2,382 / 2,519
偽善者と儚き夢物語 三十八月目
偽善者と供血狩り その08
しおりを挟むなぜだろう、メスガキムーブをまるで息をするかのようにしてしまった。
俺が行った加護停止の魔法を止めに来た祈念者が、俺を『分からせ』ようとしている。
……いやまあ、一度オスガキならやったことがある気がするけども。
あとAFOは基本的に倫理コードがあるので、普通ならそこまで酷い目に遭いません。
「ザーコザーコ♪」
普段、素で発言するとキレる連中はよくいるのだが、今の状態だと少しの発言で一分野の人間がかなり興奮するんだよな。
なお、怒るではなく興奮。
……正直精神面までメスガキにはなっていないので、そういう溜まったものの発散は他所でやってもらいたいです。
畏怖嫌厭の邪縛、そして全然嬉しくないが天性のワードセンス。
そこにちょっぴりの『魔声』を加えるとあら不思議、『分からせ』たくなるわけだ。
「この、生意気なガキが!」
「……あのさぁ、こんな場所に一人で来れるのに、ただの女の子なわけないじゃん」
「! なん、だと……!」
相手も帝城へ招かれるような優秀な祈念者なので、ほんの少しの加減を交えて俺を瞬殺しようとした……が、攻撃は俺に当たらず空振りする。
妖女になってもスペックはそのまま、そのうえでアイの修道服を纏っているためレイドボス級ぐらいに俺は強い。
まあ、馬鹿正直にそんな力を振るえば面倒事になるのは間違いないので、これまたいつもお世話になっている実力偽装スキルで程よくバランスは調整しているけどな。
「超級職、固有スキル、それとも特別なアイテムかな? クソ雑魚おにーさんたちって、もしかして私より強いって思いこんじゃってたのかな? きゃはっ、鑑定できない時点で自分たちがクソ雑魚だって分かってよね♪」
『……!!』
クソ雑魚おにーさんこと、三人組の祈念者たちを改めて観察する。
全員があからさまなほどに黒尽くめの恰好である……リヴェルの同類だな。
アイツの場合は固有スキルと武器が強かったが、彼らの場合は何だろうか。
実際、レベル以外であれば俺より優れている点などいくらでも見つかるだろう。
「おにーさんこちら、手の鳴る方へー♪」
少しだけ抑揚を変えて、三人組を煽るように走り抜ける。
彼らのうち一人が俺を追いかけ、他の二人はその場で何かを行う様子。
まっ、動かない方が悪いってことで。
十字架を横に持ち、銃として扱う……そしてそこに魔法を籠めて射出する。
「ふふーん、隙だらけー──“不遜”!」
「! おい、大丈夫か!?」
「……特に、なんともない?」
「はっ、バカが。やはりメスガキか!」
「──いや待て、お前ら状態異常に『不遜』と出てるぞ!」
おっと、追いかけているヤツが状態異常から免れてしまったか。
彼の言った通り、邪悪魔法“不遜”はその名の通り『不遜』を与えるデバフ魔法だ。
そしてその効果は傲り、相手に対し常にどこかで歪んだ思考を抱いてしまう。
要するに、舐めプしたくなるという地味に嫌な魔法である。
先ほどの件で説明するならば、言われるまで自分たちが『不遜』の状態異常に掛かっていたことに気づかない……いや、気づくための思考が取れないのだ。
「すぐにポーションを……くっ!」
「ポーション? 何を言っている、そんな物不要だろう」
「そうそう、メスガキ程度に使ってしまうなどもったいないだろう」
「きゃー、こわーい」
「「──ふっ、絶対に分からせてやる!」」
なんとかして仲間を正気に戻したみたいだが、俺が一言呟くだけで暴走するようにこちらへ突っ込んでくる。
当然、メスガキ程度にと傲っている彼らは魔法やスキルを発動させることも無い。
俺はニコリと笑みを浮かべ、ただ引き金を引くのみ。
「──ザーコ♪」
鳴り響く銃声、ほんの僅かな慈悲が籠められたその弾丸は確実に彼らの息の根を止めるべく額を撃ち抜いた。
それを最後の一人は止めない。
代わりに、彼はその手にした剣に禍々しいまでの力を注ぎこんでいた。
「──“復讐”、“四肢連斬”!」
「ふーん──『四角斬』っと」
仲間の死をトリガーに自己強化を行うスキル、そして一撃で腕と足を切り落とす武技。
それなりに火力を上げて放たれた一撃に対し、俺は四角を描くような斬撃を放つ。
