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偽善者と崩壊する陣営 三十四月目

偽善者と陣営イベント前篇 その07

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 未来眼による擬似的な[選択肢]。
 イベント用に潤沢なほど用意されたエネルギーを利用し、未来から拝借した情報を基にルートが提示される。


===============================
・これからの方針──何をする?

 1:眷属と共に蹂躙(金)
 2:現地で仲間集め(赤)
 3:拠点の防衛強化(青)
 4:辺り一帯の調査(青)
 5:ラスボスの演出(黄)

===============================


 ……なんというか、あからさまなほどに強調された一番目の選択肢。
 まあうん、眷属が基礎をプログラムしたから納得と言えば納得ではあるがな。

 金色が光り輝き、他の選択肢がやや見えなくなるほどだ。
 特に黄色で表示されている五番、むしろ消えかかるレベルで見づらい。


「色がまた増えたな……眷属的にオススメなのが金色、黄色は……青が好転だったし、これこそ現状維持か? でも、仲間を集めるのが赤色なんだよな。まあ、祈念者の数もそれなりに居るからだいたい終わってるか」


 ロールプレイを行う今回のイベント。
 当然……とまでは言わないが、同じ方針なのだからある程度メンバーを揃えておくことができる。

 そうなれば、自由民を仲間に引き入れて行動する者も現れるはず。
 何度も言っているが、昨今のゲームにおけるNPCよりも優遇されているからな。

 祈念者の総計[ログイン]数は数百万、そして同時[ログイン]数は数十万を超えていると聞いたことがある。

 それだけ数が居れば、もちろん遊び方だって違ってくるだろう。
 そして、その中でも自由民を思想は違えど仲間とする者は居るだろうからな。


「有力な自由民だろうと、その分の難易度の[クエスト]を達成すればある程度協力はしてくれるだろうし。魔物だって、意思疎通ができれば[クエスト]を発行するってナックルが言ってたっけ」


 まあ要するに、強いヤツが居てもすでに他の祈念者が目を付けた後。
 ただでさえ畏怖嫌厭で嫌われる俺を、認めてくれる者は少ないだろうってことだ。


「……じゃあ、無難なのは青色の選択肢ってことになるけども。さてさて、どうしたらいいものかねぇ」


 イベントの開催期間、実は今回これがまだ公開されていない。
 その代わり、時間加速が行われていないというやや異例な仕様。

 やるにしても、イベントのクライマックスとなるだろう。
 ……二十四時間年中無休、ずっとこっちに居る俺には関係ないんだけどな。


  ◆   □   ◆   □   ◆

 ──人物鑑定、というものがある。

 通常の鑑定と違い、レベルや能力値、スキルなどはほとんどの場合表示されない。
 その代わり、対象に関する経歴などの情報が分かるという某ウィッキー的鑑定だ。

 まあ、圧倒的なレベル差や相手からの許可でも無いとほとんど成功しないが。
 非常に抵抗されやすく、魔物などに使うと戦闘時以外はヘイト値爆上がりらしいし。


===============================

 メルス[ノゾム]『孤闘者』[『無職』]
 不明[人族] 中庸[中庸]

 情報が存在しません
[祈念者。冒険者として活動し、現在はランクF-。極めてありふれたごく普通な少年]

===============================


 ──なお、俺の場合はこんな感じ。
 先に出ているのが本来の方で、後に出ているのが偽装している縛り中の情報。

 だいぶ前に語った通り、祈念者であれば自由に[称号]を変更できる。
 なので過度な期待はされないよう、ありのままを表示させていただいてます。

 気になるのは経歴の部分、いやまあ書かれたら書かれたで中庸っぽく無くなるけど。
 いっさい情報が無いというのは、果たしてなんでなのだろうか。


「まあ別に、俺は人物鑑定はしないけどさ。出す情報が多ければ多いほど、その分だけ成功率もヘイト値の上昇率も、ついでに言うと好感度の下がりっぷりも悪くなるんだから使いたくないよ」


 だが今回のイベントで、これを使う者たちもそれなりに居るだろう。
 鑑定スキルを取ることが多い祈念者、中でもマナーをきちんと守れない者も多少居る。

 覗き見をすれば制裁される、これは自由民の中では常識だ。
 仮に貴族を視たりすれば……うん、死に戻れる連中で幸いだったな。

 もちろん許可を取れば、まあ許してくれるだろうけども。
 それでも、視るのは名前と[称号]までにしておくのがベストだ。


「──とここまで言っているのは、俺がのこのこ外に来たせいなんだけども。やっぱり、この選択肢じゃない方が良かったかな」


 俺が選んだのは赤色だった。
 青もイイとは思ったが、そのときに考えたことが一つ──選ぶの、一つじゃなくてもいいんじゃないか?

 そういうわけで、浮島の方が眷属を呼んで任せてある。
 出番があってWin、赤色も選べてWinと両者納得のやり口……だと思ったんだよ。

 だが実際、ノゾムの姿で闊歩する俺に向けられるのは妙に気持ち悪い視線。
 そりゃあ自由民も嫌がるよ、やっぱり畏怖嫌厭を認識できないようにすればよかった。


「まあ、このままでいても買い物もできないだろうしね。なんか、自由民の人たちも警戒しているし……うん、やっぱり分からない方が良かったか」


 自由民と祈念者を識別するマーカー、その機能をオフにしている連中の視線だろう。
 俺を見れば何者かと覗き、祈念者と分かれば舌打ちして離れる。

 繰り返されるワンパターンな流れに飽き飽きとして、俺も人目から離れて畏怖嫌厭の偽装を始めるのだった。


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