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偽善者とお仕事チェック 三十六月目

偽善者とキャリアチェック その12

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 お嬢(仮)への個人レッスンは続く。
 さまざまな生産作業を行わせては、いくつものスキルを習得させていった。

 この際、レア過ぎる素材と手厚すぎる指導補正があるため、はっきり言ってお嬢(仮)のやっていることはほぼヌルゲーと言っても過言ではないぐらいに簡単となっている。

 本来、あまり褒められたものでは無いが、最初だけでも実感を得てもらうために、超絶イージーモードにしていた。


「や、やりましたわ!」

「おめでとう~! これで六つ目の生産スキルを集められたね。こんなに早いなんて、もしかして才能があるんじゃないのかな?」

「…………わたくしに、才能が?」

「えっ? あっ、うん。たしかに私はお手伝いしたけど、本人がちゃんと頑張ろうって気持ちが無いとスキルは自力習得が難しいからね。ちゃんと私の言うことを聞いてくれていたから、こうして結果に反映しているんだ」


 簡単なことに変わりないだろう。
 それでも彼女はその過程において、決して手を抜いていなかった。

 別にそうだったとしても、いちおうは習得できていたはずだ。
 目的のために、一途に頑張る女の子……それを支えずして、何が偽善者だろうか。


「次に目指してもらう『生産を極めし者』の条件なんだけど、簡単なものと難しいものと絶対に無理なものの三種類があって、難しいものを選んでもらいます」

「……簡単なものではなくて?」

「そっちの条件は、カンストさせた生産職六つに適した作業で、高品質を出すって条件だからね。ちなみに絶対に無理な方は、生産神あるいは複数の神々から加護を貰うこと」

「…………あまり常識的ではありませんね」


 言うまでも無く、それが俺の満たした条件ではあるが。
 ついでに言うと、俺は{感情}チート群の効果で獲得条件の緩和もされているからな。

 そんな俺が『導く』ことで、本来よりも獲得の難易度を軟化できる。
 お嬢(仮)のモチベーションを損なわないよう、難しい方の条件を伝えた。


「難しい方の条件は、まず生産系のスキルの合計レベルが300以上になる。ちなみにこれ、スキルを進化させたり複合化させたりして数字がリセットされたら、カウントもその分だけ減っちゃう仕様」

「さっ……!?」

「これには職業スキルも加算されるから、本当ならそっちも足されて速くなるんだけど。お嬢ちゃんはそれをやらない分、少しだけ難易度も高いんだ」

「……これで、少しですの?」


 実際には、その合計レベルも500だったので、だいぶ緩和されていると思う。
 300というと……だいたいアレ、三つぐらい上級をカンストさせればいい。

 彼女の場合、一先ずはどれかに特化させたりはせず複数のスキルを同時に育てる。
 なんせ、人形と一言で纏めてもその種類は多岐に渡るのだ。

 物凄く極端な解釈をするなら、己の意思で操ることのできるものすべてを『人形』と定義して支配することだってできる……それが人形師の辿り着く頂の一つ。

 まあ、さすがにそれはダーティー過ぎる道なので選ばないにせよ、あらゆる環境に合わせた人形を生み出す、ぐらいはできておいて損は無いからな。


「レベルの方は私がどうとでもするよ、それより、もう一つの条件は簡単な方とほとんど同じ。そのレベルカウントに用いた生産スキルに対応した作品で、Sランクを出すこと。ねっ、簡単でしょ?」

「……あの、簡単ではないから、難しいなのではなくて?」

「いやいや、私を誰だと思っているの? 頼れる先生なんだから、それくらいのこと教えられなくてどうするのさ」


 すでに教え子が何人も居る身、Sランクの作品だってその過程で作らせてきている。
 生産神の加護に不可能は無く、教える方もバッチリだった。

 まあ、伝わってきたイメージをどう言葉にするのかは俺次第だが。
 ……その辺は、眷属との会話で培ってきたコミュニケーション力でなんとかしてます。


  ◆   □   ◆   □   ◆


 第一陣からの物資が届いた。
 送り主はござる(仮)と花子(仮)。
 彼女たちは同期であるお嬢(仮)が、死んだように倒れ伏している光景に絶句する。


「師よ……いったい何が?」

「スキルレベルを一気に300ぐらい稼がせて、Sランク品質のアイテムを何個か作れるようにさせただけ。あっ、条件達成のためだけだから、これから職人になれる……とかそういうことじゃないんだけどね」

「そんなことができるんだ」

「うん、生産が一番上手にできるけど、それ以外のスキルもできるよ。ただ……あんまりやり過ぎると導かれるから、その辺は調整しないといけないけどね」


 導かれる、要は運命の一部に変化が起きてしまうということ。
 それが俺の眷属というわけでもないが、思えばかなりの頻度でそうなっている。

 眷属になったから現実でどうというわけでもないことは、ユウやティンスが証明済み。
 それでも導きの恐ろしさは、シュリュから聞くだけでも充分に伝わってきた。


「私に完全に依存するなら、すぐにでも祈念者の中でも十指に収まるぐらいには強くなれると思うよ? 依存って言っても、まあ……大丈夫じゃないかな」

『…………』

 あっ、引かれてる引かれてる。
 導きの運命作用の効果は、俺とその対象を強制的にくっつけるわけじゃない。

 ただ俺の持つどれかの『導士』が生み出す運命の道に、重なりやすくなってしまう。
 当たり外れがあるからな……『快楽導士』なんて、どんな運命になるのやら。


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