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偽善者と天下無双 五月目
偽善者と報酬カタログ その02
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前回のあらすじ
カタログで見つけた、(豪華特典付)という言葉に惑わされた俺は選んだ999999Pも掛かる"個人面談"を選択してしまった。すると、目の前が光に包まれ……って感じだな」
誰に向けてかは知らない状況説明も終えたし、次は周りの確認だな。
一言で纏めると、(空間創造)で創った初期状態の世界のように思われる。
今では立派な国が存在する第一世界も最初はこんな感じだったなー……って待て、もっと前に見たことがあるぞ! あれは、確か……そうだ――
ピカーン(何かが出現する音)
「初期設定をした場所だ!!」
『うわっ! ビックリした―』
突然後ろで声がしたので振り返ってみるとそこでは、紅髪の女性が驚いたような顔をしながら立っていた。
『突然大きな声を出さないで頂戴。ビックリしちゃったじゃないの』
「……あ、お前は撲滅イベントの声の人」
『声の人って……えぇ、そうよ。私が撲滅イベントのアナウンスをやってた――GM05よ』
そう言って、胸を張っていた。……胸に関しては何も言わないが、クライミングがやり易いとだけここに記しておこう。
『……何か、変なことを考えている気もするけどまぁ良いとするわ。メルス、貴方がカタログで選んだ"個人面談(豪華特典付)"は、貴方に頼みたいことがあったから用意したの。私の話――聞いてくれる?』
05はそう上目遣いをこちらにしながら、そう言ってきた。……あざとくねぇか?
「俺は(豪華特典付)の為にこれを選んだんだが……お前の頼みを聞いたら貰えるのか?」
『え? まぁ、用意したのも私だしね。叶えてくれたならお礼はしっかり渡すわ』
「そうか、ならば引き受けよう。……で、頼みたいことは何なんだ?」
『……案外理解が早いわね。私が頼みたかったのは――名前よ』
「名前?」
『そう、名前よ名前。貴方、前に01お姉様に名前をあげたのよね? ――"レイ"っていう』
「……あげたな」
『それからというもの、01お姉様は自分のことを"レイ"と名乗って、いつも楽しそうなのよ。『"模倣者"に会って名前を貰ったって』……そんな話を何回も聞いてれば、みんな名前が欲しくもなるじゃない! 何回聞いたと思う? ……50回は聞いたわよ少なくとも!』
「そ、そうなのか」
レイさん、アンタ姉妹に何を言っているんですか。そんなに自慢することでも無いと思いますよ。どうせなら、主人公的存在から貰う名を大切にしましょう。
『……フゥ。ま、そんなレイお姉様の姿を見て、私や他の姉妹達も貴方から名前を貰おうとしていているの。今回は丁度私がイベントの担当GMだったから、イベントの報酬カタログに貴方しか選べないようなPで、干渉に必要なあれこれを組み込んだ景品を入れたの』
「成程」
要するにあれだな。レイさんが名前を自慢したから、他のGM達も名前が欲しくなった。だから999999Pでこの場を用意した。
――と、そんな訳か。
「……つまり、俺はお前に名前を用意すれば良いってことなのか? それなら、俺じゃなくても良いと思うんだが」
『貴方じゃないとダメな理由があるのよ。詳しい理由は言えないんだけど、私達に名前を付けるってことは、普通のプレイヤーには不可能に近いことなのよ。だから、そんな厳しい条件を達成できている現在たった一人の存在である、貴方に頼んでいるのよ』
「まぁ、名前を考えるだけだしな。こっちもできるだけ、良い名前を考えてはみるが……あんまり期待はしないでくれよ」
『……え? くれるの、名前』
「まぁな。何かこうなった理由の一部に、俺も関連している気がするしな。少し待っててくれよ」
『わ、分かったわ』
さて、そうはいったものの、どうするか。
05だからレイコなんて、そんな後で後悔するような名前にする訳にもいかないし……どうするべきかな?
0・5・05。そうだな~――
「――"シンク"。シンクってのはどうだ?」
『シンクって、どういう意味なの?』
「シンクってのは、5という意味だ。ちなみにその意味とは別に、こういった字を用意している――」
そう言って、(具現魔法)で漢字を空中に出現させる。気分的には強欲の島編で金髪の合法ロリがやってた数字のヤツだな。
「"真紅"。お前のその綺麗な髪の色と合わせたダブルミーニングだけど……どうだ?」
『…………』
彼女は下を向いて黙っていた。
よく見ると顔が赤いので、気に入らなかったのだろうか。
「……やっぱり、駄目だったか」
『――ッ!? そ、そんなこと無いわよ、気に入ったわ!』
「……(ホッ)。そ、そうか。気に入ってくれてなによりだ」
『ありがとう、"シンク"って名前。これから使わせて貰うわ。
だ、だから、私のことを呼んでみてくれる? シンクって……』
「……シンク」
カァァァ
そんな擬音が聞こえて来そうな程、05改め"シンク"が顔をより赤くしている。やっぱり『さん』や『様』を付けた方が良かったのかな?
「すまん、『様』を付けた方が良かったか?」
『ば、馬鹿! そうじゃないわよ!!』
えー、違うのかよ。……やっぱり、秋の空と乙女心は移り変わりが速いなー。
そんなことを考えていると――
ピカーン
先程と同じように、何かが出現したような音が鳴り、眩い光が眼球を照らす。
俺は光が止むと、光から現れたその人物を見て驚くことになった。
――あ、貴女は!!
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