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偽善者と策略する日々 三十三月目

偽善者と橙色の謀略 その19

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 ゴーの無効化能力も破られ、攻撃が通るようになった。
 中位までなら魔力、物理問わず本来なら無効化できるのだが……厄介なことだ。

 ゴーは武具っ娘の中でも、王としての役割に特化している。
 そのため単独でできることと言えば、ギリギリ相手の弱体化ぐらいだ。


「──“君臨領域”」


 俺を中心に展開される銀色の粒子。
 円状に広がったその範囲に収まった花、そして魔花たちが一気に勢いを失っていく。


「──“帝王権威”」


 それは俺が配下と認識していない存在を、領域内限定で弱体化させられる能力。
 まったく無い俺の王としての威厳を、ゴーが代わりに知らしめているのだ。


「シュリュ、任せていいか?」

「うむ。其方の……いや、朕らが王の命ずるままに」

「やれ──“王ノ貫録”」

「これはまた……! やはり恐ろしい、其方も武具っ娘たちもな」


 そう呟くと、体に銀色の粒子を纏わせながらシュリュは花たちへ向かう。
 同時に展開される、これまでは使わないでいた武具たちにも粒子が付着していく。


「これはいい、力が漲ってくる!」

「円の中から出たら元通りだからな。仮初の王の威光は、どこまでも届きはしないぞ」

「むっ……今は、妥協しておこう。ならば、これであろうな──[陽虹]」


 シュリュの持つ超巨大な剣は、複数の武器が組み合わさってできた代物。
 銘を呼ぶと、その構成武器の一つが自然と彼女の手に収まった。

 ──『輝銃[陽虹]』、僅かな光を取り込み増幅させると共に、ある変化を促したうえで弾丸として射出する武具だ。


「──『火の赤』」


 コマンドを告げ、引き金を引く。
 射出された赤色の弾丸は、着弾と同時に紅蓮の炎を辺りに広げる。

 この銃はフーリ用の銃の試作品であり、一部性能を特化させた物。
 それこそが属性変換、色に合わせた属性を弾丸に込められる能力だ。


「──『氷の水』」


 再び発射された弾丸、先ほどと違って炎は発生しない。
 だがその代わりに、花々は凍てつき動きを止める。

 弾丸の色は全部で八つ、それぞれで異なる属性の力を発揮可能だ。
 ついでに言うと、シュリュの魔力をほぼ使わずに射出している。

 ……つまりは、魔力を自らの意思で供給することで更なる強化ができるということ。
 今に限定すれば、ゴーの力による恩恵も同時に使うことができる。


「シュリュ、銀の粒子を取り込んでみろ」

「うむ──『風の緑』」


 これまでは溜め込んでいたエネルギーだけで、いっさいの強化をしていなかった。
 だが今回、意図することで銃はゴーの生み出した銀色の光を取り込んだ。

 その結果、風の力に変換された弾丸は大きな変化を生む。
 着弾し、風を吹かす弾丸は──嵐を生み出し、辺り一帯で破壊の限りを尽くす。


「……これは」

「思った以上に凄いな、これ」

《ふははははは! どうだ、同朋たちよ! これこそが、我の本領よ! 同朋の味方となる者すべてがこの恩恵にあやかり、敵対する者すべてが劣勢となる。どうだ、直接に非ずとも無双へ繋がる一歩であろう?》

「ああ、本気でそう思う。どんなヤツでも、俺の味方である限り力の恩恵にあやかることができる──【傲慢】にピッタリだな」


 俺が祈念者の眷属にやっていたように、力の恩恵とは甘美な誘いとなる。
 ゴーの能力は、それを誰でもできるようにした感じだ。

 ゴー、そして俺の領域においてのみ得ることができる力。
 領域より外へ出ても、俺の味方と認識されなくなっても失う。

 すべては俺の思うが儘。
 これこそ、まさに【傲慢】と言えよう。
 ……表面的にでも、ずっと俺に従わないと力が貰えないわけだからな。


「おっと、そろそろゴールみたいだな」

《気を引き締めるのだぞ、同朋たちよ》

「心得た。では其方よ、向かうとしよう」


 シュリュは念のためか、武器を超巨大な剣こと『転帝劉具[ヴァレンブレス]』に戻して背後へ待機させた。

 これでいつでも好きな武器を、自在に取り出すことができる。
 聖具、魔具、神具……何でも取り揃えてあるから、どんな状況でも対応可能だ。

 もちろん、そんな状況にならないのが一番ではあるが。
 しかしまあ、こういうときに都合よく何も無い方が珍しいよな。


  ◆   □   ◆   □   ◆


 隠し通路の一番奥。
 花たちによって掘られた先に広がっていたのは、だだっ広い何も無い空間。

 人々は花が咲いた後は華都へ逃げた以上、生き残っている者はまだ確認されていない。
 つまりここは、花たちがこっそり生み出していた繁殖地の一つなのだろう。


「偶然にも遺跡と場所が重なったせいで、今回の問題が起きたと…………改めて、俺たちというか俺が悪い感じがするな」

「次があるのであれば、地中も深く調べる必要があるであろう」

「そうだな。まあでも、お陰でここいらの花の駆除を一気に済ませられる。最悪崩壊しても、誰も困りはしない──暴れるか」


 ゴーの“君臨領域”を展開し、周囲に銀色の粒子を散布。
 内部に居る俺、そしてシュリュのあらゆる行動が強化されるようになる。


「征くぞ──[ヴァンブレス]よ」


 片手で軽々と持ち上げている、巨人が使うようなデカい剣に力を注ぎ──告げた。
 聖気、邪気、神気……あらゆるエネルギーが武器の中で同時に、そして一気に高まる。

 普段は剣を構成する武器の一部を用いているが、今回は全力全開。
 空洞すべてに埋め尽くされた花を滅ぼすべく、剣を勢いよく振るうのだった。


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