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偽善者と儚き夢物語 三十八月目
偽善者と器確保
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ネロと魂魄や祈念者のアバターを使い、こそこそと検証を行っていた俺。
ある程度の確認が済んだため、次なる目的地へ転移していた。
運営神に目を付けられている俺だが、普段の行いはリオンが友神である運営神の一柱と共に偽装工作を行ってくれている……帝城でのアレは、かなり怒られたけども。
だが、今回向かう先はそんな危険と隣り合わせの場所。
運営神直轄の使徒、GMと呼ばれる存在が待機する空間──と繋がっているからだ。
「──待っておりましたわ、メルスさん」
「ああ、ここは大丈夫か──アオイ?」
「問題ありませんわ。運営神様方も、ここには気づいておりません」
今回、俺を出迎えてくれたのはその一人。
紺碧色の髪の女性、水属性担当のGM03ことアオイである。
なお、現在位置は次元魔法やらリオンの偽装やら、“神殺滅封:律蝕界花”など、俺が頼ることのできるすべてを使って、どうにか生み出した場所。
GMの本来の待機位置から、さして無理もせず訪れられる範囲にある。
その癖、彼女たち以外ではリオンと友神ぐらいしか入れないセキュリティの徹底さ。
最悪ここがバレそうになったら、いつでも破棄できるようにもしてある。
……それ以上の事態が起きうるものなら、また別の使い方を予定しているけども。
「何か違和感があったら、すぐに連絡してくれよ。アイツらだって、別にバカなわけじゃないからな……警戒を怠って、見抜かれるのだけは避けたい」
「心得ておりますわ。姉妹全員、お互いに見られていないかを確認しております」
得意げなアオイの表情に、そうなのだろうと俺もそれを信じる。
神相手に未来は読めないので、全部は把握できないが……今は平気なはず。
未来眼、俺の持つ神眼の一つ。
未来を天啓的に視ることはできなくとも、これまでの経験を基に暫定的な未来を確認可能だ。
運営神に関する情報は少ないが、GMたちのことは祈念者の誰よりも分かる。
そこから分かること、少なくとも彼女たちのミスで見抜かれる可能性は低いはず。
「そうか……それじゃあ、そろそろ本題に映ろうか。器──アバター作りについて」
俺はなぜか違ったが、GMたちの業務の一つにアバターの初期設定が含まれている。
つまり、彼女たちはアバターに関する情報のプロ、なのであることを依頼した。
「ええ。試作は前回の四号の反省点を活かして、新たに五号を完成させておりますわ。何度かテストをしておりますが、現状では問題なく機能しています」
「それは上々。GMの裁量でアバターの新規製作はできなかった分、{多重存在}で補う計画……寄せることはできたみたいだな」
「祈念者、自由民のどちらとしても振る舞えるようですわ。ただ、イベントなどの個人認識で引っ掛かってしまうでしょう。その点はまだ、改善する余地がありますわ」
「イベントか……情報の二重、三重の偽装は基本だしな。最悪、魔道具でどうにか補助する方向性に回すでもいい。元々のアイデアが創作物頼りだ、最初から完璧を目指してはいないから大丈夫だぞ」
そう、彼女たちにはかなり面倒なことを依頼している自覚はある。
最終的には眷属たち、そして現状では祈念者を実験に使う予定のアバター作り。
本来、アバターの変更は不可能なAFO。
だがそれは運営経由の方法の場合で、実際に祈念者ペルソナのアバターを新たに準備して移し替えることはできた。
まあ、それにはそれで【強欲】や【謙譲】という、本来はアクセス不可能な権限に干渉する特殊な力が必要だったわけだが。
「……それにしても、メルスさんのスキルは末恐ろしいものですわね。アバター作り、つまり擬似的な魂と魄を個人で生み出せるのですから」
「初めの内は何もできなかったぞ。俺の情報体を劣化再現するだけだったし、{感情}系のスキルは当然使えない。何より、アオイたちよりも質が低いアバターだしな……例外は神気を使った時だけだ」
ちょうど、魔王城で潜入任務を行っているミアとディオがその例。
当時、質の良くなかったアバターを改善すべく、あの手この手と費やした結果だ。
なので彼女たちに関しては、祈念者と同等かそれ以上のスペックを有している。
一部、当時のスキルレベルによる制限のせいで劣る部分も、別の要素で補い済み。
「っと、少し話が逸れたな……とりあえず、開示情報を可能な限り隠し、バレても本人へ繋がらないようにしたい。五号、そして以降のアバター作りはそんな感じでいいか?」
「ええ、分かりましたわ」
「……よし、仕事の話はこれくらいにしようか。ここからは、ゆっくりトークタイムだ」
やることは終わったと言わんばかりに、取り出したソファにダラーっと倒れ込む。
アオイは俺の隣に座り、ピトッと体を寄せてきた。
「またしばらく、会えませんのね。お顔は拝見しておりますが、やっぱり直接見ていたいですもの」
「……あんまり勘違いされるような言い方、しない方がいいと思うぞ」
「あら、誤解してくれますの? それなら、もっと伝えていきませんと」
「…………好きにしてくれ」
俺の言葉をどう汲んだのか、さらに密着してくるアオイ。
他のGM姉妹が観に来るまで、ただひたすらまったりするのだった。
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