上 下
19 / 2,519
偽善者と始まり 一月目

01-18 能力検証

しおりを挟む

「……これで、最後にしておくか」

 突然のレベリングは、【初心者】に記されていた条件を満たすためであった。
 カンストは別にしても、前提条件を先に満たしておきたかったんだよ。

 再び『始まりの町』へ移動し、転職をしてから草原に戻ってくる。
 ここ何日か同じ場所に移動するため、コソコソと移動するのも慣れてきた。

「職業も良いのが増えてきたな……。基本職じゃないのも、ようやく就けるし」

 基本職は一定以上レベルを上げると、通常進化がリストに現れる。

 また、いくつかの条件を満たすことで派生職業が出るようだ。
 その一つがカンストだったので、旅人にも一つ派生があったのだろう。

 絞り込みを選択すると適職診断機能っぽいものがあり、それを使用してみるといい職業が見つけられた。

 まあ、こんな感じのものだ――

***********************************************************
転職 [絞り込み]

召喚士・魔戦士・魔法士・退魔士

***********************************************************

 魔法戦士は戦士と魔法使い、魔法士は僧侶と魔法使い、退魔士は闘士と僧侶のレベルを上げた結果出現した職業。

 まあそれらも気になるのだが……今、俺の心が一番求めているのは――召喚士だ。

 召喚士、それが俺の予想通りの職業ならば使い魔を作ることができる。
 つまり、その魔物を使って育成ゲーが可能ということだ。

 昔から育成ゲーは好きだったんだ……ホ°ケモンシリーズを結構やっていたからな。

「召喚士さんは、少々難しいけどな」

 使い魔を操り後方で待機するのではなく、自らも前線に出て狂戦士のように戦う――いわゆる召喚士(物理)もやってみたいとは考えているが、俺には技術がない。

 無難に一般ピーポーらしい、召喚士への進路が確定したな。

「そして、ノリに任せてしまったよ……」

 草原で佇む今の俺は、すでに転職を済ませているのだ。
 後悔もしてないし反省もしてない、俺はやりたいようにやっただけなのだから。

 そのステータスがこちら――

---------------------------------------------------------
ステータス
名前:メルス (男)
種族:【天魔】Lv18 
職業:【初心者】Lv18・錬金士Lv1・召喚士Lv1・盗賊Lv1 

HP:720
MP:700→800
AP:720

ATK:90<+16>
VIT:90→100<+18>
AGI:90→95<+17>
DEX:90→95<+17>
LUC:98<+17>
BP:0

<ステータス向上補正>

スキルリスト
特殊 NEW
(盗賊の心得Lv1)(召喚の心得Lv1)

SP:99
---------------------------------------------------------

 召喚士に就いて振られた能力値は20、基本職の二倍である。

 召喚士の定番『召喚魔法』は(召喚の心得)の中に内包されていた。
 ……(召喚魔法)単体で習得する機会、それはあるのだろうか。

「盗賊らしいレベリングってなんだろう? こっそりやるぐらいだけど……まあ、いちおうやってみるか」

 今日やることは応用編、自分に何ができるかどうかを試していく。

 これまでに手に入れたスキルは、どこまで俺の力となるのか。
 そしてそれが、目的を叶えるために有益なものなのか。

 それは今回、調べてみないと分からない。

  ◆   □   ◆   □   ◆

 この日、プレイヤーが観たのは今まで以上にひどむご暴虐おためしであった。

 いつものように、顔を隠したプレイヤーがふらりと現れる。

 ……どれだけ(鑑定)を行おうと無効化されるため、(鑑定)の熟練度上げのために集まる者が最近は増えていることは置いておこう。

 最初は武器、次に魔法。
 現実ならば交わることのない二つの技術を用いて、そのプレイヤーは魔物たちへ壮絶な惨劇を行ってきた。

(今日はいったい、どうやって戦うんだ?)

 その場に集まった者が一同にそう思う。
 ――今日は武器か? それとも魔法か? もしかしたら、両方とも使うかもしれない!

