上 下
168 / 2,518
偽善者と天下無双 五月目

偽善者と第一層 後篇

しおりを挟む


第四世界 天魔迷宮 第一層


『うーん、やっぱりパパに勝てなかった―』

「正確には、俺のスキルには……かな? ミントが強かったから、俺は固有スキルを使うことになったんだ。誇りに思って良いぞ」

『本当? わーい!』


 ――とそんな会話からも、模擬戦で俺が勝利したことは分かると思うのだが……実際はかなり苦戦した。
 (虫魔法)で大量の虫を操り、本人は後方で(瞑想)を行う。虫を倒すのに時間を掛ければ、より強力な虫達を召喚される。その虫も一撃で倒せなければ、(体力譲渡)でHPを回復されて復活、そしてまた虫を召喚されるのだ。大変だろう?
 だから試合に勝って勝負に負けた気分になりながら、【科学魔法】で殺虫成分でもある合成ピレスロイドを作成して、周りに展開してばら撒いていった。
 すると(異常耐性)を持つミント以外は全部死滅して、模擬戦は俺の勝利に終わった……てな訳だ。


「そうだ、レミル」

『はい、何でしょうか?』

「アレの準備ができたから受け取ってくれるか? 頑張って創ったんだ」

『こ、これは――っ!』


 そう言って、"武神の指輪"を仕舞った箱を"空間収納"から取り出し、レミルに箱に差し出した。
 片膝立ちに姿勢を変えてから、俺はレミルに告げる――


「前にも言ったが、俺はお前を嫁にしたい。レミル、俺のハーレムに入ってくれ」


 そう言って、箱をパカッと開き指輪が見えるように少し腕を伸ばす。頭は下げたので、レミルの表情は見えない、果たしてどうなることやら。……そして、レミルが真っ直ぐな視線をこちらに向けながら(予想)答える――


『メルス様、私も前に言いました。メルス様の眷属兼従魔兼嫁であると。その時から私の答えは決まっています。
 メルス様のハーレムに、ぜひ入らせて貰います』


 レミルは、自分の胸に手を当てながら(予想)俺にそう言ってきた。
 ……何か、フェニの時にも思ったのだが恥ずかしいなこれは。そう考えていると、レミルが再び口を開く――


『――ですので、この指輪を私に嵌めてくれませんか?』

「わ、分かった」


 俺は箱から指輪を取り出して、レミルに嵌めた。レミルは自分の薬指に付いた指輪を見て、とても嬉しそうだった(いつものようにレ○プ目だけど)。
 このまま桃色の雰囲気が続くのかなー、と思っていると――


『ご主人』

「ん? なんだ、フェニ」

『レミルにはキスをしないのか』

「…………キ、キス?」

『我がキスをされた時の話をしたら、とてもされたそうにしていたぞ』

「…………キ、キス?」

『やってあげてはくれないか? ほらっ、レミルも期待の眼差しで見ているぞ』


 確かに、レミルの方を見ると、目をキラキラさせながらこちらを見ていた(レイ(ry)。
 でも、折角嫁になってくれたんだし、キスもしない仮面夫婦って訳にもいかないしな。


「レミル、キスするぞ」

『(コクンッ)』


 俺はレミルの顎を持ち上げ、そっとキスをする。自分でも顔が熱くなってるのが分かるくらいには緊張したが、何とかやり遂げた。


『あ、ありがとうございます』

「いいいいや、ここ、こ、こちらこそありがとうございます」

『やっぱり面白いな、ご主人は』


 フェニが俺をそう言ってからかってくる。
 ちっくしょー、今に見てろよ。絶対、今の俺と同じくらいに顔を赤くしてやるんだからな(ちなみに、レミルは俺と同じかそれ以上(?)に顔が赤い、嬉しいものだよ)。


『パパ、私にもキスして!』

「……大人になったらな」

『キスぐらいしてもしたいの!』

「……せめて、もう少し成長してからな」

『うん!!』


 ミントがキスを強請って来たので、とりあえずお父さんの定番『大きくなったらな』を使って誤魔化す。今のままキスをしたら、顔全部にキスをしてしまうからな。ミントは一人『早く大きくならないかな~♪』とご機嫌だが、そんなに早く成長したら世の中に幼女と紳士がいなくなってしまう(後者はいなくても別に良いか)。


「……さて、そろそろ帰るかな」

『えー、もう帰っちゃうの?』

「あぁ、ミントも(人化)できるようになったみたいだし、新しい装備を作りたいしな」

『本当!? ありがとう!』

「良いよ、気にするな。家族なんだから」

『家族……そうだね、私達は家族だもんね』

「そういうことだ。フェニ、レミルも鍛錬を頑張って続けろよ」

『うむ、分かった』

『必ずや強くなります』


 そんな挨拶をしてから、俺はダンジョンを脱出して修練場に戻ってからログアウトを行う。……やっぱり布団は最高だぜ。


しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

仮面の貴公子たち

 (笑)
BL
貴族として生きるリュークは、幼い頃の親友アレンと再会するが、彼は冷淡で謎めいた「仮面の貴公子」になっていた。再び距離を縮めようとするリュークに対し、アレンは何かを隠すかのように距離を置き続ける。二人の友情は過去の痛みと秘密に試されるが、果たしてその絆は真実へとたどり着くことができるのか。

異世界と繋がる不思議な門を警備する仕事に就きしました!

