2,125 / 2,519
偽善者と策略する日々 三十三月目
偽善者と橙色の謀略 その20
しおりを挟む後日談、というほどでも無いがアレからのことを語ろう。
シュリュが花たちを滅ぼした後、魔族たちは無事に核から解放されている。
いちおう魔術や『装華』による検査は行われるが、俺が視た限りは大丈夫だった。
俺が知覚できない問題があるかもしれないので、しっかりと調べてもらいたい。
シュリュは遺跡(笑)で語っていた通り、魔族たちを鍛え上げている。
……他の華都も、眷属たちに鍛えてもらわないとバランスが崩れるかもな。
そんな忙しいシュリュに対して、俺は相も変わらず自由なまま。
今日も今日とてゴーのマントを羽織り、魔術で身を隠しながら街を散策している。
「さて……どうだ、ゴー。満足できたか?」
《うむ。同朋のために揮う力は、格段に心躍るものであった!》
「もっと簡単に言うと?」
《われ、超楽しかった!》
いつもの厨二的台詞を止め、とても嬉しそうに答えてくれたゴー。
俺もゴーの力を、無効化以外で借りるのはとても稀だったので新鮮な体験だった。
こう、王としての振る舞うのであれば必要不可欠なんだけども……。
やっぱり前線に出て、自分で戦う方が俺には向いているんだよな。
そもそもとして、そういったことができないからこそ生み出したのが武具っ娘たちだ。
当時は人化する予定は無かったが、それでもバックアップしてもらう予定ではあった。
できないことだらけの俺なので、やってもらうのであればそのジャンルは多岐に渡る。
もちろん、自分でやれるように努力はするつもりだ…………ああ、そのつもりだ。
「ゴーも満足してくれたなら、魔族の華都でやるべきことは終了だな。そうなると、後のことはシュリュにお任せになっちゃうが……人任せ過ぎるか?」
《それもあるが……同朋は、始まりと終わりばかりに手を出して、その間を他者に委ねているな。それではなんというか、われ的にはその──ダメ男に見えてしまうぞ》
「ぐはっ……! わ、分かっていたけど。あとのことを眷属に任せてる俺、実はしなくてもクズじゃね? とかいつも思考のどこかで気づいちゃってるけど……改めて言われるとクリティカルダメージが入るなぁ」
《ど、同朋!?》
地に這いつくばる俺に、ゴーが悲鳴染みた声を(念話で)上げる。
美味しい所だけ貰っているのだから、ヒモとかクズとか言われても仕方ないレベルだ。
うん、実際問題クズなんだよな。
こればかりはどれだけ純粋な眷属たちが庇おうと、分かっている眷属たちに突きつけられそうなので否定はしないさ。
なんというか、毎度のことだが俺の反省は何かしらの出来事を終えるたびに行われる。
その都度反省しているのに、全然後悔していないのは……まあ、自業自得なのか。
力の抜けた膝に活を入れ、腕を動かそうとグッと意識する。
傍から見れば不審者極まりない動きで、どうにか立ち上がりことに成功した。
《同朋!!》
「わ、悪いな、ゴー。どっからどう見ても俺はダメ人間ですって、再確認しただけだ」
《……全然大丈夫じゃないだろう。われ、もしや同朋に言ってはいけない禁断の言葉を紡いでしまったのか?》
「滅びの呪文でも、守護霊召喚の呪文でも無いから平気だ。むしろ、それより先に言ってくれた満足だって言葉の方が、俺の心には響いたからさ。もう大丈夫、超平気だ!」
ゴーの前で弱い自分を見せ続けるのもアレなので、空元気──を{感情}の力で強引に本当に元気溌剌な状態にする。
内心、ごちゃごちゃな想いもあったが、それらも含めてすぐにリセットされた。
……とりあえず後回し、帰った後で吐き出すとしよう。
《そ、そうか……うむ、安心したぞ我が同朋よ! ふっ、我をここまで追い込むとは……なかなかにやるではないか》
「それはこちらの台詞だ。なればこそ、俺は汝を認めている……なんてな」
《おおっ! なんというか、凄くそれっぽいぞ同朋! もっと、もっと語り合おうではないか同朋よ!》
「ふっ、俺たちの冒険はまだまだこれから、といったところか……いいだろう、汝の望むままに!」
うん、ちょっと副作用的にノリがおかしくなってはいるが。
とにかく、今日も俺は元気にやっているので問題ありません、まる。
◆ □ ◆ □ ◆
???
