上 下
211 / 2,519
偽善者と終焉の島 前篇 六月目

偽善者と朝帰り

しおりを挟む


 AM6:00

「あ、あの……もう止めて良いですかね? もう、足が限界なんだが」

『駄目!!』

「あ、はい」


 突然であるが、現在俺は正座中だ。どこかの魔法科高校では、正座の最中は軽量化の魔法を使って足の痺れを発生させ辛くしているらしいが、スーの使った"封魔結界"のお蔭(皮肉)で魔法を使えない。
 ……さて、どうして俺はこうなったのだろうか。時間を遡って思い出してみよう。


1時間前
~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~

 AM5:00

「ただいま~ってあれ、どうしたんだ? みんな揃って出迎えなんて……てかアン、もう受肉したのか、過去最速じゃないか」


 狩りを終えて帰って来た俺を待っていたのは、受肉を終えたアンと武器っ娘達だった。
 受肉したアンの姿は、一言で纏めると、幸薄のアルビノ少女って感じだ。……まぁ、今は説明をしている場合じゃないな。だって、みんなの目がジト目になってるし。


『メルス……メッ!』

『マスター、朝帰りとは良いご身分だね』

「……まぁ、実際王だしな……って、みんな起きるの早いんだなー」


 俺が昨日起きた時、時刻は7時を示していたので、てっきりみんなも同じくらいに起きるかなーって思ったのだが……。


『メルス、リーは受肉してからメルスの寝顔の確認をする為に早起きしている』

『ちょっとギー、なんでワタシだけが早起きしているみたいに伝えているの?! ギーだって一緒に見てるじゃない!』

『……何のことだか』


 二人がいつものように盛り上がっているのだが、内容は聞こえてこない。……(難聴)スキルを習得していたっけ?


『ご主人様、心配したんですよ。現在のご主人様では最盛期の頃と違って、無双はできませんので』

『ごしゅじんさまはあんまり強く無いんだから、無理しちゃ駄目だよ』

「……カハッ」


 フェニにももう勝てないし、俺も存在的にただのスキル引き出し口ぐらいの扱いになったのかな~。ははは、俺もう疲れたよ。OTZのポーズで俺の心の気持ちを表すことにした。
 ……そんなポーズをしていても、結局誰もツッコんでくれなかったので、すぐに元の立ち姿に戻したんだけどな。


「そういえばアン、受肉早すぎないか?」

『……中々本題に行きませんね。これは、グー様が"機巧乙女"の解析に成功して、受肉速度を速めることに成功したからです』

「本当に凄いな、グーって。本当に、何でも知れそうだな」

『ふふ、ありがとう。……さて、現実逃避もそろそろ終わりにして、現実と向き合おうかマスター』

「はは、そうだ……な」

『とりあえず……正座』

「……はい」


 と、いう訳で俺は正座することになった。


さぁ、元の時間軸に戻ろう
~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~


 突然だが、魔法についての説明だ。
 魔法は世界に広がる魔素を体内に取り入れてそれを魔力に変換、詠唱をすることで変換された魔力を世界が何らかの形で強制的に動かして魔法として発露させる……これが基本である。
 基本・中級・上級と位が上がる毎に消費する魔力・魔素は増えるのだが、MPが少ない者は魔素を体内に溜め込むことができない為、変換に失敗し魔法が発動しない場合がある。

 ちなみに属性適性は取り入れられる魔素の属性を表しており、適性の無い魔素を必要とする魔法を魔素を取り込めない場合、当然発動ができない。
 また魔法適性は、魔力に変換するのに必要な魔素量を表している。
 適性が高い程、少ないMPで魔法を発動できるという訳だ(ちなみにAPを使ったりするスキルも同様で、自らの精神エネルギーを消費して、武器の性能以上の技を発動するものが武技である)。

 ……さて、話を戻そう。

 現在俺の周りに形成されている"封魔結界"は、結界内の魔素の動きを封じる結界だ。
 つまり、体内体外問わず、魔法の発動が不可能になると言う訳だ。
 魔素を動かせなくなった相手に勝ち目など無く、このままでは俺は足が棒になるのは確定だろう。

