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偽善者と荒れ狂う喜劇 四月目

04-26 撲滅イベント その04

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 リア充グループのお偉い様たちを説得し、フェニの自由をどうにか勝ち取った。
 問題と言えば、攻撃魔法のグループ担当のアルカが観ていたいと伝えてきたことのみ。

 元より全力全開は控えておくように厳守していた、なのでそこは問題ない。
 ……なんとなく理解したのだが、彼女は天才だがそれ以上に魔法バカなんだよな。

「だから魔法を見せている間は、大人しくしているだろう。ナックル以上に絡んできそうだし、それで気を逸らしておかないとな」

 手が出るのが早い彼女を封殺すべく、フェニにはその監視をしてもらうことに。
 最悪死んで罪悪感を煽り、手を出させないのも考えの一つだ。

「まあ、それが完璧とも思わないからとりあえず逃亡。現在位置は……だいたい端っこ。北と南に配置しておいて、東と西がどうなっているのか気になったんだよな」

 オンラインゲームで時々ある、イベントエリアの使い回し。
 撲滅イベント開催前の勧告で、そのことが気になって調査も兼ねて離れてみたのだ。

「魔法を撃ってストレスは発散できた。次に何をすべきか……うん、暇だ」

《それでしたら、ご提案が》

「うおっ! レンか……どうした、何か確認しなきゃいけない問題でもできたか?」

《問題ではなく、確認しておきたいことが。主様マイマスター──天使……いえ、『御使いネメジュ』の解析が完了しました》

 御使い、それはかつて【英雄】を持った姉妹に宿っていた【封印】の鍵。
 強引にそれを解除しようとした者を迎撃する、防衛システムのような存在。

 俺は姉妹に偽善をするため、【封印】の強奪を試みた。
 その際に出現し、俺に襲い掛かって……きたので、倒してそのまま捕食していたのだ。

 レンは解析をしたがっていたので、それを任せていたのだが……そうか、終わったか。
 フェニ云々ですべてを忘れていたが、思考系のスキルもあってどうにか思いだせた。

「っと、そういえば変なアイテムもいっしょにドロップしてたな。[アイテムボックス]に入ってたのをそのまま送ったけど、あっちはどうなっている?」

《そちらは非常に解析が困難で、グーと共に調査中です。今回、御使いに関しては護衛にくかべになるよう洗の……説得を終えたため、ご報告させていただきました》

「ルビがおかしかったような……というか、明らかに最後洗脳って言ったよな?」

《気のせいです》

 絶対に言っていたが、これ以上粘っても時間を浪費するだけだろう。
 意外とレンは主張を曲げないので、こちらが折れる……あまり揉める話でもないし。

「で、俺はどうすればいい?」

《捕食空間より御使いを出してください。あとは主様が名を与えるだけで、御使いは主様のモノとなります》

「……なんだろう、物凄い犯罪感が」

《問題ないのでは?》

 レンが言うのであれば、そうなのだろう。
 何が起こるか分からない……が、そこはもうレンを信じるしかない。

 捕食空間へと繋がるスキルを起動し、内部から天使改め御使いを取り出す。
 すると、現れたその女性型の御使いは──地面に膝を突く。

「メルス様、何なりとご命令を」

「Oh……」

 前回は無機質だった蒼色の瞳も、今では意思の強さをはっきりと映し輝いている。
 ただし、それは使命を奪い去った略奪者へ向けられるもの。

 やっぱり、罪悪感が胸に突き刺さる。
 彼女は人形でも道具でもない、個の意思を宿すことのできる女の子なのだ。

 それを自分たちのいいように使う、それを凡人である俺が選択できるわけがない。
 しかし、それ以上にこの世界の俺は偽善者だ……せめて、好いと思えるように扱おう。

「まずはステータスを視せてくれ。何をしてもらうか、それを視てから決める」

「了解しました」

「──“鑑定眼”。うーん、言ってはなんだが思ったより低いな」

「その件でしたら、レン様よりお言葉を賜っております。『権限の移譲により、能力値のリセットが行われた』……とのことです」

 魔物を従魔にすれば、弱体化が起きるのと同じシステムだろうか?
 仮でも最終段階まで進めた結果、もう後には引けない状況に追い込んであると。

「スキルのいくつかに『:停止』って言葉が付いているな。これが原因か?」

「はい。御使いは名の通り、御方に使える種族です。意義を果たせぬ以上、私たちに残されたのは最低限の力のみとなります」

「なるほど……うん、俺でいいなら主になろう。多少弱くなるかもしれないが、いっしょに強くなればいいさ」

「ありがとうございます、メルス様」

 恭しい態度にまだ罪悪感を覚えるが、しばらく共に行動すれば俺も彼女も慣れるはず。
 まずは主従の壁を取り払うためにも、名を与えてやらんと。

「…………そうだな、レミルだ。これからお前はレミルと名乗り、俺の眷族──いや、家族として共に居てくれ」

「……眷族、という言葉の意味は分かりました。ですが、家族……というのは? 使徒とは兵器、道具でしかありません」

「道具、道具ねぇ……悪いが俺はそんな道具にも人格を求めて、いっしょに居てもらうような変人なんだ。命令、自分の意志で考えて動くように。すべての行動に命令を求めなくても良し!」

「で、ですが……!」

 うん、ただ黙って従うのではなく、不満というより戸惑いを見せるレミル。
 この時点で、彼女には確固たる意思が芽生えているのだと分かった。

 ならば彼女にも、俺の家族ごっこを本物にする手伝いをしてもらおう。
 今はまだそうとしか呼べないが、いずれ本当の家族と胸を張って言うために。

「まあまあ、話はあとで。俺の眷族になることは納得してくれたんだろう? 先に眷族の儀式を済ませるから、その後でこの件についてじっくり話すことにしよう」

「……畏まりました」

 不服そうな感じが見え隠れするのも、昔の人形状態を考えると満足がいく反応だろう。
 彼女が【封印】していた姉妹同様、眷属の印を刻み──気絶したレミルを支える。

「眷族としてのステータスの反映に気絶が必要なだけで、もうステータスは変わっているはずだよな──“鑑定眼”っと」

 再び鑑定眼スキルで彼女を視て、何がどう変わったのかを調べておく。
 ……いきなり強キャラになっているとか、そういう展開だと困るからな。


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レミルのステータスです

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ステータス
名前:なし→レミル(女)
種族:(御使いLv1)
職業:(使徒Lv-)

HP:100
MP:300
AP:200

ATK: 5
VIT: 5
AGI: 5
DEX: 5
LUC:20

スキル
(天使魔法Lv50/1)(天翼生成Lv40/1)
(飛行Lv30/1)(分神顕現Lv1:停止)
(神の使徒Lv-:停止)

祝福
(運命神の加護:停止)→(眷軍強化)(天魔の守護)

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