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偽善者と儚き夢物語 三十八月目

偽善者と現な夢 その19

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 ついに逃走の時間は終わった。
 闘技場へと強制転移された俺、そして今回の件に関わった英霊たち。

 俺を追っていた『超鋼筋肉』、罠を張っていた『隠魔術師』などもここに居る。
 抵抗は無意味──この世界の主『夢幻』が呼んだら、世界そのものが彼らを招く。

 彼らは来訪者(俺)を襲った。
 直接/間接の違いはあれど、関与している時点で『夢幻』の世界にケチを付ける。

 ゆえにこうして、厳格な対応をされているわけだ。
 俺は被害者当人だから、そして──この場に居る三人の英霊たちは加害者だから。


≪一人ずつ、貴方たちの行動についてこちらで把握した情報を確認します。異論があれば発言しなさい≫

『…………』

≪説明の前に、『好色英雄』について先に処遇を告げましょう。彼は不意打ちでは無く、正面からの挑戦を行いました。かつ、条件も来訪者自身と擦り合わせを行った後、お互いが望んだ方法で戦いました≫


 まあ、正確には代理戦なので戦っていないけれども。
 それでも、俺自身が戦わないという提案、それを受け入れてくれたのは好感だった。


≪そのため、特に何かを制限するようなことは致しません。ただし、しばらくは外出しないよう言明しておきました≫

「がっはっは! 好色のには大した罪にもならんではないか! 部屋に居るなら、そこでヤれるだけヤるだけではないか!」

≪…………。では、続いては『超鋼筋肉』。死罪で≫

「うぉい、主さん!?」


 英霊たちはたとえ死んでも、『夢幻』が世界の主である限り何度でも蘇る。
 まあ、死に戻り同様にある程度のデメリットやスパンはあるようだけども。

 とはいえ、さすがに冗談だったようで。
 ……『超鋼筋肉』よ、貴方の主さんはそういう冗談が苦手な人なんですよ。


≪ごほんっ……『超鋼筋肉』、貴方は来訪者の方を追いかけ回し、その過程で街を破壊しています。街自体の再生は可能ですが、他の来訪者の方々も含め、甚大な被害報告が出ています──よって、有罪です≫

「ふむ、仕方あるまい。では主よ、どのような罪を贖えば良いのだ!?」

≪──無償奉仕です。夢魔たちが貴方に頼む仕事に、正しく応えなさい≫


 期間などは特に言明していない。
 まあ、しばらくは行うのだろう……夢魔たちの頼み事という台詞に、何となくアレな気配を覚えなくはないけども。

 ともあれ、俺を追いかけ回した挙句、街を破壊した『超鋼筋肉』の罪状でこれだ。
 続いて裁かれるのは、案内所に罠を仕掛けていた『隠魔術師』。


≪『隠魔術師』、貴方は街の至る所に魔法を仕掛けていますね? さすがの技術、本来であれば分からなかったかもしれませんが、来訪者から証拠が提出されています≫

「…………チッ」

≪よって、貴方も有罪です。罪状に関してはそうですね──これが一番でしょう≫

「……ッ!?」


 瞬間、『隠魔術師』を包んでいた魔力が強制的に引き剥がされた。
 ほんの少し、その魔力を留めようとしていたようだが、それも無意味な足掻き。

 残されたのは『隠魔術師』の本来の姿。
 俺は男だと予想していたが……うん、これはどっちなのだろうか。 


「なあ、『超鋼筋肉』。あの子は……どっちなんだ?」

「さぁ、俺にも分からん!」

「…………ッ!!」


 キッと睨みつけてくる『隠魔術師』。
 ただしその容姿はとても幼く、子供が思い通りにいかないで苛立っているようにも見て取れた。

 うちではリュシルが合法ロリなどと呼ばれているが、『隠魔術師』は合法ショタ……のように見えてしまう。

 ただ、完全な少年というよりかは、中性的な感じがする。
 だからこそ、『超鋼筋肉』も男として接していたのだろうか。


≪『隠魔術師』、しばらくの間はその状態のまま街に居てもらいます。一切の異論は認めません≫

「くっ……横暴だ!」

≪私は行動の理由を必要としません。貴方たちの行いそのものを咎め、そしてこの場が設けられました。これ以上の対応を求めるのであれば、私はそれを許容しましょう≫

「…………分かった」


 これで、俺の把握していた関与者たちの罪状は決まった。
 そして、残された一人──最後の英霊の番となる。


≪『劇光騎士』、貴方ほどの方がこのようなことを企んでいたとは≫

「…………」


 筋肉、合法ショタ(?)と来て、最後に呼ばれたのはThe・正統派な騎士。
 いかにもな騎士の姿をしているのだが、そのような人物がいったい何故なのだろうか。


≪主犯である貴方には、あえて問いましょうか──なぜ、このようなことを?≫

「……が」

≪?≫

「貴方が、来訪者と共に居られたから」


 ……訳の分からないことを言い出した。
 だがまあ、言ったことをそのまま鵜呑みにするのであれば、この騎士はリリム……というかリリーが俺と居たから動いたわけだ。


≪な、なにを……≫

「貴女様が来訪者と、英霊として招かれたわけでもない凡庸な者と居た……それがどうしても許せなかったのです!」

「……え、えー」

「がっはっは! 諦めろや、お前さん。こいつはな、一度見た主さんにぞっこんで、勝手にこういうことをする奴なんだ」


 曰く、英霊はこの世界に招かれた際に必ず『夢幻』への謁見をするらしい。
 そして、『劇光騎士』は前世で見たことの無い美人さんに目を奪われたと。

 今回、そんな崇拝している女性が変装して男と一緒に歩いていた。
 しかも、全然凄そうじゃないクソ雑魚……まあ、立場が違えば分かる気がするけど。

 やるせない感じが半端ない。
 今回の騒動、その発端は一人の男が女を守ろうとする思いが暴走したものだった……それにしては、被害が甚大だったな。


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