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偽善者と崩壊する陣営 三十四月目

偽善者と陣営イベント後篇 その17

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 次なる四天王『病蛇』の試練、ナシェケエル(『天岩の盾使』)の課題は生存だった。
 しかし、せっかくの防御も“絶対切断”の前に無意味と化し、絶体絶命に。

 破壊されても超高速で修復する性質によって、斬撃に断たれた部分を放棄、再構築を繰り返すことでどうにか粘っていたが、次第に斬撃痕が内部へ食い込んでいき──


「──『天源の鎧使』」

「……ふーん、あんたもやればできるんだ」


 最期の最後、ナシェケエルは瞬間的に自身の形態を切り替えた。
 盾は鎧へと変化し、斬撃はそのまま鎧へ命中……断たれることなくその場に残る。

 ナシェケエルの最強形態、無属性に特化した純粋なエネルギーの塊。
 他属性への変換をいっさい行わなず、その分性能を上げることで防御を成し得た。

 そこで鳴り響くアラームの音。
 俺の方で何となくセットしておいたものだが、『病蛇』こと【嫉妬】の魔武具っ娘ヤンはそこで攻撃を中断する。


「時間かぁ。ノゾムが終わりにしろって言うなら、終わりにしようか」

「…………」

「じゃあ、お二人ともお疲れ様ー。次の試練も頑張ってねー!」

「……あっ、ナシェケエル……」


 ナシェケエル……否、ナシェクは自身を腕輪へと変換して俺の下に戻ってくる。
 なんとも拒絶の反応が強い、ちゃんと突破できた『白熊』の試練より厳しかったか。


「二人とも、頑張ってたのにね」

「うーん、ナシェクが居た時代と今とじゃ全然違うからね。それに、使い手だったミコトよりもノゾムは全然劣っているし。本当の力が使えれば……なんて、考えちゃう自分のことを悔いていたりするかもね」

「や……じゃなかった『病蛇』、なんでそんなに分かるの」

「え? えっと…………か、勘?」


 誰かしら、眷属から言えとでも連絡が回ってきたのだろうか。
 まあなんにせよ、そういう情報を先んじて知っておくのは非常に助かる。

 普通ならこれ、俺が慰めるとかイベントを挟んで信頼度を深め合うのだろう。
 しかし、もっといい方法があるしな──早く何とかしてやりたいものだ。


  ◆   □   ◆   □   ◆


 導刻の回廊 箱舟の間:入口


 もう三度目なので慣れてきた。
 扉を押せば勝手に開き、中で眷属の誰かが待ち受けている。

 今回の四天王名は『箱舟』。
 これで別の奴が出てきたら、それはそれで驚くだろうな。


「やあ、魔王君……今はノゾム君だったね。そして、天使の君。二人とも、『箱舟』の試練を受けるということで相違ないね」

「なんで担当しているの?」

「率直な質問だね。私も眷属、そして冠するのは『箱舟』だよ。なればこそ、試練を課すのは当然じゃないか」

「……全然当然じゃないと思う。でも、ノアがやりたいなら僕に止める権利なんてこれっぽっちも無いからね。洪水でも選別でも、好きなように試練を出してよ」


 白いトーガを身に纏う、腰まで伸びた長い白髪が特徴的なやや背の高いオンナノコ。
 偽りの【魔王】であり、聖人としての肉体も持つ──箱舟の擬人体であるノア。

 かつて、敵として相対した彼女は試練として大量の魔物を放っていた。
 そういう意味では、なんとなく四天王としての適性はあるんだよな。


「君たちの試練は、魔物の討伐。私が召喚する魔物を一定数以上捌ければ合格だよ」

「他と比べて、なんだか簡単だね」

「……私は良識的だと思うよ。『白熊』、そして『病蛇』から回ってきた君たちには、少し手緩い内容になるかもしれないね」


 そんなこんなで、試練が始まるのだが……ここで問題が一つ。
 呼びかけても、ナシェクは第二形態を取ろうとしないのだ。


『…………』

「どうする、ノゾム君。このまま独りで挑むのかい?」

「そう、だね。さっきから、僕は何もしていなかったし──よし、やろう!」

「良い返事だ。ならば、君のその覚悟──この『箱舟』が定めさせてもらおう!」


 ノアがノリノリで宣言すると、部屋中に展開される召喚……否、召還陣。
 箱舟はかつて、生物たちを乗せた……その伝承からか、あらゆる生命体を呼び戻せる。

 故に『召喚』ではなく『召還』。
 ただし、送り返すことができないので、不要になれば対処が必要となる……が、このように使うのであればそれで充分だろう。


「ナシェクはふてくされちゃっているし、使わせてもらうよ──『天斬る大剣』」

『天使がダメなら悪魔で……なんとも欲深く罪深いんだろうね』

「いいよ、そんなお説教は。それより、補助はしなくていいから力は借りるよ」

『……ハァ、好きにすればいいさ』


 模造天使のナシェクが使えない、なので代わりに魔武具『アルカナ』を取り出す。
 中に居る大悪魔は、悪態を吐きながらも協力はしてくれるようだ。

 さて、それにナシェクはどう反応するのか気になるところだが……今はそればかり気にしてはいられない。


「みんな、いっしょに戦おう」

『オー!』
『!!』

「けど、今回は少しお願いしたい……僕に、力を使わせて?」


 精霊たちと共に戦う、そのやり方は千差万別……今回は割と強引な方法を選ぶ。
 精霊の意思を無視する、あるいは信頼関係が構築されていないと難しい……が。


『いいよー!』
『♪』

「みんな、ありがとう──“精霊憑依エレメンタルポセッション”、そして“精霊合身フューズエレメンタル”」


 精霊たちをその身に纏う“精霊憑依”。
 そして、一つに纏め上げる“精霊合身”を同時に発動。

 完全な合身ではなく、束ねるようなイメージで発動した魔法。
 それによって、一時的に俺の縛りは緩和され──基本七属性すべてを使えるように。

 久しぶりの無双タイム……になればいいんだけど。
 四天王としての強さを出されているので、上手くはいかない気がするなぁ。


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