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偽善者と崩壊する陣営 三十四月目

偽善者と陣営イベント番外篇 その05

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 復興に取り組む人たちと、心温まる触れ合い()を経験した。
 時に罵詈雑言を浴びたりもしたが、きっと彼も遠くの空で見守ってくれているだろう。


『──おーい、みんな来てくれー!』


 今日も今日とて生産に勤しみ、精霊愛好家な種族のため錬金アイテム(精霊好感度補正付き)の製作に勤しんでいたのだが……生産区画の代表者が人を集めているようだ。

 これ自体はよくあることなので、特に怪しむことも無くそちらへ移動を開始。
 集められたそこには、人族の領域では魔物扱いされている人型種族がやってきていた。


「『花精人アルラウネ』か……集団でってことは、何か問題でもあったのかな?」

「らしいぞ。なんでも、どっかの魔王が暴れ回っているらしい」

「魔王がねぇ……」

「まあ噂じゃ殺しても死なねぇって言うし、たぶん例の連中なんだって話もあるが……実際の所、どうなのかは分かってねぇぞ」


 一度覚悟を決めて話しかけてきたため、ある程度<畏怖嫌厭>の効果が弱まっているオジさんによって、逃げ込んできた花精人たちに関連した情報を入手する。

 祈念者かどうかは分からないが、ともあれ蘇る……つまりいちおうは討伐可能な個体みたいだな。

 ならば俺が動かずとも、有志が勝手に討伐するだろう。
 全員が全員、『選ばれし者』たちが闘技場に行っているわけじゃないし……任せるか。


「……ってノゾム、お前さんそんなに悠長にしていていいのか?」

「えっ?」

「花精人って連中は、森人よりも精霊と近しい種族なんだぞ? しかも、住処には特別な素材が必要らしい」

「……それ、錬金術が必要なの?」


 聞かなくても分かる答えだった。
 錬金術を用いずとも、今回必要とされているのは精霊に関する力……生産技術をほとんど身に付けている俺は必須である。

 代表者との話し合いも、どうやらその話題に辿り着いたらしく。
 花精人の代表らしき女性が、こちらへやって来ていた。


「貴方が……ノゾム様ですね? どうか、私たちの新たな住処をよろしくお願いします」

「うん、任せてよ! 僕にできることなら、なんでもやってみるからね!」


 ──現状では、こう言うしかない。

 すぐに俺は花精人の中に居た職人と話し、必要な素材に関する情報を収集。
 秘伝のレシピも今回ばかりは……ということで、いくつか拝見させてもらった。

 まあ、生産神の加護があれば、作った物さえ見れば全部把握できるけども。
 しかし今は使っていない、なので職人と共に再現が可能かを試していくしかない。


「……うん、これはこれで楽しいかな?」


 これまでに学んだ錬金術の知識は、正直そこまで深くまで及んでいない。
 所々、生産神の加護を使って得た情報だけは極致に近いが、それ以外は初心者以下だ。

 そういった部分を補ってもらいながら、何度か試行錯誤を繰り返す。
 失敗作、あるいは精霊たちが乗ってくれない普通の品を何度も作り……完成へ至る。


「……これで、どうですか?」

「………………上出来だ」

「! じゃあ!」

「うむ……すぐに始めるぞ!」


 周囲の生産職たちを集め、生み出した花精人用の特殊アイテム──土を配っていく。
 植物が肥料に気を遣うように、彼らは住居中に特殊な土を用意して暮らすらしい。

 それをどうにか再現して、そのうえで精霊の助力を得て生み出したのが今回の土。
 あとはそれを敷き詰めたり、加工して家具やら食器やらにしていく。

 土だけ俺が作っておけば、それ以上は他の人が行っても平気なのは確認済みだ。
 あとは無心で生産に勤しむだけ……これまた時間が掛かりそうだよな。


  ◆   □   ◆   □   ◆


 無心スキルを獲得できてしまった。
 効果は名前の通り、無心で行う際の行動成功率が上がるというもの。

 それだけの作業量、そして掛かった時間。
 日を跨いで行われているであろう闘技場でのイベントも、予定通りに進んでいれば互いにぶつかり合る頃だろう。


「迷宮を攻略してアイテムを獲得、それらを用いて勝ち抜けの団体戦。お互いの持ち込み品を使うには、迷宮でそれを可能とするアイテムを得なければいけない……ナックルと決めたのはそんな感じだっけ」


 詳細は祈念者の代表的クランと決めているので、俺はその辺りに関して把握はしていない……しかしまあ、開催されている以上、お互いに北も南も納得するルールのはずだ。

 問題は悪意の産物だが……機会は平等に、そしてあることを期待して持ち込み自体は普通にできるようにしておいた。

 いつだって、相対する存在を繋ぐのは──第三者による介入だからな。


「んー、始まっちゃったかなー」

「おいおい、何だよアレ……空が急に真っ暗になったぞ!」

「……空に干渉する遺産なのか、あるいは副次的にこうなったのか。どっちにしても、それっぽい悪役の登場だね」


 俺みたいにラスボス(笑)ではなく、真面目にラスボスをやってくれる何者か。
 その登場は、間違いなくいろんな意味で刺激となるだろう。

 そこに俺が居らずとも、物語は留まることなく続いていく。
 ……やっぱり俺は、世界という舞台の主人公には向いていないんだよな。


「まっ、僕たちはこれを解決するよりもやらないといけないことがあるからね。ほら、速く花精人のみんなの家を建てようよ!」

「お、おう……そうだな」


 俺の発言は正しいが、それ以上に現状に似つかわしくないものだっただろう。
 かなり戸惑った様子だ……それでも、自分の本分を思い出し、作業を始めていく。

 英雄たちが揃っている場所よりも、今の俺が優先するのはここだ。
 困っている人々が目の前に居るのに、偽善者が何もしないわけにはいかないからな。


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