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偽善者と荒れ狂う喜劇 四月目
04-02 人化不死鳥
しおりを挟む「……予想以上に便利なスキルだったな」
俺がそう評するのは──【大王】だ。
大王が表すのは王を統べる王、つまりは上位互換ということ。
付与されるスキル(大王権限)は、それを分かりやすく証明してくれた。
それは他の【王】が持つ力の行使……それは【闘王】だけではない、【鬼人王】のような種族的なモノも含んでいたのだ。
「ジークさんの……というか、ルーン国国王の権限も入っているんだよな。返したはずだが……なんでだろうか?」
王の権限とは職業スキルだけではない。
神気のカテゴリーでもある権限というシステムを使うことで、強大な能力を行使することができる……それが王の力だ。
まあ、【闘王】の権限は一定規模の闘技大会で何度か優勝しないと発現しないようなので、いま得できるのは──(闘王覇気)をいずれ、他の王のスキルと一つ分として使えることだけなんだがな。
「あと、俺も【英雄】としては卵だったみたいだな……柄でもないから当然なんだが、レベルを上げれば孵化するか?」
もっとも、【英雄】ってある意味人殺しの称号でもあるんだけど。
血に塗れることで選ばれる蠱毒、本来の意はそんなもののはずだ。
少なくとも姉妹の【英雄】は『双剋』なので、そういう後ろ暗いことではないんだろうけど……俺って、思い当たるのが戦闘だけだからな。
閑話休題
「英雄と言えば人殺しの称号、称号と言えば[称号]システム……なんてわけの分からない流れから、調べてみよう」
気分転換にもちょうどいいだろう。
宙に[メニュー]を起動させ、[称号]の画面を展開すると──
---------------------------------------------------------
戦闘系
『運命改変者』→『運命略奪者』:運命改変率向上
敵対する『■■■■■』保有者討伐時、一定確率で能力を奪う
生産系
『神業生産師』:生産したアイテムに特殊効果が発生しやすくなる
特殊系
『神様見習い』→『下級神』:■■により神位格上昇・権能スキルの一部開放
また、神気最大量・生成速度向上
---------------------------------------------------------
──自分が見習いを卒業したことを知る。
「普通に働いているとかなら、それはいいことなんだろうけど……人外になっていますと言われて、やったー嬉しいなーとは言えないのが実情である」
他にも気にする点はいっぱいだ。
これまでもそうだが、気にすべきものがある中で特出してインパクトを放つ称号があるせいで、他を正しく識別できない。
「まず『運命略奪者』、俺は改変ではなく略奪をしたわけか……【封印】を奪ったからと理由はすぐに分かるんだけど。称号が書き換わるって、そんな現象もあるんだな」
天使からは何も奪えていなかったので、称号は例のアナウンスが鳴ったあとにでも書き換わったのだろう。
効果に関しては……うん、邪魔するなら問答無用で倒すつもりなので、能力狩りをするのにちょうど良さそうだ。
「もう一個の『神業生産師』は……便利そうだな、単純にスキルがあるだけでも価値が高くなっているし。前に取った称号で確実にBは取れてる、相乗効果でAのマイナスぐらいまでイケそうか?」
今は全然無いのだが、【鍛冶神】にも就く前に量産していた練習用の武器。
あれにはスキルが滅多に付かず、付いたとしても(○○威力向上・微)みたいに渋いものが多かった。
そのうち、アレを意図的に武具とかに付けれるようにしておきたい。
流れるかどうかは分からないが、自分のアイテムに殺されたくはないからな。
「今はもっといっぱい付いているし、薬とかそういうものにも補正が入っている……そのうち蘇生薬とか作れたりして」
一定確率で蘇生可能……とかそういう魔法は存在する。
だが、絶対に蘇生する魔法を少なくとも俺は知らない。
そういうのも作れるようになったら、きっと売れるだろう。
そして自由民にも使えるようになれば……偽善として、最大級の働きができるな。
「あとは『下級神』……うん、何も考えたくなくなってきた」
口に出して考察するのも鬱屈だ。
何が理由で成長したのか、それを考えると特に……うん、きっと【封印】関係のことで育ったんだよな。
──そうだ、そうに違いない(迫真)!
◆ □ ◆ □ ◆
天魔迷宮の二層、そこでレベリングを行おうとしていたのだが……問題が生じた。
「──このときを往事渺茫の想いで、待ち侘びていたぞご主人!!」
「きゅ、急に難しいことを言うな……というか、どこで憶えたんだそんなの?」
「ふっ、我は迷宮が生みし従順なる下僕。多少の知識は予め与えられている!」
「俺も昔、四字熟語にハマってなかったら気づけなかったからな…………で、それより訊きたいんだが──なんで?」
ちなみに意味は、昔のことを回顧するというものだが……今はどうでもいい。
俺の目の前には、美女が立っていた。
一言で纏めるのであれば──燃えるような髪と瞳を持ち、勝気な美貌を俺に向ける……加えて『ナイスバデェ』である。
格好は……服を二枚、片方の肩を露出した状態で着ているみたいな感じだ。
クロスしている影響か、それなりにあるお山も強調されていますぞ。
──そして、繋がりのようなものを感じたことで瞬時に理解できた。
彼女こそが、この階層の守護者……不死鳥のフェニであると。
「何がどうなったら人化するんだ?」
「おおっ、気づいてくれていたのか。ご主人の反応があまりに淡泊だったゆえ、気づいていないのかと」
「……なんでだろうな? まあ、驚いてはいるんだが表面に出てこないだけだと思ってくれればいい。で、解答は?」
「レン様の提案を、ミント殿と共に受けただけのこと。人型になることのメリット、そしてできることならばやっておいた方がいいという考えらしい」
たしかに、やらないのとやれないのでは全然意味が違う。
デカくて的になりやすい魔物の姿だけでなく、今の姿は持っておいた方がいい。
魔物の姿でしか使えないスキルがあるように、人型でしか使えないスキルもある。
その主なものが武術、そこに何らかの方法で魔物特有のスキルを加えれば……おおっ、我ながらマトモな考えが浮かんだモノだ!
「で、そうなったわけか……ミントは?」
「ミント殿はまだスキルを得ていない。レン殿の教鞭を受け、獲得を目指しているぞ」
「元のサイズから縮めるより、難しそうだからな……どういう原理なんだろうな?」
そもそも、何がどうなったら巨大なだけの不死鳥から一部が大きな美女になるのか……その点からさっぱりである。
「理論ならば聞いている。魔力をエネルギーとして用い、精気力を基に新たな肉体を構築しているらしい。元の肉体に宿る魔力が多ければ多いほど、多少の漏れがあっても成功がしやすいそうだ」
「まあ、フェニの方が種族としての位階が上だからな。それに、ミントは自前の魔法が使えないし……そうだ、フェニは紅蓮魔法が使えるよな?」
「使えます。魔力操作スキルも人化の過程で習得しました、が。ミント殿は……」
「ああ、そこからだったのね」
魔力と精気力を同時に使う技術は、それなりに難易度が高いモノだ。
精神年齢が幼いミントは……焦っちゃうかもしれないかな?
「フェニ、俺も紅蓮魔法を習得したから使い方を教えてもらいたい。というか、またレベリングに付きあってくれ」
「やはり……ご主人はそのためにここへ来てくださったのだな。心の準備はできている。さぁ、今こそワレに──」
「──“紅蓮球”!」
「ありがとうございますっ!」
先手必勝……する必要もないのだが、何か語りだしたフェニをさっそく紅蓮魔法で焼き焦がす。
さて、レベリングの始まりだ。
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