160 / 2,518
偽善者と荒れ狂う喜劇 四月目
04-54 撲滅イベント その32
しおりを挟む竜人の祈念者が眷族となって、気絶状態に陥ってから約五分後。
人並みからやや外れた感覚が、彼女が覚醒したことを察した。
「……ん、うぅ……」
「おはよう。よく眠れたか?」
「……お陰様でね。まさか、変なことなんてしてないわよね?」
「あれ以降触れてはいないな、少なくとも。俺もアレらに観られながらはな……」
チラリと視線を向けた先に居るのは、結界の中に封じ込めた彼女の従魔たち。
まだまだ召喚時の魔力は残っているみたいで、こちらに敵意をガンガン向けていた。
「……そういえば、忘れてたわね」
「おい、それでいいのかご主人様」
「…………」
俺からの視線を避け、彼らを送還する。
少々間が合ったので、主従で繋げられたパスを通じて事情を説明したのだろう。
……というか、そうであってほしい。
次に呼ばれたとき、あのままの敵意だった場合何をされるか分からないからな。
「まあいい。では、始めるとしようか」
「いや、何をするのか聞いてない」
「……そういえば、忘れていたな」
「おい、それでいいのか」
彼女からの視線を避ける。
若干口調が戻っているが、まあそんなことはどうでもいいとしよう。
「一から説明しよう……とはいえ、やってもらうことは特にない。じっくりと調べて、原因を暴くだけのこと」
「い、厭らしいことを!?」
「同人誌みたいに……じゃないんだよ。視るだけだ、ただの視るだけで充分だから」
「……やっぱり」
なんとなく思考が分かるが、もう返す気力もないや。
姦な視線を向けるわけでもない……いやまあ結果的に、視えてくるものはあるけど。
「ステータスを開示するだけだ。お前自身にも見ることができない、例のヤツも含めて」
「そ、そういえばそうよね。ええ、忘れていたわ……それ以外ないわね」
「……。視た情報は全部そっちに送る、一時的に[パーティー]として共有すれば確認できるだろう。ついでだ、[フレンド]登録もしておいてくれ」
「……ええ、そうね」
さっそく[パーティー]及び[フレンド]登録を済ませ、始めた。
しっかりと目を凝らすことで、少女のすべてを覗き見る。
「鑑定っと」
《“神気”──“鑑定眼”》
通常よりも視なければいけな情報が多いので、ありったけの神気を注ぎ込む。
先ほどまでは詳細を見ることができなかった部分まで、情報を暴いていく。
《レン、グーも解析を頼む》
《了解しました》《心得たよ》
ただ、鑑定眼で視ることのできる情報は多くて、凡人たる俺では整理ができない。
そこでそのすべてを眷族に任せて、その負担が無いようにしておく。
丸々ダウンロードとして、特定の箇所から必要なデータを抽出して考察する感じか。
いちいち見ている時間も、考えるだけのお頭も無いので仕方ないのだ。
◆
解析能力に長けた二人が同じ作業をやっているのだ、その結果もすぐに届く。
調べ終えた情報は『万智の魔本』に記載され、読むことでそれを知ることが可能。
その情報を鑑定で視た情報として偽装し、不安そうな少女にも視れるよう共有する。
突然出現したことに驚き、不服そうな表情だったが……その内容に再び驚く。
「百面相か?」
「……驚かない方がおかしいわ。何よ、このわけの分からない称号は」
「おまけにこの邪縛? というのも面白そうだな」
「他人事みたいに……あと、このCHMって数値は何よ。振った覚えがないのに、これだけ凄い数値じゃない」
彼女のステータスにおいて、人とは異なる点は大きく分けて三つ──
・膨大すぎる隠し能力値のCHM
・称号スキルとして得た能力
・邪縛という謎のカテゴリー
隠し能力値は、性能の高い鑑定系スキルで視ることのできる[ステータス]。
基本的に対応した能力値が高いと、それに比例して数値が大きくなる。
だが隠し能力値が高くとも、普段表示される数値が小さいという場合もあった。
……国民たちの能力値で検証を済ませてあるので、確定した情報だ。
特にブレが大きいのは、LUK値が影響するCHM値とSUI値。
前者は他者への影響度を意味するカリスマで、後者はさまざまな事象への適性度。
どちらも本来、得ようと思って得られるモノではない先天的な概念だからだろう。
「それに加えて……何なの、この<天姿国色>と(美神の怨恨)って?」
「前者は例の症状を発生させる原因、後者は判定時のCHM値の倍化と状態の悪化を起こしているみたいだ。どっちも普通の方法じゃ見れないように細工してあったようだな」
「美の神って……そういえば、チュートリアルのとき、そんなこと言っていたわね」
「理由は知らんが、それが直接の原因だな。怨恨と書くぐらいだ、理由は腹いせだろう」
腹いせって……と呟くイア。
まあ、それまでの悩みがAFOを始めてすぐの出来事が理由だったみたいだし。
普通、チュートリアルキャラがそんなことするかって思うよな。
……俺もあんな経験をしていなかったら、そんな反応をしていたかもしれない。
ちなみに<天姿国色>の判定は、MIN値という抵抗値によって行われる。
俺のMIN値は彼女のCHM値に劣っている……が、精神強化が働いていた。
お陰で判定時に補正が掛かっていたため、通常の判定も無効化に成功していたのだ。
