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偽善者と崩壊する陣営 三十四月目

偽善者と陣営イベント前篇 その17

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 イベントエリア(東) 迷宮都市


 迷宮が乱立し、そこに建てられた都市。
 いくつかの難易度ごとに区画が分けられており、そのうえで複数の種類の迷宮へ繋がる転移門があるという奇妙な場所。

 ……おそらくだが、かつてここを願った者が居るのだろう。
 たとえば、尽きぬ富だの無限の魔物だの、それらを願えばこうなったかもしれない。

 悪意のエネルギーを糧に叶える願いが、純粋に願った通りになるはずがないのだ。
 まあ、これは全部仮設なので、奇跡的にここのような場所があるかもしれない。


「──実際、僕の世界がそうだしね」


 第三世界、空間魔法で生み出した場所に広げた迷宮だらけの世界。
 まるで迷宮の存在を組み込んだうえで、設計されたような都市。

 そういった意味で、似たような雰囲気をこの都市から覚えている。
 まあなんにせよ、しばらくはここで宝探しに勤しむとしよう。


「とりあえずはギルドで登録かな……迷宮だから、探索ギルドだよね」


 冒険者と探索者、その違いはフィールドかダンジョンかという点。
 それぞれに合った職業の能力もあるため、広義の意味ではそう認識されている。

 別に、それらに関する職業が無ければ入れないわけでもない。
 ……たとえ無職であっても、いちおうは登録できるぞ。


「でも、無職だとパーティーに入れてもらえないとか、受けられる依頼に制限があるとかは定番だよね……まっ、別にいいけどさ」


 独り言を呟きながら、探索ギルドへ入室。
 祈念者の来訪が多くなったからか、見てくれだけで即座に絡まれるといった展開にはならないよ「おうおう、いつからここは保育所になったんだ!?」……うだと思ったが。


「同じプレイヤーとして恥ずかしい……」

「なんだとクソガキ!!」

「そもそも、保育所って言っちゃダメだと思うよ。そりゃあ分かっている人は何も言わないけど、知らない人は首を傾げてるし」

「う、うるせぇ! 今日が初めてだったからよく分かんねぇだけだ!」


 どうやら絡んできたチンピラっぽい見た目の男は、このロールがやりたくてわざわざここで待機していたようだ。

 周りの対応は……ああうん、別の人がもうやっていたのかもしれない。
 演技について何やら言っていても、行動自体を止めたりしないようだ。

 そして何より、絡む側だけでなく対を成すように助ける側も居るようで。
 チンピラ(役)と揉めている俺の前に、現れるオジさん。


「ここまでにしておけよ。そいつは、テメェさん程度が絡んでいい相手じゃねぇよ」

「あ、アレクサンダーさん!? ギルドランクS、Aランク迷宮もソロで踏破できるあのアレクサンダーさんじゃねぇか!?」

「説明乙。っと悪いな、坊主。こいつには、きっちり詫びをさせるからよ……ほら、さっさとしろ」

「だ、大丈夫です。あの、ありがとうございました」


 オジさんにペコリとお礼をして、そのまま受付へ向かう。
 向こうも楽しめてWin、こっちもさっさと厄介事を終えられてWinな関係だな。

 アルカイックスマイルを浮かべている受付嬢に、冒険ギルドのカードを提出する。
 ……当然ながら、ノゾムとして作っておいた偽装用だけども。


「探索者としての登録をお願いします!」

「畏まりました──ノゾム君はランクF+なので、探索者としてのランクはFからです。入れるダンジョンは一つ上のアルファベットのランク、つまりEランクの迷宮までです」

「それ以上のランクの迷宮に入るには、ランクを上げる以外だとどうすれば?」

「……あまりお勧めできませんが、どうやら祈念者の方のようですし。各迷宮において、最下層に出現する階層主。彼らを三体以上討伐できれば、一つ上の迷宮への許可が与えられます」


 もともと知っていた制度なので、特に異論もなく登録は終了。
 ……そりゃあうちに迷宮都市があるのだから、ちゃんと勉強はしてあるさ。

 なお、先ほどのチンピラ(役)とアレク何某はもういない。
 一日一度で満足しているのか、依頼を受けてとっととこの場を離れている。


「さて、僕も迷宮に行こうっと。まだ具体的なことは何も決めてないし……まあ、楽しめればいいかな?」


 ナシェクはアンデッド狩りで取り戻したモノをどうこうと言い、今は休眠中だ。
 そのため、俺の戦闘スタイルにとやかく言う者もいない……つまり自由なわけで。

 毎度のことながら、俺の強みは祈念者ではなく自由民と[ステータス]のシステムが似通っていること……つまり、メインスキルという概念が無く、無制限にスキルが使える。

 だが、俺の悩みは多過ぎてどれを使えばいいのか分からなくなること。
 ……初期はだいぶ詰まったが、この縛りプレイ中もだいぶできることが増えたからな。


「こんなときは──サイコロ~、そして縛りプレイシート~(濁声)」


 六面ダイスと工夫を凝らした自動更新型の魔道具を取り出し、適当に振る。
 そして、あとは出た目を確認してどの縛りになるのか確認するだけ。

 ちなみにこんな感じ──


===============================

 1:盾のみ(盾装備自由)
 2:属性魔法(再度振る)
 3:片手剣+光属性(剣固定)
 4:非戦闘
 5:契約術師
 6:無制限

===============================


 分かりづらいものの説明をすると、4の非戦闘は武術系と魔法系のスキル禁止。
 5の契約術師は……たしか、精霊術師や召喚術師、死霊術師みたいな連中の総称だ。

 要するに、何らかの存在と契約を交わして戦ったりする者たちのこと。
 俺の場合…………うん、これが出ても現段階では大したことなどできないな。


「召喚できるのディーだけだし、デュラハンたちはあくまでも『偽善者』状態での契約だもんね。まあ、サイコロ振って出なければいいだけだし!」


 そう思い、勢いよくサイコロを振る。
 そして、出た目は──


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