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偽善者と時を駆ける老若男女 二月目
02-02 オリハルコン
しおりを挟む俺はシンフォ高山の中腹に、廃棄された採石場を見つけていた。
時々アンデッドが現れ、採掘を行おうとするプレイヤーたちを邪魔する。
夜になると、かなり強いアンデッドたちが蔓延る巣となり死者たちが入り口を塞ぐ。
そうしたことが何度も起きたこと、わざわざシンフォ高山まで聖職者を向かわせて浄化作業を行わせることが対費用に合わないとのことで廃棄されたわけだ。
「だがまあ、俺には魔法がある」
光魔法はもちろん、派生の煌魔法や極光魔法まで習得しているのだ。
それに、この世界では回復魔法もアンデッドに効果は抜群で効き目がある……{感情}内のスキルによる補正があるので、さらにクリティカルなダメージも与えられるな。
「必要な物は揃えてあるし、ちゃんとスキルも習得した。……よし、準備万端だ」
採掘に必要なスキルは当然(採掘)だ。
他にも視界を確保する必要などもあるが、それは魔法で補えば問題ない。
「けど、錬金術があるんだから、鉱石の錬金とかもできればよかったな」
やればできると思うんだが、ただのモブが詳細な分子構造を理解できるわけじゃない。
鮮明なイメージが必要となる高難易度の錬金は、中級程度の錬金術では鉱石の錬成をさせてはくれないのだ。
魔法だったら、適当なイメージでも作用するのに……誰か鉱石関連の魔法でも習得してないかなー。
一切合切問題なく、採掘は終了した。
……途中で(中級採掘:5)に進化したりもしたが、問題ないだろう。
取れたのはこんな物だ──
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石 RANK:-
ただの石 投げるのに最適
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銅鉱石 RANK:D
銅の鉱石
金属関連系の生産スキルで加工できる
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鉄鉱石 RANK:D-
鉄の鉱石
金属関連系の生産スキルで加工できる
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---------------------------------------------------------
銀鉱石 RANK:E+
銀の鉱石
金属関連系の生産スキルで加工できる
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金鉱石 RANK:E
金の鉱石
金属関連系の生産スキルで加工できる
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??鉱石 RANK:?
??の鉱石
金属関連系の生産スキルで加工できる
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宝石 RANK:?
?の宝石が埋まっている石
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問題は下二つだ。
??鉱石は、まだ鑑定のレベルが足りないらしいが……今上級だぞ。
どんだけ凄いんだよ……まあ、後で頑張って上げるか。
そして、宝石。
削りだすには、加工系統のスキルが必要なのでまだ行うことができない……どうやら魔法でもできるらしいので、そっちを使って別の時にやろうか。
──よし、とりあえずインゴットにしておかないとな。
鍛冶は少し、熱い程度で行えた。
便利な水魔法や氷魔法を駆使することで、体感温度を下げたり水の膜を纏うことができたからな。
用意した鍛冶用のハンマーを使い、頭に浮かぶ作り方に従って叩いたり冷ましたり……そんなこんなでインゴットにできたぞ──
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銅のインゴット RANK:D
銅鉱石を溶かしてできたインゴット
金属関連系の生産スキルで加工できる
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鉄のインゴット RANK:D-
鉄鉱石を溶かしてできたインゴット
金属関連系の生産スキルで加工できる
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銀のインゴット RANK:E+
銀鉱石を溶かしてできたインゴット
金属関連系の生産スキルで加工できる
---------------------------------------------------------
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金のインゴット RANK:E
金鉱石を溶かしてできたインゴット
金属関連系の生産スキルで加工できる
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神鉄のインゴット RANK:?
神鉄鉱石を溶かしてできたインゴット
金属関連系の生産スキルと■■■■■を展開することで、■■を作り上げる可能性を持つ
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?をインゴットにしてみたら、その正体はなんと神鉄鉱石だった。
これだったらアレが造れるかもしれない……が、今の俺にはレベルが足りなさすぎる(そもそもこれを作るのも、{感情}の経験チートによってレベルを上げてなければ無理だったことだ)。
だから、今は──レベリングじゃー!