精気を籠めただけで、実際には何の武技でもない剣の軌跡──だが結果として、剣を弾かれ切り裂かれたのは向こうだった。
「……化け物め」
「それしか言えないのかな? 本当におにーさんたちはザーコなんだから♪」
「くっ、この屈辱は忘れないからな!」
「あっ、そう──バイバイ、クソ雑魚おにーさん。次はもうちょっと強くなってね♪」
剣として握っていた十字架を、再び銃として用いて額を撃ち抜く。
同じように殺ってやるのも、俺の優しさというヤツだな。
「あーあ、クソ雑魚おにーさんたちに時間を掛け過ぎちゃったかな?」
「──貴様は完全に包囲されている! 大人しく投降を……な、何をしている!?」
「そろそろ、かな? 新しいクソ雑魚おにーさんたち、私といっしょに遊ぼうよ!」
集まってきた兵士たちに対して、俺は温存していた経典を開いて対応する。
光の粒子が俺を包み込み、二つの力をもたらした。
「──“聖域”!」
そして、この場が聖なる領域と化す。
本来であれば、ただの兵士である彼らに対して意味を成さないもの……だが、そうじゃない奴がいるみたいだな。
0
お気に入りに追加
516
あなたにおすすめの小説
World of Fantasia
神代 コウ
ファンタジー
ゲームでファンタジーをするのではなく、人がファンタジーできる世界、それがWorld of Fantasia(ワールド オブ ファンタジア)通称WoF。
世界のアクティブユーザー数が3000万人を超える人気VR MMO RPG。
圧倒的な自由度と多彩なクラス、そして成長し続けるNPC達のAI技術。
そこにはまるでファンタジーの世界で、新たな人生を送っているかのような感覚にすらなる魅力がある。
現実の世界で迷い・躓き・無駄な時間を過ごしてきた慎(しん)はゲーム中、あるバグに遭遇し気絶してしまう。彼はゲームの世界と現実の世界を行き来できるようになっていた。
2つの世界を行き来できる人物を狙う者。現実の世界に現れるゲームのモンスター。
世界的人気作WoFに起きている問題を探る、ユーザー達のファンタジア、ここに開演。
パーティ追放が進化の条件?! チートジョブ『道化師』からの成り上がり。
荒井竜馬
ファンタジー
『第16回ファンタジー小説大賞』奨励賞受賞作品
あらすじ
勢いが凄いと話題のS級パーティ『黒龍の牙』。そのパーティに所属していた『道化師見習い』のアイクは突然パーティを追放されてしまう。
しかし、『道化師見習い』の進化条件がパーティから独立をすることだったアイクは、『道化師見習い』から『道化師』に進化する。
道化師としてのジョブを手に入れたアイクは、高いステータスと新たなスキルも手に入れた。
そして、見習いから独立したアイクの元には助手という女の子が現れたり、使い魔と契約をしたりして多くのクエストをこなしていくことに。
追放されて良かった。思わずそう思ってしまうような世界がアイクを待っていた。
成り上がりとざまぁ、後は異世界で少しゆっくりと。そんなファンタジー小説。
ヒロインは6話から登場します。
特殊部隊の俺が転生すると、目の前で絶世の美人母娘が犯されそうで助けたら、とんでもないヤンデレ貴族だった
なるとし
ファンタジー
鷹取晴翔(たかとりはると)は陸上自衛隊のとある特殊部隊に所属している。だが、ある日、訓練の途中、不慮の事故に遭い、異世界に転生することとなる。
特殊部隊で使っていた武器や防具などを召喚できる特殊能力を謎の存在から授かり、目を開けたら、絶世の美女とも呼ばれる母娘が男たちによって犯されそうになっていた。
武装状態の鷹取晴翔は、持ち前の優秀な身体能力と武器を使い、その母娘と敷地にいる使用人たちを救う。
だけど、その母と娘二人は、
とおおおおんでもないヤンデレだった……
第3回次世代ファンタジーカップに出すために一部を修正して投稿したものです。
VRMMO~鍛治師で最強になってみた!?
ナイム
ファンタジー
ある日、友人から進められ最新フルダイブゲーム『アンリミテッド・ワールド』を始めた進藤 渚
そんな彼が友人たちや、ゲーム内で知り合った人たちと協力しながら自由気ままに過ごしていると…気がつくと最強と呼ばれるうちの一人になっていた!?