 だが、今の俺には便利なスキルが幾つか存在する――(領域支配)(氣魔直接操作)(魔力化)である。
 (氣魔直接操作)は、魔・氣力を直接操作して、スキルをイメージだけで発動できるようにするスキルだ。
 (氣魔直接操作)は(無詠唱)と似ているスキルなのだが……本来魔物が扱うスキルで、人族が習得することは不可能な物だった。
 詠唱を行うことのできない魔物達がmスキルを発動する為に使えるようになったのがこのスキルである。
 スキル名が表すように、体の中の氣力や魔力の流れを直接操作し、魔法や武技を発動する時のそれらの流れを擬似的に再現してそれらを発動できる。
 詠唱が出来る人族は、詠唱を割愛することには成功――((無詠唱)とかな)したが、氣力や魔力の微細な流れをコントロールすることはできなかった。
 ……そう考えると、頭の中だけでそれらを処理できるようにした【思考詠唱】を、自力且つ独学で習得したアルカは、本当に凄いと思う。人類史上初の快挙である。

 だが例えそこまで便利だったとしても、(氣魔直接操作)だけでは魔素自体をどうこうできる訳では無い。

 ここで使うのが(魔力化)だ。
 (魔力化)は、自身の体を魔素だけで構成する肉体に改変できるスキルだ。そこに、ある一定の範囲の環境を自由にできる(領域支配)で魔素を強引に外部から掻き集めて、それを直接操作してスキルの発動を促せば――


(――限定"魔力化・重力")


 ……うん。脚だけを重力魔素化して、正座の重みを消すことに成功した。(氣魔直接操作)で脚の外に魔力反応を出さないように抑えてあるので、今の所は誰も気づかない。
 よし、このまま正座を乗り切るぞ!!


しおりを挟む
感想 13

あなたにおすすめの小説

World of Fantasia

神代 コウ
ファンタジー
ゲームでファンタジーをするのではなく、人がファンタジーできる世界、それがWorld of Fantasia(ワールド オブ ファンタジア)通称WoF。 世界のアクティブユーザー数が3000万人を超える人気VR MMO RPG。 圧倒的な自由度と多彩なクラス、そして成長し続けるNPC達のAI技術。 そこにはまるでファンタジーの世界で、新たな人生を送っているかのような感覚にすらなる魅力がある。 現実の世界で迷い・躓き・無駄な時間を過ごしてきた慎(しん)はゲーム中、あるバグに遭遇し気絶してしまう。彼はゲームの世界と現実の世界を行き来できるようになっていた。 2つの世界を行き来できる人物を狙う者。現実の世界に現れるゲームのモンスター。 世界的人気作WoFに起きている問題を探る、ユーザー達のファンタジア、ここに開演。

パーティ追放が進化の条件?! チートジョブ『道化師』からの成り上がり。

荒井竜馬
ファンタジー
『第16回ファンタジー小説大賞』奨励賞受賞作品 あらすじ  勢いが凄いと話題のS級パーティ『黒龍の牙』。そのパーティに所属していた『道化師見習い』のアイクは突然パーティを追放されてしまう。  しかし、『道化師見習い』の進化条件がパーティから独立をすることだったアイクは、『道化師見習い』から『道化師』に進化する。  道化師としてのジョブを手に入れたアイクは、高いステータスと新たなスキルも手に入れた。  そして、見習いから独立したアイクの元には助手という女の子が現れたり、使い魔と契約をしたりして多くのクエストをこなしていくことに。  追放されて良かった。思わずそう思ってしまうような世界がアイクを待っていた。  成り上がりとざまぁ、後は異世界で少しゆっくりと。そんなファンタジー小説。  ヒロインは6話から登場します。

特殊部隊の俺が転生すると、目の前で絶世の美人母娘が犯されそうで助けたら、とんでもないヤンデレ貴族だった

なるとし
ファンタジー
 鷹取晴翔(たかとりはると)は陸上自衛隊のとある特殊部隊に所属している。だが、ある日、訓練の途中、不慮の事故に遭い、異世界に転生することとなる。  特殊部隊で使っていた武器や防具などを召喚できる特殊能力を謎の存在から授かり、目を開けたら、絶世の美女とも呼ばれる母娘が男たちによって犯されそうになっていた。  武装状態の鷹取晴翔は、持ち前の優秀な身体能力と武器を使い、その母娘と敷地にいる使用人たちを救う。  だけど、その母と娘二人は、    とおおおおんでもないヤンデレだった…… 第3回次世代ファンタジーカップに出すために一部を修正して投稿したものです。

