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偽善者と崩壊する陣営 三十四月目

偽善者と陣営イベント中篇 その02

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 B級迷宮 光輝なる天園


 俺も地道に迷宮を攻略して、気づけばC級までランクを上げられていた。
 なので入れるのはB級まで、当然そこに単独で挑んでいる。

 選んだ場所はラスボス(仮)用の浮島同様に、宙に浮いている特殊なフィールド。
 落ちたる強制的に入り口に帰される、というフィールド設定がされているらしい。


「[精霊の頁]──『エアル』」

『!』

「うん、それじゃあ行こうか」

『!!』


 風属性のエアルを召喚して、堕ちた時に支えてもらえるように指示を送っておく。
 向こうからも、了承の思念を受け取ったところで──別の頁を捲る。


「──『フラム』、『ラボル』、『アクス』と『アイア』、『ソムス』。みんなもね」

『『『『!!』』』』


 さまざまな迷宮を巡り、各属性の精霊たちと契約を果たしていた。
 そして、彼らを同時に召喚して大半の問題に対応する──それが今のスタイルだ。

 維持費やら、そもそも同時召喚が難しいなどの問題は、『夢現の書』が解決している。
 俺と眷属の知恵が(1:9の割合で)注がれた、最高の魔本みたいな物だからな。


「さて、ここには光の精霊がいっぱい居るって聞いたからね。新しい仲間が見つけられればいいんだけど……」

『!』

「先に魔物に遭遇しちゃったか。よーし、それじゃあ力を貸してね」

『!!』


 風による索敵をエアルが覚えてくれて、敵への先制攻撃も掛けやすくなっている。
 Bランクともなれば、迷宮も相応に難易度が高いのだが……なんとかなるだろう。


「アレ、かな……『神聖輝士ディバインライト』。聖属性もあるみたいだね」

『『!』』

「うん、じゃあ二人にお願いしようかな」

『『!!』』


 覗き見たのは、光のエネルギー自体が騎士の姿を模している存在。
 それを精霊に近しい存在あのだが、ここでは魔物と同じ扱いなのだろうか。

 幸いにも精霊たちはやる気満々なので、その自主性を尊重して頼んでみる。
 そうなると、俺は魔力の供給役でしか無いのだが……ある意味、それを望んでいるし。

 魔力を送る先は水と氷の精霊。
 どうやら特殊な双子のような存在で、互いにその性質を分け合えるらしい。

 水と氷、液体と固体。
 それらを自在に切り替えられる二人には、これまでも何度も助けられている。


『!』『!』


 彼らは“水蒸気沫ベイパーミスト”という魔法に似た現象で、周囲に泡状の水蒸気をばら撒き始める。
 すぐに反応し、警戒する騎士なのだが、損魔法自体に攻撃性能は無い。

 ──がすぐにそれらが凍てつき、動きを奪い始めたところで状況は変化する。

 騎士に纏わりつく薄氷、その表面はとても滑らかな鏡のような性質を帯びていた。
 その内部に光は閉じ込められ、身動きが取れなくなる──拘束したも同然だ。


「ありがとう、二人とも。じゃあ、トドメは僕が。魔本開読オープン──“闇槍ダークランス”」


 魔本を開くと、内部の術式が魔力を吸って起動──闇色の槍が現れ、騎士を刺し貫く。
 無抵抗のままに弱点の闇属性の攻撃を受けた結果、残されたのは魔石だけ。


「やったよ! ここでもちゃんと、戦うことができるんだ!」

『『!!』』『『『『!』』』』

「そうだったね。アクスとアイアだけじゃなくて、みんなに出番が無いとね」


 ドロップアイテムを回収して、再び迷宮の中を歩き回る。
 ボスを見つけたり、契約してくれそうな光精霊を探さないといけないからな。


  ◆   □   ◆   □   ◆


 向けた『夢現の書』に対して、光精霊はドキドキワクワクといった思念を送ってくる。
 その期待に応えるべく、俺は新たな契約聖霊に名を与えた。


「──よし、君の名前は『ヘリス』だ!」

『♪』


 そうして、どうにか光の精霊と契約を交わすことに成功する。
 だが、それを行う場所は……まさかの階層主のフロアだった。

 どこだどこだと探して、大量に光の精霊が居る場所を見つけたと思いきや、そこがもうボス部屋だったと知ったときは、なんというか脱力感に支配されかけたものだ。 

 そこで戦うにしても、精霊たちに嫌われない戦いでなければならない。
 むしろ、アピールの場でもあると自分を奮起させて、どうにかボスを倒した。

 この際、契約した精霊たちの力を全面的に借りる、かつ残虐じゃないやり方を選んだ。
 楽しそう、混ざりたいという雰囲気を醸し出し──契約にこぎつけた。


「残すは闇精霊だけかな? うん、無属性はナースがいろいろ言いそうだし……そこだけは、自分でなんとかしよう」


 精霊たちは俺の魔力を使いながら経験を積み、いずれは成長していくことだろう。
 それを契約した数で等分するため、複数体の精霊契約は不人気となってしまっていた。

 しかし、俺には『夢現の書』があり、召喚していてもしていなくとも、育てられる。
 ……そういう便利な空間を、予め準備しておいたのだ。

 なので目指せ大器晩成型、最後に強くなっていればそれで良し。
 さすがにナースと同等は無理にしても、大精霊と呼ばれるぐらいまでには育てたい。


「うーん、今日はこの辺にしておこうかな。みんな、宿に帰ろうか!」

『『『『『『『!!』』』』』』』


 精霊たちを引き連れて、俺はこの迷宮を後にする。
 途中から、ランク上げの条件も変わっている……またB級迷宮を攻略しないと。


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