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偽善者とお仕事チェック 三十六月目

偽善者とキャリアチェック その11

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 残された二人の進路の相談も済ませ、これにて面談は終了。
 ──続いては面接、そうまだ終わりでは無かったのだ。

 一先ず解散させた少女たちを、再び翌日に集める妖女姿の俺。
 挨拶代わりにお菓子を提供してから、これからの予定を話す。


「まずますたーたち、みんなにはおつかいを頼みたいんだ。そして、ござるちゃんと花子ちゃんにもそれをお願いしたい」

「わ、私は……」

「ここからが本題だからね。お嬢ちゃんは、人形作りを本格的にやるよ。元々、簡単な物なら作っていたみたいだけど、生産班のみんなが作るような物じゃないと、条件の達成は全然できないからね」

「の、望むところですわ!」


 うんうん、お嬢(仮)もやる気になってくれたようで何より。
 就職条件の大半に、自作の人形が関わっているので、頑張ってもらわないとならない。

 人形は上手く使えば、パーティーに必要な役割のすべてを代用することができる。
 なので今回のおつかいは、それらをできるような人形を作るための素材集めなのだ。


「ただ、行く場所がそれなりに困難だから、条件のいくつかは満たせると思うよ。その辺も、ちゃんと考えてあるからね」


 おつかいのメモを渡せば、さっそく目を通して……嫌そうな顔をする少女たち。
 素材のランクを魔物の位階に合わせて出すなら、そのほとんどが10以上。

 さすがにユニーク種などの素材は入れていないが、ボスぐらいなら結構な頻度である。
 もちろん、それらは新鮮な状態でなくてもいいので、買う選択肢もあるのだが。

 彼女たちは冒険者、どうせなら自力で持ってきてもらえると助かる。
 何より、時間を掛けてもらった方が、こちらの準備も捗るしな。


「それじゃあ、お願いしま~す」

「もう、メル……ちゃんとお礼の品を用意していてくださいね?」

「任せて! 腕によりをかけて、美味しいデザートを用意しておくからね」

「……仕方ないわね、そこの二人もそれでいいかしら?」


 ござる(仮)と花子(仮)も、なんだかんだおつかいには行ってくれるようだ。
 さて、俺はするべきこと──お嬢(仮)の特訓を始めよう。


  ◆   □   ◆   □   ◆


 場所を変えて生産用の部屋。
 ある程度できることを確認したうえで、お嬢(仮)に予定を説明する。


「初期設定で(裁縫士)を選んで、ぬいぐるみ作りができるのは分かったよ。教わったお陰である程度上手に作れているし……うん、裁縫は問題ないかな?」

「…………裁縫、は?」

「人形作りに必要な物、それは裁縫スキルだけじゃ対処できないからね。木工、金工、錬金、機械……いろいろとあるから、最初にやりたい物を選んでね?」


 ちなみに金工とは読んで字のごとく、金属の加工に特化したスキルだ。
 ただ、木工よりも扱いが面倒だからか、他のスキルを前提としている。

 まあ、鍛冶か金属細工をやっていれば、自ずと生えてくるようなスキルだ。
 お嬢(仮)が『生産を極めし者』を得る過程で、ちゃんと習得できるだろう。


「私流のやり方だから、SPはいっさい使わずとも大丈夫です。その代わり、溜めたSPは全部【人物創者】に必要なスキルに割り振るから、無駄遣いはしちゃダメだよ?」

「わ、分かりました……で、では、木工からお願いしますわ」

「ふむふむ、参考までに訊きたいんだけど、その理由は?」

「一番最初に挙げられたからですわ。どのようなことであれ、真っ向から挑むもの。そう教わっていますもの」


 家訓みたいなものだろうか?
 うちはそういうの特に無かったが……まあお嬢(仮)の家、なんだかそんな家訓がありそうなので何も言わないでおこう。


「了解。じゃあ、まずは木工っと…………これこれ、お嬢ちゃんはこれを加工できるようになるのが最初の課題です」

「…………これ、何ですの?」

「──世界樹の丸太。はい、これをさっそくノコギリで……」

「ば、罰当たり過ぎますわ!?」


 俺や眷属からすれば、ユラルを追放したクソ世界樹なんてどんな扱いを受けたって当然としか思えない大罪を背負っているのだが。

 まあ、その辺の事情を知らないお嬢(仮)なので仕方が無い。
 温かい目で彼女を見てから、肩にポンッと手を載せて──耳元で囁く。


「ねぇ、お嬢ちゃん。作ってみたくない? 世界樹を使って、世界最高の木製のお人形」

「そ、それは……」

「木製だからって、悪いわけじゃないよ。硬度で言ったらプラスチックより上だし、技術さえ身に付ければ……ほら、誰でも最後にはこんなお人形が作れるようになるんだ」

「……ご、ごくり」


 俺が見せたのは、世界樹よりワンランク上の素材である神樹を使った木製人形。
 ただし味気ない物ではなく、とても可愛らしくデフォルメされた──熊の彫り物だ。


「世界樹なら伝導率も高いし、間違いなくお嬢ちゃんの望むようなお人形になるよ。思うが儘に動かせるんだ……どう?」

「──や、やりますわ!」

「そう、そうこなくっちゃ! それじゃあ、さっそく始めよう! なーに、世界樹なら好きなだけ使っていいから、とりあえず加工するって意識を忘れないで木を削るんだ!」


 普通ならそれでどうこうなるわけじゃないが、熟練度はバッチリ稼げる。
 素材の質が高すぎるので、最初の方はかなりの成長度合いのはず。

 みんなが帰ってくる前に、三つぐらいはスキルを習得しておいてほしい。
 そう思いながら、必要なスキルと称号をリストアップしていくのだった。


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