◆ □ ◆ □ ◆
水晶の間
インゴットの作業を重ね、また鍛冶の経験として経験値が貰える作業を続けることで、『鍛冶士』と『槌士』のレベリングをした。
その結果カンストしたそれらを転職するため、水晶の間に向かう。
「さてさて、俺の望みに叶う職業は見つかりますかなーっと」
絞り込みの設定をしてから、水晶に手を当てると──
***********************************************************
転職 [絞り込み:適職]
槍士・投擲師・【?界??士】・【闘?】・鍛冶師・鍛冶槌士……
***********************************************************
わざわざ最後の辺りに表示された通り、俺が選ぶのは『鍛冶師』と『鍛冶槌士』だ。
共に鍛冶に関する補正を上げ、出来上がる品のレア度を高めてくれるだろう。
まあ、鍛冶槌士はどちらかと言えば戦闘寄りなんだが……今は省いて良いことだ。
「よしっ! それじゃあ始めますか!」
インゴッド作業を終えた今、次に行うのはついに生産作業だ。
武具や装飾具、男のロマンなど作りたい物ならいくらでもある。
スキルや職業の補正をギリギリまで上げておきたいので、先にそうした試作品を細工征してみる予定だ。
──現代生産チートは無理だろうし、頭に浮かぶ簡単な品から作っていこうか。
そうして、どれだけ鍛冶作業を行ったのだろうか。
神鉄以外のインゴットを用いた鍛冶は、ある程度終わりを迎えている。
先ほど挙げた物のうち、男のロマン以外は思いつく限りを作成済みだ……ロマンだけは無理だったんだよ。
そのお蔭で、『鍛冶師』と『鍛冶槌士』はすぐにカンストした。
補正効果も高まったのか、作成したアイム手の品質も少しずつ向上し、最後にはA-の品がゴロゴロ生まれるようになったよ。
また、鍛冶に苦労したかと訊かれればあまり頷きづらい。
職業として入れた『鍛冶槌士』、その前提条件として習得していた(鍛冶槌術)の補正もまた俺にとって便利な恩恵となった。
槌を握るだけで、なんとなくその使い方が理解できてしまうのだから少し怖い。
……達人と呼ばれる域に達すると、それも普通になるのだろうか?
「──ま、何はともあれついに残るは伝説のオリハルコン様だけってか」
スキル構成も真剣に悩んで、俺の考えたドリームチームを組み上げた──
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メイン
武術
【武芸百般Lv37】【矛盾Lv1】
\(鍛冶槌術Lv40)MAX・NEW
魔法
【森羅魔法Lv3】(強化魔法Lv20)
(弱化魔法Lv20)(聖霊魔法Lv1)
身体
(身体強化Lv60)(力場支配Lv30)(天魔眼Lv40)
(精密動作Lv22)(異常激減Lv50)(超回復Lv30)
技能
【思考詠唱Lv3】(並列行動LvMAX)
(無詠唱LvMAX)(全言語理解Lv15)(識別Lv32)
(弱点看破Lv3)(能力看破Lv3)(気配探知Lv53)
NEW
(鍛冶Lv30:5)→(中級鍛冶Lv50:5)→(上級鍛冶Lv1:5)
特殊
(一途な心Lv-){感情Lv29}(思われし者Lv50)
(経験者の可能性Lv-)
\(鍛冶の心得Lv30)MAX(槌の心得Lv30)MAX
(鍛冶の心構えLv50:職業)NEW・MAX
(鍛冶槌の心得Lv40:職業)NEW・MAX
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「わけの分からないスキルも入れてあるが、これもすべて使えそうだから入れたんだ……本当、メインスキルの枠が多いってなんだかなー」
多いからこそ、こうして遊べる要素が入っている。
一定数を超えるスキルのセットは、貰える経験値が減るだのなんだの……という噂を誰かが話していた。
俺は経験値チートがあるので、それでも全部埋めているが……他のプレイヤーはいったいどうしているんだろうな。
「まっ、それでも必用なスキルでもあるんだけどさ。そろそろ始めるとしますか!」
鍛冶槌から拘って、設備もバッチリ整えてある。
望むのアイテムを作成するため、やれることはやってきたのだ。
──さぁ、神の器を手に入れよう。
