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偽善者とお仕事チェック 三十六月目

偽善者とキャリアチェック その03

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 個人面談の真似事をしながら、少女たちがこれからAFOという世界で何をしていきたいかを調査している。

 とりあえず、『月の乙女』の戦闘班からは聞き終えた。
 クラーレだけ、少々苦悩していたが……どういった選択でも俺は変わらない。


「──はい、ありがとうね……ふぅ、これで生産班の話も聞き終えたっと」


 六人の生産班だが、彼女たちはより自身が望んでいた生産を目指すとのこと。
 初期の指導で『生産を極めし者』を取らせる過程で、大半の生産はやらせたしな。

 生産職は特化と複合のどちらかを選ぶ場合が多く、それに加えて戦闘行為を可能にするか否かまで考慮しなければならない。

 知り合いで例えると、ヘルメギストスの職業【錬禁術師】はいちおう錬金特化の非戦闘タイプ……ただし、生み出した物によっては対処そのものはできるという感じだ。

 鍛冶、裁縫、調薬、錬金、機械、料理とそれぞれ違った目的だったが、戦闘をいっさいせずともより生産を楽しめるようになりたいと彼女たちは俺に言ってきた。

 教えた側としては、とても涙腺が緩くなるような主張である。
 元【生産神】に就いた者として、可能な限り理想に合う職業を教えておいた。

 ただ、生産職はその大半が努力すれば自然と就職条件を満たしてしまうモノばかり。
 そのため、死線を潜り抜けずとも就けてしまうため、自由民の就職率も高かった。

 手付かずのモノとなると、やはり戦闘込みの複合職だが……それは望まれていない。
 なので神眼で枠の残された職業、そうでない職業を視分けて教えておいた。


「あとは三人だね……はてさて、どんな話をしてくれるのかな? ──はーい、次の方どうぞ~」

「──し、失礼しますわ」


 ドア越しに声を掛けると、ノックの後入室してきたのはお嬢(仮)。
 現在は、人形遣いとしての技量を磨いていたはずだが……さて、どうなる予定なのか。


「はい、それじゃあお名前と現在の職業。あと戦闘スタイルを教えてください。あっ、名前はあだ名の方でね」

「わ、私は…………お嬢、ですの。現在の職業は『高位人形師』、ここのクランの方々が用意してくださった人形を支援して戦闘をしていますわ」

「ふむふむ。えっと、お嬢ちゃんはたしか、最初に人形遣いになりたいって言っていたよね? あれからいろいろとやってきたと思うけど、心境の変化とかはある?」

「ありませんわ。むしろ、その意欲がもっと高まりました。ただ……どうせなら、一から人形を作ってみたいと思わなくもありませんわね。せっかくですし、可能でしょう?」


 生産班の用意した人形は、はっきり言って市販のソレを圧倒的に超えるスペックだ。
 だが彼女の言うそれは、スペック云々では無く──理想のデザインの方らしい。


「ふむむ……そうなるとアレだね、専属の生産職を雇うか、あるいは自分で創れるようになるかのどっちかだね」

「専属ですの? 今のように、ここの方々へお願いするのではいけなくて?」

「うーん、それでもいいんだけどね。けど、お嬢ちゃんの理想の追求をすることが、みんなの目的じゃないからね。時々ならいいかもしれないけど……お嬢ちゃんの目的は、それじゃあ満たされないでしょ?」

「! ……全部、分かっておられましたか」


 人形好きな彼女、その最終目的は──自分の好きな人形に囲まれた空間。
 人型、動物型問わず、さまざまな人形と共に居られる場所が欲しいそうで。

 なおかつ、鑑賞用ではなく実際にその姿でできることも可能な状態にしたいとのこと。
 生きた人形……とはちょっと違うが、まあそれぐらいのレベルの人形を望んでいる。


「まあね。ここまでの話を聞いて、私から提案する職業は……ズバリ、【人物創者ドールクリエイター】」

「……それは、どんな職業ですの?」

「まさしく、本物に限りなく近い人形を生み出すことができる職業だよ。他の人形師系の職業との違いは、糸を繋いでいる間は一時的に生物として認識されること。生産職の要素もあるから、もちろん自分で創れる」


 うん、とても目がキラキラとしている。
 ただまあ、前提条件が非常に厳しいのだ。

 人形師・傀儡師・そして人形制作に関する職業を一定レベル以上まで上げておかないといけないし、人形のみでの戦闘経験、一定品質の人形制作などもやる必要がある。

 そこまでやったうえで、出される試練を越えてようやく就くことができる職業だ。
 まあ、俺の場合は『機巧乙女』を創り上げた時点でもう発現していたけど。

 昔は大変お世話になった、【怠惰】の能力の一つ“虹色無職”のお陰である。
 最大級に条件を緩和するので、【生産神】だった俺はほとんどの生産職がOKだった。


「私、やりますわ! その【人物創者】に就いてみせます!」

「うんうん、なら……これだね。ここに書いてある条件を、まず大前提としてやっておかないといけないよ」

「………………お、多すぎませんの?」

「人形は自作じゃないとカウントされないから、まずはそこからだね。素材選び、人形作りの技術、操作の技術……そういうものを全部極めたうえで、ボス級の魔物を探したりしないといけないから頑張らないと」


 だからお嬢(仮)、そんな真っ青な顔をしている暇はないぞ。
 祈念者の中にも、求めているユーザーはそう少なくは無いのだから急がないと。


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