深く、深く、大地の底。
地面を食らい、マグマを喰らい、星をもクらい根付いたソレは気づく。
繋がりが断たれた、伸ばしていた物が根こそぎ消し滅ぼされたと。
いっさいの抵抗なく、こちらに情報を残すこともできずに一瞬で。
また、同時に知った。
すぐにその原因を探るため、星へのアクセス権を利用……しようとするが、なぜかそれもできない。
理由は単純、アクセスのために用いていた道具が無くなっていた。
丁寧に細工を施し、アクセスするまで気づくことができないように欺瞞までして。
────。
故にソレは新たな行動を始める。
膨大な時間の中で、忌々しい華都が集う周期は把握していた。
掌握した星の理は、干渉できる権限の保持者は一人ではない。
かつてそうしたように、今回もまた同じことを繰り返すだけのこと。
──認証開始……………………成功。
──エラーが発生しま………………。
──起動を確認、実行を開始します。
──『聖■龍』の運用を実行します。
今はまだ、そのときではない。
だが、そう遠くない日にソレは動く。
華都が集う日、何が起きるのか……それは神すらも知らぬ未来だ。
0
お気に入りに追加
516
あなたにおすすめの小説
World of Fantasia
神代 コウ
ファンタジー
ゲームでファンタジーをするのではなく、人がファンタジーできる世界、それがWorld of Fantasia(ワールド オブ ファンタジア)通称WoF。
世界のアクティブユーザー数が3000万人を超える人気VR MMO RPG。
圧倒的な自由度と多彩なクラス、そして成長し続けるNPC達のAI技術。
そこにはまるでファンタジーの世界で、新たな人生を送っているかのような感覚にすらなる魅力がある。
現実の世界で迷い・躓き・無駄な時間を過ごしてきた慎(しん)はゲーム中、あるバグに遭遇し気絶してしまう。彼はゲームの世界と現実の世界を行き来できるようになっていた。
2つの世界を行き来できる人物を狙う者。現実の世界に現れるゲームのモンスター。
世界的人気作WoFに起きている問題を探る、ユーザー達のファンタジア、ここに開演。
パーティ追放が進化の条件?! チートジョブ『道化師』からの成り上がり。
荒井竜馬
ファンタジー
『第16回ファンタジー小説大賞』奨励賞受賞作品
あらすじ
勢いが凄いと話題のS級パーティ『黒龍の牙』。そのパーティに所属していた『道化師見習い』のアイクは突然パーティを追放されてしまう。
しかし、『道化師見習い』の進化条件がパーティから独立をすることだったアイクは、『道化師見習い』から『道化師』に進化する。
道化師としてのジョブを手に入れたアイクは、高いステータスと新たなスキルも手に入れた。
そして、見習いから独立したアイクの元には助手という女の子が現れたり、使い魔と契約をしたりして多くのクエストをこなしていくことに。
追放されて良かった。思わずそう思ってしまうような世界がアイクを待っていた。
成り上がりとざまぁ、後は異世界で少しゆっくりと。そんなファンタジー小説。
ヒロインは6話から登場します。
特殊部隊の俺が転生すると、目の前で絶世の美人母娘が犯されそうで助けたら、とんでもないヤンデレ貴族だった
なるとし
ファンタジー
鷹取晴翔(たかとりはると)は陸上自衛隊のとある特殊部隊に所属している。だが、ある日、訓練の途中、不慮の事故に遭い、異世界に転生することとなる。
特殊部隊で使っていた武器や防具などを召喚できる特殊能力を謎の存在から授かり、目を開けたら、絶世の美女とも呼ばれる母娘が男たちによって犯されそうになっていた。
武装状態の鷹取晴翔は、持ち前の優秀な身体能力と武器を使い、その母娘と敷地にいる使用人たちを救う。
だけど、その母と娘二人は、
とおおおおんでもないヤンデレだった……
第3回次世代ファンタジーカップに出すために一部を修正して投稿したものです。
王宮で汚職を告発したら逆に指名手配されて殺されかけたけど、たまたま出会ったメイドロボに転生者の技術力を借りて反撃します
有賀冬馬
ファンタジー
王国貴族ヘンリー・レンは大臣と宰相の汚職を告発したが、逆に濡れ衣を着せられてしまい、追われる身になってしまう。
妻は宰相側に寝返り、ヘンリーは女性不信になってしまう。
さらに差し向けられた追手によって左腕切断、毒、呪い状態という満身創痍で、命からがら雪山に逃げ込む。
そこで力尽き、倒れたヘンリーを助けたのは、奇妙なメイド型アンドロイドだった。
そのアンドロイドは、かつて大賢者と呼ばれた転生者の技術で作られたメイドロボだったのだ。
現代知識チートと魔法の融合技術で作られた義手を与えられたヘンリーが、独立勢力となって王国の悪を蹴散らしていく!
