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偽善者と未熟者たち 三十九月目

偽善者と新人イベント その18

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 ござるさんが毒を受けたということで、一時的に撤退されました。
 相手の数も減っておりますし、そろそろ戦い方を変える必要があるでしょう。

 私が……というよりも、先生主導で作られた人形は全部で十体。
 その一つである『魔法少女』は、広域殲滅に特化した人形だと仰られておりました。

 他にも近接担当、斥候担当、解析担当などさまざまな人形が居りますが、問題が一つありまして……今の私の技量では、一度に扱えるのがせいぜい二人までということ。

 普通の人形であれば、一体につき魔力線を一本である程度動かすことができます。
 自由気ままに動かそうとするのであれば、加えて二本ぐらい重ねておりますの。

 ですが、十体の人形たちは最低でも四本、難しい人形は九本必要となります。
 最低の本数では十全な力は発揮できず、十本使うことで力を振るえました。

 今は五本必要な魔法少女を、より高い精度で使うために十本使用しています。
 数を減らせば、さすがに今ほどの魔法は使えなくなるでしょう。

「『魔法少女マナマギ』、糸を減らしますよ」

『え~、残念だな~』

 繋いだ糸の数は、そのまま発揮できる力量に反映されております。
 ゆえに、人形はより多くの糸を繋いで使うことが推奨されていました。

 ただ、先生は一本の指から複数の糸を伸ばし、逆に複数の糸を一つに束ね上げて利用していることもありましたが……アレは上位者の中でも上澄みしかできないと思いますの。

『じゃあ、最後に一発──えいっ!』

 一度派手な魔法を使ってもらい、そのうえで壁となる魔法を使ってもらいました。
 その間に、[アイテムボックス]から新たに人形を取り出して糸を繋いでいきます。

 片方の手から出していた魔力の糸をすべて断ち、そちらの人形に移していく。
 四本の糸を繋ぎ終えると、閉じていた目が開きます。

「『主護騎士アイディス』、お仕事ですの」

『──承知しました、マイレディー』

 防御を得意とする女性型の人形。
 彼女は大盾を構え、攻撃に備えます。
 魔法少女はその後ろに下がり、そこから魔法を唱えていく。

 余っている最後の一本、そこから伸ばしていく魔力の糸。
 繋ぐのは人形……ではなく、この場に多く居るPKたち。

『えーい!』

「そうはさせ……っ!?」

 何かしようとしている人が居れば、その都度糸で魔力を乱していく。
 耐性や魔道具で防がれる場合が多いのですが、今回は上手く通せました。

 先生のように自力で防ぐ術を持つ方はともかく、アイテムの場合どこかに耐性を突破できる『穴』のようなものがある場合がございますの。

 あくまで感覚的なものですが、そこに糸を通すと相手に干渉しやすくなっていました。
 操糸の技術は先生から学んでいますので、どこからでも糸を向かわせられますの。

『あっ、お姉ちゃーん、来たみたいだよー』

「! そう、ですの」

「──新人の君たちに任せてすまない! ここからは……うぉっ、かなり倒したみたいだな。もしかして、俺たちは不要か?」

「いえ、そんなことはありませんわ。どうか私たちに、先輩方の助力をお借りしたく」

 魔法少女が感知してくれた、PKではない祈念者の方々の反応。
 他の場所に隠れていた方々を倒し、まだ終わっていないここへ入らしたのでしょう。

 彼らを拒むこともできなくはありません。
 ですが、時間を掛け過ぎたという意味ではあまり得策では無いでしょう。

【ござるさん】

【承知したでござる。今来た者たちは生かしておくでござる】

 ……どうやらござるさんは、まだ続けるようですわね。
 私はレベルよりも、今は技術の方を磨くべきでしょう。

「仲間が一人、影に居りますわ」

「暗殺者タイプか……了解した。全員、PKたちを殺っちまうぞ!」

『おうっ!』

 そうして戦いは乱戦へ。
 私と魔法少女は支援に徹し、主護騎士は私たちの護衛を行ってくれています。

 ござるさんは混乱で慌てふためいている者たちを、一人ずつ確実に倒しておりました。
 援軍の数もそれなりだったため、あっという間に片付いてしまいます。

 ここでやることは、もう無いでしょう。
 ──向こうもそうなのでしょう、消えていた花子さんの現在位置が再び表示されるようになりましたわ。

【花子さん、聞こえておりますの? こちらは全員倒しましたわ】

【そう……こっちもある程度やったわ。すぐにここから出て、残党狩りに行く】

【まだ居りますのね、分かりましたわ】

【承知したでござる】

 連携をあまり取ってはくれない花子さんですが、それでもこちらに気を遣ってくれますの……ただその理由には、打算めいたものがあるでしょうけども。

 ですが元より、私たちはそれぞれの目標の追及を求めたからこそ集まった者たち。
 先生もその在り方を認めておりますので、行動を強制されることは無いでしょう。

 ……その先生自体が強要することはありますが、まあそれは忘れておきますの。

「魔法少女、主護騎士。二人とも、次の場所へ向かいますわよ……それでは皆さん、私たちはここで失礼しますわ」

『はーい』『了解した』

【ござるさん?】

【影に移ったでござる】

 全員、準備はできているようですし、ここから離れましょう。
 PKたちに容赦のない方々に後を任せ、私たちは花子さんの待つ場所へ向かいました。

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