町島航太
ファンタジー
突如世界各地に現れ、開かれた異世界への門。そこから魔物や異世界人が侵入。世界は混乱に陥った・・・のは数十年前の話。人類側は異世界人と手を取り合い、異世界への門を占拠し、混乱を納めたのだ。しかし、未だ異世界への門は開きっぱなし。魔物や異世界の犯罪者を取り締まる為に門番を置くようになった。

外れスキルと馬鹿にされた【経験値固定】は実はチートスキルだった件

霜月雹花
ファンタジー
 15歳を迎えた者は神よりスキルを授かる。  どんなスキルを得られたのか神殿で確認した少年、アルフレッドは【経験値固定】という訳の分からないスキルだけを授かり、無能として扱われた。  そして一年後、一つ下の妹が才能がある者だと分かるとアルフレッドは家から追放処分となった。  しかし、一年という歳月があったおかげで覚悟が決まっていたアルフレッドは動揺する事なく、今後の生活基盤として冒険者になろうと考えていた。 「スキルが一つですか? それも攻撃系でも魔法系のスキルでもないスキル……すみませんが、それでは冒険者として務まらないと思うので登録は出来ません」  だがそこで待っていたのは、無能なアルフレッドは冒険者にすらなれないという現実だった。  受付との会話を聞いていた冒険者達から逃げるようにギルドを出ていき、これからどうしようと悩んでいると目の前で苦しんでいる老人が目に入った。  アルフレッドとその老人、この出会いにより無能な少年として終わるはずだったアルフレッドの人生は大きく変わる事となった。 2024/10/05 HOT男性向けランキング一位。

ブラック・スワン  ~『無能』な兄は、優美な黒鳥の皮を被る~ 

ファンタジー
「詰んだ…」遠い眼をして呟いた4歳の夏、カイザーはここが乙女ゲーム『亡国のレガリアと王国の秘宝』の世界だと思い出す。ゲームの俺様攻略対象者と我儘悪役令嬢の兄として転生した『無能』なモブが、ブラコン&シスコンへと華麗なるジョブチェンジを遂げモブの壁を愛と努力でぶち破る!これは優雅な白鳥ならぬ黒鳥の皮を被った彼が、無自覚に周りを誑しこんだりしながら奮闘しつつ総愛され(慕われ)する物語。生まれ持った美貌と頭脳・身体能力に努力を重ね、財力・身分と全てを活かし悪役令嬢ルート阻止に励むカイザーだがある日謎の能力が覚醒して…?!更にはそのミステリアス超絶美形っぷりから隠しキャラ扱いされたり、様々な勘違いにも拍車がかかり…。鉄壁の微笑みの裏で心の中の独り言と突っ込みが炸裂する彼の日常。(一話は短め設定です)

【外伝・完結】神獣の花嫁〜いざよいの契り〜

一茅苑呼
恋愛
こちらは『神獣の花嫁シリーズ』の外伝となります。 本編をご存じなくとも、こちら単体でもお読みいただけます。 ☆☆☆☆☆ ❖大神社の巫女 可依(かえ)23歳 夢占いが得意な最高位のかんなぎ        ✕ ❖萩原(はぎはら)尊臣(たかおみ)29歳 傲岸不遜な元国司、現萩原家当主 ────あらすじ──── 「まさかとは思うが、お前、俺に情けを交わして欲しいのか?」 「お戯れをっ」 ───自分の夢占に間違いはない。 けれども、巫女の身でありながら殿御と夜を共にするなど、言語道断。 「わたくしは、巫女でいたいのです」 乞われても、正妻のある方のもとへ行けるはずもなく。 「……息災でな」 そして、来たるべくして訪れる別れ。 ───これは、夫婦の契りが儚いものだった世のお話です。 ※表紙絵はAIイラストです。

私は貴方を許さない

白湯子
恋愛
甘やかされて育ってきたエリザベータは皇太子殿下を見た瞬間、前世の記憶を思い出す。無実の罪を着させられ、最期には断頭台で処刑されたことを。 前世の記憶に酷く混乱するも、優しい義弟に支えられ今世では自分のために生きようとするが…。

[鑑定]スキルしかない俺を追放したのはいいが、貴様らにはもう関わるのはイヤだから、さがさないでくれ!

どら焼き
ファンタジー
ついに!第5章突入! 舐めた奴らに、真実が牙を剥く! 何も説明無く、いきなり異世界転移!らしいのだが、この王冠つけたオッサン何を言っているのだ? しかも、ステータスが文字化けしていて、スキルも「鑑定??」だけって酷くない? 訳のわからない言葉?を発声している王女?と、勇者らしい同級生達がオレを城から捨てやがったので、 なんとか、苦労して宿代とパン代を稼ぐ主人公カザト! そして…わかってくる、この異世界の異常性。 出会いを重ねて、なんとか元の世界に戻る方法を切り開いて行く物語。 主人公の直接復讐する要素は、あまりありません。 相手方の、あまりにも酷い自堕落さから出てくる、ざまぁ要素は、少しづつ出てくる予定です。 ハーレム要素は、不明とします。 復讐での強制ハーレム要素は、無しの予定です。 追記  2023/07/21 表紙絵を戦闘モードになったあるヤツの参考絵にしました。 8月近くでなにが、変形するのかわかる予定です。 2024/02/23 アルファポリスオンリーを解除しました。

信頼出来ない語り手のものがたり

明智紫苑
大衆娯楽
「信頼出来ない語り手」は語り続ける。たとえ「妄想の塊」「訳の分からない念仏」などと嘲られてもなお、語る。  当掌編集は一部『Avaloncity Stories』とのつながりがありますが、全体的には『Avaloncity Stories』とは別のシリーズです。  個人サイト『Avaloncity』、ライブドアブログ『Avaloncity Central Park』、小説家になろう、カクヨムなどにも掲載しています。

処理中です...