元おっさんの俺、公爵家嫡男に転生~普通にしてるだけなのに、次々と問題が降りかかってくる~
おとら@ 書籍発売中
ファンタジー
アルカディア王国の公爵家嫡男であるアレク(十六歳)はある日突然、前触れもなく前世の記憶を蘇らせる。
どうやら、それまでの自分はグータラ生活を送っていて、ろくでもない評判のようだ。
そんな中、アラフォー社畜だった前世の記憶が蘇り混乱しつつも、今の生活に慣れようとするが……。
その行動は以前とは違く見え、色々と勘違いをされる羽目に。
その結果、様々な女性に迫られることになる。
元婚約者にしてツンデレ王女、専属メイドのお調子者エルフ、決闘を仕掛けてくるクーデレ竜人姫、世話をすることなったドジっ子犬耳娘など……。
「ハーレムは嫌だァァァァ! どうしてこうなった!?」
今日も、そんな彼の悲鳴が響き渡る。
虚弱生産士は今日も死ぬ ―遊戯の世界で満喫中―
山田 武
ファンタジー
今よりも科学が発達した世界、そんな世界にVRMMOが登場した。
Every Holiday Online 休みを謳歌できるこのゲームを、俺たち家族全員が始めることになった。
最初のチュートリアルの時、俺は一つの願いを言った――そしたらステータスは最弱、スキルの大半はエラー状態!?
ゲーム開始地点は誰もいない無人の星、あるのは求めて手に入れた生産特化のスキル――:DIY:。
はたして、俺はこのゲームで大車輪ができるのか!? (大切)
1話約1000文字です
01章――バトル無し・下準備回
02章――冒険の始まり・死に続ける
03章――『超越者』・騎士の国へ
04章――森の守護獣・イベント参加
05章――ダンジョン・未知との遭遇
06章──仙人の街・帝国の進撃
07章──強さを求めて・錬金の王
08章──魔族の侵略・魔王との邂逅
09章──匠天の証明・眠る機械龍
10章──東の果てへ・物ノ怪の巫女
11章──アンヤク・封じられし人形
12章──獣人の都・蔓延る闘争
13章──当千の試練・機械仕掛けの不死者
14章──天の集い・北の果て
15章──刀の王様・眠れる妖精
16章──腕輪祭り・悪鬼騒動
17章──幽源の世界・侵略者の侵蝕
18章──タコヤキ作り・幽魔と霊王
19章──剋服の試練・ギルド問題
20章──五州騒動・迷宮イベント
21章──VS戦乙女・就職活動
22章──休日開放・家族冒険
23章──千■万■・■■の主(予定)
タイトル通りになるのは二章以降となります、予めご了承を。
VRMMO~鍛治師で最強になってみた!?
ナイム
ファンタジー
ある日、友人から進められ最新フルダイブゲーム『アンリミテッド・ワールド』を始めた進藤 渚
そんな彼が友人たちや、ゲーム内で知り合った人たちと協力しながら自由気ままに過ごしていると…気がつくと最強と呼ばれるうちの一人になっていた!?
[鑑定]スキルしかない俺を追放したのはいいが、貴様らにはもう関わるのはイヤだから、さがさないでくれ!
どら焼き
ファンタジー
ついに!第5章突入!
舐めた奴らに、真実が牙を剥く!
何も説明無く、いきなり異世界転移!らしいのだが、この王冠つけたオッサン何を言っているのだ?
しかも、ステータスが文字化けしていて、スキルも「鑑定??」だけって酷くない?
訳のわからない言葉?を発声している王女?と、勇者らしい同級生達がオレを城から捨てやがったので、
なんとか、苦労して宿代とパン代を稼ぐ主人公カザト!
そして…わかってくる、この異世界の異常性。
出会いを重ねて、なんとか元の世界に戻る方法を切り開いて行く物語。
主人公の直接復讐する要素は、あまりありません。
相手方の、あまりにも酷い自堕落さから出てくる、ざまぁ要素は、少しづつ出てくる予定です。
ハーレム要素は、不明とします。
復讐での強制ハーレム要素は、無しの予定です。
追記
2023/07/21 表紙絵を戦闘モードになったあるヤツの参考絵にしました。
8月近くでなにが、変形するのかわかる予定です。
2024/02/23
アルファポリスオンリーを解除しました。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる