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偽善者と崩壊する陣営 三十四月目

偽善者と陣営イベント前篇 その03

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 二日目、ここに残っていた祈念者たちも朝食を済ませた後は動き出す。
 待っていてもイベントが起きない、そう理解したからこそだな。


「さて、俺も何かしないとな……むぐむぐ、どうしようか」


 行き当たりばったりで動いているので、具体的に何をすればいいのか未だ不鮮明。
 指針となる選択肢は、自分の手で壊してしまったので使い物にならない。

 もちろん、必要になれば使う。
 それに精度は低くとも、未来眼で視てみればある程度分かることもある。

 だがあえて、それはしない。
 ……忌々し運命神と同じようなことを、しているみたいだという自分勝手な理由だが。


「でもそうだな……もうこの付近に人は誰もいない。それぞれ四つの場所を目指したり、そこで活動しているからな。つまり、初期地点は俺だけの場所」


 そんなことあるわけないが、【傲慢】かつ【強欲】な俺は気にしないということで。
 せっかくだ、四つの地点の中心であるここに何かを仕込んでやろう。


「魔導解放──“彷徨える豊樹の樹海”」


 突如として、俺の周囲に生える木々。
 それらは異常なほど急激に生長し、やがては陽光を隠すほどに。

 樹海という魔導名の通り、その効果範囲はかなり広い。
 四つの場所へ向かうための道、その大半が樹木に覆われていった。

 ……がしかし、まだ終わっていない。
 というか、俺のノリ的にもっと魔導を使いたかった。

 その準備をするため、神眼を開眼。
 視界の片方が突然切り替わり、樹海となった地域すべてを俯瞰して視れるようになる。


「魔導解放──“遍く果てし大砂漠”」


 重ねて行使する魔導によって、今度は地面が砂状と化す。
 視界に映るすべてを砂漠にする、それが本来の魔導の力だ。

 ただし、今回は意味もなく小細工をして、樹海だけはそのままに砂漠を生み出した。
 現実ではありえない状態、だからこそそこにナニカがあると伝えられる。

 ……がしかし、まだ(ry。
 これだけだと砂漠と樹海がコラボしただけで、それだけなら新しい迷宮と言われればギリギリ納得できるだろう。

 ということで、今度は地面に手を当てる。
 そういう発動条件は特に無いが、観ているであろう眷属のために、こういった演出をしておきたかったんです。


「魔導解放──“永地の理を解く者”」


 無制限の広域地形操作。
 脳裏に効果範囲すべての地形が浮かび、それらを操るためにはどうすればいいのかを魔導が教えてくれる。

 あとはこの地を思うが儘に操り、迷宮とは思えない異様な光景を創り上げる……というのが、当初の予定だった。


「あっ、ん? ……地中に何かある?」


 樹海が栄養を奪い、砂漠が地面を解し、何らかの抑制が失われたのだろう。
 今まで認識できなかったそれが、封印越しから存在を主張し始めていた。


「……あー、そういえば始まりの街も、地中(?)に埋没させたうえで成り立っている所だもんな」


 神眼で軽く視たところ、そこには通路のようなものがある。
 なので“永地の理を解く者”でそこまでの道を創り、崩れないよう固定しておく。

 ついでに目的地まで、常時足元を操作することで擬似的なベルトコンベアを再現。
 一歩も足を動かすことなく、神眼に集中して奥へ進むことができる。

 封印は軽く緩んでいたが、内部から漏れがあっても外部からの侵入は今なお厳しい。
 正しい方法で道筋を創り、正しい手段で封印を解かなければならないようだ。


「しかもこれ、内部全体への侵入を封じているみたいだし。穴掘って横道から、とか上から直行みたいなのはできないのか……念入りな防御策だよな」


 まるで地面に埋まることを想定した、あるいは空からの干渉を懸念したようなシステムの構築に少々感嘆する。

 どちらかが正しい、いやどちらとも正しくなくとも面倒なことに違いは無い。
 当然ながら、俺に資格なんて無いしキーアイテムも持っていないのだから。


「魔導解放──“欺く奇術の詐り言”。『俺には資格が無い、だから封印は解けない』」


 封印を壊しても良かったが、後々困るのも嫌なので別の手段を。
 使った魔導は至ってシンプル、言ったことと反対の事象が起きるというもの。

 無いはずの資格は存在し、解けないはずの封印が解ける。
 詭弁でも何でもなく、ただの言葉遊び……虚実を歪める嘘吐きの魔導だ。

 似たような魔導にその逆もあるが、今回こちらを使ったのは……罪悪感があるから。
 いやほら、嘘を言っても本当になるし、真面目にクリアしたヤツが可哀想だからな。


 閑話休題ウソからでたマコト


 封印が解け、通路の先へ向かう。
 それなりに長い道を通り、やがて辿り着いたのは──ただ一つ、祭壇とそこへ続く道だけが存在している。

 てっきり創作物のテンプレ的に、失われた古代文明やら機械文明の街並みが広がっていると思ったのだが……あるのは舞台の上に描かれた一枚の魔法陣のみ。


「なんだ、まさかここで異世界召喚をしますみたいな展開か……おいおい、さすがに揉めそうだから勘弁してくれよ?」


 あまりにも意味ありげに存在するので、こちらも全力で解析を開始。
 鑑定眼、そして再びスキルや眷属の力を頼りに術式を解析していく。


「えっと……“身命祈願サクリファイスウィッシュ”に似ているな。その上位版、というか劣化版というか。まあいいや。術式名は──“星命誓願ウィッシュ・ア・スター”、願いを叶える大魔法ってことだな」


 そこだけ聞けば都合の良い魔法に思えるのだが、前例として挙げた“身命祈願”からも分かるように当然代償が必要だ。

 わざわざ資格が無ければ開かない空間、そしてそこに置かれた願いの叶う魔法。
 うーん……これ、いろいろとヤバい用途で創られたんじゃないか?


「魔導解放──“我が拳に砕けぬ物無し”」


 というわけで、鬱展開になりそうな代物は不要なので壊しちゃいましょう。
 適当なノリで俺は、この後のイベントで必要になりそうな物を破壊するのだった。


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