 そんなありふれた回答は、そのプレイヤーの行動によって一蹴されることになる。


 プチュッ

 一瞬であった。
 その者はその場から一歩も動いていなかった……そのはずなのに、周囲に居た魔物たちは体を叩き潰される音を立て、上から押されて死んで逝った。


 ガブッ

 一瞬であった。
 その者はその場から一歩も動いていなかった……そのはずなのに、周囲に居た魔物たちは体を牙に抉られたような跡を刻まれ、死んで逝った。


 プレイヤーたちが特に驚いたのは、この二つである。

 何もしていないことは、共に居た感知系のプレイヤーによって判明している。
 それなのに、実際に魔物は死に絶えてその場に死体を残している。

(何をしたんだ、あのプレイヤーは!)

 その光景を観ていたプレイヤーたちがそう思い悩んでいる間も、その者は行動を起こしていた。

 魔物をわざと怒らせ、触れ、攻撃する……そういった検証のような行動を、何度も何度も行っていた。



 そしてしばらくして、UIを操作してからため息を吐き、その者はこの場から去った。
 それを追いかけようとした者もいたが、一瞬で消えてしまいそれも叶わなった。

  ◆   □   ◆   □   ◆

「ふぅ……」

 もうショックも受け慣れたんで、どんどんステータスを見ましょうか――

---------------------------------------------------------
ステータス
名前:メルス (男)
種族:【天魔】Lv20
職業:【初心者】Lv20・錬金士Lv1・召喚士Lv15・盗賊Lv30 MAX

HP:720→740
MP:800
AP:720→740

ATK:90→98
VIT:100
AGI:95→98
DEX:95→98
LUC:98
BP:0→18→0

スキルリスト
武術
【武芸百般Lv1】
(気闘術Lv30)(魔闘術Lv30)(投擲術Lv30)
(大剣術Lv30)(短剣術Lv30)(大盾術Lv30)
(小盾術Lv30)(両盾術Lv30)
魔法
【統属魔法Lv1】
(恢復魔法Lv30)(暴風魔法Lv30)(煌魔法Lv30)
(冥魔法Lv30)(時魔法Lv30)(空間魔法Lv30)
(業火魔法Lv30)(付与魔法Lv30)(呪魔法Lv30)
(爆風魔法Lv1)(泥魔法Lv1)(木魔法Lv1)
(天魔魔法Lv20)
身体
(舞空Lv15)(体幹Lv60)(身体強化Lv60)
(魔力支配Lv20)(ステータス上昇補正Lv20)
(冥想Lv40)(戦線離脱Lv53)(回避Lv25)
(異常激減Lv15)(精密操作Lv45)(天魔眼Lv20)
(天魔翼生成Lv20)
技能
(錬金Lv2)(調合Lv1)(中級採取Lv1)
(言語理解Lv50)(気配感知Lv30)(二刀流Lv45)
(無音詠唱Lv20)(省略詠唱Lv20)
NEW
(中級鑑定Lv50)→(上級鑑定Lv1:16[20-4])
(中級隠蔽Lv50)→(上級隠蔽Lv1:16[20-4])

特殊
(悪魔キラーLv1)(天使キラーLv1)
(攻撃無効Lv-)(竜殺しLv1)(大物喰らいLv1)
(思われし者Lv20)(一途な心Lv-)
(全武術適正・微Lv20)(全魔法適正・微Lv20)
(全身体適正・微Lv20)(全技能適正・微Lv20)
(錬金の心得Lv1)(召喚の心得Lv15){感情Lv5}
(初心者の可能性Lv-)
\(盗賊の心得Lv30)MAX

SP:121
---------------------------------------------------------

「{感情}だけで、18P入ったんですけど」

 いろいろと検証して分かったことだが――シンプルに{感情}がチート過ぎる!

 調べようにもノイズだらけでほとんど視えないし、視えている部分を隠そうとしてもなぜか隠れない。

 四苦八苦していればLvが50になってカンスト、お蔭でスキルの中でもっとも早く上位スキルに進化しました。

 {感情}は戦闘面でも比類なき(たくさんあるけど)力を発揮して見せる。
 一部の能力はあまりにグロイシーンを齎したが、どうにか解放されている範囲の能力は調べることができた。

