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偽善者と策略する日々 三十三月目
偽善者と弟子特訓 その12
しおりを挟む話は早々に切り上げ、どれだけ鍛えているのかを実戦で調べることに。
調整は先ほどの魔法で済ませてあるので、やり過ぎたりやられ過ぎたりはしないはず。
「はははっ、ずいぶんと上達しているようで何よりですよ、サラン」
「……だから、その口調は止めない? 久しぶりなのに、もう……」
「悪い悪い。けどまあ、強くなっているようで何よりだ。これなら、またレベリングをする必要はないな」
「~~! 絶対に倒してやる!」
小さな体をめいっぱい使い、妖精族の姫にして赤色の『勇者』たる少女は剣を振るう。
人造聖剣だったそれは、彼女が幾度もその剣身に精霊を宿すことで進化。
紛うことなき精霊聖剣と化した剣は、無数の精霊が高め合って斬撃の威力を高める。
俺はそれをただ微笑み、魔法で創りだした剣で防ぐ。
「──“剣器創造・推進剣”」
「うわっ、剣が出てきた!?」
「こっちの世界だと、こういう魔法もあるんだよ──“放射剣”」
エネルギーを噴射して、推進力を得られるこの剣を大量に創造。
それぞれ数本ずつこの場の者たちに向けると、剣の力と魔法の効果で飛ばしていく。
「──“合精霊創造・爆発蜥蜴”!」
「ほぅ……初めて見たよ、こんな精霊」
「ふふーん──“精霊憑依”!」
「……ユラルに怒られるから」
名称からして、火属性と風属性を掛け合わせて爆発の性質を与えたのだろう。
ただ、そんな精霊が実際問題存在しているかと聞かれると……微妙なところだ。
ユラルであれば、間違いなく俺にお仕置きするかもだろうな。
そんなことを思いながら、俺自身も剣に身力を注いでエネルギーを噴射──推進する。
「知っているか? 一流の剣士ってのは、爆風だろうがなんだろうが斬るらしいぞ?」
「……へっ?」
「つまり──こういうことだな」
武技をいっさい用いず、武技をなぞるようなこともしない。
ただ、魔法で生み出した精霊の核となる部分を狙って剣を振るう。
結果、存在を維持できなくなった精霊はそのまま霧散。
俺は推進力の勢いで彼女を吹き飛ばし、そのまま別の者に剣を振るう。
「さぁ、やり合おうか!」
「くっ……重い!」
「オウシュ! この──“聖槍”!」
「本当、ナーラはオウシュが大好きだな──“剣器創造・吸収剣”」
片手の剣で推進を、そしてもう片方の剣で放たれた聖なる槍を防ぐ。
ついでに剣の効果で魔力を吸収、それを転用することで推進に聖属性が付与された。
特に意味は無いが、エフェクト的にはやや神々しさを放つようになる。
見た目的に満足しながら、二刀流で畳みかけていく。
「オウシュ、これ! ──“聖装化”」
「ありがとうナーラ──“四角斬”!」
「おうおう、ラブラブアタックってか?」
「「~~~~!?」」
あからさまな挑発に、いろんな意味で引っ掛かる二人にやや苦笑。
それでもオウシュの動きは、武技の補正によって最適なものになっている。
だが、いっさい変化の無い愚直な動きなので、ある意味隙だらけだ。
軽く気絶させようと狙うのだが……魔法の反応を感知し、上へ推進して脱出。
「アカネ、アカリ……」
「ふっふっふー、そうはさせないよー」
「悪いとは思いますが、大事な前衛をやらせるわけにはいきませんので」
「術式「──“森羅万焼”!」」
赤色の『賢者』と【迷宮主】、そして何より異世界からの来訪者である姉弟。
その二人が力を合わせて発動したそれは、高火力で空に逃げた俺を襲う。
「面白いな──“剣器創造・対滅剣”!」
「「っ……!」」
「削り切ってやるよ!」
新たに生み出した剣の能力は、同属性による干渉で相手の攻撃を相殺するというもの。
普通なら面倒な手間が掛かる作業も、先んじて用意した吸収剣があれば話は別。
まず吸収剣で魔法を切りつけ、強化された業炎属性そのものを獲得。
あとはそれを対滅剣からぶつける……その作業を繰り返せば、やがて魔法は減衰する。
「うわー、チートー」
「メルス兄ぃ、それはちょっと……せっかく頑張ったのに」
「頑張ったからって、何でも燃やすような炎で焼かれるのはちょっとな……というわけだから、じゃあな──“二剣入替”」
一番最初、生み出して飛ばした後に放置していた推進剣を媒介に発動。
俺の手にある剣と、そちらの座標を入れ替えての転移。
飛んだ先には魔法を放った二人が居る。
すぐに気づき、無詠唱で大量の魔法を飛ばしてくるが、先ほどと同じ方法で魔法をどんどん切り刻んで前進していく。
そして、剣の射程範囲まで近づいた後、その剣をゆっくりと構える。
「これでおーしま──」
「“火焔纏い”──“真炎解閃”!」
「うんぎゃぁあああああああ!」
「ハッ、ざまあみろ!」
これまた横から振るわれた、膨大な熱を帯びた斬撃。
不死鳥の力を帯びたそれは、延々と俺を焼き焦がそうとしてくる。
それを振るうのは、シスコンなライア。
後ろで補助魔法を施すルミンの代わりに、『守護者』たらんと俺を殺しに来る。
「うんうん、ずいぶんとイイ殺気が乗った一撃だったぞ。この調子で頑張ってくれよ」
「チッ……化け物が」
「まあいいじゃないか。さて、次は誰を狙おうかな……」
すでに姉弟には逃げられた。
できるだけまだ狙ってない奴がいいし……ちょうど視ているから、そっちに行くか。
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