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偽善者と未熟者たち 三十九月目

偽善者と新人イベント その20

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 始まりの街 クランハウス『ユニーク』


 弟子を見守る師匠ポジで、生徒たちを神眼で観察していた……彼女たちは固有スキル持ちのPKに勝利していたようだが、俺は眷属相手にあっさり負けてしまったよ。


「イベントは終わったわけだが……お前の所の新人は、何というかとんでもないな。あの『闇霧』を倒すとは」

「闇霧? ああ……あの固有スキル持ちのことか。アレは奇襲だからこそ強いタイプだろう? うちの連中、正々堂々な場で戦うなら圧倒的に有利だからな」


 新人の教導を務めた祈念者たちは、このイベントを経た新人たちの現状を報告することになっている……が俺はそれが面倒だったので、代案としてナックルに任せることに。

 彼も彼で新人を育てていて、忙しいのは分かっているが……そこはお任せだな。
 だからこそ、全部では無くきちんと報告はしている……する相手が違う気もするが。


「お前の言う連中……その言葉は、どちらかというとあの人たちのことを言うだろ。というかなんだアレ、お陰で助かったけど。いろいろとヤバ過ぎて、[掲示板]がかなり荒れているみたいだったぞ」

「うげっ、まあそりゃあ露見するよな。具体的な容姿に関する情報とかはあるのか?」


 眷属たちが始まりの街付近で暴れ回ったことは、やはりバレているか。
 それでも、しっかりとした偽装を施していたため真相を知る者は居ない。

 なお、リオン曰く正確な情報が無ければ制裁などはできないと前に言われていた。
 だからこそ、今は派手に動き回ってもバレないような偽装工作を心掛けている。

 それはそれとして、祈念者たちに眷属たちの情報が漏れるのはちょっと厄介だ。
 なんせ美少女と美女(今回はプラス狼)の集団だ、注目されたら追いかけ回される。


「……数人分からなかったようだが、ほとんどの奴は性別が女だってバレてたぞ」

「…………ノーコメントで」


 眷属たちはこちらの会話を聞いているだろうし、俺から言うことは特段何もない。
 ただ、女性だと分かっても世界の半分は女性なので大丈夫だろう。

 また、そもそも探す範囲を祈念者に絞っている限りはバレないはず。
 あえてマーカーで識別している者たちの視界には、祈念者として映るようにしてたし。


「こ、今回は新人の話だろ……ともあれ、無事にイベントも終わったわけだ。この教導、いつまで続けるんだ?」

「最終報告会を予定していて、そこでこれからの進路をある程度補助するつもりだ。以降の関係性はそれぞれで自由に、少なくとも強制をするつもりは無い」

「ふむ……それ、お前の所物凄く苦労するんじゃないか?」

「…………まあ、いちおうその分カバーするメンバーも多いからな。言っておくが、その日はうちの奴らを連れてかないでくれよ? 大事な主戦力なんだから」


 むしろ、交渉して全員の予定を確保した方が面白くなりそうな気がしないでもない……だがそこまですると、さすがにナックルもこれからの対応を変えてしまうだろう。

 便利な身代わ……ごほんっ、壁としてこれからも頑張ってもらいたいわけだし。
 関係性を守るためにも、その日は大人しくしておこうか……今のところは。


「──なあナックル、絶対に今する質問じゃないことは分かっているんだが……」

「……なら、訊かないでほしいんだが?」

「イベントで得たポイントで、普通どういうものを交換するんだ? 正直、課金アイテムと交換するぐらいしか使い道が無い」

「んー? まあ、それも一つの手だとは思うけどな。普通は、使用回数を気にしなくていい回復アイテムとか、蘇生アイテムとかを選ぶと思うんだがな」


 いやまあ、自分で用意できますし。
 今回、やる気の無い教導役をやる気にさせた秘薬だって、俺が作っているのだから今更である。


「あとはそうだな……[専用空間]、今回のPKたちの拠点だったわけだし、お前も交換してみたらどうだ? 報酬のポイントでいろいろと改造できるみたいだぞ」

「あんまり魅力は感じないな……お前の大好きな迷宮都市だって、俺の魔法で創造された世界なわけだし」

「……維持とか、どうなってるんだ? やっぱり、迷宮化をするのか?」

「まあ、そうだな。俺が維持するのもできなくは無いけど、将来的な問題になりそうだしな。言っておくが、攻略しようとするなら住民が全力で阻んでくるからな」


 俺の創造した世界、偽善の結果自由世界に居られなくなった者たちを集めた場所。
 その世界を俺が居なくなった後も維持できるよう、迷宮として存続させた。

 迷宮なので核を破壊すれば維持機構が停止する……ということを住民たちにも周知させているため、今の安寧を守るためにも住民自ら率先して動くだろう──報酬もあるし。


「まあ、いろいろとあるしじっくり確認してみればいいんじゃないか? ガチャみたいなアイテムも──」

「ガチャは悪い文明だ。俺、現実でも欲しいと思うモノって全然出ないんだ……おまけにこっちの世界だと、邪縛のせいで凶運状態なわけだし」


 すでに、目を付けていたアイテムなどは交換済みだった……問題は一度に交換できる数に制限があったこと──いやまあ、普通の人なら充分な交換量だったけども。

 だが俺の場合、眷属が際限なく活躍したため無尽蔵にポイントを稼げていた。
 なので必要なアイテムの交換数を超え、かなり持て余している。


「お、おう……でもお前さん、たしかポイントは腐るほどあるんだろう? 下手な鉄砲も数撃ちゃ当たるって言うし、運営が関わっているからか時々ガチャのルールも変わっているから一度やってみろよ」

「…………ま、まあ、そこまで言うなら。いやー、ナックル君。君がどうしてもって言うなら仕方が無いかなー。いやー、これは本当にしょうがいないなー」

「…………理由が欲しかっただけかよ」


 何か言っている気もするが、今はそれよりも優先するべきことがあった。
 そうだな、眷属も誘ってガチャを楽しんでみようじゃないか!

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