◆ □ ◆ □ ◆
時空魔法によって隔離された鍛冶場は、灼熱の焔に包まれていた。
神鉄鉱石は人族の身では耐えることができないほど、凄まじい火力でしか熔けることがない。
魔力による冷却作業を施し、メルスはただ熔炉をジッと見つめる。
「……まだ、まだだ。………………今だ!」
完璧なタイミングで鍛冶台へ載せられた、|神鉄のインゴット。
際どい火力調整を要する神の鉱石は、神業に近い作業を経ることでしか、鍛冶師の望む形を取ることがない。
そのことへインゴット化を繰り返す間に気づいたメルスは、己が持つ無数のスキルを用いてそれらを解決する。
「温度調整っと」
神鉄は、少しでも適正温度を超えてしまうと蒸発する。
また、そうでなくとも炎が弱まるといっさいの干渉を受け入れず固まってしまう。
立ち塞がる一つ目の壁。
メルスはそれを、二つのスキル──【森羅魔法】と(力場支配)を用いることで乗り越えることに成功した。
火の魔力を粒子単位で操作し、これまでのインゴット化で測った最適な温度を常に維持し続ける。
神鉄の微弱な変化は(気配探知)で読み取れるため、(並列行動)で他の作業を進めながらそれを行っていく。
「次は投入っと」
本来であれば、触れた途端炭も残らずに燃え尽きてしまう高温の劫火。
そんな焔が燃え滾る熔炉の中へ、インゴットを投入する。
「……危ない危ない。“光量調整”」
光魔法“光量調整”を唱えた直後、眩い閃光が鍛冶場を支配する。
魔法によって視界に入る光の量が抑えられたものの、それでもなお常人の視力を一瞬で失わせるだけの光が照りつける。
神鉄の加工に起きる二つ目の壁。
熔ける際、第二の太陽とも呼べるほどに光が生まれ、鍛冶師の視力を奪い去る。
そのため過去には優秀な光魔法の使い手が集い、儀式を行い光量を調整していた。
メルスはそれを、個人の魔法と(異常激減)によって達成する。
起きうるのは『状態異常:失明』。
瞳にかかる負担が異常となる確率を、スキルによって極限まで下げていた。
……また、たとえ失明したとしてもメルスの回復魔法ならば即座に癒すことができる。
通常の者たちであれば、回復してもすぐに失明してしまうためその方法は使われない。
だがメルスの場合は失明することはほぼないので、その程度の対策で充分だった。
「──さぁ、時は来た!!」
さまざまな方法で自身の肉体を強化し、その手で造り上げた槌を握りしめた。
同時に、神鉄に弱化魔法をかけて弱体化を図る……この場合、魔法抵抗力の高い神鉄へ魔法は効かないため、槌との接触で起きる反発の力を弱める用途で使われている。
反発の力は凄まじく、どのように叩こうと確実に発生する……(超回復)がセットされていたのも、この対策だった。
加工はすぐに行わなければならない。
熱変動に敏感な神鉄は、冷めてしまえば干渉を受け入れなくなる。
鍛冶師を阻む最後の壁。
求められる形を、神鉄の強度を超えた上で叩き上げなければならないのだ。
「ちょっとキツいけどこれが最後だ……全力でやりますか」
握る槌には【武芸百般】・(上級鍛冶)・(経験者の可能性)が、担い手には先ほどの強化が補正を施す。
詠唱は【思考詠唱】と(無詠唱)によって即座に行われ、発動時間が過ぎても即座にかけ直すことができる。
並列行動によって神鉄や自身、槌の状態を確認しながら、メルスはついに槌を振るう。
「……………………」
これまでのスキルに加え、(全言語理解)や(聖霊魔法)、(弱点看破)と(能力看破)、(天魔眼)を行使することで精度はより向上した。
日本では、長く使われたモノには魂が宿るとされている。
この世界でも、似たようなことが起き、鉱石には土系統の精霊が宿る。
メルスはそれを読み取ることで、どのような扱いをすればいいかを神鉄自体から訊きだしていた。
また、残り二つのスキルが叩きやすい個所の発見を補助する。
極限まで高めた祈念者最強の力で、一撃一撃魂を籠めて叩いていく。
「…………ッ!」
やがて、メルスは形を整え上げた。
真っ赤に燃えたそのアイテムを、温度を維持したまま高純度の魔力水の中へ沈める。
とある系統の魔法が何重にも付与されており、そこに沈められたアイテムが完全に冷める間にその魔法が浸み込んでいく。
「──さて、最後は研磨だな」
これまでの作業は、人の身でこなせていることが異常だと思える偉業。