「たしかにそっちにも驚いたわよ。けど、一番気になるのは──これよ」
「……ただの能力値だろ。それがどうしたんだ?」
「高すぎる。いったい何をしたの?」
「……一度しか言わないぞ。これこそが、俺の眷族が得られる恩恵なのだ!」
せっかくなので、と具現魔法を発動。
唖然とするイアの反応を見る限り、どうやら上手くいったようだ。
「……何、それ?」
「魔法による演出だな。まあ、他のモノも含めてちゃんと説明するさ」
「……頭痛が痛いって、こういうときに使う表現なのね。もう、何でもいいわ」
思考放棄をした彼女に、それでもしっかりとした説明を行うことに。
──背後に未だ、『ドドンッ!!』という文字を浮かばせたまま。
===============================
イアのステータスおよび今回出たスキルなどとなります
---------------------------------------------------------
ステータス
名前:イア(女)
種族:(竜人族Lv36)
職業:(召喚士Lv24)・(料理士Lv3)
HP:142/500
MP:201/800
AP:138/500
ATK:55
VIT:50
AGI:40
DEX:40
LUC:13
〔L CHM:1000〕
BP:0
スキルリスト
武術
(大剣術Lv14)(片手剣術Lv13)(大盾術Lv11)
魔法
(竜魔法:種族Lv30)CS(付与魔法Lv21)
(生活魔法Lv14)
身体
(竜鱗生成:種族Lv30)CS
(竜翼生成:種族Lv30)CS
(竜爪生成Lv30:種族)CS(飛行:種族Lv19)
(体幹Lv24)(軽業Lv17)
技能
(中級鑑定Lv14)(中級隠蔽Lv2)(解体Lv4)
(下級料理Lv5)(二刀流Lv35)(輪唱Lv22)
特殊
<天姿国色:称号Lv->
(竜人の血脈〔・龍神〕:種族Lv-)
(召喚魔法Lv24)(料理の心得Lv3)
祝福
(眷軍強化)
〔邪縛〕
〔美神の怨恨〕
SP:50
---------------------------------------------------------
---------------------------------------------------------
特殊:<天姿国色Lv->
発動者の顔を見た異性の抵抗力〔MIN値〕が対象者の魅力〔CHN値〕以下の場合、対象は状態異常:魅了になる
〔値の差が大きければ大きいほど、状態異常:魅了になる時間が長くなる〕
---------------------------------------------------------
---------------------------------------------------------
邪縛:(美神の怨恨)
対象者のCHM値が2倍となる
また、対象者により状態異常:魅了になったプレイヤーの状態異常を状態異常:魅了支配に変更される
同時に、発動対象に同性を含み、発動する状態異常:魅了を状態異常:怨恨に変更する
〔この効果は本神か、それ以上の神格所持者によって解除可能――発動者:下級神〕
---------------------------------------------------------
0
お気に入りに追加
510
あなたにおすすめの小説
幼なじみ三人が勇者に魅了されちゃって寝盗られるんだけど数年後勇者が死んで正気に戻った幼なじみ達がめちゃくちゃ後悔する話
妄想屋さん
ファンタジー
『元彼?冗談でしょ?僕はもうあんなのもうどうでもいいよ!』
『ええ、アタシはあなたに愛して欲しい。あんなゴミもう知らないわ!』
『ええ!そうですとも!だから早く私にも――』
大切な三人の仲間を勇者に〈魅了〉で奪い取られて絶望した主人公と、〈魅了〉から解放されて今までの自分たちの行いに絶望するヒロイン達の話。
DPO~拳士は不遇職だけど武術の心得があれば問題ないよね?
破滅
ファンタジー
2180年1月14日DPOドリームポッシビリティーオンラインという完全没入型VRMMORPGが発売された。
そのゲームは五感を完全に再現し広大なフィールドと高度なグラフィック現実としか思えないほどリアルを追求したゲームであった。
無限に存在する職業やスキルそれはキャラクター1人1人が自分に合ったものを選んで始めることができる
そんな中、神崎翔は不遇職と言われる拳士を選んでDPOを始めた…
表紙のイラストを書いてくれたそらはさんと
イラストのurlになります
作品へのリンク(https://www.pixiv.net/member_illust.php?mode=medium&illust_id=43088028)
虚弱生産士は今日も死ぬ ―小さな望みは世界を救いました―
山田 武
ファンタジー
今よりも科学が発達した世界、そんな世界にVRMMOが登場した。
Every Holiday Online 休みを謳歌できるこのゲームを、俺たち家族全員が始めることになった。
最初のチュートリアルの時、俺は一つの願いを言った――そしたらステータスは最弱、スキルの大半はエラー状態!?
