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偽善者と愚者の果て 三十五月目

偽善者と愚者の狂想譚 その15

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 ☆月□△日。

 あの場所は、■■共にとっての支配領域のような場所なのだろう。
 魔族である俺には、ただただ忌々しい気配が充満した場所だった。

 そこで俺は──■と遭遇する。

 やり取りに関しては、記載するなと命令されたので何も書けない。
 ……これを読む者が誤った選択を取り続ければ、あるいは知る羽目になるだろう。

 だからこそ、俺もこれを読む者がそれを知らずとも良い結果を望もうではないか。
 奴らは■を称する癖に、何の救いも与えない連中なのだから。

 ただ一つ、間違えなかった者たちのためにこれを記しておこう。
 奴らは■族であり、『■』そのものではない……全知全能では無い。



 ……一つと思ったが、もう一つ追加だ。
 今の連中は、どうにも歪に思えた──まるで、二つの矜持を歪めながら主張を唱えているような。

 ■族は本来、自らの■■を■■によって賄い生きている。
 それはある意味■■みたいなものだが、奴らの生み出すエネルギーが隔絶している。

 だからこそ、生きるために必要なものにはこだわりが必要なはずなのだ。
 ……次代の【魔王】であれば、これを何かに活かしてくれるだろう。

  □   ◆   □   ◆   □


 他の探偵たちに学び、更なる探偵力(仮)なるものを磨いていたシェリン。
 ……あそこの探偵、未来を視たり過去を視たりとやりたい放題なんだよ

 今は少女たちの司令塔として、集まった情報を基に最適な行動を指示している。
 そして、俺は……ただただ、編み笠に光を当てているだけ。


「充填はできたかな?」

「……最大火力はまだですけど、いちおうのテストがしたいですね。一割ぐらい使って、堕天使モドキにどれくらいのダメージが入るのかを」

「うん、そうだね。隠しても意味は無いだろうから、そのままやってみようか」

「分かりました──“破転攻・光血”」


 編み笠──『破天笠[ドラグリュウレ]』の持つ、四つのスキルのうち一つ。
 それが(破天攻・光血)……後半の名称で分かると思うが、四分の三がこれ系統だ。

 強力であるがゆえに、能力の発動には光を事前に充填をする必要がある。
 魔力を籠めても意味は成さず、あくまで光から得られる独自のエネルギーが動力源だ。

 最大値から一割を使って発動すると、編み笠がほんのりと紅色に輝く。
 そして、それはそのまま俺の中へ吸い込まれていき──使い方を理解する。


「……うん、それじゃあやってみようか」


 そもそも、[ドラグリュウレ]が人造のユニーク種だったこともあり、俺個人にアジャストはしていない。

 凡庸性……というわけではないが、前衛でも後衛でも使えるような仕様だ。
 たとえば、今回の装備スキルであれば……光を矢の形状にして射出する。

 文字通り、光の速度で加速した矢が堕天使モドキに命中。
 それはそのまま、体内に染み込み──突如として、肉体を弾けさせる。


「…………」
「…………」
「…………さ、さすが父君です!」

「ジリーヌ、無理はしなくていいよ」

「……いや、効果的ではあるね。アレは一発で終わりなのかな?」

「いえ、ここからですよ」


 弾けた際に飛び散った堕天使モドキの血。
 赤くない禍々しい真っ黒な血は、周囲に居た堕天使モドキにも掛かっていた。

 拭えばすぐにでも消えるような跡。
 しかし、自己を持たないよう創られているからか、何もしないまま飛んでいる──そして、彼らもまた体を炸裂させていく。

 時間差で起きるソレは、血を媒介とした連鎖的な爆弾化能力。
 光が染み込んだ個体は、俺の認識あるいは一定時間経過するだけで爆発する。

 ただし、血を拭き取るだけで無効化できるうえ、付着量が少ないと無意識の抵抗レジストに弾かれて発動しない。

 なので、拭うことのできない存在、また状況などが必要となる。
 それに、他にも使い方はある……今回は、一番効率の良いやり方を選んだだけだ。


「これでどうですか?」

「充分以上の成果を発揮しているよ。君への影響はあるかな?」

「少なくとも、このスタイルであれば大丈夫です。割合を変えても、自壊するようなことはありません」

「……それを前提にするのは、些か問題だと思うけどね。でも、その分だけ効果はある。見ての通り、こっちにも注意が向いている」


 自己を持たずとも、総合的な判断として俺の先ほどの攻撃が対策しなければ厄介であることは理解できたのだろう。

 堕天使モドキの内、数体が手刀の上から闇色の刃を伸ばしてこちらに迫ってくる。
 シェリンの武術はどちらかと言えば、緊急時用の対個人戦向け、そして俺は虚弱。

 ──だがここには、自慢の義娘が居た。


「父君と母君の邪魔は、させません!」


 ジリーヌが重力の枷を無視した動きで跳躍し、堕天使モドキの下へ。
 途端、その周囲に漂う真っ白な霧──その内部で激しく金属音が響いた。


「ジリーヌに任せて、君は彼らを確実に減らしていってほしい。無尽蔵のように見えて、数には法則性が見受けられる。それに、減らした分だけ被害が減るからね」

「分かりました!」


 応じたものの、チャージが溜まらなければ連発はできない。
 ジリーヌの助けになるべく、早く溜まれと思いながら笠に蓄光していくのだった。


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