それらはセットしていた最後のスキル──【矛盾】によって罷り通っていた。
矛と盾に補正を齎すだけでなく、不可能を可能にする効果を持つ固有スキル……伝承に倣い、そのハードルが高ければ高い程その可能性は強まる。
今回の神業と呼べる一連の作業もまた、補正があってこその成功であった。
無自覚でそれを成したメルスは、再度スキルを組み替えながら……研磨作業を行う。
そこに偉業を成した匠のような威厳は存在せず、ただ子供が遊ぶように玩具を弄る姿がそこにはあった。
◆ □ ◆ □ ◆
「これで……完成だ!!」
加工の末、掌サイズに収まったそのアイテムを掲げ高々に叫ぶ。
……本当に、心身をすり減らすような作業だったんだよ。
「ふっふっふ……これで悩んできた問題の大半が解決できる。まさに神のアイテムだ!」
あっ、ちなみにこんな感じである──
---------------------------------------------------------
神呪の指輪 製作者:メルス
神器(呪武具):指輪 自己進化型
RANK:X 耐久値:∞
万物を呪う神の呪いが宿った指輪
自身の力を自在に弱め、実力そのものを偽装することができる
さらに、装備中に得た経験値をすべて貯蓄でき、望む場所に分配することも可能
また、この指輪は意思を宿しており、担い手の行動を補助することがある
装備スキル
(自我の芽)(実力偽装)(快適調整)(経験貯蓄)
(呪福成長)(行動補助)(?)(?)(?)(?)……
---------------------------------------------------------
「膨大な経験値を有効利用! これさえあれば、レベリングも楽勝でござる」
神の鉱石を使った結果、生みだした指環は神器として認められたようだ……そんな簡単に作れていいのだろうか?
また、この先膨れ上がるであろうステータスを予期して、早め早めにこうして能力値を調整できるようなアイテムにしてみた。
いつでもどこでも「──ふっ、そろそろ本気を出すか」とか「変身をあと二回残している」的な台詞が言えるかもしれない。
「けどまあ、まだ解放されていないスキルが気になるな。どんな能力になるんだか」
説明を忘れていたが、アイテムに宿せる能力の限界数は十二個。
どうやら最大数まで宿せたようだけど、一部が解放されずに封印状態となっている。
当然、使用できずに調べることもできないわけで……あとのお楽しみってヤツだ。
「うーん……今日はここまでだな」
頭も体も使いすぎた。
これが現実だったらすぐにでも寝れる。
そんなわけでログアウトを押し、世界から退場した。
……明日はアイテムの実証実験だな。
◆ □ ◆ □ ◆
---------------------------------------------------------
ステータス
名前:メルス (男)
種族:【天魔】 Lv50
職業:【経験者】Lv30・召喚師Lv30・中忍Lv40・弓士Lv1・暗殺者Lv1・【聖具使い】Lv1・【魔具使い】Lv1
NEW
鍛冶師Lv50 MAX・鍛冶槌士Lv40 MAX
二つ名:『模倣者』
HP:1200
MP:1350
AP:1250
ATK:155→175
VIT:155
AGI:155
DEX:200→215
LUC:155
BP:0
スキルリスト
武術
【武芸百般Lv40】【矛盾Lv3】
魔法─特殊魔法
【森羅魔法Lv5】(強化魔法Lv30)
(弱化魔法Lv30)(聖霊魔法Lv4)
NEW
(封印魔法Lv1)(禁書魔法Lv1)
身体
(身体強化Lv65)(力場支配Lv40)(天魔眼Lv45)
(精密動作Lv35)(異常激減Lv55)(超回復Lv35)
技能
【思考詠唱Lv10】(上級鑑定Lv54)
(上級隠蔽Lv54)(上級鍛冶Lv10)
(全言語理解Lv17)(気配探知Lv55)
(弱点看破Lv5)(能力看破Lv5)(識別Lv35)
NEW
(採掘Lv30:5)→(中級採掘Lv10:5)
(指導Lv1:称号)
特殊
{感情Lv30}
NEW
(武器換装Lv1:特殊)
SP:831
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