ゲーム開始地点は誰もいない無人の星、あるのは求めて手に入れた生産特化のスキル――:DIY:。
はたして、俺はこのゲームで大車輪ができるのか!? (大切)
1話約1000文字です
01章――バトル無し・下準備回
02章――冒険の始まり・死に続ける
03章――『超越者』・騎士の国へ
04章――森の守護獣・イベント参加
05章――ダンジョン・未知との遭遇
06章──仙人の街・帝国の進撃
07章──強さを求めて・錬金の王
08章──魔族の侵略・魔王との邂逅
09章──匠天の証明・眠る機械龍
10章──東の果てへ・物ノ怪の巫女
11章──アンヤク・封じられし人形
12章──獣人の都・蔓延る闘争
13章──当千の試練・機械仕掛けの不死者
14章──天の集い・北の果て
15章──刀の王様・眠れる妖精
16章──腕輪祭り・悪鬼騒動
17章──幽源の世界・侵略者の侵蝕
18章──タコヤキ作り・幽魔と霊王
19章──剋服の試練・ギルド問題
20章──五州騒動・迷宮イベント
21章──VS戦乙女・就職活動
22章──休日開放・家族冒険
23章──千■万■・■■の主(予定)
タイトル通りになるのは二章以降となります、予めご了承を。
俺と異世界とチャットアプリ
山田 武
ファンタジー
異世界召喚された主人公──朝政は与えられるチートとして異世界でのチャットアプリの使用許可を得た。
右も左も分からない異世界を、友人たち(異世界経験者)の助言を元に乗り越えていく。
頼れるモノはチートなスマホ(チャットアプリ限定)、そして友人から習った技術や知恵のみ。
レベルアップ不可、通常方法でのスキル習得・成長不可、異世界語翻訳スキル剥奪などなど……襲い掛かるはデメリットの数々(ほとんど無自覚)。
絶対不変な業を背負う少年が送る、それ故に異常な異世界ライフの始まりです。
モノ作りに没頭していたら、いつの間にかトッププレイヤーになっていた件
こばやん2号
ファンタジー
高校一年生の夏休み、既に宿題を終えた山田彰(やまだあきら)は、美人で巨乳な幼馴染の森杉保奈美(もりすぎほなみ)にとあるゲームを一緒にやらないかと誘われる。
だが、あるトラウマから彼女と一緒にゲームをすることを断った彰だったが、そのゲームが自分の好きなクラフト系のゲームであることに気付いた。
好きなジャンルのゲームという誘惑に勝てず、保奈美には内緒でゲームを始めてみると、あれよあれよという間にトッププレイヤーとして認知されてしまっていた。
これは、ずっと一人でプレイしてきたクラフト系ゲーマーが、多人数参加型のオンラインゲームに参加した結果どうなるのかと描いた無自覚系やらかしVRMMO物語である。
※更新頻度は不定期ですが、よければどうぞ
VRMMO~鍛治師で最強になってみた!?
ナイム
ファンタジー
ある日、友人から進められ最新フルダイブゲーム『アンリミテッド・ワールド』を始めた進藤 渚
そんな彼が友人たちや、ゲーム内で知り合った人たちと協力しながら自由気ままに過ごしていると…気がつくと最強と呼ばれるうちの一人になっていた!?
分析スキルで美少女たちの恥ずかしい秘密が見えちゃう異世界生活
SenY
ファンタジー
"分析"スキルを持って異世界に転生した主人公は、相手の力量を正確に見極めて勝てる相手にだけ確実に勝つスタイルで短期間に一財を為すことに成功する。
クエスト報酬で豪邸を手に入れたはいいものの一人で暮らすには広すぎると悩んでいた主人公。そんな彼が友人の勧めで奴隷市場を訪れ、記憶喪失の美少女奴隷ルナを購入したことから、物語は動き始める。
これまで危ない敵から逃げたり弱そうな敵をボコるのにばかり"分析"を活用していた主人公が、そのスキルを美少女の恥ずかしい秘密を覗くことにも使い始めるちょっとエッチなハーレム系ラブコメ。
女神様から同情された結果こうなった
回復師
ファンタジー
どうやら女神の大ミスで学園ごと異世界に召喚されたらしい。本来は勇者になる人物を一人召喚するはずだったのを女神がミスったのだ。しかも召喚した場所がオークの巣の近く、年頃の少女が目の前にいきなり大量に現れ色めき立つオーク達。俺は妹を守る為に、女神様から貰ったスキルで生き残るべく思考した。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる