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偽善者と儚き夢物語 三十八月目
偽善者とデート撮影 その06
しおりを挟む第四世界 迷宮『蟲征の迷森』
目が覚めた俺をジッと見ていた眷属たち。
現夢世界──『夢幻』の支配する領域から脱する瞬間を、今や今やと待ち望んでいたのだろう。
……が、内部で正直ご満悦だった俺には罪悪感しか無い。
ゆえに、発作的に次元魔法を発動させてその場から脱走していた……怖かったんだよ。
「──あっ、パパ!」
だが一人、俺は彼女にだけこっそりと連絡してここに来てもらうよう頼んでいた。
乳白色の髪を風で靡かせた、とても──九センチばかりの小さな少女がやって来る。
身に纏うのは豪華絢爛な十二単。
双眸は角度で色が変わる特殊なもの、背中には鮮やかな透き通った蝶の翅──彼女の名はミント、俺の自慢の娘だ!
そんなミントは翅を物凄い勢いで動かし、そのままの速度で俺の下へ飛んでくる。
亜音速に達していたであろうその激突を、俺は人差し指で受け入れた。
「……縛り、解除できていて良かった」
「パパ! ねぇ、大丈夫なの!? 何か酷いことされてない?」
「いいや、全然……カナタのヤツ、いったいどう報告したんだ?」
「えっと、カナタお姉ちゃんは、パパが夢の世界から出られないことと……お胸が大きい夢魔のお姉さんといっしょに居るって言ってたよ!」
なお、その後『好色英雄』の話になった後コアさんにお持ち帰りされたらしい。
夢魔たちの件も合わせ、徹底的にカナタの記憶を上書きするんだろうなぁ(合掌)。
「そうか……なら、あんな風に心配していたのも仕方ないか」
「ねえ、これからどうするの?」
「まずは連絡だ。それが終わったら、少しここの散策をしようか」
「! うん♪」
ということで、眷属たちに念話を送信。
ミントと共に居ること──これからいつものヤツをやるので、溜め込んだモノはその後でお願いします……そう送っておいた。
以降の返信も無いので、とりあえず無事に目が覚めたことで納得してくれたのだろう。
……決して、断罪の準備を始めているわけでは無いことを心から祈る。
「よし、じゃあ森の中に……って」
『──』
「もう、みんな覗いちゃダメ! ちゃんと遠くに行っててよ!」
『──』
ミントが語り掛ける相手は、この森の住民たち──膨大な数の蟲だ。
文字通り、蟲毒の要領で増えていっているため、俺もその詳細を把握していない。
それができているのはおそらく、管理者であるレンとミントぐらいだろう。
探索者にも不人気だからなここ、可愛い虫と同じくらいゲテモノな虫も多いから。
ミントの種族は【蟲人姫】。
蟲たちの統率を可能とする力を持っているのもそうだが……彼女の純粋さに、本能で生きる蟲すらも従っているのだろう。
実際、彼女の言葉を受けてこの場に集まっていた蟲たちが散らばっていく。
残されたミントはどこか自慢げに、俺を見てきたので──指の腹で頭を撫でてやった。
◆ □ ◆ □ ◆
森の中にはさまざまな木々が生えており、その種類で蟲たちも区画分けされている。
外部に出れるような個体になれば、蟲毒と化した大きな樹──世界樹の下へ向かう。
そこから流れ出す蜜を吸い、彼らはより凶悪な力を獲得していく。
……ちなみに世界樹はユラルが生やし、彼女なりに皮肉気な笑みを浮かべていました。
「それでねそれでね、この子はね──」
俺も把握していない蟲たちを一種ずつ、アピールするように説明するミント。
いつの間にやら行列ができ、ミントに紹介してもらえるその時を待ち望んでいた。
……俺に紹介されるのが嬉しいわけではなく、あくまでもミントに紹介してもらえることを喜びと捉えているのだろう。
ゆえに、紹介が終わればさっさとこの場から居なくなっている。
まあ何だろうか……うん、娘の成長だと思うのが一番いいか。
なお、紹介される個体はそれこそ、芸術的なレベルで綺麗な個体から戦闘能力のみに特化した個体まで……ミントは打ち合わせゼロで、来た蟲すべてを俺に紹介してくれた。
「……うん、楽しそうで何よりだ」
「? パパ……?」
「いや、何でもない。ミント、並んでいる子についてもっと教えてくれ」
「うん!」
俺としても、今のこの迷宮にどんな個体が居るのかを知る良い機会である。
それに……準備を終えるために、いい時間の使い方でもあったからな。
ミントがそれから、俺に並ぶ蟲たちについて紹介を終えるのは数時間ほど先の話。
見たことも無い新種の個体も混ざっていたので、本当にためになりました。
◆ □ ◆ □ ◆
時間が経ったことで、森の中の明るさも大きく変わっている。
暗い森の中、蟲たちは活発にざわついている──彼らに眠りという概念は薄いようだ。
発光する蟲たちによって、区画ごとに明るい場所がいくつかあった。
俺とミントは池の近くで、そんな明るさを眺めている。
「たしか、『虹雷虫』だったか? ミントが言っていた通り、暗いと綺麗になるんだな」
「ふふーん! どう、凄いでしょう?」
「ああ、凄いぞ……こほんっ。ミント、少し大切な話をしようか」
「?」
武具っ娘たち同様、ミントもまた生まれてまだ数年と経っていなかった。
独自の方法(と謎の干渉)で精神的に成長が著しい彼女たちと違い、そちらも幼い。
それでも、眷属云々の例の共有があったからか、そちらに関して一定の理解はある。
だからこそ、彼女の薬指には俺が創った指輪が嵌められていた。
「今日のデートは、楽しんでもらえたか?」
「うん! もっともーっといっしょに居たいもん!」
「良かったよ。なら、俺は──!?」
「こういうときは、こうするんだよね? わたし、教えてもらったよ!」
不意打ちでミントが頬にキスをしてきた。
体の大きさを変え、小学生ぐらいの体格になった状態である……いきなりの変化だからこそ、かなり驚いている。
とりあえず、教えた相手についていろいろと確認をすることは確定として……今は、きちんと向き合おう。
「ミント、俺は父親としてはいろいろとダメなヤツだと思う。まだ子供だから、なんて理由はダメだな……世間一般的に、娘に欲情する大人ってのは、変態なんだよ」
それはたとえ、義理の娘であっても。
少なくとも、ロリだのアリスだのの幼女に性的興奮を覚えるのはアウトだ……俺も、そこまで堕ちているつもりは無いな。
だが、光源氏という前例(?)が存在するように、自ら育てることで理想を体現させるという方法が存在する。
俺の行いはまさにそれだろう。
……しかもミントだけでなく、複数の幼女相手にそれをやっているわけで──完全に犯罪者である。
「で、でも、パパ──」
「ああ、分かっている。俺も、【色欲】の所有者だしな……それに、世間の常識を話しただけだよ。今はまだこれくらいしかしてやれないが……俺もミントのことは、大好きなんだからな」
「っ……、~~~~♪」
……俺がミントにしてやれたこと。
うん、その詳細は犯罪として通報されそうだから言葉にできないな。
ただ一つ、ミントはそれを喜んでくれた。
──それさえ分かれば、充分じゃないか?
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