 使えた能力の効果はこんな感じだ――

===============================
傲慢:格下との戦闘でステータス向上
憤怒:怒っている相手の数分ステータス向上
暴食:なんでもべれる(魔物や魔力)
怠惰:動かないだけでステータス向上
色欲:触れた相手を望んだ状態異常に
強欲:触れた相手のHPを奪える
嫉妬:格上との戦闘で相手のステータス減少
謙譲:身力値の譲渡(対象に身力値が必須)
慈愛:回復効果大幅上昇
節制:消費する身体力を大幅軽減
希望:精神に関する事象に補整が入る
純潔:放出するエネルギーの純化が可能
救恤:対象のデメリット回復速度向上
忍耐:あらゆる事象を軽減
正義:相手を洗脳
===============================

 いろいろとやばい。
 効果が重複するし……本当に俺一人で持ってていいのか悩む(駄目だと思うけど)。

 しかもこれ、あくまでLv1のときに解放されていた能力である。

 まだレベル5を超え、何かが解放されたように視えた。
 上級となった(鑑定)で調べたら、新しい項目が見れるようになったので、また次の時に詳細を明かそう。

「……まあ、こうして急激な成長を遂げると思うことってあるよな」

 初心者用の魔物とはいえ、瞬殺するこの能力値――

「今の俺って、どんだけプレイヤーたちとの差があるんだろう?」

 それが分かるのは、まだ先のことだ。

しおりを挟む
感想 13

あなたにおすすめの小説

World of Fantasia

神代 コウ
ファンタジー
ゲームでファンタジーをするのではなく、人がファンタジーできる世界、それがWorld of Fantasia(ワールド オブ ファンタジア)通称WoF。 世界のアクティブユーザー数が3000万人を超える人気VR MMO RPG。 圧倒的な自由度と多彩なクラス、そして成長し続けるNPC達のAI技術。 そこにはまるでファンタジーの世界で、新たな人生を送っているかのような感覚にすらなる魅力がある。 現実の世界で迷い・躓き・無駄な時間を過ごしてきた慎(しん)はゲーム中、あるバグに遭遇し気絶してしまう。彼はゲームの世界と現実の世界を行き来できるようになっていた。 2つの世界を行き来できる人物を狙う者。現実の世界に現れるゲームのモンスター。 世界的人気作WoFに起きている問題を探る、ユーザー達のファンタジア、ここに開演。

パーティ追放が進化の条件?! チートジョブ『道化師』からの成り上がり。

荒井竜馬
ファンタジー
『第16回ファンタジー小説大賞』奨励賞受賞作品 あらすじ  勢いが凄いと話題のS級パーティ『黒龍の牙』。そのパーティに所属していた『道化師見習い』のアイクは突然パーティを追放されてしまう。  しかし、『道化師見習い』の進化条件がパーティから独立をすることだったアイクは、『道化師見習い』から『道化師』に進化する。  道化師としてのジョブを手に入れたアイクは、高いステータスと新たなスキルも手に入れた。  そして、見習いから独立したアイクの元には助手という女の子が現れたり、使い魔と契約をしたりして多くのクエストをこなしていくことに。  追放されて良かった。思わずそう思ってしまうような世界がアイクを待っていた。  成り上がりとざまぁ、後は異世界で少しゆっくりと。そんなファンタジー小説。  ヒロインは6話から登場します。

特殊部隊の俺が転生すると、目の前で絶世の美人母娘が犯されそうで助けたら、とんでもないヤンデレ貴族だった

なるとし
ファンタジー
 鷹取晴翔(たかとりはると)は陸上自衛隊のとある特殊部隊に所属している。だが、ある日、訓練の途中、不慮の事故に遭い、異世界に転生することとなる。  特殊部隊で使っていた武器や防具などを召喚できる特殊能力を謎の存在から授かり、目を開けたら、絶世の美女とも呼ばれる母娘が男たちによって犯されそうになっていた。  武装状態の鷹取晴翔は、持ち前の優秀な身体能力と武器を使い、その母娘と敷地にいる使用人たちを救う。  だけど、その母と娘二人は、    とおおおおんでもないヤンデレだった…… 第3回次世代ファンタジーカップに出すために一部を修正して投稿したものです。

ハズレスキル【収納】のせいで実家を追放されたが、全てを収納できるチートスキルでした。今更土下座してももう遅い

平山和人
ファンタジー
侯爵家の三男であるカイトが成人の儀で授けられたスキルは【収納】であった。アイテムボックスの下位互換だと、家族からも見放され、カイトは家を追放されることになった。 ダンジョンをさまよい、魔物に襲われ死ぬと思われた時、カイトは【収納】の真の力に気づく。【収納】は魔物や魔法を吸収し、さらには異世界の飲食物を取り寄せることができるチートスキルであったのだ。 かくして自由になったカイトは世界中を自由気ままに旅することになった。一方、カイトの家族は彼の活躍を耳にしてカイトに戻ってくるように土下座してくるがもう遅い。