悪役貴族の四男に転生した俺は、怠惰で自由な生活がしたいので、自由気ままな冒険者生活(スローライフ)を始めたかった。

SOU 5月17日10作同時連載開始❗❗
ファンタジー
俺は何もしてないのに兄達のせいで悪役貴族扱いされているんだが…… アーノルドは名門貴族クローリー家の四男に転生した。家の掲げる独立独行の家訓のため、剣技に魔術果ては鍛冶師の技術を身に着けた。 そして15歳となった現在。アーノルドは、魔剣士を育成する教育機関に入学するのだが、親戚や上の兄達のせいで悪役扱いをされ、付いた渾名は【悪役公子】。  実家ではやりたくもない【付与魔術】をやらされ、学園に通っていても心の無い言葉を投げかけられる日々に嫌気がさした俺は、自由を求めて冒険者になる事にした。  剣術ではなく刀を打ち刀を使う彼は、憧れの自由と、美味いメシとスローライフを求めて、時に戦い。時にメシを食らい、時に剣を打つ。  アーノルドの第二の人生が幕を開ける。しかし、同級生で仲の悪いメイザース家の娘ミナに学園での態度が演技だと知られてしまい。アーノルドの理想の生活は、ハチャメチャなものになって行く。

王宮で汚職を告発したら逆に指名手配されて殺されかけたけど、たまたま出会ったメイドロボに転生者の技術力を借りて反撃します

有賀冬馬
ファンタジー
王国貴族ヘンリー・レンは大臣と宰相の汚職を告発したが、逆に濡れ衣を着せられてしまい、追われる身になってしまう。 妻は宰相側に寝返り、ヘンリーは女性不信になってしまう。 さらに差し向けられた追手によって左腕切断、毒、呪い状態という満身創痍で、命からがら雪山に逃げ込む。 そこで力尽き、倒れたヘンリーを助けたのは、奇妙なメイド型アンドロイドだった。 そのアンドロイドは、かつて大賢者と呼ばれた転生者の技術で作られたメイドロボだったのだ。 現代知識チートと魔法の融合技術で作られた義手を与えられたヘンリーが、独立勢力となって王国の悪を蹴散らしていく!

元おっさんの俺、公爵家嫡男に転生~普通にしてるだけなのに、次々と問題が降りかかってくる~

おとら@ 書籍発売中
ファンタジー
アルカディア王国の公爵家嫡男であるアレク(十六歳)はある日突然、前触れもなく前世の記憶を蘇らせる。 どうやら、それまでの自分はグータラ生活を送っていて、ろくでもない評判のようだ。 そんな中、アラフォー社畜だった前世の記憶が蘇り混乱しつつも、今の生活に慣れようとするが……。 その行動は以前とは違く見え、色々と勘違いをされる羽目に。 その結果、様々な女性に迫られることになる。 元婚約者にしてツンデレ王女、専属メイドのお調子者エルフ、決闘を仕掛けてくるクーデレ竜人姫、世話をすることなったドジっ子犬耳娘など……。 「ハーレムは嫌だァァァァ! どうしてこうなった!?」 今日も、そんな彼の悲鳴が響き渡る。

虚弱生産士は今日も死ぬ ―遊戯の世界で満喫中―

山田 武
ファンタジー
今よりも科学が発達した世界、そんな世界にVRMMOが登場した。 Every Holiday Online 休みを謳歌できるこのゲームを、俺たち家族全員が始めることになった。 最初のチュートリアルの時、俺は一つの願いを言った――そしたらステータスは最弱、スキルの大半はエラー状態!? ゲーム開始地点は誰もいない無人の星、あるのは求めて手に入れた生産特化のスキル――:DIY:。 はたして、俺はこのゲームで大車輪ができるのか!? (大切) 1話約1000文字です 01章――バトル無し・下準備回 02章――冒険の始まり・死に続ける 03章――『超越者』・騎士の国へ 04章――森の守護獣・イベント参加 05章――ダンジョン・未知との遭遇 06章──仙人の街・帝国の進撃 07章──強さを求めて・錬金の王 08章──魔族の侵略・魔王との邂逅 09章──匠天の証明・眠る機械龍 10章──東の果てへ・物ノ怪の巫女 11章──アンヤク・封じられし人形 12章──獣人の都・蔓延る闘争 13章──当千の試練・機械仕掛けの不死者 14章──天の集い・北の果て 15章──刀の王様・眠れる妖精 16章──腕輪祭り・悪鬼騒動 17章──幽源の世界・侵略者の侵蝕 18章──タコヤキ作り・幽魔と霊王 19章──剋服の試練・ギルド問題 20章──五州騒動・迷宮イベント 21章──VS戦乙女・就職活動 22章──休日開放・家族冒険 23章──千■万■・■■の主(予定) タイトル通りになるのは二章以降となります、予めご了承を。

VRMMO~鍛治師で最強になってみた!?

ナイム
ファンタジー
ある日、友人から進められ最新フルダイブゲーム『アンリミテッド・ワールド』を始めた進藤 渚 そんな彼が友人たちや、ゲーム内で知り合った人たちと協力しながら自由気ままに過ごしていると…気がつくと最強と呼ばれるうちの一人になっていた!?

処理中です...