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偽善者と崩壊する陣営 三十四月目

偽善者と陣営イベント後篇 その07

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 祈念者が火事場泥棒のようにみみっちく、王城で何かをしようとしていた。
 同じく内部で情報を盗もうとしていた身ではあるが、彼らの処理をすることに。

 なお、王様への謁見などはしないでおく。
 どうせ祈念者は死に戻りすれば消え、証拠はいっさい残らない……俺が侵入している、という事実が残るだけだしな。


「──“剣器創造クリエイトソード万鍵剣アンロック”」


 片手に隠形剣ハイドソードを持ちながら、もう片方の手に生みだす鍵の形状をした剣。
 効果は見たまんま、大抵の鍵ならば開くことができる。

 目の前の扉には鍵穴など無い。
 しかし、剣を前に突き出すと異空間に穴が生まれて鍵を受け入れる。

 それをそのまま捻ると、ガチャリという音が鳴り響く。
 そして、穴がそのまま入り口となって俺の入場を受け入れた。


「ここが宝物庫か……まあ、中央に一部を持ち出した分、良い物は減っているみたいだ」


 突然だが、俺は宝物庫へやってきていた。
 祈念者たちと違い、便利な【剣製魔法】が使えるのでショートカットしたのだ。

 情報を集めに来た俺だが、宝物庫に悪意が願いを叶えた産物があっても困る。
 なので祈念者たちが来る来ないとは別で、念のため……そう、念のためやって来た。

 金銀や芸術品などの財宝はかなりあるが、有用な武具などはそのほとんどが中央で行われているラスボス(笑)戦に向けて持ち出されてたようで。

 残っているのは使い手を選ぶ代物、または持ち出されると困るような物ばかり。
 聖剣っぽい武器や禍々しい槍など、悪意が生まれるぐらいに戦った証が並んでいる。


「スキルを一時解放──“武具複製ウェポンコピー”」


 それらを持ち出すことはしないものの、少し気になるので情報は頂いていくことに。
 ギーの持つ【武具魔法】、その中に存在する武具のフルコピーができる魔法を発動。

 相応の魔力を支払えば、いつでもこれらの武具を複製することができるようになった。
 あとは武具の管理人であるドゥルに任せ、何かあれば使えるようにしてもらうだけだ。


「消耗品の方は……特に要らないか。うん、生産神の加護がだいたい作ろうと思えば作れるって教えてくれるし」


 見た物も[世界書館]が記憶し、記録していくことだろう。
 同時に、生産神の加護がそれらの作り方まで記載してくれるはず。

 つまり、俺が必要とするのは生産神の加護では対応していない代物。
 願いと悪意が絡み合った、生産では生み出せない代物だけを回収すれば良い。

 そうして宝物庫の中を探っていくのだが、少し気になって[マップ]の方を確認。
 入り口は不思議な仕様ではあったが、座標は間違いなく王城の中。

 だが、ほんの少しだけ[マップ]で確認できる広さと体感している広さに差を覚えた。
 普通なら無理かもしれないが、[内外掌握]に内包された<領域干渉>が働いたのだろう。


「うーん、何かある気がするんだけど……そうだな、探すかな──“削源剣カーテイルソード”」


 隠れる必要は無いので、隠形剣と入れ替えて生み出すのは耐久度を削る剣。
 それを使い、違和感のある辺りへ剣を近づけていく。


「魔法的反応は感知できない……なら、やっぱりアレかな。よいしょっと!」


 壁に剣を当てるが、何の変化も無い。
 むしろそれこそが問題……勢いよくぶつけたはずなのに、何も起きない方が異常だ。

 そして、その違いは壁の中でも俺が狙った部分だけに該当する。
 魔法が掛かっているわけでは無いので、単純に強度が尋常では無いのだろう。


「けどまあ、削源剣は耐久度をひたすら削っていくからな……ゴリゴリゴーリゴリっと」


 鑑定スキルで覗いてみれば、凄まじい速度で減っていく耐久値が確認できる。
 やがてその数値がゼロになると、剣は壁を突き破り──その先の魔道具を貫いた。


「おっ、開いた開いた。さてと、この先には何があるのかな……中は空間拡張がされている? ああ、さっきのは魔力遮断系の鉱石なのかもな」


 思ったよりも広かったその場所には、先ほどの部屋ほど財宝は並んでいない。
 あそこに置くことができないほど、本当にヤバいものだけが封印されていた。


「どれどれ……鑑定は通らないけど、禍々しいのも混じっているぞ、これ。なるほど、危険物を回収しておくための場所か」


 気になるのは、そういった呪い染みたエネルギーが抑制されていること。
 この部屋にそういった効果があるのか、あるいは……また別の要因か。


「そういえば、旗は宝物庫じゃなくて王の間に飾られているんだっけ……そこに置いておく必要があるから? …………なるほど、御旗の下に安置されているのか」


 思考系スキルが機能して、解が導かれる。
 それはここにある悪意の産物が、旗によって封じられているというもの。

 だからこそ多くのアイテムを持ちだしておきながら、旗はそのままにしている。
 そうしておく必要あり、それを同じように置いておくわけにはいかなかったからだ。


「うーん、まあつまりアレだ──ここにあるのはほとんどかっぱらっていいもの!」


 人の物を勝手に盗んだら泥棒。
 しかし、俺には人々を悪意の手から守るという(偽善的には)熱い使命がある……仕方が無いのだ、これは必要なことなのだ!


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