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偽善者と愚者の果て 三十五月目

偽善者と愚者の狂想譚 その01

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[※言語は翻訳されています]

 ○月■●日。

 ついに俺は【魔王】へと至った。
 その記念、そして初心を忘れないためにも日記を始めることにした。

 俺は■■族の代表として、彼らの想いに応えなければならない。
 今はまだ忌むべき種族と蔑まれているが、俺が【魔王】として強さを認めさせる。

 そうすれば、評価も変わり■■族の皆も今よりずっと良い生活ができるはずだ。
 ──今日からは【魔王】、『■■魔王』の■■■■・■■■■■だ!

  □   ◆   □   ◆   □

≪──物語が彩られます≫
≪閲覧者の能力値・スキルが制限されます≫

≪──物語が描かれます≫
≪閲覧者の武技・魔技が制限されます≫

≪制限の緩和には、特定の条件を満たす必要があります≫

  □   ◆   □   ◆   □

 ???

 そこを訪れた瞬間、自身に掛けられた負担が一気に俺を襲う。
 演技も減ったくれも無い、それすらも奪われて立てなくなった。

 頭は地面に埋め込まれ、周囲の状況を確認することもできない。
 だが、周囲の気配はなんとか分かる……少女たちが俺を心配して駆け寄ってくれた。


「メル君!?」
「「「「ノゾム(君)(様)!?」」」」

「ぁ、ぁかぁぁ……!」


 反射的に身力操作で体内のエネルギーを使い、強制的に肉体を活性化。
 どうにかある程度動かせるようになった体で、何が起きたのかを調べると──


「……そういう、ことなんだ」

「だ、大丈夫なの?」

「姫様……[ステータス]は?」

「えっ? ……うん、決めた通りだよ!」


 彼女たちには予め、装備以外のあらゆる力に制限を加えてもらっていた。
 そして、それらを封印することで外部からの干渉を防げる『誓約』となっている。

 俺の場合、それは無いうえ少しでも彼女たちに及ぶはずだった負担を全部背負う……という仕掛けを予め仕込んでいた。

 現在、俺の能力値は本来のもの──邪縛に落とし込まれた数値にまで下がっている。
 おまけにスキルも大して使えず、技能系のスキルがいくつか使える程度。

 そのうえで、彼女たちの制限をさらに受けているため……擬似的に能力値がマイナスの域に達している。

 先ほどまで立てなかったのは、筋力が重力に勝てないほど下がっていたため。
 それでも俺の体は特別製、身力を籠めればきちんと起き上がれる。


「多分、だけど。しばらくはずっと、このままだと思う……聞こえたかな、最初に男の人が話す声」

「所々、消し潰されていたがね。アレが、例の【魔王】なのかい?」

「うん……ここは僕と【魔王】、そして忌々しい神が創った合作みたいな場所。だけど、みんなの世界と違って、用途が違う。だからこうして、入る人に試練が課せられる」

「それがこうして、君を苦しめていると?」


 始まりの記述にあった『忌むべき種族』。
 その認識によって、自分たちがどのように苦しんでいたのか……その一部でも、味合わせたいがための強制なのかもしれない。

 この手記の世界に限り、『超越種』たちの使う“祝捧福音”並みの影響力があるのだろう……現に、耐性スキルがいっさい機能しないままだ。

 彼女たちが無事なのは、支払った対価が相応に価値のあるものだったため。
 何の才も持たない俺だけが、分不相応な高望みをしたツケを支払っている。


「条件を満たす、それがこの状況から脱する鍵だと思う…………さて、周りの状況を調べてみようか」

「ノゾム様、遠くに村があります!」

「村か……そこが、【魔王】の生まれ故郷だと思うよ。僕たちの役割は、そこで何かをすることなんだろうね」


 かぐやが見つけたそこは、ひっそりと佇む小さな村だった。
 少々気怠い体で指差された方向を見て、俺もそれを確認する。

 そこに身力操作を現状維持に注いでいるため、俺では村を視ることはできない。
 だが、アイテムの方はギリギリ使うことができるので……指輪を取り出す。


「[アイテムボックス]……うん、スキルも魔法も使えないけど、こういう視方なら問題ないみたいだね」

「……それ、なに……?」

「[イニジオン]っていう、僕の作った狙撃銃なんだけど。リラが聞きたいのは、そういうことじゃないのかな?」


 地面に寝そべり、スコープ越しに村がどういう場所なのかを調べる。
 自前の遠視スキルは使えないが、スコープ部分は俺の科学知識が用いられていた。

 望遠鏡や双眼鏡も有ったのだが、もしもの事態に備えての狙撃銃だ。
 しかし、リラが興味を持つとは……あとで詳しく教えてあげよう。

 改めて、彼の種族を観察していく。
 俺たちには気づいていないようで、貧しいながらも平和な生活が繰り広げられているのだが……問題が一つ。


「みんな、彼らの種族に心当たりは……って分からないか。シェリンお姉さんは?」

「ボクもさっぱりさ。魔人族であることは確定だとしても、具体的にどういった種族なのかが不明だね。どうやら、鑑定スキルも通じていないようだし……新種族、いいや、絶滅した種族なのかもしれない」


 鑑定スキルが表すその情報は、基本的に大衆の共通認識から表示される。
 知られている物、薬草や魔物の素材などは簡単に視ることができるのだ。

 しかし希少度の高いものなどは、より上位のスキルが必要となる。
 これは要するに、情報サーバーへのアクセス権限を上げるようなイメージだ。

 村に住まう魔族たち、彼らの特徴はあまり表面的ではない。
 魔人族であることは間違いないとのことだが、魔人族も魔人族で種類が多い。

 うちの眷属で言うとリュシルだが、彼女は叡魔種という魔人族だ。
 だが、それを俺たちが分かっている以上、そういった既知の種族ではないのだろう。

 分からなくてもどうにかなるかもしれないが、分かった方ができることも増えるはず。
 ……こうなれば、直接接触して知っていくしかないのかもしれないな。


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