アイテムボックス無双 ~何でも収納! 奥義・首狩りアイテムボックス!~
明治サブ🍆スニーカー大賞【金賞】受賞作家
ファンタジー
※大・大・大どんでん返し回まで投稿済です!!
『第1回 次世代ファンタジーカップ ~最強「進化系ざまぁ」決定戦!』投稿作品。
無限収納機能を持つ『マジックバッグ』が巷にあふれる街で、収納魔法【アイテムボックス】しか使えない主人公・クリスは冒険者たちから無能扱いされ続け、ついに100パーティー目から追放されてしまう。
破れかぶれになって単騎で魔物討伐に向かい、あわや死にかけたところに謎の美しき旅の魔女が現れ、クリスに告げる。
「【アイテムボックス】は最強の魔法なんだよ。儂が使い方を教えてやろう」
【アイテムボックス】で魔物の首を、家屋を、オークの集落を丸ごと収納!? 【アイテムボックス】で道を作り、川を作り、街を作る!? ただの収納魔法と侮るなかれ。知覚できるものなら疫病だろうが敵の軍勢だろうが何だって除去する超能力! 主人公・クリスの成り上がりと「進化系ざまぁ」展開、そして最後に待ち受ける極上のどんでん返しを、とくとご覧あれ! 随所に散りばめられた大小さまざまな伏線を、あなたは見抜けるか!?
元おっさんの俺、公爵家嫡男に転生~普通にしてるだけなのに、次々と問題が降りかかってくる~
おとら@ 書籍発売中
ファンタジー
アルカディア王国の公爵家嫡男であるアレク(十六歳)はある日突然、前触れもなく前世の記憶を蘇らせる。
どうやら、それまでの自分はグータラ生活を送っていて、ろくでもない評判のようだ。
そんな中、アラフォー社畜だった前世の記憶が蘇り混乱しつつも、今の生活に慣れようとするが……。
その行動は以前とは違く見え、色々と勘違いをされる羽目に。
その結果、様々な女性に迫られることになる。
元婚約者にしてツンデレ王女、専属メイドのお調子者エルフ、決闘を仕掛けてくるクーデレ竜人姫、世話をすることなったドジっ子犬耳娘など……。
「ハーレムは嫌だァァァァ! どうしてこうなった!?」
今日も、そんな彼の悲鳴が響き渡る。
[鑑定]スキルしかない俺を追放したのはいいが、貴様らにはもう関わるのはイヤだから、さがさないでくれ!
どら焼き
ファンタジー
ついに!第5章突入!
舐めた奴らに、真実が牙を剥く!
何も説明無く、いきなり異世界転移!らしいのだが、この王冠つけたオッサン何を言っているのだ?
しかも、ステータスが文字化けしていて、スキルも「鑑定??」だけって酷くない?
訳のわからない言葉?を発声している王女?と、勇者らしい同級生達がオレを城から捨てやがったので、
なんとか、苦労して宿代とパン代を稼ぐ主人公カザト!
そして…わかってくる、この異世界の異常性。
出会いを重ねて、なんとか元の世界に戻る方法を切り開いて行く物語。
主人公の直接復讐する要素は、あまりありません。
相手方の、あまりにも酷い自堕落さから出てくる、ざまぁ要素は、少しづつ出てくる予定です。
ハーレム要素は、不明とします。
復讐での強制ハーレム要素は、無しの予定です。
追記
2023/07/21 表紙絵を戦闘モードになったあるヤツの参考絵にしました。
8月近くでなにが、変形するのかわかる予定です。
2024/02/23
アルファポリスオンリーを解除しました。
大工スキルを授かった貧乏貴族の養子の四男だけど、どうやら大工スキルは伝説の全能スキルだったようです
飼猫タマ
ファンタジー
田舎貴族の四男のヨナン・グラスホッパーは、貧乏貴族の養子。義理の兄弟達は、全員戦闘系のレアスキル持ちなのに、ヨナンだけ貴族では有り得ない生産スキルの大工スキル。まあ、養子だから仕方が無いんだけど。
だがしかし、タダの生産スキルだと思ってた大工スキルは、じつは超絶物凄いスキルだったのだ。その物凄スキルで、生産しまくって超絶金持ちに。そして、婚約者も出来て幸せ絶頂の時に嵌められて、人生ドン底に。だが、ヨナンは、有り得ない逆転の一手を持っていたのだ。しかも、その有り得ない一手を、本人が全く覚えてなかったのはお約束。
勿論、ヨナンを嵌めた奴らは、全員、ザマー百裂拳で100倍返し!
そんなお話です。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる