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偽善者と崩壊する陣営 三十四月目
偽善者と陣営イベント前篇 その01
しおりを挟むそして、イベントが幕を開いた。
祈念者たちが知らされているのは、開始日と陣営ごとに分かれてのチーム戦という点だけ……うん、いろいろと怪しい。
意図した情報統制に何の意味があるのか、それを気にする間もなくGMによる開始のアナウンスが鳴り響く。
≪はーい、それじゃあ今回のイベントについて説明するよー≫
今回の当番は風属性を担当する、GM04ことフーカらしい。
イベントに関しては事前に06ことリウに聞いていた通り、勇者と魔王の陣営戦だ。
≪──というわけで、勇者と魔王の役割は理解できたかな? 足りない情報は現地で集めてね。それじゃあ、転送開始!≫
動揺する祈念者をスルーして、イベントエリアへの転送が開始される。
足元の魔法陣が光り輝き、通常では向かえない場所への転移を可能とした。
勇者の役割は人族を救う解放。
魔王の役割は魔物や魔族を救う庇護。
ここで気になるのがナックルと話し合った陣営のこと──本当に、二つなのだろうか。
一言もそうだとは言っていないし、リウもそれらを大まかな概要と言っていた。
フーカも情報は現地で集めろと言っているし、そもそもゲームタイトルがAFO。
すべてが自由な世界に、陣営なんて縛りがある方がおかしいだろう……。
なんて屁理屈を考えながら、俺は転送の光に呑まれていくのだった。
◆ □ ◆ □ ◆
イベントエリア
そこはだだっ広い草原だった。
周囲には同様に飛ばされた祈念者たちの姿もあるが、そこまで数は多くない……ランダムでの転送なのだろう。
「──“森羅同一”、“振動探知”」
最上位の隠蔽能力。
自然と同化しての気配霧散によって、まずはこの場から離れる。
そして、ガーの持つ振動魔法を使用。
周囲を反響する魔力の波によって、事細やかに調べ上げていく。
集まった情報は[マップ]に記載され、周囲10kmほどの地図が出来上がる。
それによると──人族が南に、魔族が北に生息していることが判明した。
周囲には魔物も何もいない草原と似た環境が多く、そこには祈念者もたくさん居る。
……祈念者の眷属も当然混ざっており、魔力を弄って無かったら速攻でバレていた。
「どうしたものか……って、ん?」
===============================
・まずは情報集め──どこへ向かう?
1:北へ(魔物の気配が多い)
2:南へ(人族の気配が多い)
3:東へ(???)
4:西へ(???)
5:待機(???)
===============================
どうしたものかと考えていれば、突然目の前に現れたUI表示による選択肢。
それは他の祈念者たちの前にも出ているようで、驚いたりジッと見つめていたりする。
なんだかRPGみたいな感じになっているが、気になるのは後半の部分。
探知して分かっていた通り、北と南には人や魔物が存在している。
それを記してあるということは、選ぶことでその陣営に所属できる可能性が高い。
だが、それなら3以降を書く必要などまったく無いだろう。
つまり、それを選ぶことでまた異なるルートへ派生する可能性があった。
もしくは、どちらに所属するにしても、素直に選んだ者とは違う待遇の場合もある。
「……とりあえず、5番だな。何をするにしても、もう少し人数が減ってからの方がいいだろうし」
俺がそんなことを考えている間に、行動に出る者は移動を開始していた。
南が四割、北が二割、東と西が一割、そして待機が二割と言ったところだろう。
「もう少し、詳しい情報を知っておかないといけないな──“上位魂魄創造”」
周囲を探るべく、邪霊魔法を発動して強い死霊を生み出す。
現れたのは『偵察霊』、それらを八体用意して各方位とその間に向かわせた。
先ほどの“振動探知”と違い、これなら視界共有を行うことで自由に情報を探れる。
警戒すべき場所は把握している……その付近には、霊体を向かわせないでおく。
「北と南は……防衛拠点か? まだ未完成だけど、それなりに数が集まっているな。東には…………こりゃあ迷宮がたくさんあるな。ここで踏破出来れば、【迷宮主】のルートも開拓できるかもな」
北と南に向かわせた霊体は、予想通りの代物を見ていた。
祈念者がそこに行けば、クエストでもこなして信頼度を得ることになるだろう。
そして、東で見たのは乱造する無数の迷宮とその周辺に築かれた迷宮都市。
すでに探索者らしき存在も見えており、少数ではあるが魔族の姿も……。
迷宮という欲望の巣窟を前に、限定的に仲良くしているのかもしれない。
まあ、ある意味どちらの陣営にも即していないのかもな。
「西は……廃墟か。アンデッドも居るし、何かしらの問題が過去にはあったのか? 探索して、その真実を暴く……みたいなルートになるのかもしれないな」
軽く調べてみると、気になることが一つ。
家屋の扉の高さが区画ごとにやや違い、小さいものはまさに小人サイズだったりするのだ……まあ、つまりはそういうことだろう。
「さて、東西南北のどこかへ向かえば、起きる展開も分かった。そのうえで、5番という選択肢もあった……何もしないから、始まる流れもあるんだろうな。とりあえず、それがあるか一日だけ待ってみるか」
大半のヤツはすでにここから動いたが、それでも残っている者はまだいる。
気になるのは、また出てくるかもしれない選択肢……何が出るのやら。
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