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偽善者と天下無双 五月目
偽善者と第一層 後篇
しおりを挟む第四世界 天魔迷宮 第一層
『うーん、やっぱりパパに勝てなかった―』
「正確には、俺のスキルには……かな? ミントが強かったから、俺は固有スキルを使うことになったんだ。誇りに思って良いぞ」
『本当? わーい!』
――とそんな会話からも、模擬戦で俺が勝利したことは分かると思うのだが……実際はかなり苦戦した。
(虫魔法)で大量の虫を操り、本人は後方で(瞑想)を行う。虫を倒すのに時間を掛ければ、より強力な虫達を召喚される。その虫も一撃で倒せなければ、(体力譲渡)でHPを回復されて復活、そしてまた虫を召喚されるのだ。大変だろう?
だから試合に勝って勝負に負けた気分になりながら、【科学魔法】で殺虫成分でもある合成ピレスロイドを作成して、周りに展開してばら撒いていった。
すると(異常耐性)を持つミント以外は全部死滅して、模擬戦は俺の勝利に終わった……てな訳だ。
「そうだ、レミル」
『はい、何でしょうか?』
「アレの準備ができたから受け取ってくれるか? 頑張って創ったんだ」
『こ、これは――っ!』
そう言って、"武神の指輪"を仕舞った箱を"空間収納"から取り出し、レミルに箱に差し出した。
片膝立ちに姿勢を変えてから、俺はレミルに告げる――
「前にも言ったが、俺はお前を嫁にしたい。レミル、俺のハーレムに入ってくれ」
そう言って、箱をパカッと開き指輪が見えるように少し腕を伸ばす。頭は下げたので、レミルの表情は見えない、果たしてどうなることやら。……そして、レミルが真っ直ぐな視線をこちらに向けながら(予想)答える――
『メルス様、私も前に言いました。メルス様の眷属兼従魔兼嫁であると。その時から私の答えは決まっています。
メルス様のハーレムに、ぜひ入らせて貰います』
レミルは、自分の胸に手を当てながら(予想)俺にそう言ってきた。
……何か、フェニの時にも思ったのだが恥ずかしいなこれは。そう考えていると、レミルが再び口を開く――
『――ですので、この指輪を私に嵌めてくれませんか?』
「わ、分かった」
俺は箱から指輪を取り出して、レミルに嵌めた。レミルは自分の薬指に付いた指輪を見て、とても嬉しそうだった(いつものようにレ○プ目だけど)。
このまま桃色の雰囲気が続くのかなー、と思っていると――
『ご主人』
「ん? なんだ、フェニ」
『レミルにはキスをしないのか』
「…………キ、キス?」
『我がキスをされた時の話をしたら、とてもされたそうにしていたぞ』
「…………キ、キス?」
『やってあげてはくれないか? ほらっ、レミルも期待の眼差しで見ているぞ』
確かに、レミルの方を見ると、目をキラキラさせながらこちらを見ていた(レイ(ry)。
でも、折角嫁になってくれたんだし、キスもしない仮面夫婦って訳にもいかないしな。
「レミル、キスするぞ」
『(コクンッ)』
俺はレミルの顎を持ち上げ、そっとキスをする。自分でも顔が熱くなってるのが分かるくらいには緊張したが、何とかやり遂げた。
『あ、ありがとうございます』
「いいいいや、ここ、こ、こちらこそありがとうございます」
『やっぱり面白いな、ご主人は』
フェニが俺をそう言ってからかってくる。
ちっくしょー、今に見てろよ。絶対、今の俺と同じくらいに顔を赤くしてやるんだからな(ちなみに、レミルは俺と同じかそれ以上(?)に顔が赤い、嬉しいものだよ)。
『パパ、私にもキスして!』
「……大人になったらな」
『キスぐらいしてもしたいの!』
「……せめて、もう少し成長してからな」
『うん!!』
ミントがキスを強請って来たので、とりあえずお父さんの定番『大きくなったらな』を使って誤魔化す。今のままキスをしたら、顔全部にキスをしてしまうからな。ミントは一人『早く大きくならないかな~♪』とご機嫌だが、そんなに早く成長したら世の中に幼女と紳士がいなくなってしまう(後者はいなくても別に良いか)。
「……さて、そろそろ帰るかな」
『えー、もう帰っちゃうの?』
「あぁ、ミントも(人化)できるようになったみたいだし、新しい装備を作りたいしな」
『本当!? ありがとう!』
「良いよ、気にするな。家族なんだから」
『家族……そうだね、私達は家族だもんね』
「そういうことだ。フェニ、レミルも鍛錬を頑張って続けろよ」
『うむ、分かった』
『必ずや強くなります』
そんな挨拶をしてから、俺はダンジョンを脱出して修練場に戻ってからログアウトを行う。……やっぱり布団は最高だぜ。
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