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偽善者と未熟者たち 三十九月目

偽善者と新人イベント その04

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 ??? クランハウス『エニアグラム』


 俺に課せられた使命、イベント中に悪さを企てるPKの排除を済ませた。
 そのために、[ロウシャジャル]の能力をディーに使ってもらうなど大盤振る舞いだ。

 彼らのアバターをオリジナル魔法で回収しており、利用することを目論んでいる。
 とりあえずは[アイテムボックス]に収納してあるので、必要になれば出す予定だ。

 死霊を憑りつかせて操るのも有りだが、そこまで使い道も思い浮かばない。
 まあ、最悪処理をすればいいだけだし、持て余しておくことに。


「さてと……ご苦労だったな」

【……あの程度でしたら……】

「さすがだな。ふむ、報酬は──」

【……今一度、機会を……】


 俺のクラン『エニアグラム』。
 そのクランハウスに隠された一室、呼び出していた三人のメンバー。

 仲介役のリヴェル、未だ正体不明の暗殺者『陽炎』、そして【暗殺王】チズ。
 今回、リヴェルを介して二人に依頼をしていたのだが、先に『陽炎』が成し遂げた。

 彼らへの報酬は特に決めておらず、毎度彼らに益のあるモノを提供している。
 いつもなら、アイテムの支給などで済ませていたのだが……今回は違うようだ。


「今の俺は縛り中だが、そのままでもいいなら構わないぞ」

【……まだ一度も勝てていない身、それらに意は申せません……】

「そうか。分かった、それじゃあさっそく始めると──気が早いぞ、せめて舞台には移動させてくれよ」


 発言の最中、振るわれた刃を魔力で構築した障壁で防ぐ。
 普段なら精気力で腕を硬化して防いだりするのだが、短剣は障壁に食い込んでいる。

 そのまま塗られた毒で死ぬというのが、本来の流れだ。
 だからこそ、自分から少し離れた場所で展開できる障壁を構築していた。

 求めていたのは戦闘の機会だが、『陽炎』がわざわざ正々堂々する必要も無い。
 それでも、これ以上は無駄だと判断したのか、短剣を仕舞い移動を行う。


「……なあ、アンタも見に行くのか?」

《なにか、ひつようになるかもしれません》

「あっ、観戦が報酬ってことで。それなら別にいいだろう?」
《……しかたありません、それにします》


 他の二人もまた、俺と『陽炎』の試合──死合を観戦するようだ。
 いちおう『陽炎』の方を確認するが、問題ないようで首肯している。

 なのでそのままクランハウスを拡張して確保した、模擬戦用の部屋に。
 そこまで広くはないが、闘技場と同じ仕組みは組み込んであるので全力で闘える。


「じゃあ、改めて。いつでもいいぞ」

【……では……】


 何かしたのか、突然光が発生。
 そしてその次には闇が辺りを覆い、霧やら冷気やらさまざまなモノが生成される。

 魔力で視覚を強化し、『陽炎』を見失わないようにしていた。
 だが無数の魔力現象を重ねることで、強引に姿を隠したようだ。

 まあ、それだけが探す手段だったわけじゃないので、問題ない。
 腕に装着される漆黒の大砲、そこに魔力を供給して前方に構える。


「──“法填”」


 発射された砲弾は、筒の色と相反して白い輝きを放つ。
 法の潔白さを示すように、地面に着弾して辺りにその影響を広げていく。

 だが、姿の見えない『陽炎』にその弾丸が当たることは無い。
 ……だからこそ、打ち込んだ砲弾を媒介に能力を発動させる。


「──“法区印”」

「──ッ」

「業値に応じたデバフが起きるぞ。お前ぐらいの犯罪者だと、長時間の潜伏は無理だろ。これが『御砲纏影[ロウシャジャル]』、俺が創り上げた人造ユニーク種の遺製具レリックだ」


 夢現祭りで討伐された個体も、まったく同じ遺製具をMVP獲得者に与えただろう。
 人造ユニーク種の数少ない欠点、それは遺製具が獲得者にアジャストしていないこと。

 その点から目を瞑れば、普通に能力は破格のものだ。
 特典に合わせてもらうのではなく、自分が合わせに行けば問題ない。


「そしてこれが──“罪亡き法弾ロウシャジャル”だ」

「──」

「分かりやすく言うと、業値がマイナスならほぼ即死だな。即死を回避する、また即死を無効化する能力なんかも全部無駄。とまあ、見ていた二人もご理解いただけたか?」

「《…………》」


 この場に居る三人とも、自分の行動原理を貫くためにある程度の殺しをしている。
 そのため、業値もマイナスになっているので……誰でも結果は同じになっていた。

 まあ、マイナス度合いで即死までの猶予はある程度あるし、回避する手段もある。
 あくまでも、彼らでは抗いようのないレベルで危険な技だったというだけだ。


【……お見事、です……】

「あー、悪いな。これを使うのは、以降最終手段にしておく。いちおう、絶対対処不可というわけじゃないから、使わない状態で俺に勝ったら再度使う……って形にすればいいだろう」

「うわー、まだ使う気なのかよ」
《……かなり、くせんしそうですね》

「二人も同じ条件にしてやるよ。勝ったら、俺に叶えられる限り何でも聞いてやるって条件はそのままにな。どういう方面でも、勝てる奴を探しているんだ、スポンサーをやっている分、期待しているんだぞ」


 新人ではないが、目を掛けているという点では彼らもまた同じこと。
 さて、チズに頼んだことの近況について確認しておかないと。


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