王宮で汚職を告発したら逆に指名手配されて殺されかけたけど、たまたま出会ったメイドロボに転生者の技術力を借りて反撃します

有賀冬馬
ファンタジー
王国貴族ヘンリー・レンは大臣と宰相の汚職を告発したが、逆に濡れ衣を着せられてしまい、追われる身になってしまう。 妻は宰相側に寝返り、ヘンリーは女性不信になってしまう。 さらに差し向けられた追手によって左腕切断、毒、呪い状態という満身創痍で、命からがら雪山に逃げ込む。 そこで力尽き、倒れたヘンリーを助けたのは、奇妙なメイド型アンドロイドだった。 そのアンドロイドは、かつて大賢者と呼ばれた転生者の技術で作られたメイドロボだったのだ。 現代知識チートと魔法の融合技術で作られた義手を与えられたヘンリーが、独立勢力となって王国の悪を蹴散らしていく!

元おっさんの俺、公爵家嫡男に転生~普通にしてるだけなのに、次々と問題が降りかかってくる~

おとら@ 書籍発売中
ファンタジー
アルカディア王国の公爵家嫡男であるアレク(十六歳)はある日突然、前触れもなく前世の記憶を蘇らせる。 どうやら、それまでの自分はグータラ生活を送っていて、ろくでもない評判のようだ。 そんな中、アラフォー社畜だった前世の記憶が蘇り混乱しつつも、今の生活に慣れようとするが……。 その行動は以前とは違く見え、色々と勘違いをされる羽目に。 その結果、様々な女性に迫られることになる。 元婚約者にしてツンデレ王女、専属メイドのお調子者エルフ、決闘を仕掛けてくるクーデレ竜人姫、世話をすることなったドジっ子犬耳娘など……。 「ハーレムは嫌だァァァァ! どうしてこうなった!?」 今日も、そんな彼の悲鳴が響き渡る。

虚弱生産士は今日も死ぬ ―遊戯の世界で満喫中―

山田 武
ファンタジー
今よりも科学が発達した世界、そんな世界にVRMMOが登場した。 Every Holiday Online 休みを謳歌できるこのゲームを、俺たち家族全員が始めることになった。 最初のチュートリアルの時、俺は一つの願いを言った――そしたらステータスは最弱、スキルの大半はエラー状態!? ゲーム開始地点は誰もいない無人の星、あるのは求めて手に入れた生産特化のスキル――:DIY:。 はたして、俺はこのゲームで大車輪ができるのか!? (大切) 1話約1000文字です 01章――バトル無し・下準備回 02章――冒険の始まり・死に続ける 03章――『超越者』・騎士の国へ 04章――森の守護獣・イベント参加 05章――ダンジョン・未知との遭遇 06章──仙人の街・帝国の進撃 07章──強さを求めて・錬金の王 08章──魔族の侵略・魔王との邂逅 09章──匠天の証明・眠る機械龍 10章──東の果てへ・物ノ怪の巫女 11章──アンヤク・封じられし人形 12章──獣人の都・蔓延る闘争 13章──当千の試練・機械仕掛けの不死者 14章──天の集い・北の果て 15章──刀の王様・眠れる妖精 16章──腕輪祭り・悪鬼騒動 17章──幽源の世界・侵略者の侵蝕 18章──タコヤキ作り・幽魔と霊王 19章──剋服の試練・ギルド問題 20章──五州騒動・迷宮イベント 21章──VS戦乙女・就職活動 22章──休日開放・家族冒険 23章──千■万■・■■の主(予定) タイトル通りになるのは二章以降となります、予めご了承を。

VRMMO~鍛治師で最強になってみた!?

ナイム
ファンタジー
ある日、友人から進められ最新フルダイブゲーム『アンリミテッド・ワールド』を始めた進藤 渚 そんな彼が友人たちや、ゲーム内で知り合った人たちと協力しながら自由気ままに過ごしていると…気がつくと最強と呼ばれるうちの一人になっていた!?

処理中です...