力に変換するのに必要な魔素量を表している。
適性が高い程、少ないMPで魔法を発動できるという訳だ(ちなみにAPを使ったりするスキルも同様で、自らの精神エネルギーを消費して、武器の性能以上の技を発動するものが武技である)。
……さて、話を戻そう。
現在俺の周りに形成されている"封魔結界"は、結界内の魔素の動きを封じる結界だ。
つまり、体内体外問わず、魔法の発動が不可能になると言う訳だ。
魔素を動かせなくなった相手に勝ち目など無く、このままでは俺は足が棒になるのは確定だろう。
だが、今の俺には便利なスキルが幾つか存在する――(領域支配)(氣魔直接操作)(魔力化)である。
(氣魔直接操作)は、魔・氣力を直接操作して、スキルをイメージだけで発動できるようにするスキルだ。
(氣魔直接操作)は(無詠唱)と似ているスキルなのだが……本来魔物が扱うスキルで、人族が習得することは不可能な物だった。
詠唱を行うことのできない魔物達がmスキルを発動する為に使えるようになったのがこのスキルである。
スキル名が表すように、体の中の氣力や魔力の流れを直接操作し、魔法や武技を発動する時のそれらの流れを擬似的に再現してそれらを発動できる。
詠唱が出来る人族は、詠唱を割愛することには成功――((無詠唱)とかな)したが、氣力や魔力の微細な流れをコントロールすることはできなかった。
……そう考えると、頭の中だけでそれらを処理できるようにした【思考詠唱】を、自力且つ独学で習得したアルカは、本当に凄いと思う。人類史上初の快挙である。
だが例えそこまで便利だったとしても、(氣魔直接操作)だけでは魔素自体をどうこうできる訳では無い。
ここで使うのが(魔力化)だ。
(魔力化)は、自身の体を魔素だけで構成する肉体に改変できるスキルだ。そこに、ある一定の範囲の環境を自由にできる(領域支配)で魔素を強引に外部から掻き集めて、それを直接操作してスキルの発動を促せば――
(――限定"魔力化・重力")
……うん。脚だけを重力魔素化して、正座の重みを消すことに成功した。(氣魔直接操作)で脚の外に魔力反応を出さないように抑えてあるので、今の所は誰も気づかない。
よし、このまま正座を乗り切るぞ!!
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