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偽善者と荒れ狂う喜劇 四月目

04-14 撲滅イベント前哨戦 その06

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 俺が課した条件──それは、クランからの脱退であった。
 固有持ちが集まってできた『ユニーク』から抜ける、その覚悟が欲しかったから。

 ──なんて理由ではなく、口喧嘩の果てにやけくそになって言ってしまったのだ。
 今の地位を捨ててまでやろとするなら、応えるのが偽善……そう考えてしまったから。

「で、ユウが抜けたことは分かった。約束通り、俺を師匠と呼ぶことを許そう……普通、俺みたいな奴の言うことを鵜呑みにして、超大手から抜けるなんて異常だからな。正直、罪悪感もあるけど」

「やった、ありがとう──師匠! 一言余計なのは気にしないであげる」

「はいはい、それはいいんだよ……けどさ、なんでお前らも抜けているんだ? する意味まったくないよな……えっ、バカなの?」

「「「…………」」」

 すでに問いただしてはいるが、改めてそう評価する。
 それぞれ理由はあるが、少なくともユウのように俺を師として崇めるためではない。

 ただ監視をするだけであれば、クランに所属したままでもできたはず……それなのに、この場に居る女子全員が脱退しようとしているのだ。

「だいたい、元のクランはどうするんだよ。お前ら、全員ちゃんと誰もが納得する理由で脱退したのか? そうじゃないなら、責任とかを取りにいかないとダメじゃないか」

「「「「うっ……」」」」

 どうして賢そうなノロジーまでもが……と思ったが、そういえば狂っている系マッドサイエンティストの素質があったことを思いだして諦める。

「クランの脱退って、そんな一瞬で済むことだったっけ?」

「一定数の幹部の承認が必要だから、まだです……僕たちのギルドは全員がその幹部だから、全然承認されていないよ」

「……なるほど、なら問題な──」

「けど、その申請は全員が知るところだし、みんな知っているよね。そこに師匠が現れたら……僕たちを連れている時点で、怪しまれること間違いなし!」

 どうしようもない、詰んでいる状況だ。
 それでも、一度話を付けておかなければならないのかもしれない。

 ……とりあえず、ユウには腹が立った。
 そのお仕置きをしながら、どうするべきか考えてみようか。

  ◆   □   ◆   □   ◆

「これは……どういうことなんだ? あと、ユウはどうしてそんなに頬が腫れている?」

ふぇふぇちゅに……」

「セイラが居るんだから、治すこともすぐだろうに……そこのお客人が関係しているのだろう? それと、四人分の脱退申請も」

「まあ、そういうことだ」

 クラン『ユニーク』の代表者であるナックルは、ただただ頭を抱えてため息を吐く。
 どうやら普段からトラブルだらけで、そういうことへの耐性があるらしい。

「相談ぐらいしてくれれば、俺の方からとりなしもできたんだがな……美少女四人が抜けるかもしれないと、すでに漏れちまっているからな。少々揉めるぞ」

「というか、なぜソイツなんだ。俺たちよりも強いのか? ……ソイツを見ていると、なぜか体が逆立つんだが」

「うわっ、凄い脳筋発言! けど、たしかに一理あるね……強いの?」

 リーダーに追随するように、矛を握り締めた男(高校生ぐらい)と拳士っぽい少女(中学生ぐらい)が乗ってくる。

 俺は弱そう、遠回しにそう言っているのに気づいたのか……四人組が笑っていた。
 そちらも気になるが、他にやることがあるので後回しにしておく。

 少しだけ深く呼吸を行い、覚悟を決める。
 たまにやっていたことだが、今回のは特にひどいからな。

「──ふっ。ならば、試してみるか? 俺は別にそれでも構わぬぞ、この場に居るすべてが相手になろうと結果は変わらぬのだから」

 耐えきれなくてぶはっと息を漏らすユウ。
 同じく耐えられなくなっている三人、しかしアルカは思考詠唱を用いて、それらの反応が漏れないようにしてくれた。

 ……わざわざそんなことをしないでも、最初から笑わなければいいだろうに。
 というか、これもお前らと話し合って決めた態度だろう!

「おっ、なかなか面白いことを言えるヤツみたいじゃねぇか。いいぜ、乗った。なんせ俺たち全員での参加をお好みみたいだしな。試してやろうぜ!」

 剣士らしき青年が自身の武器を掴み、こちらに堂々と叫ぶ。
 うん、周りもなんやかんやで賛同しているみたいだし……言質は取れたな。

「そう言ってもらえると嬉しい──ならば、共に楽しもうじゃないか!!」

 起動させるのは【純潔】『星約の腕輪』。
 能力によって結界が構築され、この場に居る者たちを脱出不可能な状態にする。

 さすがは一流の者たちなので、すぐに破壊できないかを微力なダメージを与えてから試し始める……が、これから始まるゲームを終えるまで結界は破壊されない。

 彼らが結界を壊す固有スキルを持っていないか、それを確認した後で魔道具を使う。
 例のコンソールを解析し、録画や撮影をできなくするようにする品だ。

 あとは“時空加速アクセル”を発動させ、腕輪に命じるだけだ──ゲームの始まりを。

「さぁ、これから始まるは自己紹介も兼ねたただのお遊戯! メリットも利益も大有り、勝てば報酬は君たちの者! 負けても彼女たちの除名について話を聞いてくれればそれだけでいい! ──さて、報酬を出そうか」

 パチンと指を鳴らすと同時に、ゲームに関する情報を表示させる。 
 ……俺にできる即席の報酬だが、これで満足してもらえるだろうか?


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    遊戯名:お宝争奪戦
   人と力、求めよ強者たち

 制限時間:∞
 参加人数:16(5VS11)
 勝利条件:条件1or2の達成
    1:4VS11での勝利
    2:1VS11での勝利

[基本ルールはPvPと同じですが、条件1での戦闘に敗北した者は条件2へ参加することはできません。また、条件1を満たしていない者は条件2への参加は認められません]
[チーム全員の敗北、または代表者の降伏を確認した場合ゲームは強制終了します]

 勝利報酬:条件1or2の達成で変動
 勝利数0:なし
 勝利数1:武具の進呈(確定ランクA)
 勝利数2:種族に関する魔法スキル結晶
[竜・木・海・精霊・天使・悪魔よりそれぞれ一つをお選び可能です]

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